グランピングランタン

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第十六章

文化祭

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退院した龍は、大事を取って2、3日学校を休んだ。バイトも休むハメになり、田口が龍の変わりに出勤してくれた。

『ピンポーン』

「はい…。」

龍がドアを開けるとそこには担任の中澤先生が居た。

「こんにちは木村君。」
「先生…。ど、どーぞ。」
「いえいえ、ここで大丈夫です。それから体調はどうですか?」

玄関先で中澤先生から最近の学校での出来事や、窪田のことを聞いた龍。

「来週には学校に行きます。」

警察沙汰になってしまったので先生がわざわざ家まで来てくれたようだ。龍の顔を見て安心したのか、来週学校で待ってます。との言葉をかけ家を後にした。

「家にいるのも暇だなぁ…。」

部屋に戻り携帯を触っていたら着信が来る。

「はい?」
「おい木村。体調はどうだ?学校来れるのか?」
「病気じゃねーんだから。」
「木村くーん!大丈夫?」

田口の電話に君島の声も聞こえる。

「相変わらず一緒にいるんだな。」
「バイト先近いんだから一緒に行くんだよ!それより早く学校出てこいよ!」
「あぁ。来週、学校行くから。」

そう言って田口の電話は切れた。

『ピンポーン』
〔またかよ…。〕

「はい。」

ドアを開けると加奈子がいた。

「なんだよ。バイトは?」
「あの…。大丈夫かなって…。」
「はぁ?大丈夫だって。死ぬわけじゃないんだから。」
「だって…。あれから学校来ないし…。」
「大事を取って休めって言われてるからさ。まぁ来週には行くよ。」
「本当…?」
「あぁ…。」
「……。」
「……。」

沈黙が重い。

「上がるか?たまには?」
「え?」
「久々だろ?部屋上がってろよ。」

そういうと龍は台所へ。加奈子は慣れた感じで龍の部屋へ行く。

〔相変わらず変わんないなぁ。この部屋…。〕

昔はよく来ていた龍の部屋。一緒によくおままごとをしたり、○○ごっこもよくしていた。数年ぶりの部屋を懐かしく見渡していた。

「あんまりジロジロ見るんじゃねーよ。」

龍は、冷蔵庫に入っていたお茶のペットボトルを2本持ってきて、1本は加奈子に渡した。

「なんか懐かしいなって。」
「本人が大きくなったぐらいでなんも変わんないよ。」
「龍…。この前はありがとう。」
「なんだよ改まって。」
「だって、あの時以来会ってないもん。」
「仕方ねーじゃん。」
「心配症なんだよお前は。」

そんな話をしながら、部屋に飾ってある龍の小さい頃の写真などを見て盛り上がっていた。

「ねぇ龍。」
「ん?」
「初恋って…いつなの?」
「幼稚園の時だよ。」
「私も…幼稚園。」

2人が目を合わせる。ちょっと照れ臭そうにしている中ー

『ただいまー!』

龍のお母さんがパートから帰ってきた。

〔やべ!…。やばくは…ないか。〕

龍が玄関まで出て行く。

「お、お帰り。」
「あれ?誰か来てるの?」
「いや~。」

加奈子が部屋から出てくる。

「龍のお母さんこんにちは。」
「あら加奈子ちゃん来てたの。お邪魔だったかしら?」
「い、いえ!私帰りますので!」
「そうなの?いつでもおいでね。」
「はい!失礼します。龍!また来週ね。」
「おう。」

加奈子に手を振る龍のお母さん。振り返り龍を見る。

「あんた。変なことしてないでしょうね?」
「してねーよ!!」

ー次の週。

「おはよう。」

龍が学校へ登校し、教室に入る。

「お!きたきた!殴られた男が来たよ!」

田口が茶化す。

「はいはい。座って座ってー。」

担任の中澤先生も入ってくる。

「えー。窪田君のことは皆さんご存知の通りー。」

龍のことには触れず、窪田の事だけを話す先生。みんなも静かに聞いていた。

あれから周りが窪田のことを話していた。実は中学の時からあまり評判は良くはなかった。素行が悪くて有名だったらしい。

ー昼休み。
購買近くのテーブルに座っている田口と龍。

「散々だったな木村。」
「あ?あぁ…。なんか変な感じだよな。」
「お前は高梨を守ったんだろ?」
「守ったというか…。」
「ったく心配かけやがって。救急車で運ばれたなんて聞いたから心配したんだぞ!」
「ごめん。」

そこに加奈子と君島がやってくる。

「文化祭って他校も来るってよ。」
「えーそうなのか。」
「室内での文化祭には他校は出入り禁止だけど、外でやってる模擬店とかには他校参加しても大丈夫だってさ。」
「こんだけ人がいるんだから、誰がどうのこうのってわかんないだろうな。」
「今週木曜と金曜だっけ?」
「そうそう。」

加奈子と君島は黙って話を聞いていた。そんな中珍しく龍が。

「よっしゃ。4人で文化祭、回ってみますか?」
「おぉ!いいねぇ!木村、たまにはいいこと言うじゃねーか!」
「お2人さんどうですか?」
「賛成ー!」

ー文化祭当時。

担任の中澤先生からいろんな注意を聞く。それを聞いた後で解散。午後15時には一旦全員教室に戻るということ。そこでホームルームが行われ終了となる。

「木村ぁ!行こうぜ!」
「あの2人は?」
「中庭集合にしてる。とりあえず中庭に行こうぜ!」
「わかった。」

昼になると他校からの生徒も増えてきた。この時期、どこの高校でも文化祭が行われている。

「いろんな奴がいるな。」
「誰が誰だか全くわからん。」
「おーい!おーい!田口、木村!」

そこに現れたのは中学で同級生の甲斐田が居た。

「甲斐田!久しぶり!何してんだよ?」
「何してるって、うちの高校も文化祭だから抜けて会いにきたんだよ。いろんな高校生来てるから大丈夫でしょ。」
「1人で来たのか?」
「いや…。」

甲斐田の後ろには山下が居た。

「2人で来たんだ。」
「そうなんだ。まぁ楽しんでくれよ!」

龍、田口、甲斐田、山下は少し喋って解散した。
龍と田口は加奈子と君島を探している。

「あれ…?どこにいったんだあいつら。中庭に集合って言ったのに…。」
「田口。おい、あれ見ろよ。」

設置されているイートインのテーブルに加奈子と君島がいた。

「え…?誰だ?」

しかし、座ってる2人の向かい側に男2人が座っていて楽しそうに喋っていた。
男2人が離れると田口が走ってテーブルに向かい、勢いよく座る。

「さ、さっきの誰だよ?」
「びっくりしたー!」

龍もテーブルに座る。

「なんか声かけられて連絡先聞かれたの。」
「ナンパか?」
「そうそう。ナンパみたい。」

笑いながら龍は2人に話す。

「君ら2人はほんとモテますね。田口が血相を変えて走って行ったよ。」
「加奈子に連絡先聞いてたのよ。」
「はぁ!?」

語気を強める龍。

「えへへ。でも、連絡先は教えてないよ。」
「そ、そうか…。」

安堵した龍。それを見てすかさず茶化す田口。

「なんで安心してんの?まだ付き合ってないでしょ?取られちゃっていいの?」
「取られるも何も…」
「木村君。もう素直になっちゃいなよ。」
「え?」

『木村せんぱーーーい!!』

遠くから龍を呼ぶ声。振り向くとー

「うわぁ!?」

龍に飛びついてきたのはなんと岩本。

「めっちゃ会いたかったですよー!」
「ちょちょちょっと待て!なんでお前がいるんだよ!?学校は!?」
「今、中間テストなんで午前で終わって来ちゃいました。」
「来ちゃいました。じゃねーよ!中学生が来たらダメだろ!」
「こうでもしないと木村先輩会ってくれないんですもん。」

1つ下の学年の岩本。龍に会いたくて高校の文化祭に遊びに来たようだ。

『こらー!中学生は帰りなさーい!』

遠くから先生が岩本を見つけ向かってくる。

「げ!先輩!私はまだ諦めてませんからね!」

そういうと岩本は走って逃げていった。

「ったく…。なんなんだよあいつは…」
「龍の方こそモテるんじゃない?」

少しムッとした表情で話す加奈子。

「飛鳥ちゃんずっと龍のこと好きだよね?そろそろ付き合ってあげたら?」
「なんなんだよ急に…。」
「私しーらない。行こう綾子。」

加奈子に引っ張られ、加奈子と君島は離れて行った。

「あーあ。怒らせちゃった。」
「なんなんだよどいつもこいつも…。」
「今日、謝っとけよ?」
「謝るも何も俺が悪いんじゃないだろ。」
「雰囲気悪い感じで仕事してもらったら困るんだよ。」
「なんだよそれ?バイトなんか関係ないじゃん。」

後味が悪い感じで文化祭も終わって行った。

ー放課後。

「木村バイト行こうぜ。」
「おう。」

龍と田口はバイト先へ。
2人がバイト先へ着くと賑やかな声がしていた。

〔今日はやたら賑やかだな。〕

「さて、全員集まったので紹介します。」

店長が話し始める。

「どうぞ。」
「!?!?」

龍が驚いた顔を見せる。

「えー、今日から働いてもらう高梨さんと君島さんです。」
『よろしくお願いします。』

なんと、龍・田口のバイト先に加奈子と君島が新しくバイト生として加わったのだ。


続く。
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