29 / 68
俺は君のヒーローだ。
25 咲く花の名前[S]
しおりを挟む智也さんと智也さんの家で・・・俺はいわゆる賭けってやつにに負けた。
「ふふ、優翔可愛い。」
「……はぁ、はぁ……ケホッ、ケホッ」
息が切れて喉が渇いた。
「はい、水。僕の手でちゃんとできたね。」
水を受け取ってゆっくり口内に流した。
「ありがとう、ございます。」
「うん。あと、優翔今日から僕の恋人ってことでいいよね?」
ニコッと笑って智也さんに聞かれる。
頭がふわふわした。
ふわふわして、でも、心はぐちゃぐちゃになったみたいだった。
「優翔……好きだよ。優翔も僕に言ってみて。好きって。言ってるうちに本当になるかもしれないよ。」
俺は回らない頭で優翔さんの言葉に頷いた。
「好き。」
「うん。誰の事が好きなんだっけ?」
「と・・・」
『真木ちゃん』
頬にソレが流れた。
「と、もやさんが好き。」
俺は智也さんに抱きしめられていた。
「うん。ごめん。ごめんね。ちゃんと、大事にするから。ずっと、僕が側にいるから。」
智也さんの声はなんだか震えていて、俺はそれが不思議だった。
「送るよ。」
「いや、でも。」
「恋人として、送らせて。」
智也さんはどこか悲しそうに俺をみた。
「わかり、ました。」
外は思いの外真っ暗で電灯の光が眩しかった。
「手、繋いでいい?」
糸みたいに智也さんが声を出した。
こんな智也さん初めてだった。
俺は無言で智也さんの手を握った。
「ありがとう。」
どうしても、智也さんの声が悲しそうに聴こえて俺は手を強く握った。
「……優翔、僕……。」
智也さんの声が途切れた。
チラッと智也さんをみると悲しそうに笑った。
「優翔は、僕を利用するとかそういうことできなさそうだよね。」
その言葉の意図がわからなくて首を傾げた。
「ねぇ、優翔。僕はね、とても、良い人とは掛け離れた存在なんだ。だから、だからね、僕といて苦しくなったら迷わなくて良いよ。僕のことでつらい思いをしなくて良いんだよ。」
繋いだ手が少し震えていた。
(この手を離したら……智也さんは消えてしまいそうだ。)
「……俺の中の智也さんは良い人です。」
そう言ったら智也さんは困ったように笑った。
「到着。だよね。」
家の前に着いて智也さんが手を離した。
「ありがとう、ございました。」
「……そんなに、悲しそうな顔しないでよ。」
智也さんの手が俺の頬に触れた。
俺は無意識に智也さんの手に自分の手を重ねていた。
「優翔?」
心配そうに俺をみる瞳に泣きたくなった。
俺はきっと・・・
「智也、さん……」
「うん。」
優しい智也さんの声が俺の言葉を待ってくれるみたいだった。
だけど、その先を口にするのが難しくて重ねた手を握りしめた。
「……困ったな。優翔がそんな顔するから帰れないや。」
「っ!」
俺は咄嗟に手を離した。
けれど、その手をすぐに智也さんが捕まえた。
「優翔、少し家にお邪魔しても良い?」
瞳が優しく俺を捕まえる。
「はい。」
智也さんは握った俺の手を恋人繋ぎに変えて強く握りしめてくれた。
俺は空いてる手で扉を開けた。
暗いはずの家。目の前にある階段の上から光が漏れていた。
「優翔?」
俺の後ろで智也さんが呼んだ。
俺は、視線を下に落とした。
虎の靴だ。
咄嗟に智也さんの方を向いて抱きしめた。
「え?!ゆ、優翔?」
「……わ、ぃ……。」
『真木ちゃん』
頭の中で虎の声が反響する。
「……優翔?」
「……怖いよ。」
どうしてか、わからない。けれど、心の中が恐怖で一杯だった。
虎に会いたくない。虎の記憶に触れたくない。
きっと、好きが壊れすぎたんだ。
「大丈夫。大丈夫だよ。」
智也さんの体温が俺を安心させる。
ずっと、ここにいたい。
ガチャ
2階から扉の開いた音がした。
体が強張った。
「真木ちゃん?」
ペタペタ
「……もしかして、虎君がいるの?」
小声で智也さんが俺に聞く。
俺は智也さんの腕の中で頷いた。
「優翔、最後に聞くよ。虎君を好きになるのやめたい?」
「真木ちゃん、帰ってきたの~?」
「……やめ、たい。」
「わかった。」
智也さんは素早く俺を一瞬離して一緒に玄関に入ると扉を閉めてもう一度俺を抱きしめた。それと同時に虎が階段を降りる音がした。
「真木、ちゃん……?……誰だ。」
虎の声が冷たくなった。
「君こそ、誰なの?」
俺を抱きしめたまま、智也さんは虎に言った。
「僕は、真木ちゃんの幼馴染だよ。」
少し怒ったような虎の声が近付いてくる。
「ふーん。なんだ、ただの幼馴染か。」
智也さんは少し挑発するような声で言った。
「っ、で、誰なんだよ。あと、真木ちゃん離せよ。」
虎の手が俺の背中にある智也さんの腕を掴んだ。
「嫌だよ。離さない。」
「っ!なん!……真木ちゃんから離れろよ!」
バンッ パチッ
虎の手が壁を叩いた。
その拍子で玄関の灯りがついた。
「え……なんで?」
暗闇のせいで虎には智也さんが無理に俺を抱きしめていると見えていたんだろう。
灯りによって俺が智也さんに抱きついているのが分かると虎は後退りをしながらそう呟いた。
「なんでって……そんなの、見れば分かるでしょ?」
智也さんは俯いている俺の顎を掴んで唇を指でなぞった。
「優翔、あーんだよ。」
小声で言われて俺はその通りに口を開ける。
「ん、っ、んっ…ふぁ、ん、んぁ、」
「……だ……や、だ……いや、だ。」
虎の声が後ろから聞こえる。けれど、その声を塞ぐように智也さんの手が耳に触れる。
耳と口の中が熱くなって、ピリピリした。
「んっぁ、と、もやさっ、んっ、……はぁ、はぁ」
「あぁ、ごめん優翔口弱いのについ一杯しちゃった。」
そう言ってから、俺の頭を撫でてニコッと笑うと虎の方に視線を向けた。
「これで分かるよね?僕と優翔は恋人なんだよ。だから、抱きしめた優翔を離さないし、キスだってするよ。ま、そういうことだから……ただの幼馴染君は帰ってくれるかな?」
「……真木ちゃん……嘘、だよね。」
虎の声が俺に刺さる。でも、その瞬間抱きしめられた腕に力がこもった。智也さんの温もりが俺を守ってくれるみたいだった。
0
あなたにおすすめの小説
昔「結婚しよう」と言ってくれた幼馴染は今日、僕以外の人と結婚する
子犬一 はぁて
BL
幼馴染の君は、7歳のとき
「大人になったら結婚してね」と僕に言って笑った。
そして──今日、君は僕じゃない別の人と結婚する。
背の低い、寝る時は親指しゃぶりが癖だった君は、いつの間にか皆に好かれて、彼女もできた。
結婚式で花束を渡す時に胸が痛いんだ。
「こいつ、幼馴染なんだ。センスいいだろ?」
誇らしげに笑う君と、その隣で微笑む綺麗な奥さん。
叶わない恋だってわかってる。
それでも、氷砂糖みたいに君との甘い思い出を、僕だけの宝箱にしまって生きていく。
君の幸せを願うことだけが、僕にできる最後の恋だから。
【8話完結】僕の大切な人はBLゲームの主人公でした。〜モブは主人公の幸せのためなら、この恋も諦められます〜
キノア9g
BL
転生先は、まさかのBLゲームの世界。
モブであるリセルは、恋を自覚した瞬間、幼馴染・セスがこの世界の“主人公”だと気づいてしまう。
このまま一緒にいても、いつか彼は攻略対象に惹かれていく運命——それでも、今だけは傍にいたい。
「諦める覚悟をしたのに、どうしてこんなにも君が愛おしいんだろう」
恋の終わりを知っているモブと、想いを自覚していく主人公。
甘さと切なさが胸を締めつける、すれ違いから始まる運命の物語。
全8話。
【完結・BL】春樹の隣は、この先もずっと俺が良い【幼馴染】
彩華
BL
俺の名前は綾瀬葵。
高校デビューをすることもなく入学したと思えば、あっという間に高校最後の年になった。周囲にはカップル成立していく中、俺は変わらず彼女はいない。いわく、DTのまま。それにも理由がある。俺は、幼馴染の春樹が好きだから。だが同性相手に「好きだ」なんて言えるはずもなく、かといって気持ちを諦めることも出来ずにダラダラと片思いを続けること早数年なわけで……。
(これが最後のチャンスかもしれない)
流石に高校最後の年。進路によっては、もう春樹と一緒にいられる時間が少ないと思うと焦りが出る。だが、かといって長年幼馴染という一番近い距離でいた関係を壊したいかと問われれば、それは……と踏み込めない俺もいるわけで。
(できれば、春樹に彼女が出来ませんように)
そんなことを、ずっと思ってしまう俺だが……────。
*********
久しぶりに始めてみました
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
雪を溶かすように
春野ひつじ
BL
人間と獣人の争いが終わった。
和平の条件で人間の国へ人質としていった獣人国の第八王子、薫(ゆき)。そして、薫を助けた人間国の第一王子、悠(はる)。二人の距離は次第に近づいていくが、実は薫が人間国に行くことになったのには理由があった……。
溺愛・甘々です。
*物語の進み方がゆっくりです。エブリスタにも掲載しています
happy dead end
瑞原唯子
BL
「それでも俺に一生を捧げる覚悟はあるか?」
シルヴィオは幼いころに第一王子の遊び相手として抜擢され、初めて会ったときから彼の美しさに心を奪われた。そして彼もシルヴィオだけに心を開いていた。しかし中等部に上がると、彼はとある女子生徒に興味を示すようになり——。
だって、君は210日のポラリス
大庭和香
BL
モテ属性過多男 × モブ要素しかない俺
モテ属性過多の理央は、地味で凡庸な俺を平然と「恋人」と呼ぶ。大学の履修登録も丸かぶりで、いつも一緒。
一方、平凡な小市民の俺は、旅行先で両親が事故死したという連絡を受け、
突然人生の岐路に立たされた。
――立春から210日、夏休みの終わる頃。
それでも理央は、変わらず俺のそばにいてくれて――
📌別サイトで読み切りの形で投稿した作品を、連載形式に切り替えて投稿しています。
エピローグまで公開いたしました。14,000字程度になりました。読み切りの形のときより短くなりました……1000文字ぐらい書き足したのになぁ。
笑って下さい、シンデレラ
椿
BL
付き合った人と決まって12日で別れるという噂がある高嶺の花系ツンデレ攻め×昔から攻めの事が大好きでやっと付き合えたものの、それ故に空回って攻めの地雷を踏みぬきまくり結果的にクズな行動をする受け。
面倒くさい攻めと面倒くさい受けが噛み合わずに面倒くさいことになってる話。
ツンデレは振り回されるべき。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる