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3部 人魚と選ばれし番編
3 発情期
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翌日。
起きたら昼を過ぎていた。
シーツにくるまれた体を起こすと、またベットに沈んだ。
うぅ……なにこれ。お腹が疼く。
腰が熱くてたまんない。
ふぅーと深呼吸をしていると、一階からフィックスさんが上がってくる、自然とそう感じてシーツから出た。
起き上がると、ドアを開けてフィックスさんが入ってきた。
「おはようリリー」
もう姿を見ただけで頭がふにゃふにゃになってきた。
「フィックスしゃ~ん」
両手を広げると、フィックスさんが私を抱き上げて膝に横向きに乗せた。
「どうしたの? とろんてしてる」
「ふふっ、フィックスしゃん」
首に腕をまわして頬や耳に吸い付く。姿を見たら触れたくてたまらなくなったのだ。それに匂いも。いつも嗅いでる匂いより濃い。
もう脳みそどろどろだ。
「幸せぇ」
「俺も。今日のリリーは甘えただね」
「いつもフィックスさんに甘えてるよぉ」
「ふふっ。今日はなに食べたい?」
「フィックスさんの料理ぃ」
「いいよ」
啄むようなキスのあと、押し倒されて何度も角度をかえて舌を絡めた。はぁ……美味しくて舌も唾液もたくさん吸った。でももっと……。
「体は辛くない?」
「へーき」
「じゃあご飯持ってくる」
「着替えたら一階におりるよぉ」
「わかった」
フィックスさんが離れていくのを、裸体のままベットで眺めていたら、また戻ってきた。嬉しくて足を擦り合わせてしまう。
「……もう。ご飯食べさせたいのに、そんな顔しないで」
「はぁい」
今度こそフィックスさんが部屋を出て、姿が見えなくなったらもう会いたくなった。わぁ、なにこれ、胸がきゅんきゅんする。
起き上がって全身を洗浄。
収納からアイドルメイクをしてくれる猫耳カチューシャを取り出してつける。そしてすぐ外して収納。
フィックスさんの発情期にわかったんだけど、これ1回つけると髪がゆるふわパーマになって、ナチュラルメイクもしてくれる。で、外した場合お風呂とか入っちゃうと維持はできないけど朝の身支度程度には役に立つ。
服はなに着よっかな~。
フィックスさんに可愛いって思われたいな。
でもやりすぎるとわざとらしいし。
白いフリルの半袖ブラウスと、太腿が見える紺色のキュロット。あと水色のベルト。ニーハイと厚底の革靴を履いて、十字架のペンダントもつけて出来上がり。
収納から姿見を出す。
うん、素朴だけど清潔感がある。
金髪のゆるふわパーマがいい味だしてる。
さ、ご飯♪ご飯♪
一階におりると騎士がいた。
なんか見たことある騎士服が10人……てかこの国に騎士なんていたか? あっ……そういやアルレントの騎士団が来るって漁師さん達が言ってたな。
「……おい可愛いじゃねぇか」
「ウェイトレスか?」
「こっちこいよ」
2、3人が私を見て立ち上がった。昼間っから酒飲んでる。騎士服なら勤務中では? よい御身分だな。
「は? 客ですけど?」
ポケットに手を入れて近くにいた従業員さんに片手一杯に掴んだ金貨を渡す。周りに見えるようにわざと派手な音も立てて。
「はい。いつものをお持ち致します」
あ、従業員さん空気読んだ。
またなにかお土産を貢ぎたくなる笑顔だ。
騎士達はバツが悪そうに席に戻っていった。
カウンターに座ると厨房から出てきたフィックスさんが私の隣に座った。
「またそんな可愛い格好して」
「くふぅ」
可愛いって言ってくれた!
腕に頬を寄せるとちゅっと髪にキスされた。くふぅ。幸せぇ。
「今日は船乗るの?」
「乗らなぁい。行商して、夕方帰ってくるぅ」
「……そのあとは?」
「部屋にいるぅ」
「わかった」
あ、従業員さんがプレートを運んできてくれた。
わぉ、ステーキランチだ!
チーズソースがかかった温野菜もきたぞ。更にトマトソースがたっぷりかかったチキンもきた。鉄板に焦げたソースやば。そのソースをパンで掬い取って食べると更にやばー。もう美味しくて目に涙が浮かんできた。
「おいちぃ……生き返るぅ~」
「あぁ……食べちゃいたい」
フィックスさんにステーキをあーんすると、ぱくりと食べて、口移しされた。
お、おう。心臓ばっくばく。
今更だけど人目を気にして振り向くと既に騎士の男達はいなかった。店内も空いている。ホッ。
「ごちそうさまです」
ふぅ。手を合わせてぺこり。
あー、日々暮らしに潤いが増していく。
「それ、今日の服でされると我慢できない」
「へ?」
「リリーいつも可愛いのに、凄く綺麗……」
「……っ、今日は早目に帰ります」
「嬉しい」
いったん厨房の奥に引っ込んで隠密で店を出ると数人の騎士が店内をちらちらと見ていた。
ここは港に近いからか、見渡した先にも騎士がちらほらいた。
今日はどこで売ろうか。
まだ日中だし都心のがいいかな。
飛行で建物を眺めながら進む。いい天気だ。
あ、公園みたいな広場に親子連れが結構集まってる。アイテムバックをたすき掛けして、地面に着地。
隠密を解除してしばらく歩くと以前試食した子供がいた。私に気付くと母親から何か受け取って一目散に駆け寄ってきた。
かわいい。
掌に乗せた銀貨を見せて『甘いお魚の下さい!』って言った。かわえぇ。
「パンはいらない?」
「いる!」
「これと、これ。どっちがいい?」
「ソーセージのやつー」
「はーい、毎度ありー」
かわえぇ。ついでに飴ちゃんあげた。
「あの、日中も売ってらっしゃるの?」
今の子のお母さんだ。
「はい。最近夜はパンの仕込みで忙しくて」
嘘である。
最近というかずっと夜から朝にかけて何かとアレなのでね。
「まぁ、そうなのね……それよりちょっと小耳に挟んだんだけど、あの白パン単体だけでも売ってらっしゃるとか?」
「あ、パンだけなら3本で銀貨1枚ですね。オマケも1個つきます」
「あの……今ね、ご近所さん達と軽食を持ち寄ってるんだけど、パンが足りないの。パンのみで悪いんだけど30本くらい売ってもらえるかしら?」
「いいですよっ」
むしろ御安い御用さ!
ちょっと立ち話して、その御近所さんが持ち寄ったというクッキーを頂いてしまった。
あ、このクッキーうま。
バターの香りがプンプンや。
次は農園に行こうかな。
「そこの君、パンを売ってるの?」
食べ歩きしてたら声をかけられた。
アルレントの騎士だ。私を取り囲むように5人。肌にビリっときた。こういう場合、冷やかしだろう。
「どんなパン? 見せてよ」
「先程の30本で売り切れました~」
「え」
ささっとかわして人混みにまぎれて隠密発動。
飛行で農園までバビュン!
一面に広がる農園を眺めながらてくてく歩く。
いやぁ~のどかだね。
自然の匂いに癒されるわ。
りんご園の前を通りかかった時、初老の夫妻がガーリック明太子パンをお買い上げしてくれたので私もりんごを買った。
もうそこらじゅうりんごの香りがプンプンでね。
歩きながら食べたかったのだよ。
「うま……甘っ……皮まで美味しい……おおっ、中身はピンク色のりんごだぁ」
やばいな。このモモリンという品種。もっと沢山買えばよかった。あの夫妻は品種別のもそろそろ収穫時と言っていた。絶対また買いにいく!
飛行で都心にきた。
ふむ。賑わっておる。
人混みにまぎれて隠密解除。
ケーキ店に魔導具店を眺めて、鉄板焼きのお店が目に入って思った。
そういや港が閉鎖されて、飲食店は魚介の仕入れをどうするんだろう。それに浜辺も全て閉鎖って、海中ハンターからも仕入れられなくなる。遊泳すら禁止になるわけでしょ。
「フィックスさんは規格外だからいいとしても……む?」
嫌な直感が働いて咄嗟に隠密発動。
そのまま歩くもまたビリっと皮膚にきた。
この場所にいるのが駄目なのかもしれない。
飛行で地面から離れる。
その直後、身なりの良い三人組が足早に通りかかって、私の真下で止まった。
「ビィセェス様、どうなされたのですか?」
「いや……」
一人は猫獣人に、もう一人は狐獣人に、残りは……狼獣人ビィセェス・リオ・バーダス王子じゃねぇか。アルレントに留学中じゃなかったの?
青銀の髪に灰色の目。
体格に恵まれた体つき。
もみあげの感じから毛深そう。
ゲーム通りの見た目だ。
そのビィセェスが、上を見た。
私と目は合わない。きょろきょろしてる。
風が強くなってきた。髪が空中に靡く。ビィセェスが深く息を吸い込んだのを見て、再び嫌な直感が働いて飛行で急上昇。
隠密は気配だけじゃない、匂いも消してくれるのに何で……あ、獣人は嗅覚が鋭いんだったな。洗浄!
なんかもうほんと嫌な予感がしてかなり上空までいってからフィックスさんの部屋に転移した。
ほわん。
到着した海王蛇の寝床。
安心感が凄いわ。
隠密を解除し、着ているものを全部収納してシーツに潜り込んだ。
「いい匂ぃ~……ぅ~……フィックスさん好きぃ」
「おかえりリリー」
「ほわっ」
後ろからシーツごと抱きしめられて頭ふにゃふにゃになってきた。
「あぁ~うぅ~」
「いい匂い……リリー」
「きゃ、ぁん」
首筋に吐息が吹きかかる。
後ろから両手で胸を揉まれて下半身がびしゃびしゃになってきた。
「今日も舌でする?」
「やぁッ……抱いてぇ」
「あまり煽らないで。昨日だって、我慢したんだから」
うぅ……私は我慢できなぃ。
耳を舐められながら乳首とクリトリスを擦られ、涎が沢山垂れてきた。
熱い……。
「あ、はぁ……ん、んっ」
ごろんと寝かされ仰向けにされる。
息を荒げながら両膝に手をやって、足を大きく開くと、目を細めたフィックスさんが覆い被さってきた。
「……もう。昨日から、ずっと誘惑してくるね」
両手で顔を包まれて、親指で口元を拭われる。
「……いやぁ? したく、なぃ?」
「……もう。リリー」
「私は、フィックスさんと、したい」
「リリー」
「フィックスさん……は?」
「したいよ。こんなにいい香りさせて……もう部屋から出さないよ……」
くふぅ♪
シャツの中に頭を突っ込んで、フィックスさんの胸にすりすりした。背中に腕をまわして、ちゅ、ちゅ、と胸に吸い付いて足を腰に絡めた。あぁ、フィックスさんの匂いに包まれて、頭くらくらしてきた。
「フィックスしゃ、ぁん……昨日、ごめんなさっ、ぃ……わがまま……たくさん言って、泣いて困らせて……」
「っ、」
「も、ぉ、言わにゃ……か、らぁ」
途端、フィックスさんが力が抜けたように落ちてきた。うっ、ぷ。雄っぱいに潰されるぅ。
「ふぃ、くふゅはぁん?」
「今……シャツの首元から、リリーの匂いが、すごく濃くなって……」
シャツの中から見上げると、わぁ、真ん丸お目々になって頬が上気してる。嬉しくてもっと胸元にすりすりした。足の指でシーツを摘まんで引っ張り二人とも被さった。こうするとフィックスさんの匂いをもっと堪能できる気がした。
シャツの上から掻き抱くように包まれた瞬間、中にフィックスさんの性器が挿ってきた。もう既にそこは大供水なのに、凄い圧迫感だった。
「ン、ぁああっ!」
太くて熱い杭を打ち込まれたみたい。
息を荒げながらしがみついた。シャツの中で呼吸困難みたいになって、足をバタつかせていたら一番奥に欲しいものが侵入してきた。
「ッア゛、アァー…………!」
「……おかしいね。昨日は……我慢できたの、に」
「ぁ、あっ……そこぉ」
「あぁ……一番奥が、凄く柔らかい……リリーが凄く締めてくるのに、ここは……柔らかく包んでくるから、無防備で、いとおしい」
「ん、んっ、はぁ……い、いのぉ……くれる、のぉ?」
「俺ので撫でまわしてあげる」
シャツを脱ぎ捨てたフィックスさんが深く口付けて舌を絡めてきた。後頭部を掴んで、隙間なく唇をぴったりと付けて……これ、フィックスさんが発情期のとき、私があまり大きい声を出さないようにする時の……あと、沢山深いところを撫でまわすとき、の……あぁア゛、ァ……目の前がまっ白……。
「くふぅ……」
気付いたら夜の9時で、あれから一度も抜くことなく挿れたまま一番奥にずっと注がれて、シーツもぐしゃぐしゃになって、ベットも足が三本折れてるその上で、フィックスさんの胸にすりすりした。私を抱きしめたまま放心してるフィックスさんが可愛い。
「……理性がとんじゃったね」
「くふぅ♪」
「悪い子……でも元気そうでよかった」
髪を撫で撫でされて、もうこのまま寝ようと足を絡ませた時、階下から何かが肌にビリっときた。
床は結界を張っている。
そこから嫌なものがビリビリくる。
なんだこれ……。
部屋全体を結界で包むとフィックスさんがごろんと寝返りを打って私の上に乗った。
「ん? 一階に動物がいるね……犬?」
てかなんか……外から……臭い。
部屋全体を洗浄しても消えない。
階下から獣臭が立ち上ってくるのだ。
結界を重ねるとマシにはなった。
誰かが騒ぐような声も聞こえてくる。
「お腹空いてる?」
「空いてますが……フィックスさんと離れたくないです」
「可愛い。残りの1本も折る?」
「……あ、後で、ね」
わぁー……改めて見るとベットが凄い状況。位置もずれてる。そういやガッ君の海賊船、モンスターオクトパスの軟骨で骨組みされてたけど、海王蛇の一撃にやられたんだもんな。
「……あ、そうだ」
あれがあったじゃないか。
錬金術でベットを元に戻して、鑑定。ふむ。
そして収納から出した液体金属魚を練り合わせる。これで折れるということは無くなった。鑑定すると耐久度が格段に上がり、柔軟性が追加されていた。
「へぇー……ふふ」
んもう、フィックスさんがとても嬉しそうにニタニタしてるんですけど。次はどうやって壊すか考えてそ……。
そこでガチャ!とドアノブがまわされた。
間違って上がってきた酔っ払いかなんかかな? 部屋の外で騒いでる気配がする。
この部屋全体に結界を20連ほど重ねているので開くわけないけど、フィックスさんの肩に抱き付いた。
「リリー?」
「……なんか私、落ち着きません」
ずっと結界をドンドンされてる。
鑑定しようとしたらフィックスさんがドアの方を見て──金色の眼の瞳孔を縦長にした。
一瞬見えた、海王蛇の眼。
ただそれだけなのに、横から見えたそれに心臓が止まるかと思った。
ハッと気付くと、この辺りには虫一匹いないのではと思うほどの静寂が部屋を包んでいた。結界も今ので全て割られたのに物音ひとつない。
「リリー? 落ち着いた?」
お、おう。
……直視せんでよかた。
私にあるはずないものが、きゅっと縮み上がった気がした。
起きたら昼を過ぎていた。
シーツにくるまれた体を起こすと、またベットに沈んだ。
うぅ……なにこれ。お腹が疼く。
腰が熱くてたまんない。
ふぅーと深呼吸をしていると、一階からフィックスさんが上がってくる、自然とそう感じてシーツから出た。
起き上がると、ドアを開けてフィックスさんが入ってきた。
「おはようリリー」
もう姿を見ただけで頭がふにゃふにゃになってきた。
「フィックスしゃ~ん」
両手を広げると、フィックスさんが私を抱き上げて膝に横向きに乗せた。
「どうしたの? とろんてしてる」
「ふふっ、フィックスしゃん」
首に腕をまわして頬や耳に吸い付く。姿を見たら触れたくてたまらなくなったのだ。それに匂いも。いつも嗅いでる匂いより濃い。
もう脳みそどろどろだ。
「幸せぇ」
「俺も。今日のリリーは甘えただね」
「いつもフィックスさんに甘えてるよぉ」
「ふふっ。今日はなに食べたい?」
「フィックスさんの料理ぃ」
「いいよ」
啄むようなキスのあと、押し倒されて何度も角度をかえて舌を絡めた。はぁ……美味しくて舌も唾液もたくさん吸った。でももっと……。
「体は辛くない?」
「へーき」
「じゃあご飯持ってくる」
「着替えたら一階におりるよぉ」
「わかった」
フィックスさんが離れていくのを、裸体のままベットで眺めていたら、また戻ってきた。嬉しくて足を擦り合わせてしまう。
「……もう。ご飯食べさせたいのに、そんな顔しないで」
「はぁい」
今度こそフィックスさんが部屋を出て、姿が見えなくなったらもう会いたくなった。わぁ、なにこれ、胸がきゅんきゅんする。
起き上がって全身を洗浄。
収納からアイドルメイクをしてくれる猫耳カチューシャを取り出してつける。そしてすぐ外して収納。
フィックスさんの発情期にわかったんだけど、これ1回つけると髪がゆるふわパーマになって、ナチュラルメイクもしてくれる。で、外した場合お風呂とか入っちゃうと維持はできないけど朝の身支度程度には役に立つ。
服はなに着よっかな~。
フィックスさんに可愛いって思われたいな。
でもやりすぎるとわざとらしいし。
白いフリルの半袖ブラウスと、太腿が見える紺色のキュロット。あと水色のベルト。ニーハイと厚底の革靴を履いて、十字架のペンダントもつけて出来上がり。
収納から姿見を出す。
うん、素朴だけど清潔感がある。
金髪のゆるふわパーマがいい味だしてる。
さ、ご飯♪ご飯♪
一階におりると騎士がいた。
なんか見たことある騎士服が10人……てかこの国に騎士なんていたか? あっ……そういやアルレントの騎士団が来るって漁師さん達が言ってたな。
「……おい可愛いじゃねぇか」
「ウェイトレスか?」
「こっちこいよ」
2、3人が私を見て立ち上がった。昼間っから酒飲んでる。騎士服なら勤務中では? よい御身分だな。
「は? 客ですけど?」
ポケットに手を入れて近くにいた従業員さんに片手一杯に掴んだ金貨を渡す。周りに見えるようにわざと派手な音も立てて。
「はい。いつものをお持ち致します」
あ、従業員さん空気読んだ。
またなにかお土産を貢ぎたくなる笑顔だ。
騎士達はバツが悪そうに席に戻っていった。
カウンターに座ると厨房から出てきたフィックスさんが私の隣に座った。
「またそんな可愛い格好して」
「くふぅ」
可愛いって言ってくれた!
腕に頬を寄せるとちゅっと髪にキスされた。くふぅ。幸せぇ。
「今日は船乗るの?」
「乗らなぁい。行商して、夕方帰ってくるぅ」
「……そのあとは?」
「部屋にいるぅ」
「わかった」
あ、従業員さんがプレートを運んできてくれた。
わぉ、ステーキランチだ!
チーズソースがかかった温野菜もきたぞ。更にトマトソースがたっぷりかかったチキンもきた。鉄板に焦げたソースやば。そのソースをパンで掬い取って食べると更にやばー。もう美味しくて目に涙が浮かんできた。
「おいちぃ……生き返るぅ~」
「あぁ……食べちゃいたい」
フィックスさんにステーキをあーんすると、ぱくりと食べて、口移しされた。
お、おう。心臓ばっくばく。
今更だけど人目を気にして振り向くと既に騎士の男達はいなかった。店内も空いている。ホッ。
「ごちそうさまです」
ふぅ。手を合わせてぺこり。
あー、日々暮らしに潤いが増していく。
「それ、今日の服でされると我慢できない」
「へ?」
「リリーいつも可愛いのに、凄く綺麗……」
「……っ、今日は早目に帰ります」
「嬉しい」
いったん厨房の奥に引っ込んで隠密で店を出ると数人の騎士が店内をちらちらと見ていた。
ここは港に近いからか、見渡した先にも騎士がちらほらいた。
今日はどこで売ろうか。
まだ日中だし都心のがいいかな。
飛行で建物を眺めながら進む。いい天気だ。
あ、公園みたいな広場に親子連れが結構集まってる。アイテムバックをたすき掛けして、地面に着地。
隠密を解除してしばらく歩くと以前試食した子供がいた。私に気付くと母親から何か受け取って一目散に駆け寄ってきた。
かわいい。
掌に乗せた銀貨を見せて『甘いお魚の下さい!』って言った。かわえぇ。
「パンはいらない?」
「いる!」
「これと、これ。どっちがいい?」
「ソーセージのやつー」
「はーい、毎度ありー」
かわえぇ。ついでに飴ちゃんあげた。
「あの、日中も売ってらっしゃるの?」
今の子のお母さんだ。
「はい。最近夜はパンの仕込みで忙しくて」
嘘である。
最近というかずっと夜から朝にかけて何かとアレなのでね。
「まぁ、そうなのね……それよりちょっと小耳に挟んだんだけど、あの白パン単体だけでも売ってらっしゃるとか?」
「あ、パンだけなら3本で銀貨1枚ですね。オマケも1個つきます」
「あの……今ね、ご近所さん達と軽食を持ち寄ってるんだけど、パンが足りないの。パンのみで悪いんだけど30本くらい売ってもらえるかしら?」
「いいですよっ」
むしろ御安い御用さ!
ちょっと立ち話して、その御近所さんが持ち寄ったというクッキーを頂いてしまった。
あ、このクッキーうま。
バターの香りがプンプンや。
次は農園に行こうかな。
「そこの君、パンを売ってるの?」
食べ歩きしてたら声をかけられた。
アルレントの騎士だ。私を取り囲むように5人。肌にビリっときた。こういう場合、冷やかしだろう。
「どんなパン? 見せてよ」
「先程の30本で売り切れました~」
「え」
ささっとかわして人混みにまぎれて隠密発動。
飛行で農園までバビュン!
一面に広がる農園を眺めながらてくてく歩く。
いやぁ~のどかだね。
自然の匂いに癒されるわ。
りんご園の前を通りかかった時、初老の夫妻がガーリック明太子パンをお買い上げしてくれたので私もりんごを買った。
もうそこらじゅうりんごの香りがプンプンでね。
歩きながら食べたかったのだよ。
「うま……甘っ……皮まで美味しい……おおっ、中身はピンク色のりんごだぁ」
やばいな。このモモリンという品種。もっと沢山買えばよかった。あの夫妻は品種別のもそろそろ収穫時と言っていた。絶対また買いにいく!
飛行で都心にきた。
ふむ。賑わっておる。
人混みにまぎれて隠密解除。
ケーキ店に魔導具店を眺めて、鉄板焼きのお店が目に入って思った。
そういや港が閉鎖されて、飲食店は魚介の仕入れをどうするんだろう。それに浜辺も全て閉鎖って、海中ハンターからも仕入れられなくなる。遊泳すら禁止になるわけでしょ。
「フィックスさんは規格外だからいいとしても……む?」
嫌な直感が働いて咄嗟に隠密発動。
そのまま歩くもまたビリっと皮膚にきた。
この場所にいるのが駄目なのかもしれない。
飛行で地面から離れる。
その直後、身なりの良い三人組が足早に通りかかって、私の真下で止まった。
「ビィセェス様、どうなされたのですか?」
「いや……」
一人は猫獣人に、もう一人は狐獣人に、残りは……狼獣人ビィセェス・リオ・バーダス王子じゃねぇか。アルレントに留学中じゃなかったの?
青銀の髪に灰色の目。
体格に恵まれた体つき。
もみあげの感じから毛深そう。
ゲーム通りの見た目だ。
そのビィセェスが、上を見た。
私と目は合わない。きょろきょろしてる。
風が強くなってきた。髪が空中に靡く。ビィセェスが深く息を吸い込んだのを見て、再び嫌な直感が働いて飛行で急上昇。
隠密は気配だけじゃない、匂いも消してくれるのに何で……あ、獣人は嗅覚が鋭いんだったな。洗浄!
なんかもうほんと嫌な予感がしてかなり上空までいってからフィックスさんの部屋に転移した。
ほわん。
到着した海王蛇の寝床。
安心感が凄いわ。
隠密を解除し、着ているものを全部収納してシーツに潜り込んだ。
「いい匂ぃ~……ぅ~……フィックスさん好きぃ」
「おかえりリリー」
「ほわっ」
後ろからシーツごと抱きしめられて頭ふにゃふにゃになってきた。
「あぁ~うぅ~」
「いい匂い……リリー」
「きゃ、ぁん」
首筋に吐息が吹きかかる。
後ろから両手で胸を揉まれて下半身がびしゃびしゃになってきた。
「今日も舌でする?」
「やぁッ……抱いてぇ」
「あまり煽らないで。昨日だって、我慢したんだから」
うぅ……私は我慢できなぃ。
耳を舐められながら乳首とクリトリスを擦られ、涎が沢山垂れてきた。
熱い……。
「あ、はぁ……ん、んっ」
ごろんと寝かされ仰向けにされる。
息を荒げながら両膝に手をやって、足を大きく開くと、目を細めたフィックスさんが覆い被さってきた。
「……もう。昨日から、ずっと誘惑してくるね」
両手で顔を包まれて、親指で口元を拭われる。
「……いやぁ? したく、なぃ?」
「……もう。リリー」
「私は、フィックスさんと、したい」
「リリー」
「フィックスさん……は?」
「したいよ。こんなにいい香りさせて……もう部屋から出さないよ……」
くふぅ♪
シャツの中に頭を突っ込んで、フィックスさんの胸にすりすりした。背中に腕をまわして、ちゅ、ちゅ、と胸に吸い付いて足を腰に絡めた。あぁ、フィックスさんの匂いに包まれて、頭くらくらしてきた。
「フィックスしゃ、ぁん……昨日、ごめんなさっ、ぃ……わがまま……たくさん言って、泣いて困らせて……」
「っ、」
「も、ぉ、言わにゃ……か、らぁ」
途端、フィックスさんが力が抜けたように落ちてきた。うっ、ぷ。雄っぱいに潰されるぅ。
「ふぃ、くふゅはぁん?」
「今……シャツの首元から、リリーの匂いが、すごく濃くなって……」
シャツの中から見上げると、わぁ、真ん丸お目々になって頬が上気してる。嬉しくてもっと胸元にすりすりした。足の指でシーツを摘まんで引っ張り二人とも被さった。こうするとフィックスさんの匂いをもっと堪能できる気がした。
シャツの上から掻き抱くように包まれた瞬間、中にフィックスさんの性器が挿ってきた。もう既にそこは大供水なのに、凄い圧迫感だった。
「ン、ぁああっ!」
太くて熱い杭を打ち込まれたみたい。
息を荒げながらしがみついた。シャツの中で呼吸困難みたいになって、足をバタつかせていたら一番奥に欲しいものが侵入してきた。
「ッア゛、アァー…………!」
「……おかしいね。昨日は……我慢できたの、に」
「ぁ、あっ……そこぉ」
「あぁ……一番奥が、凄く柔らかい……リリーが凄く締めてくるのに、ここは……柔らかく包んでくるから、無防備で、いとおしい」
「ん、んっ、はぁ……い、いのぉ……くれる、のぉ?」
「俺ので撫でまわしてあげる」
シャツを脱ぎ捨てたフィックスさんが深く口付けて舌を絡めてきた。後頭部を掴んで、隙間なく唇をぴったりと付けて……これ、フィックスさんが発情期のとき、私があまり大きい声を出さないようにする時の……あと、沢山深いところを撫でまわすとき、の……あぁア゛、ァ……目の前がまっ白……。
「くふぅ……」
気付いたら夜の9時で、あれから一度も抜くことなく挿れたまま一番奥にずっと注がれて、シーツもぐしゃぐしゃになって、ベットも足が三本折れてるその上で、フィックスさんの胸にすりすりした。私を抱きしめたまま放心してるフィックスさんが可愛い。
「……理性がとんじゃったね」
「くふぅ♪」
「悪い子……でも元気そうでよかった」
髪を撫で撫でされて、もうこのまま寝ようと足を絡ませた時、階下から何かが肌にビリっときた。
床は結界を張っている。
そこから嫌なものがビリビリくる。
なんだこれ……。
部屋全体を結界で包むとフィックスさんがごろんと寝返りを打って私の上に乗った。
「ん? 一階に動物がいるね……犬?」
てかなんか……外から……臭い。
部屋全体を洗浄しても消えない。
階下から獣臭が立ち上ってくるのだ。
結界を重ねるとマシにはなった。
誰かが騒ぐような声も聞こえてくる。
「お腹空いてる?」
「空いてますが……フィックスさんと離れたくないです」
「可愛い。残りの1本も折る?」
「……あ、後で、ね」
わぁー……改めて見るとベットが凄い状況。位置もずれてる。そういやガッ君の海賊船、モンスターオクトパスの軟骨で骨組みされてたけど、海王蛇の一撃にやられたんだもんな。
「……あ、そうだ」
あれがあったじゃないか。
錬金術でベットを元に戻して、鑑定。ふむ。
そして収納から出した液体金属魚を練り合わせる。これで折れるということは無くなった。鑑定すると耐久度が格段に上がり、柔軟性が追加されていた。
「へぇー……ふふ」
んもう、フィックスさんがとても嬉しそうにニタニタしてるんですけど。次はどうやって壊すか考えてそ……。
そこでガチャ!とドアノブがまわされた。
間違って上がってきた酔っ払いかなんかかな? 部屋の外で騒いでる気配がする。
この部屋全体に結界を20連ほど重ねているので開くわけないけど、フィックスさんの肩に抱き付いた。
「リリー?」
「……なんか私、落ち着きません」
ずっと結界をドンドンされてる。
鑑定しようとしたらフィックスさんがドアの方を見て──金色の眼の瞳孔を縦長にした。
一瞬見えた、海王蛇の眼。
ただそれだけなのに、横から見えたそれに心臓が止まるかと思った。
ハッと気付くと、この辺りには虫一匹いないのではと思うほどの静寂が部屋を包んでいた。結界も今ので全て割られたのに物音ひとつない。
「リリー? 落ち着いた?」
お、おう。
……直視せんでよかた。
私にあるはずないものが、きゅっと縮み上がった気がした。
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