上 下
42 / 45
一話完結

もどかしい

しおりを挟む

君のことが好きだから、僕は手を伸ばした。
そして、君は、僕の手を取った。

君にもらった感情は言葉になって、溢れ出した。

「大好きだよ」

何回言っても、心は伝えたいって溢れた。

そうして、言葉では足りなくなって、君に触れたいと望んだ。

けれど、触れてしまったら、全て見透かされてしまいそうで、怖かった。
君のことを狂おしいほど大好きで、離したくないと、僕から離れなければいいと望む傲慢な自分を、知られたくなかった。



貴方は、わたくしに手を差し伸べてくれた。わたくしは、貴方に手を伸ばす勇気をもらった。

言葉を放つのが苦手なわたくしに、貴方は優しく微笑んで、何度も愛をくれた。

『大好きだよ』と、微笑んで、貴方は、わたくしを安心させた。

そうして、貴方は壊れ物でも触るようにそっと、わたくしに触れる。

わたくしは、貴方に触れられたことが嬉しくて、貴方の熱が温かくて、このまま貴方のものになってしまいたかった。
貴方が、わたくしを離さないで、永遠に捕まえていてくれるなら、そんなに幸せなことはないとすら、思ってしまう。
けれど、きっと、こんなわたくしを知ったら、貴方はわたくしから離れてしまいそうな予感がする。だから、この心を、底に閉まって今日も愛しい貴方の隣を歩む。
しおりを挟む

処理中です...