闇堕ち聖女の軌跡

柴田 沙夢

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次の日の朝、吹っ切れた私は、普段通りに過ごす。
3人も変わらず。
ただ、剣士だけは、一見しても分からないけど、オロオロとしている雰囲気があった。

私に話しかけようとするのを、ことごとく無視する。
今更感満載だし。
もう、私がする事は変わらない。


そして、魔王城ーーー


私たちは本丸へと乗り込んだ。
でも、城の中はあまりにも静かで、不自然すぎた。

拳闘士も女魔法使いも楽観視しすぎで、「自分達が強いから逃げたんだ」とか言っている。
剣士は最初から警戒。
流石に勇者も警戒している。2人みたいに、そこまで馬鹿ではなかったみたいだ。

城の中をどんどん進む。
本当に、魔族に出くわさない。
城の奥に行き着き、豪華な作りの大きな扉を開けると、そこは闘技場のようになっていた。

謁見の間、とかじゃなくて、だだっ広い闘技場。

その奥に大きな玉座。
そして、長い足を組み、豪華な肘掛けに片肘をついて頬杖にしている大きな人の影。

鬼のようなツノに、銀色の長い髪。
勇者である王子なんか目じゃないイケメンさんだ。
夕焼けのような紅い瞳が、馬鹿にしたように眇められている。



「やっと来たか、勇者とやら。」



威圧感も半端なく。
獣王よりも、もっと力が強いのがよくわかった。



「あぁ、今こそ民のため、お前を倒させてもらう!!」

「ほぉ、出来るというのか。見る限り、過去類を見ない程に、勇者パーティーだがな。」



そう言って、魔王はカラカラと笑う。
挑発に簡単に乗る拳闘士が、イライラしながら叫んだ。



「ウルセェ!軟弱だと!?俺らはお前の側近の獣王を倒した!」

「だから何だ。強いとでも言うのか?」

「そうよ!それにこの城には他の魔族は居ないじゃない!皆恐れをなして逃げたんでしょ?アナタだけが取り残されるなんて、可愛そう。王様だから、責任取れって残されたちゃったぁ?人望ないのねっ。」



魔王の言葉に、女魔法使いが馬鹿にしたように被せる。
本当に、他人を見下す言動が得意だ。
ここまで来ると、感心すらしてしまう。

すると、一瞬の間の後、魔王は大笑いした。
それはそれは、見ていて気持ち良いほどの大爆笑。



「あはははは。何とも妄想が逞しいなぁ。力量差を感じ取れない矮小な存在は、これ程まで、妄想で目の前の相手を卑下出来るものなのか。
安心せぃ。城の者達が居らぬのは、彼奴らにお前達を始末、暇を出しただけよ。
・・・聖女が居らねばまともに戦えぬクセに、自分達の力だと勘違いしておるようだからな。聖女の力が万全な状態で、我に挑戦させてやろうと思っただけの、ただの戯れだ。気にするな。」



くくく、とまだ笑いが止まらない様子で口元を押さえる魔王。



「ふざけるな!!」

「馬鹿にしやがって!!」

「私達が弱いですってぇ!?」



勇者も拳闘士も女魔法使いも臨戦態勢に入る。
剣士は何も言わずに、私の前に立った。
私はすぐにパーティー全体に『強化』や『防御』の魔法をかけていく。

魔王は私達の様子をを興味深そうに眺めている。
ふと、顔を上げた瞬間、魔王と目が合った。
魔王はニヤリと口角を上げ、鷹揚に口を開いた。



「さぁ、雑魚レベルの勇者パーティーが、聖女の技でどれ程使い物になる物か。その力を見せてみよ!!」



その言葉は、明らかに私の存在を認める物。
敵であるラスボスの言葉なのに、とても嬉しかった。



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