グランピングランタン

あお

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第二十三章

思い、思われ。

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抱きしめられたまま動けない龍。

「ちょ、ちょっと飛鳥ちゃん!」

離れようとしない岩本。

「………!!」

龍の背中まで手を伸ばし、ぎゅっと制服を力強く握る。
それを遠くで見ている加奈子と君島。

「……龍。」

なんとも言えない気持ちになった加奈子は、振り切るようにその場を後にした。

「ちょっと!加奈子!」

慌てて加奈子について行く君島。最後にもう一度、龍の方向を向きその場を後にした。

「わ、わかったから!とりあえず離せよ!」
「何がわかったんですか?」
「飛鳥ちゃんの気持ちはわかったからぁ!」

岩本の両肩を持ち強く引き離す。

「はぁ…はぁ…。ったく。びっくりするだろ!」
「私、先輩のこと好きですもん。」
「それはよく伝わったから!」
「じゃ、デートしませんか?」
「え?」
「今度、デートしましょ。」
「わ、わかったよ…。」

押しに弱い龍。

「今度の日曜日ですよ!絶対約束ですからね!」

岩本はニコッと笑い、その場を後にした。

〔ったく…。なんなんだほんと。台風みたいだな全く。〕

制服をパンパンと叩き、教室へ戻る龍。教室の窓からその一部始終を田口が見ていた。

「はぁ…。話しにくいなぁ…木村よ。どうすんだよお前…。」

ー数日後、バイト先にて。

「おーい。木村。」
「店長。なんですか?」
「田口から話し聞いてるか?」
「話し?いや…全く。バイトのことですか?」
「いや、違う。夏にキャンプ行かないかって話だ。」
「キャンプ?」
「あのなー」

店長の知り合いにキャンプ場を経営している人がいる。しかし、思いの外客足が伸びず店長に話が来たそうだ。

「はぁ…それで俺らが行って来いって事ですか?」
「そうそう。知り合いってことで安くしてくれるらしいからな。キャンプなんてしたことないだろ?」
「ないですね。」
「うちの店にも新しいバイト生が入ってきたことだし、お前らばっかり働かせるより新しい連中も使っていきたいからな。」
「えぇ…俺はバイトしてたいんすけど…。」
「田口と、君島や高梨は乗り気だったぞ?」
「!?!?」

ドキッとした表情を見せる龍。

「あそこのキャンプ場は広いからな。お前ら4人じゃもったいないから友達誘って行ってこい!」

バシっと龍の背中を叩いて笑いながらホールに戻る店長。

〔いてて…。キャンプ…かぁ…。〕

「え?行かないの?」

振り向くと、君島がいた。

「え?いやいきなりそんな話をされてもまだ先の話じゃん?」
「予約してあるみたいだから、日にちは決まってるみたいよ。」
「そうなんだね…。」
「…全く!加奈子といい木村君といい!」

声を荒げる君島。

「な、なんだよ…」
「2人が別れてから仕事もやりにくいし、あなたちゃんとしてよ!」
「いや俺はいつも通りにしてー」
「そんなわけないでしょ!?このキャンプの話も2人が仲良くなるために、って店長が話してくれたのよ!」
「………。」
「あれから加奈子とも連絡取らずで、しゃべってもいないんでしょ?」
「ま、まぁね。」
「あんたそれでいいの?」
「はぁ?それでってあいつから別れ話されたんだから、どうにもならんだろ。」
「それで、他の女の子に手を出したの?岩本さんだっけ?」
「手なんて出してねーよ。」
「じゃぁ!なんで女の子が木村君に抱きついてたのよ!」
「み、見てたのか!?!?」
「偶然通りかかったのよ。加奈子と一緒に!」
「じゃ、じゃぁ高梨も見てたのかよ!?」
「バッチリね!」

口に手を当て、やばい!と目を丸くする龍。

「ん?別に問題はないだろ?」
「問題はないけど…。木村くんはもう加奈子のこと好きじゃないの?」
「…あのさー」

あれからどうしたらいいかわからなかった龍。昔みたいに友達になりたいのか、それともー。

「……2人とも似たもの同士だね。」

はぁーっとため息をつく君島。

「そういうところじゃない?」
「え?」
「ハッキリさせなよ自分の気持ち。友達に戻りたいのか。彼女にしたいのか。」
「あいつ好きな人いるって言ってたからさ、それでなかなかー」
「関係なくない?」

ドキッとする龍。

「付き合ってるわけじゃないし、好きな人がいても振り向かせるような努力しないの?」
「それは…。」
「しっかりしてよね!」
「おーい!君島!ちょっとこっち手伝ってくれ!」

店長が君島を呼ぶ。

「はーい!…とにかく。しっかりしなさいよ。自分の気持ちどうしたいのか。答え出してハッキリさせなさいよ!」

バシっと龍の背中を叩く君島。

〔いてぇ…。最近よく背中叩かれるな…。ハッキリか…。俺は高梨のこと…どうしたいんだろ。〕


ー日曜日。

〔待ち合わせ場所はあそこか…。〕

携帯を開き岩本からのメールを開く。

『先輩!今度の日曜日朝11時に駅前集合です!絶対来てくださいよ!』

強制的に約束を交わした龍。岩本の言われた通り、指定された場所に向かった。

「せんぱーい!」

手を振る岩本。

「ちゃんと来てくれたんですね!」
「約束したしね…。」
「じゃ、行きましょ!」

龍の腕を掴み引っ張る岩本。

〔っていうか、どこに行くんだよ!〕

引っ張られ、電車に乗り隣町のデパートに着いた。

「…で、何すんの?」
「私、服買いたい!」
「ふ、ふく!?」

デパートに入り、岩本の後を着いて行く。洋服屋に入り、あーだこーだと龍に話をしながら、どれが似合う?なんていう会話も聞こえてきた。龍も少し乗り気になり、これがいいんじゃないか。なんて服を手に取り岩本に見せていた。

ー数時間後。

「あー!楽しかった!」
「あれだけ見たのにその1着しか買わなかったんだね。」
「えへへ。先輩とこうやってデートしてみたかったんだ。」
「そうなんだね。」

デパート内のカフェへと2人は入った。

「先輩は楽しかったですか?」
「うん。思いの外楽しかったよ。」
「……。」

うつむく岩本。

「どうしたの?」
「先輩。加奈子さんのことはいいんですか?」
「え!?」
「私は、今日デートしてわかりました!」
「何が?」
「先輩やっぱりずーっと他の人のこと考えてた!」
「そ、そんなことないよ。」
「私、昔から先輩のこと知ってるからわかるんです。」

黙って聞いている龍。

「加奈子さんのことでしょ?」
「ん……。まぁそうだね。」
「はぁ…。」
「ご、ごめんね。」

必死に謝る龍。

「ぷ…ぷぷぷ…!!!あははは!!」

笑い出す岩本。それにびっくりする龍。

「え?あ……え?」
「真面目なんだから先輩!」
「え?あ、え、なに?」
「私、知ってますよ今でも加奈子さんのことが好きなの。」
「そ、そうかい?」
「だから、ちゃんと心に決着付けてきてください。」
「え?」
「中途半端な先輩、好きじゃないです。」
「ははは…。」
「じゃ!先輩また私とデートして下さいね!」

そういうとカフェから出て帰って行った。

〔決着か…。〕

ー夜。

土下座をしている龍。

「はぁ!?!?!」
「頼む!教えて下さい!!」
「お前!もう一回言ってみろ!?!?」
「だから、馴れ初めを教えてください!!父さん、母さん!!!!」

両親に土下座をし、夫婦の馴れ初めを聞こうとした龍。

「お前、頭でも打ったのか!?」
「違う…!!そうじゃなくてー」

加奈子との話を恥じながら話して行った。

「ふーん。で、俺と母さんの馴れ初めってか?」
「あははは。私とお父さんの?」
「少しでも勉強しようと。」
「あれだな。母さんが俺に惚れてたんだよ!!ガハハ!!」
「ふふふ。あのね。お父さんが私を奪ったのよ。」

顔を真っ赤にする龍のお父さん。

「か、母さん…そこまでにしー」
「私には彼氏がいたの。でもね、しつこいぐらい私にアプローチしてきたの。それで折れたのよ。」
「へぇ~。父さんがね。」

チラッとお父さんの顔を見ると知らんぷりしてテレビを見ていた。

「龍。付き合うことばかりじゃないわよ?」
「は?」
「付き合うことがゴールじゃないわよ。」
「!?」
「付き合っても辛いし寂しいし、楽しいことばかりじゃないわよ。スタート地点はいろいろあるけど、あなたが大切な人だと思ったらちゃんと見なさい。その人を。ね?お父さん。」
「龍。」
「なに?」
「加奈子ちゃんだからそんなに悩むんだろ?それだけ、好きなんだよ。その人のことを考えて、楽しいとか寂しいとか思ったらもう好きなんだよ。よし!風呂入る!!」
「へ、へーい。」
「ちゃんと考えなさい。それと女の子は大切にしなさーい。ね?私も片付けするから。この話は聞かなかったことにするわね。」
「……。」

部屋に戻る龍。

〔そうか…。そうだったんだ。〕

何かを感じた龍。モヤモヤが少しとれたようだ。


ーその頃加奈子はバイト先から帰っていた。家に帰りつき携帯を開いてメールの文章を打つ。


『キャンプの話聞いた?私は行くけどー』

続きが書けなかった。龍にメールを送ろうとしても文章がなかなか思い浮かばず、気を遣ってる感じで送ることができなかった。

〔……。なんでこんな考えてるんだろ…。〕

はぁーっとため息をつき、そっと携帯を閉じる。今日も龍へメールを送ることができなかった。その時ー。

『ブー。ブー。』

携帯が鳴った。

〔誰だろ?〕

開くと一件のメール。

『なぁ加奈子。キャンプの話聞いた?俺行くけど、行く?』

メールに驚いたがすぐに笑顔になる加奈子。

『行くよ。夏でしょ?楽しみだね!』

そこから龍と加奈子のメールのやりとりは朝方まで続いた。


続く。
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