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1話 好きな能力を強化してください
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「素蓋さん、素蓋さん、起きてください」
「……ん?」
聞き慣れない声がした。
妙に可愛らしく、それでいてふわふわとつかみどころがない。ナチュラルにエコーがかかっているような声だ。
どうやら、アニメチャンネルをつけたまま寝てしまったようだな。
幸い、今日は休日だから大丈夫だ。この癒やしボイスを聞きながらぬくぬくの布団で寝よう。
こんな贅沢に時間を使えるなんて、オレは今、世界で一番幸せかもしれない……。
いや、でも、この声優は気になるぞ!
「この世の癒やしボイスを知り尽くしたオレが初めて聞く、超美声の持ち主は誰だっ!? 間違いなく未来の声優界を背負って立つ、金の卵っ……え?」
飛び起きたオレの目の前にいたのは、白い光に包まれた謎の美女だった。
眩しくて直視できないが、人間離れした顔の造形でありながら、異常なほどに美しい。目を細めていても、見つめると心を揺れ動かされそうになる。
しかも、人間離れしたこの美女は、おそらく全裸だ。あるいは、強烈な白光が服なのかもしれないが……うっすらと見える全身のあらゆる部分が限りなく白に近い肌色なのだ。
「だ……誰?」
「名乗るほどの者ではありません。ただの女神です」
「いや、名乗るほどの者だろ! っていうか、なんでオレの部屋に女神がいるんだ!?」
「素蓋さん。あなたを別世界に転移させに来ました」
「は?」
「素蓋さん。あなたを別世界に転移させに来ました」
同じ台詞を二度聞いたオレの感想は、『癒やしボイス萌えぇ~』だった。
……脳の処理が追いつかない。オレのハイスペックゲームPCならこの意味不明の状況を解析できるだろうか。
「素蓋さん。私はあなたを別の世界に、転移させに来たのです」
「いや、さっきから同じセリフを何度も何度も何度も……ありがとうございますっ!」
じゃなかった。
つい、癒やしボイスにお礼を言ってしまったが、そうじゃない。オレはこの意味不明の状況を理解したいのだ。
「百歩譲って、女神がオレの部屋にいるのはもうスルーしよう。あなたのおかげでたぶん一年はファブリーズしなくて済みそうだし」
「…………」
一瞬、女神が軽蔑のまなざしを向けてきた気がするが、気のせいだろう。
女神がそんな人間ぽい表情をするわけはない。話を戻そう。
「一つ疑問に思うのは、なぜオレがこの素晴らしきオタク文化のある世界を離れて、別の世界に転移させられなきゃいけないのかってことだ。そこんとこ、説明していただきたい」
「定員オーバーです」
女神はアッサリと言った。
エレベーターから下りてくださいくらいの感覚でサラッと言った。
そんなサラサラボイスも素敵だけど、はいそうですかと納得できるはずもない。
「世界に定員とかあるの……?」
「はい、ごめんなさい。この世界は三人用なのです」
「ガキ大将かッッッ!」
いくらなんでも世界の定員少なすぎるだろ!
「いえ、魂の大きさの話です」
女神は表情一つ変えずに言った。
え、まさか、オレの魂って実はすごい?
魂がデカイから具体的に何ができるのかと言われたら何も思い浮かばないけど、ひょっとしたら別世界で大活躍できる? 世界救っちゃう? 美少女にモテモテになっちゃう?
「素蓋さん」
女神は心の奥まで染み渡る声で言う。
オレの喜びの鐘を鳴らしてくれるのだろう。
さあ、聴かせてくださいっ! あなたの最高の声で、オレへの最高の賛辞をっっっ!
「あなたの魂は太りすぎです」
「…………え?」
オレの今の気持ちはおそらく、健康診断で余命を告げられた中年サラリーマンの絶望に限りなく近い。
「ちょっと意味がわからないんだけど、魂に太るとかあるの? それオレの見た目で言ってない?」
「いえ、あなたの魂は世界でも稀に見るほどの肥満体型です」
「体型って言ったな!? 魂に体型とかないだろ!?」
「素蓋さん、あなたの魂は世界に三つしか収まらないほど太っているのです。ですので、もっとスケールの大きな世界へ転移させます」
「スケールの大きな世界……?」
オレの脳裏に、ゲームで見た大草原や勇者の剣、凶悪なモンスターや囚われの姫、魔法やドラゴンといった夢いっぱいの光景が広がった。
「えへ……えへへ……まぁ、女神様が? そこまで言うなら? 別の世界に転移するのも悪くないかなぁなんて思っちゃったりなんかしちゃったりして」
「ありがとうございます。では、素蓋さんをスケールの大きな世界へ転移させます。そこは素蓋さんを七億人収容できるほどスケールの大きな世界です。存分に楽しんでください」
「やっほぉーッ! ついにオレの舞台が整ったぁ~! 地球はオレには小さすぎたってことが証明されたなハッハッハ!」
なんと言っても女神のお墨付きだ。オレは新しい世界で清楚な黒髪美少女や、病気がちなお姫様や、ロリロリな幼女にモテモテになって、ついでに英雄になったりしてやるぜッッ!
「では、最後に素蓋さんの努力値を再分配します」
「ん!? それはもしかして、RPGみたいな感じで、オレの能力を自由にカスタマイズできるってことか!?」
「理解が早くて助かります」
「いやっほぉぉおおおおお! 最強フラグ来たぁああああああああああ!」
これは何か一つの能力を特化させて、新しい世界でその力をフル活用して優越感に浸れる展開じゃないかぁああああ!
最高だ! 至れり尽くせりだぁ! 今、間違いなく、オレの人生で最高の追い風が吹いてる! 襟足が前髪になってるようなトランス状態だぜ!
「では、視覚的にわかりやすく表現します」
女神がそう言うと、オレの目の前に宝石のちりばめられた金色の円盤が現れた。
職人が何十年もかけて彫刻したような細かな模様が描かれている。中央には大きな水晶玉があり、そこから円の外側に向かって無数の線が伸びている。その線の先には小さなくぼみがあり、おそらく何か丸いものを埋められそうだ。
「では、これをお渡しします」
女神がオレに渡してきたのは、この世のモノとは思えないほどさわり心地のいい素材でできた白い袋だった。これもちょっと発光してる。
ちなみに女神はちゃんとオレに手渡してくれたのだが、気がついたときにはオレの手に握られていたような不思議な感覚だった。
「素蓋さん、その袋の中にあなたがこれまで培ってきた才能の玉が二十九個入っています」
「おお~! けっこうあるなぁ!」
吐息だけで声優を当てる能力とか、ゲーセンでフィギュアを取る能力とか、色々磨いてきたからな。
二十九個って、たぶん平均よりは多いはずだ。
「それと、素蓋さんの魂が秘めた才能の玉が、九兆個入ってます」
「オレがこれまで培ってきた二十九個は何だったんだ!?」
オレの人生の存在意義が疑われるぞ。才能の0.01パーセントも発揮してないじゃないか。
「円盤に手を伸ばし、必要な才能を思い浮かべ、玉の数を宣言してください。そうすれば、次の世界であなたはその力を発揮することができます」
「わかったよもう」
オレはとりあえず円盤に手をかざし、言語能力を思い浮かべた。
とりあえず異世界の美少女を口説けるくらいの言語能力は持っておきたい。
「ちなみに、才能がなくても今と同程度の生活は送れますので、ご安心ください」
「なるほど、それを聞いて安心した」
……いや、ちょっと待て。それって今のオレのあらゆる能力が最低レベルってことか?
若干腑に落ちなかったが、とりあえず『一個』と宣言した。
袋から発光した球体が出現し、円盤のくぼみに吸い込まれた。
中央の水晶が、透明から澄んだ水色に変わる。
「おぉ……これをあと九兆二十八回も繰り返すのか……」
ちょっと面倒くさくなってきたぞ。やっぱり、九兆個はまとめて一つの才能に振ろう。そうすれば一気に終わるはずだ。
まずは、余分な二十九個を必要最低限な才能に振ろう。
オレは美少女を見つけるための『視力』や、美少女の美声を聞くための『聴力』、カッコイイセリフを言うための『言語能力』などに一つずつ玉を入れた。
そして、うっかり言語能力に二回入れていたことに気づき、『記憶力』に十個入れておいた。
「よし、いよいよ本番だな」
なんだかんだで二十九個を分配したオレは、残りの九兆個の使い道を考え始めた。
普通に考えれば、異世界で無双するための勇者的な才能を選ぶべきだろう。
となると、戦闘力? あるいは知力? ちょっとひねって生産力? 魔法が使える世界なら魔力とか、ファンタジー世界なら剣術とか……。
「いや、やっぱり一番カッコいい能力は、コレだろ」
オレは円盤に手をかざし、武道の達人のような『技術』を思い浮かべた。
「それでいいのですね?」
「おうよ。やっぱり小指一本で敵を倒すとか、そういうのが一番憧れるんだよっ!」
「なるほど、それは複合的な能力ですので、いくつかの才能に分配されます」
「それでいいよ」
オレは異世界の強敵を赤子のように扱う天才を強くイメージしながら、叫んだ。
「九兆ッッッ!」
袋から無数の光が飛び出し、円盤に吸収されていく。
これまでの数とは比べものにならない。まるで間近で流星群を眺めているような光景だ。
圧倒的な光量にまぶしさを感じながらも、オレはその光の不思議なエネルギーの流れを見つめた。
そして、すべての光が円盤に吸い込まれたとき、オレの肌はほんのりと暖かくなっていた。中央の水晶は緑とオレンジのような色に光っている。
「無事終了です。これで、素蓋さんの能力が再分配されました。宣言通り、今から素蓋さんを異世界へ転移させます」
「ひゃっほぉおおおお! お願いしまっっっっす!」
初めてエロゲーを買ったときを上回るほどのテンションでオレは叫んだ。
頬のゆるみを抑えられない。
これまでただのオタクだったオレが、ずば抜けた才能を持って新しい世界にいけるなんて……! 最高じゃないかぁあああああ!
「では、素蓋さん。目を閉じてください。次に目を開いたときには、あなたはスケールの大きな異世界にいます」
「うぉおおおおおおおおお! 高まってきたぁあああああああああ!」
オレは興奮しすぎて震えている手を握り、目を閉じた。
そして、女神の究極の癒やしボイスで、天地が逆転するような、強烈なセリフを聞いた。
「では、素蓋さんを、筋肉を愛するパワー至上主義の異世界『マッスルワールド』へ転移させます」
……いや、ちょっと待って? オレ、『技術』とかいうクソステに九兆個も振っちゃったんですけど。
「……ん?」
聞き慣れない声がした。
妙に可愛らしく、それでいてふわふわとつかみどころがない。ナチュラルにエコーがかかっているような声だ。
どうやら、アニメチャンネルをつけたまま寝てしまったようだな。
幸い、今日は休日だから大丈夫だ。この癒やしボイスを聞きながらぬくぬくの布団で寝よう。
こんな贅沢に時間を使えるなんて、オレは今、世界で一番幸せかもしれない……。
いや、でも、この声優は気になるぞ!
「この世の癒やしボイスを知り尽くしたオレが初めて聞く、超美声の持ち主は誰だっ!? 間違いなく未来の声優界を背負って立つ、金の卵っ……え?」
飛び起きたオレの目の前にいたのは、白い光に包まれた謎の美女だった。
眩しくて直視できないが、人間離れした顔の造形でありながら、異常なほどに美しい。目を細めていても、見つめると心を揺れ動かされそうになる。
しかも、人間離れしたこの美女は、おそらく全裸だ。あるいは、強烈な白光が服なのかもしれないが……うっすらと見える全身のあらゆる部分が限りなく白に近い肌色なのだ。
「だ……誰?」
「名乗るほどの者ではありません。ただの女神です」
「いや、名乗るほどの者だろ! っていうか、なんでオレの部屋に女神がいるんだ!?」
「素蓋さん。あなたを別世界に転移させに来ました」
「は?」
「素蓋さん。あなたを別世界に転移させに来ました」
同じ台詞を二度聞いたオレの感想は、『癒やしボイス萌えぇ~』だった。
……脳の処理が追いつかない。オレのハイスペックゲームPCならこの意味不明の状況を解析できるだろうか。
「素蓋さん。私はあなたを別の世界に、転移させに来たのです」
「いや、さっきから同じセリフを何度も何度も何度も……ありがとうございますっ!」
じゃなかった。
つい、癒やしボイスにお礼を言ってしまったが、そうじゃない。オレはこの意味不明の状況を理解したいのだ。
「百歩譲って、女神がオレの部屋にいるのはもうスルーしよう。あなたのおかげでたぶん一年はファブリーズしなくて済みそうだし」
「…………」
一瞬、女神が軽蔑のまなざしを向けてきた気がするが、気のせいだろう。
女神がそんな人間ぽい表情をするわけはない。話を戻そう。
「一つ疑問に思うのは、なぜオレがこの素晴らしきオタク文化のある世界を離れて、別の世界に転移させられなきゃいけないのかってことだ。そこんとこ、説明していただきたい」
「定員オーバーです」
女神はアッサリと言った。
エレベーターから下りてくださいくらいの感覚でサラッと言った。
そんなサラサラボイスも素敵だけど、はいそうですかと納得できるはずもない。
「世界に定員とかあるの……?」
「はい、ごめんなさい。この世界は三人用なのです」
「ガキ大将かッッッ!」
いくらなんでも世界の定員少なすぎるだろ!
「いえ、魂の大きさの話です」
女神は表情一つ変えずに言った。
え、まさか、オレの魂って実はすごい?
魂がデカイから具体的に何ができるのかと言われたら何も思い浮かばないけど、ひょっとしたら別世界で大活躍できる? 世界救っちゃう? 美少女にモテモテになっちゃう?
「素蓋さん」
女神は心の奥まで染み渡る声で言う。
オレの喜びの鐘を鳴らしてくれるのだろう。
さあ、聴かせてくださいっ! あなたの最高の声で、オレへの最高の賛辞をっっっ!
「あなたの魂は太りすぎです」
「…………え?」
オレの今の気持ちはおそらく、健康診断で余命を告げられた中年サラリーマンの絶望に限りなく近い。
「ちょっと意味がわからないんだけど、魂に太るとかあるの? それオレの見た目で言ってない?」
「いえ、あなたの魂は世界でも稀に見るほどの肥満体型です」
「体型って言ったな!? 魂に体型とかないだろ!?」
「素蓋さん、あなたの魂は世界に三つしか収まらないほど太っているのです。ですので、もっとスケールの大きな世界へ転移させます」
「スケールの大きな世界……?」
オレの脳裏に、ゲームで見た大草原や勇者の剣、凶悪なモンスターや囚われの姫、魔法やドラゴンといった夢いっぱいの光景が広がった。
「えへ……えへへ……まぁ、女神様が? そこまで言うなら? 別の世界に転移するのも悪くないかなぁなんて思っちゃったりなんかしちゃったりして」
「ありがとうございます。では、素蓋さんをスケールの大きな世界へ転移させます。そこは素蓋さんを七億人収容できるほどスケールの大きな世界です。存分に楽しんでください」
「やっほぉーッ! ついにオレの舞台が整ったぁ~! 地球はオレには小さすぎたってことが証明されたなハッハッハ!」
なんと言っても女神のお墨付きだ。オレは新しい世界で清楚な黒髪美少女や、病気がちなお姫様や、ロリロリな幼女にモテモテになって、ついでに英雄になったりしてやるぜッッ!
「では、最後に素蓋さんの努力値を再分配します」
「ん!? それはもしかして、RPGみたいな感じで、オレの能力を自由にカスタマイズできるってことか!?」
「理解が早くて助かります」
「いやっほぉぉおおおおお! 最強フラグ来たぁああああああああああ!」
これは何か一つの能力を特化させて、新しい世界でその力をフル活用して優越感に浸れる展開じゃないかぁああああ!
最高だ! 至れり尽くせりだぁ! 今、間違いなく、オレの人生で最高の追い風が吹いてる! 襟足が前髪になってるようなトランス状態だぜ!
「では、視覚的にわかりやすく表現します」
女神がそう言うと、オレの目の前に宝石のちりばめられた金色の円盤が現れた。
職人が何十年もかけて彫刻したような細かな模様が描かれている。中央には大きな水晶玉があり、そこから円の外側に向かって無数の線が伸びている。その線の先には小さなくぼみがあり、おそらく何か丸いものを埋められそうだ。
「では、これをお渡しします」
女神がオレに渡してきたのは、この世のモノとは思えないほどさわり心地のいい素材でできた白い袋だった。これもちょっと発光してる。
ちなみに女神はちゃんとオレに手渡してくれたのだが、気がついたときにはオレの手に握られていたような不思議な感覚だった。
「素蓋さん、その袋の中にあなたがこれまで培ってきた才能の玉が二十九個入っています」
「おお~! けっこうあるなぁ!」
吐息だけで声優を当てる能力とか、ゲーセンでフィギュアを取る能力とか、色々磨いてきたからな。
二十九個って、たぶん平均よりは多いはずだ。
「それと、素蓋さんの魂が秘めた才能の玉が、九兆個入ってます」
「オレがこれまで培ってきた二十九個は何だったんだ!?」
オレの人生の存在意義が疑われるぞ。才能の0.01パーセントも発揮してないじゃないか。
「円盤に手を伸ばし、必要な才能を思い浮かべ、玉の数を宣言してください。そうすれば、次の世界であなたはその力を発揮することができます」
「わかったよもう」
オレはとりあえず円盤に手をかざし、言語能力を思い浮かべた。
とりあえず異世界の美少女を口説けるくらいの言語能力は持っておきたい。
「ちなみに、才能がなくても今と同程度の生活は送れますので、ご安心ください」
「なるほど、それを聞いて安心した」
……いや、ちょっと待て。それって今のオレのあらゆる能力が最低レベルってことか?
若干腑に落ちなかったが、とりあえず『一個』と宣言した。
袋から発光した球体が出現し、円盤のくぼみに吸い込まれた。
中央の水晶が、透明から澄んだ水色に変わる。
「おぉ……これをあと九兆二十八回も繰り返すのか……」
ちょっと面倒くさくなってきたぞ。やっぱり、九兆個はまとめて一つの才能に振ろう。そうすれば一気に終わるはずだ。
まずは、余分な二十九個を必要最低限な才能に振ろう。
オレは美少女を見つけるための『視力』や、美少女の美声を聞くための『聴力』、カッコイイセリフを言うための『言語能力』などに一つずつ玉を入れた。
そして、うっかり言語能力に二回入れていたことに気づき、『記憶力』に十個入れておいた。
「よし、いよいよ本番だな」
なんだかんだで二十九個を分配したオレは、残りの九兆個の使い道を考え始めた。
普通に考えれば、異世界で無双するための勇者的な才能を選ぶべきだろう。
となると、戦闘力? あるいは知力? ちょっとひねって生産力? 魔法が使える世界なら魔力とか、ファンタジー世界なら剣術とか……。
「いや、やっぱり一番カッコいい能力は、コレだろ」
オレは円盤に手をかざし、武道の達人のような『技術』を思い浮かべた。
「それでいいのですね?」
「おうよ。やっぱり小指一本で敵を倒すとか、そういうのが一番憧れるんだよっ!」
「なるほど、それは複合的な能力ですので、いくつかの才能に分配されます」
「それでいいよ」
オレは異世界の強敵を赤子のように扱う天才を強くイメージしながら、叫んだ。
「九兆ッッッ!」
袋から無数の光が飛び出し、円盤に吸収されていく。
これまでの数とは比べものにならない。まるで間近で流星群を眺めているような光景だ。
圧倒的な光量にまぶしさを感じながらも、オレはその光の不思議なエネルギーの流れを見つめた。
そして、すべての光が円盤に吸い込まれたとき、オレの肌はほんのりと暖かくなっていた。中央の水晶は緑とオレンジのような色に光っている。
「無事終了です。これで、素蓋さんの能力が再分配されました。宣言通り、今から素蓋さんを異世界へ転移させます」
「ひゃっほぉおおおお! お願いしまっっっっす!」
初めてエロゲーを買ったときを上回るほどのテンションでオレは叫んだ。
頬のゆるみを抑えられない。
これまでただのオタクだったオレが、ずば抜けた才能を持って新しい世界にいけるなんて……! 最高じゃないかぁあああああ!
「では、素蓋さん。目を閉じてください。次に目を開いたときには、あなたはスケールの大きな異世界にいます」
「うぉおおおおおおおおお! 高まってきたぁあああああああああ!」
オレは興奮しすぎて震えている手を握り、目を閉じた。
そして、女神の究極の癒やしボイスで、天地が逆転するような、強烈なセリフを聞いた。
「では、素蓋さんを、筋肉を愛するパワー至上主義の異世界『マッスルワールド』へ転移させます」
……いや、ちょっと待って? オレ、『技術』とかいうクソステに九兆個も振っちゃったんですけど。
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