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1章

2話 再会(2)

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 パーティーの日を楽しみにしていた矢先、私はどっちつかずの恋人、タカちゃんに一度呼び出されて割り勘のお酒を飲んだ。

「カンパーイ」

 彼の好みでオーダーされたお酒とおつまみを前に、いつものお店で乾杯する。
 放ったらかしにされた時間を考えると正直美味しいお酒とは言えなかったけれど、タカちゃんはいつになく上機嫌で優しかった。

「タカちゃん、なんか今日は優しいね」
「そう? 陽毬もなんかいつもより明るい感じがするけど」
「本当?」
「うん。心なしかお洒落にも気合が入ってるっていうか……そんなに俺に会うの嬉しかった?」
「っ!」

 たまにかけてくれる歯の浮くようなセリフ。
 以前はもっと嬉しくてドキッとしてた気がするけど、今は妙な違和感しかない。

「んー……嬉しい、といえば嬉しい? かな?」
「なんだよそれ」

 私がいつもみたいにはしゃがないから、彼はいつもの不機嫌な顔に戻った。
 この機嫌を取るのがいつもの私なのだけれど、今日はどうしてもその気分になれない。

(どうしちゃったんだろ。疲れてるのかな)

「ごめん。今日は疲れてるみたいなの、早めに帰るね」

 精一杯気遣ってそう言ったのだけれど、この後ホテルを予定していただろう彼はもう口を効いてくれなかった。
 
 年上だけど、この人は子供なのだ。
 だから幼稚でも仕方ないのだ。
 そこが可愛いと感じることもある。
 こうしてご機嫌をとっていれば、いずれどこかでご褒美がもらえるのだから。
 そう思って付き合っているけれど、本当にこれでいいのだろうか。

(でも別れを言い出す勇気もないんだよね)

 どうしてもこの思考回路からは逃れられず、私はその後お酒をご馳走するということでなんとかタカちゃんの機嫌を取り直したのだった。



 それからというもの、私はタカちゃんからのメッセージを待たなくなった。
 たまに連絡が来ても、気づかないまま半日経過していたということもある。
 明らかに私の内面が変わったようなのだけれど、理由が思い当たらない。

(可能性としては瑞樹さんのパーティーに行けるのが楽しみすぎるってことくらいなんだけど)

 当日着ていく服装を考えていた私は、ネットでも売り出されていた彼の新作であるワンピースを買うかどうか迷っていた。
 あの日試着できなかったワンピースだ。
 普段着ている自分の服より、ゼロが一個多い。
 買えない値段ではなかったけれど、購入ボタン“をタップするかどうかは当然迷う。

(でも、このワンピースは私が一目惚れしたものだし。瑞樹さんのデザインだし。パーティーでは喜んでもらえる気がする)

「ええい、買っちゃえ!」

 思いきってボタンをクリックすると“ご購入ありがとうございました“のメッセージが表示された。
 
(1ヶ月の生活費が一着の服に消えた……来月の生活は相当に切り詰めないと)

 という気持ちにはなるけれど、買ったことに後悔はない。

(むしろワクワクしてるし、ドキドキもしてる)

 自分にご褒美なんて、今までは必要ないと思ってきたけれど。
 今回の買い物は明らかに自分へのご褒美だなという気がした。
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