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届かない恋

もういない君へ。

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好きだと思っていたんだ。

君が、僕の運命だって。

……なのに、どうして?

ずっと、君の背中を追い続けていた。

君に追いつきたい。

君に触れたい。

君と話がしたい。

君の声が聞きたい。

そう、思ってた。

今だって……。

好きだから、運命の人だからだって僕は思ってた。

君はもういないのに。

でも、もし君が隣にいたら……僕は君に触れたい

けれど、それは……それは、恋とは違ったんだ。

君は、僕の光で、希望で……大好きな人なのに。

僕の、恋する人だと、思ったのに……。

もしもの君が僕に言うんだ。

『大きくなったな。もう、追い越されるかもしれないな。』

悲しそうに、僕の頭を撫でるんだ。

『でも、嬉しいよ。大切な人が生きてるのは。』

僕は、何も言えなくて。言いたくなくて。

『なあ、多分俺は、お前とキスはできないよ。』

砕けた。

砕いた。

(うん。僕も、そうだよ。)

好きだ。好き。好きなんだ……。

自分の命に代えても守りたかった人。

雫が落ちた。

どうして、好きはひとつじゃないんだろう。

どうして、僕は君を好きになれないんだろう。

……僕は、君を好きになりたかった。

『俺も、そうかもしれない。』

都合のいいもしもの君。
僕は、そんな君とですら恋になれなかった。

「ずっと……大好きだったよ。」

もしも、君が生きていたら君はなんて言ってくれたんだろう……


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