アフタヌーンティー

伊東悠香

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1巻

1-2

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「まさか一緒に仕事をすることになるとはね」

 照れたような表情でつぶやいた彼は、「少し休憩しようか」と言い、空いていた会議室に入っていく。

「あ、では、お茶……用意しますね」

 給湯室に向かおうとすると、彼は私の手首をグッとつかんで自分の方へ引き寄せた。そしてそのまま、会議室の扉を静かに閉める。

「待って。お茶なんていいよ」
「で、でも」
「運命の再会……もっと喜んでくれると思ったんだけどな」

 そう言って、彼はちょっとさびしそうな表情を浮かべる。

「う、嬉しいですよ。もちろん!」
(ただ、突然すぎて心がついていかないんです!)

 私が内心パニックになっているのに気づかないのか、山口さんは手を掴んだまま離さない。
 彼のぬくもりが伝わってきて、自然と鼓動が速くなっていく。

「まぁ……これから毎日顔が見られるんだし、焦らなくていいよね」

 余裕の笑みを浮かべたあと、彼はようやく私の手を離してくれた。
 それでも私の胸はドキドキと高鳴り、手のひらには汗までにじんでくる。

「忙しいところ、ごめんね。また……時間を作って昔話でもしたいね」

 彼は会議室の扉を開けて廊下に出ると、ドアを押さえて私のことを待っていてくれた。

(ジェントルマン……こんな仕草を普通にしてくれる男性に、はじめて会った!)

 恐れ多いような気もしたけど、こうやってレディーとして扱われるのは決して悪くない……というより、夢心地だ。

「じゃ、案内ありがとう」

 そう言い残して、彼は颯爽さっそうと廊下を歩いていった。

(もしかして、彼には案内なんて必要なかったんじゃ……?)

 残された私は、漠然ばくぜんとそんなふうに感じた。
 ――もう二度と会えないだろうと思っていた〝お兄ちゃん〟。彼との再会は、私の心を感動でいっぱいにした。


 山口さんが赴任してきてから、私は会社に行くのが少し楽しみになった。
 もちろん仕事の忙しさは変わらないけれど……彼がいるだけで嬉しいというか、いやされるような気がする。
 原井さんと山口さんは仲が良いようで、よくコーヒーを片手に二人でディスカッションしている。そのまま仕事の打ち合わせになることも、しばしば。
 いつも穏やかな笑みを浮かべている山口さんだけど、仕事の時にはすごく真剣な顔をする。
 その凛々りりしい姿を見て、彼への憧れがいっそう強くなる。

(……彼は、この会社を背負って立つ人だものね)

 のらりくらり遊んで暮らせる立場の人ではない。
 将来会社を任されるとなると、とんでもない責務が彼の肩にのしかかる。私には想像もできない世界だ。
 山口さんは英語とフランス語が堪能で、取り引きのある海外エネルギー事業の会社とも軽々と交渉している。社内だけでは務まらない仕事も多いようで、今後は様々な国へ行って現地を視察しなければならないらしい。それだけでもすごいのに、彼は将来のリーダーになるべく、今よりさらに多くのことを経験する必要がある。

(考えただけで眩暈めまいがしそう……)

 小さい頃はわからなかったけれど、山口さんと私の間には、やはりとても大きな壁があるのだ。彼のいる世界に私が足を踏み入れるのは容易なことではないと、思い知らされる。
 でも……どんな形であれ、〝お兄ちゃん〟と再会できたのは素直に嬉しい。何より、二十年近く会っていなかったのに、山口さんの方から私を思い出してくれるなんて。

「あんなおチビちゃんだったのに、すっかり大人の女性になったんだね」

 廊下ですれ違った時にそんなことを真顔で言われて、顔から火が出そうなくらい恥ずかしかった。
 山口さんこそ、ずいぶん変わった。
 仕立てのいい高級なスーツを着て、素敵な大人の男性になって……声をかけられただけで体が震えてしまいそうな、高貴な雰囲気を備えている。
 でも、笑顔はあの頃のままだった。「ちーちゃん」と笑顔で呼んでくれた彼に、私はとてもホッとした。
 再会して以来、山口さんを見かけると、ドキドキしてしまう。
 私の日常は、ささやかではあるけれど、幸せで充実した日々に変化した。


 そんなある日。いつも昼食を一緒に食べる同期のメグは、本日お休み。
 有給を取って彼とテーマパークに行っているはずだ。

「仲良しで、うらやましい限りです……」

 そんなひとり言をつぶやきながら、私は一人で食堂の席についていた。
 他にも仲の良い同僚はいるけど、今日はグループに入ってワイワイとおしゃべりをする気分にはなれなかった。
 仕事の量は相変わらず多く、原井さんからは次々とデータ入力の指示が飛んでくる。
 午前中の間に終わらせる予定の仕事が、まだ半分以上も残っていた。
 今日も残業だろうか……

「……さん。宮原さん!」

 ぼんやりしながらトンカツ定食を食べていたら、いつの間にか向かい側の席に山口さんが座っていた。私は驚きのあまり飛び上がってしまいそうになる。

「山口さん!?」

 手にしていたはしから、トンカツの切れ端が落ちた。
 私のまわりにいた他の社員たちは、めずらしいものでも見るみたいに、チラチラとこちらの様子をうかがっている。
 山口さんは、その場にいるだけで目立つ。
 だけど彼は、自分がどれぐらい注目されているのか、あまりわかっていないみたいだ。

「どうしたの、ボーッとして。顔が赤いけど……風邪? 熱とかあるの?」
「いえっ! 風邪は引いてません」

 私は皿に落としたトンカツを拾い上げて口に入れようとしたけど、どうしても箸が進まなくて、再び皿に戻してしまった。
 顔が熱い……。ある意味、今の私は熱があるのと同じ状態だ。でもそれは風邪のせいではなくて、山口さんが目の前にいるから。

「仕事中に話しかけるわけにいかないし、昼食ぐらいは一緒にと思ってたんだけど。宮原さん、いつも誰かと一緒だから、なかなか声をかけられなかったんだ」

 そんなふうに言ってもらえるのは嬉しい。でも、こうやって向かい合って食事をするなんて、今の私には無理だ。

(だって……王子様を目の前にして、トンカツ定食、食べられますか? 無理でしょう!?)
「昔の思い出とか、いろいろ話したいことがあるんだ。だけど、もしかして僕のことなんか、すっかり忘れちゃったのかな」

 さびしそうな表情を浮かべて、私をうかがう山口さん。

(忘れるわけないじゃないですか! 私はずっとあなたを理想としてきたんですよ)

 ……なんて言えるはずもなく、私は「いえ、そんなことありません」とだけ答えた。
 時刻は十二時三十分。
 遅めに来た山口さんは目当ての定食をゲットできなかったのか、パンを二つと牛乳を手にしている。
 私はなんだかお腹一杯になってしまって、半分も余ったトンカツ定食を申し訳ない気持ちで見下ろした。

「バロンを放して遊んだ公園って、まだあるの?」

 山口さんはずっとその話をしたかったみたい。
 彼の言葉をきっかけに、私の中でセピアになっていた思い出が、フルカラーになってよみがえる。

「あ、はい。もう遊具もさびついて、すっかり古い公園って感じですけど」
「そうかー……またあの周辺、歩いてみたいなぁ」

 それを聞いて、私の期待がふくらむ。
 あの公園は、私の実家の近所だ。いつでも案内することができる。

(い、いや。さすがに図々しいかな。とりあえず、水でも飲んで落ち着こう)

 軽く震える手で、コップを持ち上げる。

「千紗都ちゃん」

 突然そう呼ばれて、私はむせてしまいそうになった。

「……二人きりの時は、名前で呼んでいいかな。さすがに大人になって〝ちーちゃん〟はないだろうから」
「は……」

「はい」と答えようとしたのに、うまく言葉が出てこない。そんな私を見て、山口さんはさびしそうな顔をした。

「なんだか僕ばっかり、昔のことを懐かしがってるね。もしかして迷惑だった?」
「めめめ……迷惑なんて。あるわけないです!」
(単に緊張して、言葉が出ないだけなんです!!)

 今の山口さんは、それくらい雲の上の人っていう感じ……さっきから、コロッケパンを食べる姿さえ素敵で、見とれてしまいそうなんです。
 だけど、そんな私の心の叫びが聞こえるはずもない。山口さんは私を見つめながら、考え込むようにして言った。

「会社だと、なかなかこうやって話すチャンスがないから。もし良ければ、オフの日にでもゆっくり昔話をしたいなって思ってるんだけど……」
「っ!!」

 休みの日に、彼と会えるなんて。
 私は思わず山口さんの顔をジッと見つめてしまった。
 ドキドキしてうまく話せない私を見て、彼はまだパンを食べ切っていないのに席を立つ。

「ごめんね、僕がいると千紗都ちゃんの食が進まないみたいだから」
「あ……」

 だけど私は引きとめることができず、彼は立ち去ってしまった。

「う……」

 私は冷え切ったトンカツ定食を前にして、ガックリと肩を落とす。

(せっかく山口さんが誘ってくれたのに、ちゃんと答えられなかった……)

 しょんぼりしながら食堂を後にし、席に戻ってパソコンを立ち上げると、新着メッセージが届いていた。
『山口さんを歓迎する会のお知らせ』。もちろんこれは参加だ。私は参加する旨を書いたメールを幹事の伊藤いとうさんに送った。山口さんとは、なかなかスマートに会話することができない。だけど、お酒が入れば少しは違うかもしれない。
 そんな期待を抱いて、仕事に戻った山口さんの方をこっそりと見る。

(あ、また原井さんと難しそうな話をしてる)

 山口さんにとって、原井さんは頼りになる存在らしい。二人はしょっちゅう顔と顔を突き合わせて、書類に目を通している。そんな姿を見ていると、自分ももっと仕事ができるようにならなくちゃという気持ちになる。
 多少の英語はできるものの、今の私はまだまだ半人前だ。

(とりあえず自分ができるところから頑張るしかないか)

 ため息をつきながら仕事を再開しようとした瞬間、今日が自分のお茶当番の日だったことを思い出した。

美味おいしい紅茶をれたら、山口さん喜んでくれるかな?)

 うちの部署では、フロア内の女子社員で当番の日を決めて、三時の休憩時間にお茶を出すことになっている。他の人は緑茶を淹れることが多いけれど、私は自分が楽しみたいというのもあって紅茶のティーバッグを持ち込んでいる。
 少しそわそわしながら仕事を進め、三時すぎに紅茶をれた。

「どうぞ」

 山口さんの机にカップを置くと、彼は驚いたように顔を上げた。

「あの……紅茶です。よろしければ」

 すると、彼はカップに手を伸ばして微笑ほほえんでくれた。

「ありがとう。美味おいしそうだね、いただくよ」

 その笑顔が見られただけで、私は大満足だった。
 原井さんにも紅茶のカップを出し、そそくさと席に戻って仕事の続きに取りかかった。
 仕事は相変わらず忙しいけれど、山口さんの声を聞いて笑顔を見られる日々は楽しい。
 彼がいてくれるだけで、明日も頑張ろうと思える。

(バロンと遊んだ公園。いつか一緒に歩ける日が来たらいいな)

 そんな淡い期待を抱きつつ、この日は大量のデータ打ち込み作業に追われて終わった。


 翌日の昼休み。
 テーマパークのお土産みやげを差し出しながら、メグは興味津々といった感じで私の顔をのぞき込んだ。

「それって山口さんなりのアプローチなんじゃない?」
「ア、アプローチ?」
「うんうん。千紗都の思い出の人なんでしょう? 迷うことないじゃない。千紗都から誘っちゃえ~!」

 山口さんがやってきた日、メグには彼が昔大好きだったお兄ちゃんなのだと打ち明けた。それ以来、彼女はこうして私をけしかけてくる。

「でも、山口さんすごく忙しそうだし」
「まぁねー。私、休憩室で一回彼を見たんだけど……あの人、煙草吸うんだね」
「え、そうなの?」

 山口さんが煙草を吸うなんて、全然イメージじゃない。私はかなり驚いた。
 でも……あの人の立場や周囲からの重圧を考えると、それぐらいの逃げ道がないとやっていられないのかもしれない。

「うん。哀愁が背中にただよっててさ。相当苦労してるんだろうなって思ったよ。でも、あの影のある感じがまた男っぷりを上げてるんだろうね」
「……そうだね」

 メグも山口さんの忙しさや大変さを気にかけているようで、だからこそ私とのデートで息抜きをさせてあげたらどうかとアドバイスしてくれた。

(私から誘えたら、確かにいいんだけど。でも、きっかけがつかめない)

 こんな私に、驚くべきアクシデントが起きたのは次の日である。
 その日は朝から雲行きが怪しくて、今にも雨が降ってきそうだった。なのに、うっかり寝坊して慌てていた私は、傘を持たずに、一人暮らしをしているアパートを飛び出してしまった。
 すると、空から大粒の雨が降ってきた。
 十一月の雨は、一粒一粒が身を凍らせるほど冷たい。

「寒い~!」

 まだ会社まで数百メートルあるという場所で、私はシャッターの降りている商店の軒先のきさきに駆け込んだ。
 雨雲は空全体にたちこめていて、すぐにやんでくれそうにない。

「あと少しで会社に着くのに……」

 うらめしい気持ちで空をにらんでいると、大きな黒い傘を差した男性が私の前で立ち止まった。

「あ……山口さん」

 それはベージュのトレンチコートを着た山口さんだった。
 雨の中で見てもいい男……思わず彼に見とれてしまう。

「千紗都ちゃん、傘持ってないの?」

 彼に名前で呼ばれると、ドキッと胸が高鳴る。

「はい……急いで家を出てきてしまったので……」

 恥ずかしくてうつむくと、彼はそっと黒い傘をたたんだ。

「隣……いいかな?」
「あ、はい」

 この商店の軒先は、やっと人が二人入れるくらいのスペースしかない。私たちは身を寄せ合うように雨宿りした。
 何か話があるのかと思ったけれど、山口さんは黙り込んでいる。だけどその沈黙は決して重いものではなかった。まるで二人の時間が止まってしまったみたい。
 無言で雨を見つめながら、私たちはしばらくそこに立ち尽くしていた。

「雨に……感謝だな」
「え?」

 山口さんの言葉に、私は思わず彼を見上げる。

「ずっとこうしていたいんだけど、朝イチで会議があるから、そろそろ行かないと。千紗都ちゃん、僕の傘を使っていいよ」

 彼はそう言って、私の手に傘を持たせた。

「え、いいですよ! 山口さんがれてしまいます」
「いや、千紗都ちゃんに風邪引かれたら困るからね」

 山口さんは身をすくめて、雨の中に一歩踏み出す。すると、彼の両肩がすぐに濡れてしまった。

「僕と相合傘してるのを誰かに見られたら、千紗都ちゃんも困るでしょ」
「そ……それは、その……」

 私が戸惑っていると、山口さんは思いついたようにトレンチコートの合わせに手を差し入れ、ジャケットの胸ポケットから一枚の名刺を取り出した。

「これ、渡そうと思ってたんだ」
「え?」

 差し出された名刺を受け取ると、裏面に山口さんのプライベートのメールアドレスと携帯番号が書かれていた。

(山口さん!?)

 思ってもみなかった山口さんからのアプローチに、心拍数は一気に上がる。

「夜なら、いつでも連絡してくれていいからね」
「あ……」

 私が名刺から顔を上げると、彼はすでに会社に向かって駆け出していた。遠ざかっていく彼の広い背中を、私は呆然と見つめる。
 ドキドキして、なかなか商店の前から動くことができない。

(これって、メールしたり電話したりしてもいいっていうことだよね?)

 山口さんとの距離が一気に縮み、私の中で彼の存在がまた大きくなる。
 憧れの〝お兄ちゃん〟は今、リアルな男性として私の心を揺さぶっていた。

(あの小さかった頃のまま、私……まだ彼に恋をしているのかな) 
「はぁ……ドキドキしすぎて胸が苦しい」

 深呼吸して息を整え、渡された名刺をそっと財布にしまう。そして借りた傘を広げながら軒先を出た瞬間、頬に雨粒があたる。

「ひゃっ、冷た!」

 思わず小さく叫んでしまった。

(山口さん……風邪引かないといいけど)

 その時、私は彼に傘のお礼を言い忘れてしまったことに気づいた。こんな冷たい雨の中、私を気遣ってくれたのに……会社で顔を合わせたら、すぐにお礼を言おうと心に決めた。



   2 惹かれる思い


 山口さんから傘を借りた日、彼はずっと小さく咳をしていた。
 冷たい雨にうたれて、体調をくずしてしまったんだろうか。

(申し訳ないことしちゃったな……)

 借りた傘は社員用の傘立てに置き、部署で朝の挨拶あいさつを交わした時に傘のお礼を言った。

「帰る時にまだ降ってたら、気にしないで使っていいからね」

 そう微笑ほほえんでくれたけど、まさか帰りも山口さんをびしょれにさせるわけにはいかない。私は昼休みの間にコンビニでビニール傘を買い、その日は濡れることなくアパートに帰ることができた。
 一番落ち着く自分の部屋にたどり着くと、やかんにお湯を沸かして、大好きなアッサムティーをれる準備をする。この季節はミルクティーにするのが美味おいしい。濃いめに出したアッサムをお気に入りのカップにそそぎ、ミルクを落とす。
 一口飲んで、ホウッと一息ついた。

(山口さん……大丈夫かな)

 私は財布から彼の連絡先が記された名刺を取り出して、じっと見つめる。電話をかけるなんて絶対無理だけど、メールで体調を聞くくらいなら大丈夫だよね……
 男性にメールを送るなんて、滅多にないことだ。私は仕事を終えて帰宅する道すがら、ずっと彼へのメールの内容を考えていた。

『山口さん 体調はいかがですか? 今日は寒い中、傘を貸していただいてありがとうございました。風邪など引かれてないといいのですが。 宮原千紗都』

 長々と考えていた割に、文章にしたら案外短いものになった。最後は『宮原』とするか『千紗都』とするか悩んだけれど、結局フルネームを入力する。
 時刻は夜の十時。彼のことだから、まだ会社に残って仕事をしている可能性もある。だけどあまり遅い時間にメールをするのも迷惑だろうと思って、私は勢いに任せてメールを送信した。
 すると、思ったよりも早く返信がきた。

『千紗都ちゃん 心配してくれてありがとう。君のメールで咳が止まったよ。それより、明後日の土曜日は空いてるかな? 良ければ少し時間をもらいたいんだけど。 紫苑』

 メールの内容に、私の心臓は破裂寸前。

「これって……デートなのかな?」

 期待に胸がふくらむ。
 私はすぐにオーケーの返信をした。すると、ほどなくして再び彼からメールが届く。

『ありがとう。じゃあ、思い出のつまったあの公園で、午後一時に』

 思い出の公園……彼がそう言ってくれたことが嬉しい。それに、〝あの公園〟だけで通じてしまう関係にも、ドキドキしてしまう。
 私は舞い上がりながらも、ひかえめに『当日、待ってます』というメッセージを送信して、そのまま携帯を握りしめた。

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