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陰る教室
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帰り道、決まって私達はここで別れる。
飾波区十二番地道路
この十字路を南方向への道へ進むと私たちの校舎、北側へ進むと本校舎へとたどり着く。
私の校舎が少し近いということに不満を持った親たちの抗議の甲斐もあり、
今や強固なセキュリティがその十字路を境に築かれている。
実のところそれほど近い距離でもないのだが、今なら少しは納得できる。
愛する息子を殺しかねない存在がその道の続く先にいるのだから。
今日も私はその十字路を左に、天森はその十字路を右に行く。
その下校ルートはお互いにとって遠くもなく、そして近くもないものだった。
授業が終わるなり何かを急くように天森は立ち上がった。
「ごめん!ホシミー!ちょっと先帰るね!」
「あ、あぁ…」
「うん、じゃ…また明日」
「ばいばーい!」
嵐のように去っていく天森を見送る。
久しく無かった静寂が教室を取り囲んだ。
窓の外を見つめ頬杖をつく。
最近になって天森は放課後一緒に帰らず、一人何かの作業に追われているようだった。
今日こそは問いただすと決めていたはずなのに、つくづく意気地のない自分に嫌気がさす。
「はぁ…どうしよっかな…」
時刻は16時半。本校舎の人たちは部活をしている頃合いだろうか。
もしかして天森も部活をしてるんじゃ?
自分だけ置いて行かれてしまったようで胸にぽっかり穴が空いたような気分になる。
いや、駄目だ。もっとポジティブに考えないと!
もし私なら何部に入るだろう。
文芸部とか?でも、人に見せるのはやだな…
体操部…も目立ちそうで怖いし、やっぱり美術部かなぁ。
「楽しそう…」
カバンからペンタブを取り出し、絵を描く。天森が来る前は、よくこうしていた。
放課後の教室の雰囲気を少しでも感じ取りたくて。
遠くに聞こえる吹奏楽のラッパをバックに趣味に勤しむ。
この時間だけは以前から好きだった。
いつも映像で見ている教室の風景に想いを馳せる。部活や恋愛や、勉強…何に打ち込んだっていい時間。
社会とは独立したまた別の社会。そんなイメージが私にはある。
学生の生活はいいことばかりという訳でもないだろう。
人の数だけ悪意はあるし、いじめや醜い蹴落としあいだってあるはずだ。
天森と出会ってなお、彼らに対する羨望は未だ消えてくれない。
「出来た…!」
なかなかいい出来じゃない?まぁ、見返すと下手すぎて死にたくなるんだろうけど…
夕焼けをバックに笑顔で微笑む少女の絵。自然とその少女のイメージに天森を投影してしまっている。
少し腹立たしいな、すぐ周りに影響を受ける人みたいで。まるで芯がないって言われてるみたい。
ふと教室の時計を見ると時刻は17時半を回っていた。やはり、絵を描き始めると時間の流れが早い。
「さてと…」
カバンに荷物をしまい帰ろうと席を立つ。
天森は普段、家で何してるんだろう。暇ならゲームとか誘ってみようかな…MMO。
教室の電気を消しドアに手をかけたその時、けたたましい警報の音が校舎中に鳴り響いた。
ヴー!ヴー!ヴー!
思わず体が跳ねる。
「な、何…!?」
「セキュリティゲートへの侵入を検知しました。不当な侵入。エマージェンシー:210」
「不法…侵入…?」
「そうだ…天森は…!?」
すぐさま携帯を取り出し天森に電話を掛ける。
「ただいま電話に出ることが出来ません。発信音の後にメッセージをお残しください」
侵入者と天森が鉢合わせた…なんてことはないよね?侵入者の目的は一体何?
ピーッ
「あ…天森…?大丈夫?流石にもう家ついてるよね…?はは…あ、私星葉ですまた連絡してね」
きっとすぐ、セキュリティガードが駆けつけるはず。だったら動かない方が賢明…?
でも、もし侵入者の目的が私で今ここに向かってきているんだとしたら…間に合わない。
「い、家に帰ろう…!天森は毒もケガもへっちゃらなスーパーJKだし…大丈夫、大丈夫」
幸いにも校舎の敷地は広い。きっと破られたのは校門前のゲートのはず。ならば裏口から帰れるはずだ。
一度帰宅ルートまで出てしまえば一通りの安全が確保されるはず。
監視カメラの目がより光っている上、治安維持ロボットもそこら中にいるからだ。
研究所も近いし、侵入者もそこまでは追ってくることはない…と思う。
まるで本能で身を守っているかのように毒が手の平からあふれ出る。
早く帰らねば気を失いかねない。
私は息を殺し、教室を後にした。
飾波区十二番地道路
この十字路を南方向への道へ進むと私たちの校舎、北側へ進むと本校舎へとたどり着く。
私の校舎が少し近いということに不満を持った親たちの抗議の甲斐もあり、
今や強固なセキュリティがその十字路を境に築かれている。
実のところそれほど近い距離でもないのだが、今なら少しは納得できる。
愛する息子を殺しかねない存在がその道の続く先にいるのだから。
今日も私はその十字路を左に、天森はその十字路を右に行く。
その下校ルートはお互いにとって遠くもなく、そして近くもないものだった。
授業が終わるなり何かを急くように天森は立ち上がった。
「ごめん!ホシミー!ちょっと先帰るね!」
「あ、あぁ…」
「うん、じゃ…また明日」
「ばいばーい!」
嵐のように去っていく天森を見送る。
久しく無かった静寂が教室を取り囲んだ。
窓の外を見つめ頬杖をつく。
最近になって天森は放課後一緒に帰らず、一人何かの作業に追われているようだった。
今日こそは問いただすと決めていたはずなのに、つくづく意気地のない自分に嫌気がさす。
「はぁ…どうしよっかな…」
時刻は16時半。本校舎の人たちは部活をしている頃合いだろうか。
もしかして天森も部活をしてるんじゃ?
自分だけ置いて行かれてしまったようで胸にぽっかり穴が空いたような気分になる。
いや、駄目だ。もっとポジティブに考えないと!
もし私なら何部に入るだろう。
文芸部とか?でも、人に見せるのはやだな…
体操部…も目立ちそうで怖いし、やっぱり美術部かなぁ。
「楽しそう…」
カバンからペンタブを取り出し、絵を描く。天森が来る前は、よくこうしていた。
放課後の教室の雰囲気を少しでも感じ取りたくて。
遠くに聞こえる吹奏楽のラッパをバックに趣味に勤しむ。
この時間だけは以前から好きだった。
いつも映像で見ている教室の風景に想いを馳せる。部活や恋愛や、勉強…何に打ち込んだっていい時間。
社会とは独立したまた別の社会。そんなイメージが私にはある。
学生の生活はいいことばかりという訳でもないだろう。
人の数だけ悪意はあるし、いじめや醜い蹴落としあいだってあるはずだ。
天森と出会ってなお、彼らに対する羨望は未だ消えてくれない。
「出来た…!」
なかなかいい出来じゃない?まぁ、見返すと下手すぎて死にたくなるんだろうけど…
夕焼けをバックに笑顔で微笑む少女の絵。自然とその少女のイメージに天森を投影してしまっている。
少し腹立たしいな、すぐ周りに影響を受ける人みたいで。まるで芯がないって言われてるみたい。
ふと教室の時計を見ると時刻は17時半を回っていた。やはり、絵を描き始めると時間の流れが早い。
「さてと…」
カバンに荷物をしまい帰ろうと席を立つ。
天森は普段、家で何してるんだろう。暇ならゲームとか誘ってみようかな…MMO。
教室の電気を消しドアに手をかけたその時、けたたましい警報の音が校舎中に鳴り響いた。
ヴー!ヴー!ヴー!
思わず体が跳ねる。
「な、何…!?」
「セキュリティゲートへの侵入を検知しました。不当な侵入。エマージェンシー:210」
「不法…侵入…?」
「そうだ…天森は…!?」
すぐさま携帯を取り出し天森に電話を掛ける。
「ただいま電話に出ることが出来ません。発信音の後にメッセージをお残しください」
侵入者と天森が鉢合わせた…なんてことはないよね?侵入者の目的は一体何?
ピーッ
「あ…天森…?大丈夫?流石にもう家ついてるよね…?はは…あ、私星葉ですまた連絡してね」
きっとすぐ、セキュリティガードが駆けつけるはず。だったら動かない方が賢明…?
でも、もし侵入者の目的が私で今ここに向かってきているんだとしたら…間に合わない。
「い、家に帰ろう…!天森は毒もケガもへっちゃらなスーパーJKだし…大丈夫、大丈夫」
幸いにも校舎の敷地は広い。きっと破られたのは校門前のゲートのはず。ならば裏口から帰れるはずだ。
一度帰宅ルートまで出てしまえば一通りの安全が確保されるはず。
監視カメラの目がより光っている上、治安維持ロボットもそこら中にいるからだ。
研究所も近いし、侵入者もそこまでは追ってくることはない…と思う。
まるで本能で身を守っているかのように毒が手の平からあふれ出る。
早く帰らねば気を失いかねない。
私は息を殺し、教室を後にした。
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