誘惑系御曹司がかかった恋の病

伊東悠香

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2章

6話 いつわりがまことになる時(2)R18

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 抗えない肌の温もり。
 それは私が崖っぷちで耐えていた最後の力を奪った。

「ん……」

 その甘ったるい声が自分のものだと気づいて頬に熱を感じる。
 
「そういう声も出せるんだ」
「っ」

 耳元で囁かれる声が熱っぽくて肩がびくりと上がった。
 瑞樹さんはくすくす笑うと、起き上がって長く美しい髪を後ろで束ねた。

「俺のこと、今も女性に見えることある?」
「ううん、ないです」
(パーティーで会った時から、一瞬だって女性に見えたことなんてないよ)
「そう」

 楽しげに頷くと、頬を撫でながらゆっくりその指を下ろしていく。
 ブラウスのボタンが一つ外され、首元にスッと風が入った。

「あのっ」

 反射的に開かれたブラウスを片手で掴み、身を丸くする。

「待って……」
「これ以上は待てない」

 声の圧が強まる。
 瑞樹さんはブラウスを握っていた手をゆっくり引き離すと、そのまま手首を頭上で抑えてしまった。

「恋かどうか分からなくても、相性くらいは確かめられるでしょ」

 無防備な体勢の自分に羞恥心が湧くけれど、期待で鼓動が高鳴る。

「私で……いいんですか?」
「自分を安く見過ぎ」

 苦笑しながらも髪を優しく撫でながら、改めて唇に優しいキスを落とす。
 ふわっと浮きそうな感覚になり、咄嗟に瑞樹さんのキスを積極的に受け入れた。

「ん、ふ……っ」
「……陽毬」

 瑞樹さんは呼吸を荒くする私の頭を優しく抱え込み、額にキスしてくれながら低い声で囁いた。

「陽毬は可愛いよ。誰にも渡したくない」

 鼓膜を震わせる甘い声音に震えると、さらに深いキスが落ちてくる。

(瑞樹さん、好き……もう誤魔化せない)

 吐息が混じり合うと、隔てていた壁が全て取り払われていく。

(遠い存在だったはずの人が……もうこんな近くに)

 鼓動が痛いほど高鳴っている。
 異性に対してこんなにも自分を見失うような感覚になったのは初めてだった。

「夢中になってる陽毬も可愛いね」
「は、恥ずかしいです」
「そんなのすぐ消える。口、開いて?」

 おずおずと口を開くと、するりと彼の熱が滑り込んで私のと交じりあった。

(――っ)

 刺激の強さに目の奥に光が放たれ、一瞬呼吸が止まりそうになる。

「目、開けて」

 ぎゅっと瞑っていた瞼をそろり開くと、天井に括られたシャンデリアが視界に入る。

「どこ見てるの」
「わ」

 覗き込んできた瑞樹さんの後ろにシャンデリアが隠れ、彼の髪を金色に浮き上がらせた。

(綺麗……天使みたい)

 ぼうっとする頭で私は、瑞樹さんへの本当の気持ちを確信していた。 

(私、きっとずっと前から……)
「瑞樹さんが好き」
「知ってたよ」

 瑞樹さんは遠慮のないキスを繰り返しながら、私の体をキツく抱きしめた。

 髪がくしゃくしゃになってもそのまま顔中にキスされて。
 それがなぜか涙が出るほど嬉しくて。

(憧れだと思っていたのに、いつの間に“好き“に変わってたんだろう)

 私からも瑞樹さんに触れてみる。
 すると指先から愛おしさが込み上げて、鼻がつんとなった。
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