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しおりを挟むそれからというもの。
私はすぐに魔族の国《マジェスト》で保護され、獣王領のお屋敷で客人扱いとなった。
魔王様と獣王様・・・ティグレさんと話している最中、ふと、気になった事を尋ねてみた。
魔王様との戦いで、ワザと魔王様が拮抗したように見せかけ戦っていたのは何故だったのか。
魔王様の強さからなら、本気出さなくても、消し飛ばせる状態だっただろうから。
それに『賭け』って言っていたのは・・・
すると魔王様は、『聖女が勇者パーティーを裏切るのでは無いか、という事は、獣王から進言されていたのだ』と答えられた。
ティグレさんは、冒険者視点で見た、勇者パーティーでの私の虐げられていた状態と、獣王として戦った後、私が投げかけた質問の様子から推察したのだそう。
そして、魔王様に進言して、それに魔王様が悪ノリしちゃったんだそう。
裏切らなかったらどうなったのかって焦って聞いたら、
『その時は、俺が屍人王に殺されて、魔王様復活の贄になってた』
と、ティグレさんにあっけらかんと言われて、信じられなかった。
何でそんなこと信じたのか聞いたら。
『頑張ってる聖女サマを応援するって、言っただろ?』
って、頭ナデナデされながら満面の笑みで答えられて、泣きそうになった。
魔王・・・龍人族出身のドゥーマ様からは、人族の各国の王宛に、今回の一件について通達という形で顛末が知らされた。
『一人の聖女の献身により、魔族は今の国境から、人族の国には侵攻する事はない』と。
そのなかで、《ルークサンドラ》により望まぬ召喚を受けた聖女が、必要な知識も与えられず、まるで奴隷のように討伐パーティーに虐げられていたこと。
出向く先々で、女性陣に馬鹿にされていたこと等をあげつらい、『祖国から切り離し、拉致をしたも同然の聖女に対する人族の所業は、後世に語り継ぐべき愚かな物語だ』と示した。
自らが元の世界に帰還できるのかもわからない。
周囲に味方もおらず虐げられ、明日に希望をも持てない。
そんな状況にも関わらず、聖女はその身をもって、魔王の、そして魔族の怒りを鎮めたと。
その献身をもって、魔王は聖女の願いを叶える、とした。
そして今後は、人族と友好的に関わりたいことを大々的に伝えつつも。
これから先、召喚などと言う愚かな方法で、聖女等を異世界から呼んだことが分かった場合には、魔族の総力を持って、その召喚を行った人族の国を滅ぼすと宣言された。
その後、元々の友好国からは、歓迎の言葉や、召喚魔法についての情報があれば提供する旨の返答があったそう。
でも、渦中の《ルークサンドラ》からは、無反応だったと。
そう伝えられた。
*
ティグレさんは、屋敷についてから私が不自由ないように、と、色々手配してくれた。
中でも妖魔王のアイリーン様が楽しげにやって来て、色々と服を用意してくれたのだけど・・・そんなドレス着るんだろうか?ってのもあったりして。
下着は助かったけど、なんか、そんな、ちょっと大人なヤツはまだ早いと思う・・・
因みに、アイリーン様のキャラは、体格の良いオネエ様な感じでした。
徹夜続きで顔色が悪いのかな?って思ってしまう屍人王グラハム様からは、魔族の蔵書を貸してもらえた。
それでも、召喚魔法の文献は中々見当たらず。見つかったらすぐ教えてもらう事にした。
そして、魔法の事も基礎から教えてもらって、すごく勉強になった。
屍人族が得意とする魔法に『腐敗』が有るんだけど。
私の『回復』と併せて使ったら『発酵促進』になるみたいで。
おかげで、堆肥造りが進んだ。
《マジェスト》は土地が痩せて、あまり作物が育たない環境だったのだけれど、これによって、土壌改良に繋がったみたい。
豆類・・・大豆が豊作になりそうで。
『発酵促進』を使えば、醤油や味噌、作れないかなぁ?とちょっと期待。
燃えるような紅い髪に、端正なお顔立ちだけど強面な龍王のアーガイル様は、実の所、人化してアイザックというお名前で、ティグレさんと冒険者やってた・・・上位冒険者パーティー《グランブルー》の盾役さんだった。若干俺様気質だけど、面倒見が良い兄貴な感じ。
もう1人のパーティーメンバーの魔法使いさん、線の細い銀髪眼鏡男子シロエさんは、人族の方だったけど。あの2人と対等に渡り合う訳だから、とってもお強い方だった・・・と思ったら、《マジェスト》と交流のあった《ライトリクス》国の第四王子様でした。
『王太子である第一王子は人格者だし、僕は魔法バカだから、継承権は放棄してるんだ。コッチの生活の方が楽しいしねぇ。』って笑顔で話していたけど・・・ぶっちゃけちょっと、腹黒い気がした。何だろ、お兄さんを支える為に暗躍してるのかなぁ?って。
まぁ、いろんな意味で頼もしい方なんだな、と思った。
私も《グランブルー》のメンバーとして、クエストに連れて行ってもらって、魔族の国、人族の国関係なく、魔獣討伐を行って。
冒険者としての戦い方や連携の取り方、サバイバルの知識、色々教えてもらって楽しかった。
《グランブルー》は、とっても顔が広かったみたいで、交流のある人族の国々やギルドの関係者に声をかけてくれて。
草の根を分けてまで、召喚魔法についての情報を集めてくれることになった。
また、行く先々のギルドで、回復や支援についての講義も頼まれたりした。
地龍退治の時の回復役さんが、私の事を話してくれていたそうで、色んな人が集まってくれた。
とは言え、清潔や消毒の基礎知識だけだけど。
それでも、回復役のいないパーティー等で使える知識だから、みんな真剣に話を聞いてくれた。
私の話をきちんと聞いてくれる人がいる、役立ててくれる人がいることが、とっても嬉しかった。
ようやく、『私』という人間が、この世界に認められて、生きていて良かったんだ、って。
そう思えて嬉しかった。
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