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謁見の間で《ルークサンドラ》国の使者を受け入れたのち、別の部屋で話し合いが行われる。
私は、その部屋での話し合いから参加するように言われている。
謁見の間に同席しないのは、私自身の立場の問題。
謁見の間に立ち会ってしまうと、魔族の国《マジェスト》に属した者としての認識となるのだそう。
私は保護されている立場。色々と横槍が入っても面倒くさいので、そのようになっている。
《ライトリクス》出身のシロエさんも、第四王子の立場がある。
アソコにいると内政干渉になるからと同席せず、裏で一緒にいてくれて心強かった。
*
広々とした会議室。
魔王様、四天王様達、シロエさんに私。
あとは護衛の人が等間隔に配置。
私は、ティグレさんとシロエさんに挟まれるようにして、その場にいた。
向かいに座るのは、《ルークサンドラ》国の視察団。
国王となった剣士はいなかったから、少しホッとはした。
*
朗々と、使者が《ルークサンドラ》の現状、新国王の素晴らしさを解き。
前国王達が隠していた、帰還陣を城の奥で見つけた、と告げる。
これで聖女を元の世界へ返して差し上げることができる、と、これで罪が償えるだろうか、と、現国王が準備をしているのだと。
慈悲深く、素晴らしいだろう、だから、早く我が国へ足を運べ、と。
断るわけもない、という風に、使者達が話しているのを、ムカムカしながら聞いていた。
使者達の話に熱が入るにつれ、周囲の温度が急降下していく。
「・・・何故その陣が、『帰還術式』だと分かった?今手元に、その根拠を示す資料も何もない状態で、その言葉だけを信じろと?ふざけているな。」
そんな中、私達の思いを代弁するかのように、魔王様が口を開いた。
その後をシロエさんが続けてくれる。
「そうですね。こちらに来て、自信満々にそのような話をする、と言うことは、その帰還陣が本当に彼女を帰すことが出来る術式を組んだものだと証明できるだけの根拠があるのでしょう?
陣の写しは難しかったにせよ、文献なり、報告書なりを持ってくることは可能であったはず。
人族各国の名だたる魔法使い達、そして魔族の魔法使い達に協力を仰ぎ、調べ尽くした結論として、帰還術式は、召喚術式よりも遥かに難しい事は揺るぎがない。
・・・それなのに、《ルークサンドラ》一国で、貴方達が彼女を拉致した時と場所を固定し、彼女の容姿を3年前の姿に戻すことが出来た上で、帰還させることが出来るとは。
本当であれば、歴史上最大の発見だ。是非、後学のために教えていただきたいのですよ。」
つらつらとシロエさんから溢れでる嫌味。
薄く笑うシロエさんは、冷めた目で使者達を見つめる。
使者達は青ざめた顔をして、何も言い返せないでいた。
沈黙が降りて。
ふるり、と私の身体が震えたのを、ティグレさんが抱きとめた。
その腕に掴まりながら、深く息を吐き、使者達を見据えた。
「・・・《ルークサンドラ》国へ出向きます。」
「サクラ!?」
私の言葉に、魔族側のメンバーはギョッとした顔を向け、《ルークサンドラ》の使者達は破顔した。
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