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2章
5話 本当に大切にしてくれる人(4)
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ランチタイムの出来事が夢のようで、まだふわふわしていた。
私はタカちゃんと約束をしたレストランで、いつものように彼の話を聞いていた。
「でさー、課長はこう言うわけ。ホントやってられないっていうか」
「そっか。大変だったね」
「陽毬に軽く言われても説得力ないんだよなあ」
(言わなくても、何か意見ないわけ?とか言われるしな……)
それは分かっていたけど、タカちゃんを傷つけない方法なんてわからないので。
私は最大限の気配りで、答えるしかない。
「ごめんね。帰りはちょっと気分転換に買い物して帰ろうよ」
「いいよ。ジャケット欲しかったんだよな」
気分を少し戻して、タカちゃんは自分に似合うジャケットは何がいいかと言う話を始めた。
その会話の中に私はいない。
それがどうにも虚しいというか……この人といる意味がどんどんわからなくなっていく。
(でも、瑞稀さんに花をプレゼントされたからっていう理由にしたくない)
なぜかそんな意固地な思いがつのった。
(私も羽織りものが欲しかったし……買い物くらい楽しもう)
気持ちを入れ替えて、タカちゃんが好きなブランドが並ぶ通りに立ち寄る。
最近はユニセックスの商品も増えて、私も着れそうなものがあって嬉しい。
(これ可愛いなあ)
手にとって鏡に当てていると、タカちゃんは自分の気に入ったものを三着ほど手にして鏡越しにのぞいた。
「それ、陽毬には大人っぽすぎないか?」
「そうかな。どういうのがいいんだろ」
「自分で選べよ。後から文句言われたくないし」
「……うん」
言葉にならない悲しい気持ちが湧き上がる。
一緒にいるのに、突き放される感覚。
一人でいる方が楽だなと思えるような、変な孤独感だ。
「タカちゃんって、私がいなくても大丈夫なんじゃない?」
買い物をする気が失せ、思わず面倒なことを口にしてしまった。
するとタカちゃんは眉を寄せてため息をついた。
「めんどくさいなあ。最近、陽毬変じゃない?」
「どんなふうに?」
「前はもう少し可愛かったっていうか……」
(それはタカちゃんに嫌われないように頑張っていたから)
彼と交わす会話の一つ一つに、全て傷ついてしまう。
何も話したくないと思ってしまう。
目の前の男性が、自分の彼氏なのだとは思えなくなっていく。
(遠い……タカちゃんが遠い。もう、どうやって笑い合ってたか思い出せない)
「ごめん……もうダメかも」
「は?」
店を出た途端、私が突然そう言ったからタカちゃんも流石に驚いている。
そして冗談だと思ったのか、笑って私の肩を抱き寄せた。
「何言ってんだよ。体調悪いのか?」
「違うよ。もうタカちゃんとは無理だ……別れたい」
ついに言ってしまった。
まさかこんなに早いタイミングで切り出すとは、自分でも意外だった。
タカちゃんは神妙な顔で一瞬うつ向いた後、私の肩から腕を離した。
「……俺はやだな」
少し元気なさげに言う彼に、胸が痛くなる。
どんな理由があれ、自分が彼を傷つけているんだと思うと、やっぱり辛い。
(でも、このまま上手くやる方法も思いつかない)
私の決意がわりと固いと悟ったのか、タカちゃんはいつになく真面目な顔で私と向き合った。
「とりあえず今日はこのままバイバイしてさ。少し考えてから答えは出そうよ」
「……わかった」
自分からこんなふうに別れを切り出すのは初めてだった。
だからタカちゃんも真面目に捉えたんだと思う。
言ったことは後悔していない。
でも明日、明後日、時間が経過して自分がどうなるのかはわからない。
一番恐れていた「後悔」がやってくるのかもわからない。
(でも……動かないと見えないこともあるよね)
そう信じ、私はもう戻らないだろうという気持ちでタカちゃんと駅で別れた。
私はタカちゃんと約束をしたレストランで、いつものように彼の話を聞いていた。
「でさー、課長はこう言うわけ。ホントやってられないっていうか」
「そっか。大変だったね」
「陽毬に軽く言われても説得力ないんだよなあ」
(言わなくても、何か意見ないわけ?とか言われるしな……)
それは分かっていたけど、タカちゃんを傷つけない方法なんてわからないので。
私は最大限の気配りで、答えるしかない。
「ごめんね。帰りはちょっと気分転換に買い物して帰ろうよ」
「いいよ。ジャケット欲しかったんだよな」
気分を少し戻して、タカちゃんは自分に似合うジャケットは何がいいかと言う話を始めた。
その会話の中に私はいない。
それがどうにも虚しいというか……この人といる意味がどんどんわからなくなっていく。
(でも、瑞稀さんに花をプレゼントされたからっていう理由にしたくない)
なぜかそんな意固地な思いがつのった。
(私も羽織りものが欲しかったし……買い物くらい楽しもう)
気持ちを入れ替えて、タカちゃんが好きなブランドが並ぶ通りに立ち寄る。
最近はユニセックスの商品も増えて、私も着れそうなものがあって嬉しい。
(これ可愛いなあ)
手にとって鏡に当てていると、タカちゃんは自分の気に入ったものを三着ほど手にして鏡越しにのぞいた。
「それ、陽毬には大人っぽすぎないか?」
「そうかな。どういうのがいいんだろ」
「自分で選べよ。後から文句言われたくないし」
「……うん」
言葉にならない悲しい気持ちが湧き上がる。
一緒にいるのに、突き放される感覚。
一人でいる方が楽だなと思えるような、変な孤独感だ。
「タカちゃんって、私がいなくても大丈夫なんじゃない?」
買い物をする気が失せ、思わず面倒なことを口にしてしまった。
するとタカちゃんは眉を寄せてため息をついた。
「めんどくさいなあ。最近、陽毬変じゃない?」
「どんなふうに?」
「前はもう少し可愛かったっていうか……」
(それはタカちゃんに嫌われないように頑張っていたから)
彼と交わす会話の一つ一つに、全て傷ついてしまう。
何も話したくないと思ってしまう。
目の前の男性が、自分の彼氏なのだとは思えなくなっていく。
(遠い……タカちゃんが遠い。もう、どうやって笑い合ってたか思い出せない)
「ごめん……もうダメかも」
「は?」
店を出た途端、私が突然そう言ったからタカちゃんも流石に驚いている。
そして冗談だと思ったのか、笑って私の肩を抱き寄せた。
「何言ってんだよ。体調悪いのか?」
「違うよ。もうタカちゃんとは無理だ……別れたい」
ついに言ってしまった。
まさかこんなに早いタイミングで切り出すとは、自分でも意外だった。
タカちゃんは神妙な顔で一瞬うつ向いた後、私の肩から腕を離した。
「……俺はやだな」
少し元気なさげに言う彼に、胸が痛くなる。
どんな理由があれ、自分が彼を傷つけているんだと思うと、やっぱり辛い。
(でも、このまま上手くやる方法も思いつかない)
私の決意がわりと固いと悟ったのか、タカちゃんはいつになく真面目な顔で私と向き合った。
「とりあえず今日はこのままバイバイしてさ。少し考えてから答えは出そうよ」
「……わかった」
自分からこんなふうに別れを切り出すのは初めてだった。
だからタカちゃんも真面目に捉えたんだと思う。
言ったことは後悔していない。
でも明日、明後日、時間が経過して自分がどうなるのかはわからない。
一番恐れていた「後悔」がやってくるのかもわからない。
(でも……動かないと見えないこともあるよね)
そう信じ、私はもう戻らないだろうという気持ちでタカちゃんと駅で別れた。
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