僕等の恋[短編集・一話完結有り]

ここクマ

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一話完結

消えたい僕が幸せをもらっているようだ

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例えば、明日消えてしまうかもしれないとそう考えるだけで幸せになってしまう僕を、もっと温かな空間に導いてくれるような、そんな人。

絶望の底で無理に幸せを作る僕に、希望の空を見せてくれる。

真っ暗を綺麗だと思う僕に、青空も綺麗なんだと教えてくれる。

悲しいことが多い世界に、心から嬉しいことがあるんだとわからせてくれる。

だからこそ、もう、僕1人じゃ「幸せ」を作れなくなった。

僕は、きみがいる世界を「幸せ」だと、そう、思ったから。

けれど、きみがいなくなった時、この幸せを嘲笑う日が来るのかもしれない。

己は愚かだったと、嘆く日が来るかもしれない。

それでも、僕は、きみの隣を離れたくないんだ。

どんなに悲しい別れが待っていたとしても、僕の心はきみを想うことをやめてくれない。


きみの姿を見るだけで、心がふやけたみたいになってしまう。
きみと言葉を交わすだけで、自然と頬が緩んでしまう。
きみの隣に居られることが嬉しくて、心臓は早まってしまう。
きみに触れるだけで、想いが溢れてしまう。


好きだよ。大好きだ。

言葉だけじゃ、足りない。

きみが僕の隣からいなくなると考えただけで泣きそうになる心や、きみの記憶を1ミリたりとも忘れたくないという思い。

どうしたって、この気持ちを表し切ることはできない。



どうでもいい自分という存在を、きみという1人の人間が変えてしまったんだよ。

きみが好きだというから、僕は変わろうとするし、きみが良いというからそこをもっと良くしようとする。

けれど、僕は、いつだって消えてしまいたいし、未来は短くていいと思ってしまう。

きみがいる未来は楽しそうで、幸せそうで、とても魅力的なのに、真っ暗な無の世界が僕を呼ぶ。

『幸せなんて、生きていくのに邪魔なだけだ。』

そう言ったのは、悲しみに包まれていた僕自身だった。

あぁ、僕は今幸せだ。幸せなのに…。

幸せだけじゃ、世界は創れないんだ。

今日も日常きみのいない世界では、涙と叫び声が飛び交っている。
そこで僕は、泣きながら、栄養を取るためだけにご飯を食べて、消えてしまいたいと思いながら耳を塞ぐんだ。

そんな地獄で、時々幸せきみのいる世界に触れて、僕は生きる。


あぁ、なんて虚無だろう。
なんて、滑稽だろう。


僕の世界で生きるのに、幸せは苦しいだけだった。

でも、幸せは、僕に自由をくれた。地獄から抜け出す勇気をくれた。

だから、いつか、この幸せが、僕を生かす理由となることを願うばかりだ。
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