闇堕ち聖女の軌跡

柴田 沙夢

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それから、先ずはこの世界のことについて知る事から始めた。
よくあるRPGみたいな世界観で。

人族の国は、四国を大きくしたような形の島の中に、十の国に分かれていて。
人族の他に、亜人族と呼ばれるエルフやドワーフという種族がいるみたい。

人族側と同じような形の島がもう一つ、対になるようにあり、その島全体が魔族の国《マジェスト》。
魔族と言っても、獣人族、龍人族、屍人族、妖魔族とあるらしく、色々な人種が入り乱れているらしい。
そして、先程の四族はそれぞれに統治領があるとか。
でも、詳しい事はわからなかった。


貨幣価値は、日本よりは少し安いのかな?
銭貨が10円、棒銭貨50円みたいな感じで。
銅貨、棒銅貨、銀貨、棒銀貨、金貨、棒金貨、白金貨となるみたい。

宿代素泊まりで棒銅貨一枚が適当。

衛生環境は、明治くらいの日本だろうか。水洗トイレはなくて。
お風呂も庶民家庭にはない。お貴族様のもの。
庶民は水やらお湯で体拭くくらい。

食べ物の名前は大体同じだった。
ただ、洋食メイン、といった感じ。和食モノがない。米、味噌、醤油・・・和の味になるモノがない。
無いとなると恋しくなるのは必然。



『おねぇちゃんの混ぜご飯大好き!』

『桜は、お母さんより料理上手ね。お母さん、サンマの煮付けこんな味にできないわ。お婆ちゃんの懐かしい味で美味しい。ありがとう。』

『桜の作る出汁巻き卵、スゲェうめぇっ。めっちゃ、勝てる気がする。』



白米が苦手な弟と妹の為に、お母さん側のお婆ちゃんに習った混ぜご飯は、2人とも良く食べてくれて。
お母さんは、お婆ちゃんのサンマの煮付けが大好きだから教えてもらって作ったら、とっても喜んでくれて。
空手の大会の差し入れで持っていたお弁当を食べた時の、嬉しそうに笑ってくれた琥太郎くんの顔がよぎって。
早く帰りたい思いが募った。

私がこの世界の事を深く知ろうとする事を、城の人達はあまり良しとしない雰囲気を感じたので、大体の生活体系を理解するくらいに止め、大っぴらには調べないことにした。

城の人達は、とにかく聖魔法の習得に、としつこくて。
目に見える所では、聖魔法の発動練習をする様にした。

城にある図書室で、聖魔法の本を集めがてら、この国やこの世界の歴史の本も紛れ込ませ、自室に持ち帰り必死で読んだ。
・・・テスト勉強なんか目じゃないくらいに。
でも、不思議なくらいに頭の中に入っていく感じがした。一回読んだだけなのに、理解できちゃうっていう感覚。
分からないけど・・・これは【加護】とか、そういうモノのせいかもしれない。

でも、図書室の本を全部読み漁るだけ読んでも、帰還方法については、何も書かれていなくて。
『聖女は幸せに暮らしました』みたいな物語しかなくて・・・
やっぱり、あちらには帰れないのかも、という思いと、
意図的に隠されているのかもしれない、という思いがせめぎあって。

夜は、家族のことを、琥太郎くんの事を思いだしてしまって、涙が止まらなかった。



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