俺はヒーローなんかじゃない

ここクマ

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俺は君のヒーローだ。

11 その先の特別

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 今日から来月の体育祭に向けて体育の授業が体育祭練習になった。

「うー…なんで、体育祭なんてあるんだよぉ…」

 虎は運動が苦手で、走るのが遅かった。けれど、世の中には全員リレーなるものがある。

 そして、虎が憂鬱になる原因はクラスの行事本気勢にもあった。体育祭委員の幸太を中心に優勝目指して色々な対策を始めて居たのだ。

「なになに?原ちゃんは体育できないんですかぁ?」
 
 虎の言葉を聞きつけた幸太がニヤニヤしながら虎を突く。虎は、無言で幸太の腕を叩いた。

「った!っにすんだよ!」

 下を向いて虎が歩き出す。俺はそれを追いかける。
「虎。大丈夫だ。」

 俺の言葉に止まった頭を撫でる。

「真木、ちゃん…。」

「俺は、元陸上部だ。練習なら付き合うし、もし本番で遅れても俺が取り戻す。だから、大丈夫だ。」

「っ、真木ちゃん!ありがとう!」

 曇って居た顔が晴れて俺も嬉しかった。

「真木ちゃんは、やっぱりヒーローみたいだ。」

 独り言のように虎が呟く。

ドクン

(あぁ、まただ…)

 今まで、ヒーローは魔法の言葉だった。なのに、その言葉は俺を縛るんだ。

「やっぱり真木ちゃん大好きだなぁ…かっこいいもん。」

 虎が地面を見つめながらこぼした。

(違う…俺が欲しいのは…それじゃ無い…)

 ずっと、ヒーローの先には俺の欲しい特別がいると思ってたんだ。

 だけど……

 だけど、虎のヒーローの先には特別がないんだ…

「……っ優翔!」

「っ、幸…太?」

 急に幸太が俺の肩を掴んだ。

「……っ、いや…計測回ってきたから。原ちゃんは呼んでるから急いで計測行って。」

「あ、あぁ。そうか。」

「わかった。」
 
 虎が頷いて計測の場所へ走る。俺も付いて行こうとして幸太が俺の腕を掴んで止める。

「…幸太?」

「……優翔は、さ…」

 幸太は悲しそうな顔をして、言葉を詰まらせる。

「……いや、なんでもない。」

「幸太。」

 俺が名前を呼ぶと、泣きそうな顔になって唇を噛んでから幸太は笑った。

「あー、と……あ!俺、個人の200出ようと思ってるんだ。それで、そこで1位とったらさ優翔に言いたいことがあるんだ。えっと…だから、そう!体育祭後は予定入れるなよ!」

「あ、あぁ、わかった。」

「……優翔は、何やるか決めた?」

「いや。」

「そっ、か……じゃあ、俺が1位取るの楽しみにしててね!よし、計測行こう!」

「あぁ。」

(……なんだか、悲しいのが消えた気がするな……。)

 俺は、幸太の後を追った。




 体育が終わって、帰りのホームルームになった。

「えー、朝言った通り放課後に遠足係は講義室1に行くように。それから、今週水曜日のロングホームルームで遠足の班決めをする。班は自由だから今から考えておくように。以上。」

 帰りの挨拶をして、俺は荷物を持った。

「真木ちゃん、もう帰るの?」

「あぁ。寄るところがあってな。」

「そっ、か…じゃあ今日お家行ってもいい?」

 虎の家は俺の家の向かいにあるので、すぐにお互いの家に出入りすることができる。
 高校生になってから一緒に帰れない日はこうして虎が俺に聞く様になっていた。

「…いや、今日は駄目だ。」

 昨日から母親が友人と旅行に行っているのに加えて父親が出張で家には俺1人しかいないのだ。

(そんな危ない空間に虎を呼べるわけ無いだろう!!)

「……そっ、か……」

 虎が悲しそうに下を見た。

「あー、その…遅いんだ。帰るの。待たせるのは悪いから。」


 虎が俺を見上げて何かを言おうとした時だった。時計が俺の目に入った。

「っ!悪い、急ぐ。」

 俺は、虎に謝って急いで教室を出た。
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