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16章
汚穢の夢
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4Pの段ボール箱に、十数本、栄養系清涼飲料の小瓶がびっしりと並んでいた。求はその段ボール箱にガムテープで封をする係を割り当てられており、その現場である勝江台の高層住宅の一室には、鼻をつんざき、頭痛を催す臭いが満ちている。
ブルーシートに置かれた飲料の瓶に、松村と岡安が、如雨露を使って、携行缶から汲んだ中身を流し込み、それを能勢浩と、他の二人の男が睨みを効かせて監督する。
部屋の隅に十数と積まれたこの携行缶は、別働の者達が、ホームセンターのマテハン倉庫に深夜に忍び込み、窃盗してきたものだということを、求も会話を拾って知っている。
黒スーツの肩に白いストールを掛けたオールバックヘアの男が、八田のぞみの新作は観たか、と、隣に立つ、龍の図柄が入ったブルゾンを着たパンチパーマで口髭をたくわえた男に訊き、俺はまだだとその男が答えた。ストールの男が、来週、あれ、若松に出るらしいぜ、と言うと、ブルゾンの男が、へえ、と相槌を打った。
「お前は千平中だ。照尾の車に乗れ」浩が求に声を投げたのは、充填、梱包作業のめどがだいぶついた頃合だった。
「秀豊、お前は柏田工業高な。おい、岡、おめえは、俺の車で谷千代だ。萩原と一緒に、マイプラタナスの駅通路にしゃがめ」
車のキーを手にした浩は指示を出し終えると、煙草を咥えた岡安に、おい、と投げた。
「今、ここじゃやめろ。引火して、どかん、だ。俺の中坊ん頃の仲間がそれで、車で死んだんだからよ」
一箱の4P段ボール箱を積んだカーキ色のジープの助手席に乗った求の頭には、行き着く底というものを失った虚無のみがあり、夢の気配は完全に消失していた。
「睾丸って、お前、分かっか?」「おちんちんのことですか?」ジープの運転席から、照尾と呼ばれていたストール掛けの男に問われた求は、目を瞬かせ、声を震わせながら訊き返した。
「馬鹿。そいつは竿だ。その後ろの玉の袋のことだよ。分かりやすく教えてやるよ。金玉だよ」照尾はきんと高く、掠れた声で、求の物知らずを冷たく失笑した。
国道を走るジープの窓外を、ファミリーレストランのフラナガンズ勝江台店、ラブホテルが通り過ぎていく。
「そいつを潰すのは、ハンマーで叩くのも、ゴルフクラブで打つのも、ペンチで捻るのもありだけどよ、ぶっ潰された奴の悲鳴なんて、お前、まだ聞いたことねえだろ。けどな、これから聞くことになるかもしれねえぞ。それが俺達の落とし前なんだよ」
求は、照尾の含み脅しを助手席でただ受けるだけの対応になった。
車は、四十分ほどで、市立千平台中学校のフェンス脇に横づけされた。グラウンドでは、まだ身の丈が低い一年生の男女が、体育の授業を行っていた。男子は短パン、女子はブルマ姿だった。校舎のどこかから、レッド・ウォリアーズの「SHOCK ⅯE」がフルボリュームで流れている。
求は照尾に命じられ、開梱した段ボール箱を持ち、車を降りた。同時に、ジープは、いわゆる、ぱらりら、という暴走族ホーンを鳴らした。二階の窓から、幼い中に曲を刻んだ男女の顔がいくつか覗いた。
「純トロ、あるよ。一本、二千円だよ」求は、正門からフェンス前に出てきた、よれたスクールジャージを着崩し、髪が染まっている者も混じる数人の幼い男女に、震える声を掛けた。
男女生徒は、我先にと争って、夏目漱石の千円札を二枚づつ、求に差し出した。ぽっかりと開いた口から、前歯の欠損した歯列を覗かせている少年もいた。求はそれを次々と、飲料の小瓶と交換した。求の片手に、数枚以上の千円札が握られるまで、時間はそう掛からなかった。
「今度、いつ来るの?」赤味がかった、緩いパーマヘアのサイドを結わえた少女が求に問うた。無邪気な口調だった。そこへ照尾が運転席から降り、求の隣に立った。
「ここには、再来月ぐらいにまた来るよ。それまでは、神谷の奴が師範張ってる、三丁目の剛道空手道場に行けば、薄めたやつ、安く分けてもらえるからね」照尾は馬鹿優しい口調で言い、少女の頭に掌をぽんと置き、撫でた。
そこへ、正門から出てきた教師が、フェンス前の数メーター先に立った。上がポロシャツに、下がジャージの姿で、銀縁眼鏡を掛けた、三十半ばの男だった。
「何だよ、先公。言いてえことがあんなら、はっきり言ってみろよ」ボリュームのあるパーマヘアをリーゼント風に調え、眉を細く剃った少年が体ごと振り向き、凄んだ。
「俺らが怖えんだろ? だったら、半端にかっこつけて、いちいち出しゃばってくんじゃねえよ。てめえの、いつもの何言ってんだか分かんねえ、俺らの目も見ねえで、口ん中でもごもご、もごもご言ってる話し方、苛つくんだよ!」
少年の怒罵を受けたその教師は、眼鏡の顔を伏せ、回れ右して、正門の中へと引っ込んだ。
校舎から流れるレッド・ウォリアーズの曲は、「OUTSIDER」に変わっていた。
「行くぞ。今日の売はこれで終わりだ」照尾が求に声を掛けて、助手席に乗るように促した。
求の心には、夢の影はなかった。語彙に変換すれば、無数の無意味が産み落とされていく、という感覚に見舞われてていた。
「集計、いくらだ、会計係」「今日は、四十二万と九千とちょっとっす」戻った高層住宅のデポ兼作業房で、浩に問われたパンチパーマに竜ブルゾンの男が答えた。その脇に立つ松村の体は、実身長以下に萎縮しているように求には見えた。
「次は明後日、舟端のコンコースで売だ。あと、そろそろ給料日時だ。またこの辺りに、喝の網も張る必要があんな。まあ、焦ることはねえ。吉崎フードマートの社長には十五、北総信金の課長には十二の女、充てがってるしな。それだけじゃねえ、サンライズ建設の専務の若い男狂いも、もう証拠をこっちの手の中に収めてんだ。てめえが女装して、ケツ掘ってもらって、裏声であんあん言ってんだもんな。たいしたタマだよ。それだけじゃねえよ。慈空苑の幹部が、少年部の小学生、中学生の雌ジャリをよ、金を配って食いまくってる情報も、俺達の手に落ちてるんだよ。写真とビデオの証拠ごとな。だから、引っ張るもんは、ここが引っ張り時だって時に、いつでも引っ張れるんだ。まして宗教法人なんて無税で、教祖とその身内は、綺麗事並べるだけで金ががっぽがっぽ入ってくる立場だかんな。そんな奴らばっかりが上等な車乗り回して、毎日贅沢三昧なんて、不公平すぎるってもんだぜ。そいつをこっちにも分けてもらう権利があんだよ。なあ、お前らもそう思うだろ」浩が笑い捨てた部屋の中は、ブルーシートが敷き放しになり、三つばかり残った業務用トルエンの携行缶が積まれている。テレビは、キュートな顔に大きな乳房を持つ女優が、黒のランジェリーを引き下げ、四つ這いになって自慰を行う、モザイク入りのアダルトビデオ映像を映し出し、甘い喘ぎが室内に流れていた。
「まあ、そんなわけだ。お前らみんな、今日はよく頑張ってくれたよ」浩は、主に求の目を見つめて言い、女優がオナニーを続けるテレビ画面に視線をちらりと馳せた。
「今日はこれから、お前らに褒美があっからよ」言った浩の目は、アダルトビデオの映るテレビ画面に向いたままだった。その口許には、意味を含んだ笑いが浮き出している。
高層住宅の下に停めた、リアガラスに日章旗のステッカーを貼った高級目の国産車は、あまり洗車をされていないようで、埃がかった黒の車体に陽光を鈍く反射させていた。
その脇に立つ浩が、携帯電話のアンテナを伸ばし、通話を始めた。その会話から、あのガキも連れてくんなら親から引っ張れ、という言葉が求の耳に聞き取れた。照尾の手には、一台のポラロイドカメラが持たれている。
浩が何も言わずとも、カメラ片手の照尾がその国産車の運転席に乗り込み、浩が松村と岡安、求に、乗れ、と手で促した。
「輪姦しに連れてってやる」地響きのような音を立てるエンジンが掛かった車の助手席で浩が言ったが、求にはその言葉の意味が掴めなかった。
オートマチックのクリープを経て、車が走り出した。求は、浩が口にした言葉の意味を、パチンコのようなものだと解釈しかけていた。
車は国道を下り、小路を通り、阿原地区の、人気の少ない道に入った。その道の後ろには、求達三人の母校である、谷千代市立阿原中学校の校舎がそびえている。
雑木林を伐採して作られた、幅の狭い未整備の道を、ツインテールの髪をし、長袖の白シャツ、ピンクのキロットスカートという姿をした、小柄な、女というよりは少女である人物が、自転車で走っていた。それを見た求は、あっという声を喉元に呑み込んだ。
求には、その少女が、先日に苦情を言われて追い出されたイズミダの軽食喫茶、アンジェにアルバイト勤務する仁藤りえであることがはっきりと分かった。
「ぶち当てろ」助手席の浩が低く言い、照尾が左へ急ハンドルを回した。
車のバンパーが、りえで間違いないと思われる少女の自転車に引っ掛かった。少女は自転車ごと跳ね飛ばされ、緑の側地帯に転がった。顔を見て、りえであることが確認された少女は、横たわった側地帯で、打った頭を抱え、声なく体を丸めていた。
その道には、人、車両の通りはなく、鳥類の啼く声と、国道の走行音だけが聞こえている。
そこへ、同じく地鳴りのようなエンジン音を立てるもう一台の車が、タイヤを軋ませて後ろに停車した。それは、何本ものアンテナを突き立てた、車高の沈んだ、同じく値が張る車種の、白の国産車だった。その車には、フロント、サイド、リアのウインドウに、黒いスモークシールドが貼られていた。
その車から、品性のない声の笑いを発する、二人の男が降り、りえの手、足を持ち、車へとその体を運んだ。その間、りえは苦痛に顔をしかめているだけだった。その男達は、先日、すえながの一件の折に顔を合わせた、赤髪のパンチパーマ、スキンヘッドにマスクの男だった。
りえの体が車に運び込まれる様子を確認した浩は、おい、と言い、照尾を促し、車をさらに奥まった田畑の広がる区域へ進めさせた。
二台の車は、自然林が枝を伸ばす小路の奥に建つ、二階建ての木造アパート前に停車し、エンジンを切った。窓ガラスが割れ、扉の外れかけた号室もあるそのアパートは、全ての住人が退去して久しい年月が経っていると見えた。
求は、りえを担ぎ、二階の端部屋にぞろぞろと滑り込む男達を、ただおろおろと追った。
頭を抱えているりえの体は、古畳の上で、浩を始めとする数人の男に見下ろされている。男達の口からは、低く潰した笑いが漏れ、求は、その後ろに立ち尽くすことしか出来なかった。
後ろから追ってきた車から降りた男の中には、年齢域的に求と変わらない、恰好ばかりをそれらしく決めていながら、どこか垢抜けない感じのする少年が一人いた。
「姦れっつわれたら、お前なら、どう姦る?」浩から唐突に訊かれた少年がしゃがみ込んで、りえのシャツの襟首を掴み、Gジャンの懐からナイフを抜き、彼女の顔に当てた。
「おい。姦らせろよ。姦らせねえと、その面、ずたずたに切り裂くぞ。脅しじゃねえぞ。お前の家族も殺すかんな。いいか、俺らのバックはな」少年は両眼を見開いて悪党気取りの顔を作り、まだ幼さの残る声で凄んだ。りえは、顔に脂汗を浮かせ、また頭を抱えて、体を丸めた。
「馬鹿野郎。そんなおもちゃ、引っ込めろ。通は、そんなもんは使わねえんだ」浩が少年の目高にしゃがんで言い、しまえ、と手でジェスチャーした。少年は立ち上がり、二歩、後ろへ下がった。
その時、まるで阿吽のように、浩、赤髪パンチパーマ、スキンヘッド、照尾、萩原と言う名前の分かった、竜のブルゾン姿をした男が輪になり、頭を抱えて体を縮めるりえを、前後、左右に囲んだ。
求の心は、確かに、やめろ!と叫んでいた。だが、握力が自分の倍もある、喧嘩慣れした数人もの男達を前にしては、りえのために出来ることは何もない。
何もない。この現実を、ただ一人、呑み下すことしか出来ない。自分には、腕力もIQもない。
この男達が持っているものは、何もない。
これから自分の目の前で行われようとしていることに対して、求は、善悪関係なく、心ならずも働くものであろう男の生理反応が、自分の体には働くことはない、と確信していた。
「今からお前らに、通の輪姦しを見せてやる」浩が、求、松村、岡安、少年を見回して言い、スキンヘッドの男が、おら、と言って、りえの髪を掴んで体を引き、赤髪パンチパーマの男が、嚇し声を発しながら、彼女の白いシャツのボタンを力に任せて引きちぎった。ボタンが弾け飛んで、ブラジャーが覗いた。それから、デザイン的に子供用と思われるそのブラジャーを、首元へとたくし上げるように毟り取った。まだ幼い発達具合の乳房が、揺れて露わになった。それから照尾が、反転したりえの体から、ピンクのキロットスカートを毟り抜き、その下のパンティを引き下ろし、その二つの衣類を足首から抜いて投げた。靴下と靴のみを着けた全裸に剥かれたりえは、恐怖と恥辱に声さえも上げることが出来ないという様相で、畳の上で、体を折り、陰部を両手で覆い隠していた。それを赤髪パンチパーマの男が、髪を掴んで上体を立たせた。
「これから俺達で、お前を女にしてやるんだよ。今日は、赤飯を炊く日だぜ。記念の写真もたくさん撮ってやっからよ。お前がこれを察に訴えた時のための保険だかんな。お前のおまんこと、顔までがばっちり写ってる写真がばら撒かれるんだぜ」赤髪パンチパーマの男は、荒らげた吐息を交えて言いながら、彼女の背中を自分の胸で押し、鎖骨に顎を載せながら、脇の下から回した手で、成長具合のまだ幼い乳房を、握り潰さんばかりの力を込めてこね上げ、絞るように揉み上げた。苦痛にしかめられた俯いたりえの顔には、涙と洟が光っている。
求は、岡安と肩を並べて立つ松村を見た。スキンヘッドと萩原の手で腿を開かされ、薄い陰毛の下に、赤い内壁を露わにされた女性器が、赤髪パンチパーマの手で押し広げられ、それを執視する男達の哄笑が湧き起こった。
松村は、その光景を前にして、顔と肩を落としていた。その横顔には、見紛いのない悲しみの翳が落ちている。
浩が黒のスラックスとトランクスを脱ぎ去り、勃起した陰茎を露わにすると、赤髪パンチパーマの男もそれに倣い、下半身裸になった。
りえは、畳の上で、短い嚇声を浴びせられながら、四つ這いの姿勢にされた。彼女の頭部は、照尾の手で畳に押しつけられ、その小さな体は、肛門までがあからさまにされた、尻を突き出した恰好に組み敷かれている。
「これはいい。ケツの穴までばっちりが写る」赤髪パンチパーマが、その姿をまた撮影した。
ストロボの光が、りえの濡れた顔、背中、尻に白く反射した。
浩が、両乳房に掌を掛け、それを揉み砕きながら、りえを一挙に貫いた。
求には、音が聞こえたように思えた。それは彼女の童膜だけでなく、儚く薄い、心の保護膜までが非道な刃によって突き破られる音だった。
浩の鼠径部がりえの尻を叩く音の響いた時間は、数分ほどだった。ふっと声を上げ、腰を震わせた浩が離れた時、りえの肛門部、陰部は、赤い汚れに塗れており、それは彼女の大腿にまで滴っていた。
それからりえは、仰向けの姿勢にされ、髪と右手首をスキンヘッドの男に畳に押しつけられ、体が海老反りになった状態で、赤髪パンチパーマの男に上から貫かれ、照尾の陰茎を口に突き込まれた。それを、すでに射精を終えた浩が、赤髪パンチパーマから受け取ったカメラで撮影した。
求はその悲態を、あたかもいつも、信号停車する車の運転席側、または店で居合わせる他の客の顔をしげしげと見るものと同じ感覚で見つめていた。欲望を覚えているからではない。見る、見つめることが、彼の生まれの持ち物なのだ。
次に、同じ姿勢を取らされたまま、照尾がのしかかり、容赦のない力勢で体を沈めた。りえは声を発さない。固く目を瞑り、紅潮し、流れる涙と鼻水で光る顔を横に向けて歯を食いしばっているだけだった。
次に、照尾、赤髪パンチパーマの手で、再び後背位の姿勢にされたりえは、後頭部を押さえて顔を畳に押しつけられた。それから、スキンヘッドにマスクの男が、りえの尻頬を拡げ、またもあからさまにされた肛門に亀頭を押し当て、角度を検めてから、陰茎を押し挿れた。陰茎を呑み込んだ肛門の縁が、バルーンのように膨縮を繰り返した。その間も、りえは声を発さなかった。スキンヘッドの男の腰が震えたのは、数分ののちだった。
「おい、茶色いもんが引っついてんぞ」りえの肛門から抜いた自分の陰茎を見たスキンヘッドが言い、浩と赤髪パンチパーマが笑った。
「待たせたな。おめえらの番だ。姦れよ」浩がスラックスを履きながら言った時になり、畳の上に横たわるりえが、乳房、陰部の前面を懸命に隠すように、額を膝に着け、体を丸めて、顔を両掌で覆った。その体が、おこりを起こしたように震え、顔を覆う掌の後ろから、子音を伸ばす泣き声が漏れた。
その号哭の声の中に、嫌だ、と聞こえる言葉があった。その時、求は、自分の頬にもひりつきの痛みが落ちていることに気づいていた。知らず識らずのうちに、彼の頬一面も涙に塗れていた。そして、その喉の奥からは、喘鳴に似た呼吸が漏れていることも、その時になって分かった。
松村と岡安が、二人並んで、ジャージと黒のスリムジーンズ、トランクスを脱ぎ捨てた。
「嫌だもへったくれもねえんだよ。しゃぶれよ、おら。おめえは俺達に選ばれたんだからよ」岡安が言い、顔を覆うりえの手を外して、瞑られた目から幾本もの熱い筋を顎下に向かって垂らした顔の口を、男根で塞いだ。りえは、岡安の性器に塞がれた喉の奥から、くぐもった、一層激しい号を発した。
「俺が終わって、岡安が終わったら、おめえに回すよ」松村がりえの膣口に自分の陰茎を当てながら、沈痛にトーンの落ちた口調で言った時、求は膝から畳に崩れた。
「何でお前までが泣くんだよ。男になりてえって思わねえの?」浩が無造作に言い、それに赤髪パンチパーマの男の低い笑いが重なった。やがて赤髪パンチパーマの男の口が開いた。
「おめえな、こういうのはよ、やったもん勝ちなんだよ。一端に張るんだったらよ、輪姦しぐれえ出来なきゃ駄目だぜ。女なんてもんはよ、いっぺん挿れちまえば、みんな同じなんだよ。こないだの温泉旅行で、十人で突っ込んだコンパニオンだってよ、初め、やめて、やめてって泣いてたのが、俺らにかわるがわる犯られるうちに、てめえからケツ振っておねだりして、しまいにてめえから俺らのちんぽこ、ぺっとん、ぺっとん咥えてきたんだぜ。すごかったぜ。回転寿司じゃねえ、回転フェラチオになったんだよ。女なんて、みんなそんなもんなんだよ」赤髪パンチパーマは、下がトランクスの姿で煙草を吸いながら、諭すような励ますような述べを、啜り上げて泣く求に投げた。
少年は、少し当惑したような顔で立ち尽くしているだけだった。
松村がりえに体を沈め、彼女の泣く声に粘膜の音が重なり始めた。
「ほらな、もうぐちょ濡れだべ? こういうもんなんだよ。間違いねえだろ。これまで何十人とぶっ込んできた俺が言うことだぜ」赤髪パンチパーマが笑いを混ぜて言い、岡安が、りえの口に性器を突き入れた腰を振り出した。
「てめえは自分にいい子ぶろうとしてんだよ」跪き、嗚咽を漏らし始めた求を振り返った松村が、腰を揺すり立てながら罵った。
「こんなの、ロックじゃないよ」低いビブラートを帯びた声が、震える横隔膜の底から絞り出された。松村に対して行う、初めての自己主張だった。その涙の言葉に、松村は振り返らなかった。
松村が射精すると、岡安がりえにのしかかり、腰を動かし始めた。彼の手は、彼女の乳房に掛かっている。りえの腕は、赤髪パンチパーマとスキンヘッドにより、押さえ込まれている。
松村は、求の浴びせた言葉には何も返さず、スリムジーンズを履くと、畳に座り込み、肘を膝に着け、それから、顔が見えなくなるまでに、項を深く落とした。
膝を覗き込む角度の顔から、光るものが滴ったように見えた。
りえは、その場にいた、求を除く全ての人間から犯され、涙と洟、涎に濡れた顔、精液を振りかけられた体で、赤く汚れたパンティ一枚の姿のまま、川の緑地帯にその身を捨てられた。叢に這った彼女は、土を握りしめて、大粒の涙、洟、涎を流して、口を大きく開けて、心底からの恨みと悲しみ、悔しさの慟哭を撒いた。求は、彼女を助けることの出来なかった負い目から、すぐにその姿から目を反らした。目を反らしても、りえの泣く声が彼の背中を打った。
「お前、今日あったこと、どっかに流してみろ。察に垂れ込んでもいいんだぜ」帰りの車の中で、助手席から求を振り返り、底光りする眼を向けた浩が、雑談調の言葉を投げてきた。
「県警の幹部クラスの人間にも、俺達の指示で動く人間がいるんだ。そいつらからてめえの情報が来りゃ、お前の身柄なんかいつでもさらえるんだよ。俺達の息が掛かった火葬場があっかんな。てめえ、そこで生きたまま竈に放り込まれて、骨だぞ」
求は言葉を返さなかった。松村は、先から瞼を伏せ、肩を落とし、一切の言葉を噤んでいた。
団地入口のバス停留所前で、求一人が、放られるように車を降ろされた。
仁藤りえが撒いた泣哭の顔が貼りつき、その声が、求の中に響き渡っている。獰悪な力の籠もった男の手の中で揉み潰されていた乳房と、押し広げられ、悲しい姿を晒した、真っ赤な膣口。欲望の凶器を突き込まれ、そこから流れ出した鮮血。
それらが残像めいて頭に巡る中、帰った家には、誰もいなかった。
一人の号室。その静寂を、求の咆哮が裂いた。洗面台の鏡に、非力な拳がめり込み、映る己の顔が、白い放射状のクラックに霞んだ。拳頭から血が滴り、母指球を伝い、床に落ちた。
そのまま自室の襖を開け、部屋に張り巡らされたラウドネスやポール・スタンレー、アイアンメイデン、モトリークルー、ヴァンヘイレンのポスターを、一枚一枚引きちぎり、破り、丸め、カーペットに叩きつけた。それから叫びをまた上げ、それはやがて、鼻腔奥、喉と頬を焼く慟哭に変わった。
一人の部屋に響く号鳴は、今日の日に、自分にとり、唯一つの藁であったものが、底のない汚穢の沼に永遠に沈んだことを知らしめられた悲しみがあってのものだった。
号泣が静かな啼泣に変わった頃、解錠音、ドアの開閉音が聞こえた。
手にショッピング袋を提げた父親は、血の滲んだ拳を握りしめ、滂沱の涙の顔で突っ伏す息子の背中に掌を載せた。
父の一夫は、息子の流している涙が、誰によるものであるかを理解していると見えた。
載せられた掌の温かみが、求の啼泣を、元の号咽に戻した。汗水と油の染み込んだ、その温かな掌は、求の頬に移り、流れる涙を優しく拭い始めた。
泣き続ける求の中で、春の陽気が、今、自分を包んでいる父親の愛と重なりつつあった。
ブルーシートに置かれた飲料の瓶に、松村と岡安が、如雨露を使って、携行缶から汲んだ中身を流し込み、それを能勢浩と、他の二人の男が睨みを効かせて監督する。
部屋の隅に十数と積まれたこの携行缶は、別働の者達が、ホームセンターのマテハン倉庫に深夜に忍び込み、窃盗してきたものだということを、求も会話を拾って知っている。
黒スーツの肩に白いストールを掛けたオールバックヘアの男が、八田のぞみの新作は観たか、と、隣に立つ、龍の図柄が入ったブルゾンを着たパンチパーマで口髭をたくわえた男に訊き、俺はまだだとその男が答えた。ストールの男が、来週、あれ、若松に出るらしいぜ、と言うと、ブルゾンの男が、へえ、と相槌を打った。
「お前は千平中だ。照尾の車に乗れ」浩が求に声を投げたのは、充填、梱包作業のめどがだいぶついた頃合だった。
「秀豊、お前は柏田工業高な。おい、岡、おめえは、俺の車で谷千代だ。萩原と一緒に、マイプラタナスの駅通路にしゃがめ」
車のキーを手にした浩は指示を出し終えると、煙草を咥えた岡安に、おい、と投げた。
「今、ここじゃやめろ。引火して、どかん、だ。俺の中坊ん頃の仲間がそれで、車で死んだんだからよ」
一箱の4P段ボール箱を積んだカーキ色のジープの助手席に乗った求の頭には、行き着く底というものを失った虚無のみがあり、夢の気配は完全に消失していた。
「睾丸って、お前、分かっか?」「おちんちんのことですか?」ジープの運転席から、照尾と呼ばれていたストール掛けの男に問われた求は、目を瞬かせ、声を震わせながら訊き返した。
「馬鹿。そいつは竿だ。その後ろの玉の袋のことだよ。分かりやすく教えてやるよ。金玉だよ」照尾はきんと高く、掠れた声で、求の物知らずを冷たく失笑した。
国道を走るジープの窓外を、ファミリーレストランのフラナガンズ勝江台店、ラブホテルが通り過ぎていく。
「そいつを潰すのは、ハンマーで叩くのも、ゴルフクラブで打つのも、ペンチで捻るのもありだけどよ、ぶっ潰された奴の悲鳴なんて、お前、まだ聞いたことねえだろ。けどな、これから聞くことになるかもしれねえぞ。それが俺達の落とし前なんだよ」
求は、照尾の含み脅しを助手席でただ受けるだけの対応になった。
車は、四十分ほどで、市立千平台中学校のフェンス脇に横づけされた。グラウンドでは、まだ身の丈が低い一年生の男女が、体育の授業を行っていた。男子は短パン、女子はブルマ姿だった。校舎のどこかから、レッド・ウォリアーズの「SHOCK ⅯE」がフルボリュームで流れている。
求は照尾に命じられ、開梱した段ボール箱を持ち、車を降りた。同時に、ジープは、いわゆる、ぱらりら、という暴走族ホーンを鳴らした。二階の窓から、幼い中に曲を刻んだ男女の顔がいくつか覗いた。
「純トロ、あるよ。一本、二千円だよ」求は、正門からフェンス前に出てきた、よれたスクールジャージを着崩し、髪が染まっている者も混じる数人の幼い男女に、震える声を掛けた。
男女生徒は、我先にと争って、夏目漱石の千円札を二枚づつ、求に差し出した。ぽっかりと開いた口から、前歯の欠損した歯列を覗かせている少年もいた。求はそれを次々と、飲料の小瓶と交換した。求の片手に、数枚以上の千円札が握られるまで、時間はそう掛からなかった。
「今度、いつ来るの?」赤味がかった、緩いパーマヘアのサイドを結わえた少女が求に問うた。無邪気な口調だった。そこへ照尾が運転席から降り、求の隣に立った。
「ここには、再来月ぐらいにまた来るよ。それまでは、神谷の奴が師範張ってる、三丁目の剛道空手道場に行けば、薄めたやつ、安く分けてもらえるからね」照尾は馬鹿優しい口調で言い、少女の頭に掌をぽんと置き、撫でた。
そこへ、正門から出てきた教師が、フェンス前の数メーター先に立った。上がポロシャツに、下がジャージの姿で、銀縁眼鏡を掛けた、三十半ばの男だった。
「何だよ、先公。言いてえことがあんなら、はっきり言ってみろよ」ボリュームのあるパーマヘアをリーゼント風に調え、眉を細く剃った少年が体ごと振り向き、凄んだ。
「俺らが怖えんだろ? だったら、半端にかっこつけて、いちいち出しゃばってくんじゃねえよ。てめえの、いつもの何言ってんだか分かんねえ、俺らの目も見ねえで、口ん中でもごもご、もごもご言ってる話し方、苛つくんだよ!」
少年の怒罵を受けたその教師は、眼鏡の顔を伏せ、回れ右して、正門の中へと引っ込んだ。
校舎から流れるレッド・ウォリアーズの曲は、「OUTSIDER」に変わっていた。
「行くぞ。今日の売はこれで終わりだ」照尾が求に声を掛けて、助手席に乗るように促した。
求の心には、夢の影はなかった。語彙に変換すれば、無数の無意味が産み落とされていく、という感覚に見舞われてていた。
「集計、いくらだ、会計係」「今日は、四十二万と九千とちょっとっす」戻った高層住宅のデポ兼作業房で、浩に問われたパンチパーマに竜ブルゾンの男が答えた。その脇に立つ松村の体は、実身長以下に萎縮しているように求には見えた。
「次は明後日、舟端のコンコースで売だ。あと、そろそろ給料日時だ。またこの辺りに、喝の網も張る必要があんな。まあ、焦ることはねえ。吉崎フードマートの社長には十五、北総信金の課長には十二の女、充てがってるしな。それだけじゃねえ、サンライズ建設の専務の若い男狂いも、もう証拠をこっちの手の中に収めてんだ。てめえが女装して、ケツ掘ってもらって、裏声であんあん言ってんだもんな。たいしたタマだよ。それだけじゃねえよ。慈空苑の幹部が、少年部の小学生、中学生の雌ジャリをよ、金を配って食いまくってる情報も、俺達の手に落ちてるんだよ。写真とビデオの証拠ごとな。だから、引っ張るもんは、ここが引っ張り時だって時に、いつでも引っ張れるんだ。まして宗教法人なんて無税で、教祖とその身内は、綺麗事並べるだけで金ががっぽがっぽ入ってくる立場だかんな。そんな奴らばっかりが上等な車乗り回して、毎日贅沢三昧なんて、不公平すぎるってもんだぜ。そいつをこっちにも分けてもらう権利があんだよ。なあ、お前らもそう思うだろ」浩が笑い捨てた部屋の中は、ブルーシートが敷き放しになり、三つばかり残った業務用トルエンの携行缶が積まれている。テレビは、キュートな顔に大きな乳房を持つ女優が、黒のランジェリーを引き下げ、四つ這いになって自慰を行う、モザイク入りのアダルトビデオ映像を映し出し、甘い喘ぎが室内に流れていた。
「まあ、そんなわけだ。お前らみんな、今日はよく頑張ってくれたよ」浩は、主に求の目を見つめて言い、女優がオナニーを続けるテレビ画面に視線をちらりと馳せた。
「今日はこれから、お前らに褒美があっからよ」言った浩の目は、アダルトビデオの映るテレビ画面に向いたままだった。その口許には、意味を含んだ笑いが浮き出している。
高層住宅の下に停めた、リアガラスに日章旗のステッカーを貼った高級目の国産車は、あまり洗車をされていないようで、埃がかった黒の車体に陽光を鈍く反射させていた。
その脇に立つ浩が、携帯電話のアンテナを伸ばし、通話を始めた。その会話から、あのガキも連れてくんなら親から引っ張れ、という言葉が求の耳に聞き取れた。照尾の手には、一台のポラロイドカメラが持たれている。
浩が何も言わずとも、カメラ片手の照尾がその国産車の運転席に乗り込み、浩が松村と岡安、求に、乗れ、と手で促した。
「輪姦しに連れてってやる」地響きのような音を立てるエンジンが掛かった車の助手席で浩が言ったが、求にはその言葉の意味が掴めなかった。
オートマチックのクリープを経て、車が走り出した。求は、浩が口にした言葉の意味を、パチンコのようなものだと解釈しかけていた。
車は国道を下り、小路を通り、阿原地区の、人気の少ない道に入った。その道の後ろには、求達三人の母校である、谷千代市立阿原中学校の校舎がそびえている。
雑木林を伐採して作られた、幅の狭い未整備の道を、ツインテールの髪をし、長袖の白シャツ、ピンクのキロットスカートという姿をした、小柄な、女というよりは少女である人物が、自転車で走っていた。それを見た求は、あっという声を喉元に呑み込んだ。
求には、その少女が、先日に苦情を言われて追い出されたイズミダの軽食喫茶、アンジェにアルバイト勤務する仁藤りえであることがはっきりと分かった。
「ぶち当てろ」助手席の浩が低く言い、照尾が左へ急ハンドルを回した。
車のバンパーが、りえで間違いないと思われる少女の自転車に引っ掛かった。少女は自転車ごと跳ね飛ばされ、緑の側地帯に転がった。顔を見て、りえであることが確認された少女は、横たわった側地帯で、打った頭を抱え、声なく体を丸めていた。
その道には、人、車両の通りはなく、鳥類の啼く声と、国道の走行音だけが聞こえている。
そこへ、同じく地鳴りのようなエンジン音を立てるもう一台の車が、タイヤを軋ませて後ろに停車した。それは、何本ものアンテナを突き立てた、車高の沈んだ、同じく値が張る車種の、白の国産車だった。その車には、フロント、サイド、リアのウインドウに、黒いスモークシールドが貼られていた。
その車から、品性のない声の笑いを発する、二人の男が降り、りえの手、足を持ち、車へとその体を運んだ。その間、りえは苦痛に顔をしかめているだけだった。その男達は、先日、すえながの一件の折に顔を合わせた、赤髪のパンチパーマ、スキンヘッドにマスクの男だった。
りえの体が車に運び込まれる様子を確認した浩は、おい、と言い、照尾を促し、車をさらに奥まった田畑の広がる区域へ進めさせた。
二台の車は、自然林が枝を伸ばす小路の奥に建つ、二階建ての木造アパート前に停車し、エンジンを切った。窓ガラスが割れ、扉の外れかけた号室もあるそのアパートは、全ての住人が退去して久しい年月が経っていると見えた。
求は、りえを担ぎ、二階の端部屋にぞろぞろと滑り込む男達を、ただおろおろと追った。
頭を抱えているりえの体は、古畳の上で、浩を始めとする数人の男に見下ろされている。男達の口からは、低く潰した笑いが漏れ、求は、その後ろに立ち尽くすことしか出来なかった。
後ろから追ってきた車から降りた男の中には、年齢域的に求と変わらない、恰好ばかりをそれらしく決めていながら、どこか垢抜けない感じのする少年が一人いた。
「姦れっつわれたら、お前なら、どう姦る?」浩から唐突に訊かれた少年がしゃがみ込んで、りえのシャツの襟首を掴み、Gジャンの懐からナイフを抜き、彼女の顔に当てた。
「おい。姦らせろよ。姦らせねえと、その面、ずたずたに切り裂くぞ。脅しじゃねえぞ。お前の家族も殺すかんな。いいか、俺らのバックはな」少年は両眼を見開いて悪党気取りの顔を作り、まだ幼さの残る声で凄んだ。りえは、顔に脂汗を浮かせ、また頭を抱えて、体を丸めた。
「馬鹿野郎。そんなおもちゃ、引っ込めろ。通は、そんなもんは使わねえんだ」浩が少年の目高にしゃがんで言い、しまえ、と手でジェスチャーした。少年は立ち上がり、二歩、後ろへ下がった。
その時、まるで阿吽のように、浩、赤髪パンチパーマ、スキンヘッド、照尾、萩原と言う名前の分かった、竜のブルゾン姿をした男が輪になり、頭を抱えて体を縮めるりえを、前後、左右に囲んだ。
求の心は、確かに、やめろ!と叫んでいた。だが、握力が自分の倍もある、喧嘩慣れした数人もの男達を前にしては、りえのために出来ることは何もない。
何もない。この現実を、ただ一人、呑み下すことしか出来ない。自分には、腕力もIQもない。
この男達が持っているものは、何もない。
これから自分の目の前で行われようとしていることに対して、求は、善悪関係なく、心ならずも働くものであろう男の生理反応が、自分の体には働くことはない、と確信していた。
「今からお前らに、通の輪姦しを見せてやる」浩が、求、松村、岡安、少年を見回して言い、スキンヘッドの男が、おら、と言って、りえの髪を掴んで体を引き、赤髪パンチパーマの男が、嚇し声を発しながら、彼女の白いシャツのボタンを力に任せて引きちぎった。ボタンが弾け飛んで、ブラジャーが覗いた。それから、デザイン的に子供用と思われるそのブラジャーを、首元へとたくし上げるように毟り取った。まだ幼い発達具合の乳房が、揺れて露わになった。それから照尾が、反転したりえの体から、ピンクのキロットスカートを毟り抜き、その下のパンティを引き下ろし、その二つの衣類を足首から抜いて投げた。靴下と靴のみを着けた全裸に剥かれたりえは、恐怖と恥辱に声さえも上げることが出来ないという様相で、畳の上で、体を折り、陰部を両手で覆い隠していた。それを赤髪パンチパーマの男が、髪を掴んで上体を立たせた。
「これから俺達で、お前を女にしてやるんだよ。今日は、赤飯を炊く日だぜ。記念の写真もたくさん撮ってやっからよ。お前がこれを察に訴えた時のための保険だかんな。お前のおまんこと、顔までがばっちり写ってる写真がばら撒かれるんだぜ」赤髪パンチパーマの男は、荒らげた吐息を交えて言いながら、彼女の背中を自分の胸で押し、鎖骨に顎を載せながら、脇の下から回した手で、成長具合のまだ幼い乳房を、握り潰さんばかりの力を込めてこね上げ、絞るように揉み上げた。苦痛にしかめられた俯いたりえの顔には、涙と洟が光っている。
求は、岡安と肩を並べて立つ松村を見た。スキンヘッドと萩原の手で腿を開かされ、薄い陰毛の下に、赤い内壁を露わにされた女性器が、赤髪パンチパーマの手で押し広げられ、それを執視する男達の哄笑が湧き起こった。
松村は、その光景を前にして、顔と肩を落としていた。その横顔には、見紛いのない悲しみの翳が落ちている。
浩が黒のスラックスとトランクスを脱ぎ去り、勃起した陰茎を露わにすると、赤髪パンチパーマの男もそれに倣い、下半身裸になった。
りえは、畳の上で、短い嚇声を浴びせられながら、四つ這いの姿勢にされた。彼女の頭部は、照尾の手で畳に押しつけられ、その小さな体は、肛門までがあからさまにされた、尻を突き出した恰好に組み敷かれている。
「これはいい。ケツの穴までばっちりが写る」赤髪パンチパーマが、その姿をまた撮影した。
ストロボの光が、りえの濡れた顔、背中、尻に白く反射した。
浩が、両乳房に掌を掛け、それを揉み砕きながら、りえを一挙に貫いた。
求には、音が聞こえたように思えた。それは彼女の童膜だけでなく、儚く薄い、心の保護膜までが非道な刃によって突き破られる音だった。
浩の鼠径部がりえの尻を叩く音の響いた時間は、数分ほどだった。ふっと声を上げ、腰を震わせた浩が離れた時、りえの肛門部、陰部は、赤い汚れに塗れており、それは彼女の大腿にまで滴っていた。
それからりえは、仰向けの姿勢にされ、髪と右手首をスキンヘッドの男に畳に押しつけられ、体が海老反りになった状態で、赤髪パンチパーマの男に上から貫かれ、照尾の陰茎を口に突き込まれた。それを、すでに射精を終えた浩が、赤髪パンチパーマから受け取ったカメラで撮影した。
求はその悲態を、あたかもいつも、信号停車する車の運転席側、または店で居合わせる他の客の顔をしげしげと見るものと同じ感覚で見つめていた。欲望を覚えているからではない。見る、見つめることが、彼の生まれの持ち物なのだ。
次に、同じ姿勢を取らされたまま、照尾がのしかかり、容赦のない力勢で体を沈めた。りえは声を発さない。固く目を瞑り、紅潮し、流れる涙と鼻水で光る顔を横に向けて歯を食いしばっているだけだった。
次に、照尾、赤髪パンチパーマの手で、再び後背位の姿勢にされたりえは、後頭部を押さえて顔を畳に押しつけられた。それから、スキンヘッドにマスクの男が、りえの尻頬を拡げ、またもあからさまにされた肛門に亀頭を押し当て、角度を検めてから、陰茎を押し挿れた。陰茎を呑み込んだ肛門の縁が、バルーンのように膨縮を繰り返した。その間も、りえは声を発さなかった。スキンヘッドの男の腰が震えたのは、数分ののちだった。
「おい、茶色いもんが引っついてんぞ」りえの肛門から抜いた自分の陰茎を見たスキンヘッドが言い、浩と赤髪パンチパーマが笑った。
「待たせたな。おめえらの番だ。姦れよ」浩がスラックスを履きながら言った時になり、畳の上に横たわるりえが、乳房、陰部の前面を懸命に隠すように、額を膝に着け、体を丸めて、顔を両掌で覆った。その体が、おこりを起こしたように震え、顔を覆う掌の後ろから、子音を伸ばす泣き声が漏れた。
その号哭の声の中に、嫌だ、と聞こえる言葉があった。その時、求は、自分の頬にもひりつきの痛みが落ちていることに気づいていた。知らず識らずのうちに、彼の頬一面も涙に塗れていた。そして、その喉の奥からは、喘鳴に似た呼吸が漏れていることも、その時になって分かった。
松村と岡安が、二人並んで、ジャージと黒のスリムジーンズ、トランクスを脱ぎ捨てた。
「嫌だもへったくれもねえんだよ。しゃぶれよ、おら。おめえは俺達に選ばれたんだからよ」岡安が言い、顔を覆うりえの手を外して、瞑られた目から幾本もの熱い筋を顎下に向かって垂らした顔の口を、男根で塞いだ。りえは、岡安の性器に塞がれた喉の奥から、くぐもった、一層激しい号を発した。
「俺が終わって、岡安が終わったら、おめえに回すよ」松村がりえの膣口に自分の陰茎を当てながら、沈痛にトーンの落ちた口調で言った時、求は膝から畳に崩れた。
「何でお前までが泣くんだよ。男になりてえって思わねえの?」浩が無造作に言い、それに赤髪パンチパーマの男の低い笑いが重なった。やがて赤髪パンチパーマの男の口が開いた。
「おめえな、こういうのはよ、やったもん勝ちなんだよ。一端に張るんだったらよ、輪姦しぐれえ出来なきゃ駄目だぜ。女なんてもんはよ、いっぺん挿れちまえば、みんな同じなんだよ。こないだの温泉旅行で、十人で突っ込んだコンパニオンだってよ、初め、やめて、やめてって泣いてたのが、俺らにかわるがわる犯られるうちに、てめえからケツ振っておねだりして、しまいにてめえから俺らのちんぽこ、ぺっとん、ぺっとん咥えてきたんだぜ。すごかったぜ。回転寿司じゃねえ、回転フェラチオになったんだよ。女なんて、みんなそんなもんなんだよ」赤髪パンチパーマは、下がトランクスの姿で煙草を吸いながら、諭すような励ますような述べを、啜り上げて泣く求に投げた。
少年は、少し当惑したような顔で立ち尽くしているだけだった。
松村がりえに体を沈め、彼女の泣く声に粘膜の音が重なり始めた。
「ほらな、もうぐちょ濡れだべ? こういうもんなんだよ。間違いねえだろ。これまで何十人とぶっ込んできた俺が言うことだぜ」赤髪パンチパーマが笑いを混ぜて言い、岡安が、りえの口に性器を突き入れた腰を振り出した。
「てめえは自分にいい子ぶろうとしてんだよ」跪き、嗚咽を漏らし始めた求を振り返った松村が、腰を揺すり立てながら罵った。
「こんなの、ロックじゃないよ」低いビブラートを帯びた声が、震える横隔膜の底から絞り出された。松村に対して行う、初めての自己主張だった。その涙の言葉に、松村は振り返らなかった。
松村が射精すると、岡安がりえにのしかかり、腰を動かし始めた。彼の手は、彼女の乳房に掛かっている。りえの腕は、赤髪パンチパーマとスキンヘッドにより、押さえ込まれている。
松村は、求の浴びせた言葉には何も返さず、スリムジーンズを履くと、畳に座り込み、肘を膝に着け、それから、顔が見えなくなるまでに、項を深く落とした。
膝を覗き込む角度の顔から、光るものが滴ったように見えた。
りえは、その場にいた、求を除く全ての人間から犯され、涙と洟、涎に濡れた顔、精液を振りかけられた体で、赤く汚れたパンティ一枚の姿のまま、川の緑地帯にその身を捨てられた。叢に這った彼女は、土を握りしめて、大粒の涙、洟、涎を流して、口を大きく開けて、心底からの恨みと悲しみ、悔しさの慟哭を撒いた。求は、彼女を助けることの出来なかった負い目から、すぐにその姿から目を反らした。目を反らしても、りえの泣く声が彼の背中を打った。
「お前、今日あったこと、どっかに流してみろ。察に垂れ込んでもいいんだぜ」帰りの車の中で、助手席から求を振り返り、底光りする眼を向けた浩が、雑談調の言葉を投げてきた。
「県警の幹部クラスの人間にも、俺達の指示で動く人間がいるんだ。そいつらからてめえの情報が来りゃ、お前の身柄なんかいつでもさらえるんだよ。俺達の息が掛かった火葬場があっかんな。てめえ、そこで生きたまま竈に放り込まれて、骨だぞ」
求は言葉を返さなかった。松村は、先から瞼を伏せ、肩を落とし、一切の言葉を噤んでいた。
団地入口のバス停留所前で、求一人が、放られるように車を降ろされた。
仁藤りえが撒いた泣哭の顔が貼りつき、その声が、求の中に響き渡っている。獰悪な力の籠もった男の手の中で揉み潰されていた乳房と、押し広げられ、悲しい姿を晒した、真っ赤な膣口。欲望の凶器を突き込まれ、そこから流れ出した鮮血。
それらが残像めいて頭に巡る中、帰った家には、誰もいなかった。
一人の号室。その静寂を、求の咆哮が裂いた。洗面台の鏡に、非力な拳がめり込み、映る己の顔が、白い放射状のクラックに霞んだ。拳頭から血が滴り、母指球を伝い、床に落ちた。
そのまま自室の襖を開け、部屋に張り巡らされたラウドネスやポール・スタンレー、アイアンメイデン、モトリークルー、ヴァンヘイレンのポスターを、一枚一枚引きちぎり、破り、丸め、カーペットに叩きつけた。それから叫びをまた上げ、それはやがて、鼻腔奥、喉と頬を焼く慟哭に変わった。
一人の部屋に響く号鳴は、今日の日に、自分にとり、唯一つの藁であったものが、底のない汚穢の沼に永遠に沈んだことを知らしめられた悲しみがあってのものだった。
号泣が静かな啼泣に変わった頃、解錠音、ドアの開閉音が聞こえた。
手にショッピング袋を提げた父親は、血の滲んだ拳を握りしめ、滂沱の涙の顔で突っ伏す息子の背中に掌を載せた。
父の一夫は、息子の流している涙が、誰によるものであるかを理解していると見えた。
載せられた掌の温かみが、求の啼泣を、元の号咽に戻した。汗水と油の染み込んだ、その温かな掌は、求の頬に移り、流れる涙を優しく拭い始めた。
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