とある街の変な噂では全て男が被害に

実田 苗子

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☆☆☆ジムで聞き耳を立てるな

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 ジムで聞き耳を立てるな

 という、古ぼけた謎の小さな張り紙が張られたとあるジム内、そこそこ利用客がいてざわめく部屋内の、休憩スペースに集まる見慣れないグループ。
 一人の腕が大きく振られ、少し遠くに居た友人らしき人間が駆け寄り合流すると、エロ怖い話を教えてやると小さな声で話し出した。

『さわさわさんって知ってるか?』

 あるゲイの整体師が、女の客にレイプの冤罪かけられたらしくて、レイプは嘘だって後で分かったんだけどあそこの整体師は変態だって噂が立っちゃって。
 気持ち悪がって客が来なくなって、店が潰れて首吊って死んじゃったんだ。

 その整体師の霊が、生前レイプ犯に仕立て上げられたのが悔しくて、それならそれらしくヤラしいマッサージをしてやろうじゃないかって、この話を聞いた奴の所に来るらしいぜ。

 そんな馬鹿な話あるかよ、結局変態じゃんキモ、どうせエロならおっぱいデカイ女の霊にしろよ。
 そんな感想が口々に出され、全体的に不評のようだ。その話を聞いたうちの一人が、対処法は無いのかと話した奴に聞く、教えられた対処法はとても簡単なものだった。

『もう満足しましたって三回言うんだ、簡単だろ?』

 それを聞いた一人は鼻で嗤い、まぁ憶えとくわと言っただけだった。
 その後、何か続けて話していたが、そのグループの知り合いでも無ければ、ここのジムの常連客だというだけの男性は、変な噂もあるもんだ思っただけだった。





 その日の夜の事。ジムで見慣れない男が話していた噂話の通り、うつ伏せで寝ている彼の背中を何かがずっとなぞっている。

 最初は気のせいだと思っていたのだが、薄い寝間着の上から何度も何度も、手のようなモノが一本の指で頸から腰まで、つぅぅっとなぞり下ろしてくる。
 尻の割れ目ギリギリの際どい所までなぞられた時、寝ているが、彼は、腰を大きく跳ねさせてしまった。

「ぅうん……ンッ……」

 両方の肩甲骨の形を確かめるよう、冷たい手で触られ、軽く肩周りを揉まれ確認される。最近筋肉の付いてきた彼の太腿が震え、刺激から逃げるように枕に短い髪を擦り付けた。
 腰までゆっくりと五本の指を動かしながらくすぐりおりた手が、またこちょこちょと指先を細かく動かしながら背中を通って肩まで登り、頸から首の横を優しくさすって、また背中を撫で下ろす。

 ぞわぞわぞくぞく、気持ち悪いのとくすぐったいのが混ざった刺激に、眠っている彼の口から変な声が溢れ出た。

「ふはぁ……ッ!ぁ、んっ……」

 足の指を丸めて耐え、変な刺激に身を捩る彼は、ベッドの上で夜半、身体中を幽霊に触られ尽くして───
 
 ───目を覚ました。
「ンッ、ん、んん…………っ?」

 身体がむず痒いのか、あちこちを手で掻いた彼は、寝返りをうち仰向けになり、タオルケットを引き寄せ爪先まですっぽり収まるよう身体にかける。背中をベッドに擦り付け目を瞑れば、先程までの儀装感は綺麗に消えた。
 気のせいだ、浅い眠りにとろとろと落ちかけている彼の胸に、手が近づく。

「っ!!」

 明らかに人の指先が、タオルケットをかけているというのに、寝巻き越しに両乳首を突いてきて、彼の意識は浅い眠りから覚醒した。
 目を開けたらそこにナニかが居そうな気がして怖い、またうつ伏せになったら起きているのではと気づかれそうで怖い、不自然に呼吸音が変わり、身体が硬直する。
 
「…………ふーっ……」

 眉間に皺を寄せながら必死に寝たふりを続ける彼は。ツンツン、すり、つつぅ、人の指みたいなナニかは彼の恐怖で勃ち上がった乳首の周りを飽きずに弄り続けた。

「……っ!…………ふー……ん……っ」

 乳輪を何度も何度もなぞられ、乳首周りを優しくくすぐられる、むず痒さとくすぐったさに顔を背け、必死に気のせいだと自分に言い聞かせる。
 タオルケットに膝で作られた山ができ、忙しなく揺れる、太腿を擦り合わせているのだろうか。

「…………ん……んっ…………ぅ……」

 悪戯を繰り返す手が胸からお腹に移動する、服越しに腹筋をこしょこしょと擽られ、一つ一つ、前のボタンを外されていった。
 中途半端に胸の下まで外され、ととととっ、と、指が脇腹をリズミカルにつつき、臍の両脇にそれぞれ五本ずつ立てると、ボタンが外れていない服の下までなぞり上げる。。

「はっ……、ぁっ…………!」

 服越しでなく、直に胸を揉みしだかれ、集合、解散、と、乳首に触れないギリギリで繰り返す。繰り返したかと思ったら、親指一本で胸筋の下側をなぞり、腋の下に続く胸の横を中指と薬指で摩る。

「………ンンッ……ん、ぅ、ふぅ…………っ」

 若く性的なことに過敏な身体は容易く反応し、腰が淫らに揺れる。両膝がたてられ、左右に大きく振られ、怖くて胸を庇えない指先が、シーツとタオルケットを強く掴み皺を作る。

「ぅっ、ん……んんぅ………ぅふっ♡」

 そのまま一晩中、夢か現か解らない状態のまま胸と腹回りを責め続けられ、彼が朝起きると何事もなかったかのように寝巻きのボタンは閉められていた。
 その代わり、いやらしい夢でも見たのか、彼の下着はまるで漏らしたかのような状態で、寝巻きに大きな染みを作る程濡れていた。



 他人の雑談の内容なんて一々覚えていない、特に興味が無かった時の雑談内容など尚更。だから、その時の話を思い出したいといくら思ったところで、覚えていないなら思い出せないのが道理だ。
 昨晩と同じようにナニカが彼の寝室に来た、寝巻き越しに背筋を撫でられ、腰を摩られている。

「…………ふーっ……」

 うつ伏せの状態では前は弄ってこない、そう判断した彼は、寝返りは打たずにずっと枕に顔を埋めたまま眠る事にした。
 たとえ背中をなぞられようと、脇腹に近いところをこしょこしょと弄ばれようと、耳付近で自分のものではないと息が聞こえようと。彼は全てを気のせいだと思うことにした。してしまった。

「はぅ……ッ!」

 薄い布越しに内股を撫で上げられ、彼の呼吸が一瞬止まる。脚を尻の付け根から、裏腿、膝裏、脹脛と撫でおろされ、両足首に到達すると一度捕まれる。
 手は二度と足首を揉んだ後、今度は反対に、ふくらはぎ、膝裏、裏腿、尻の付け根と、じっくり楽しまれるように指の腹で感触を確かめられながら登られていく。

「ん………くっ…ぅ…………ふっ…………」

 体制が楽になるよう開いた脚の、特に内腿に手を差し込まれ、丹念にこしょこしょさわさわ撫でくすぐられると熱い吐息を漏らし、彼が尻に力を入れて耐える様がタオルケット越しに見て取れた。
 内腿は股間に近い部分兼、尻と腿との堺を優しくサワサワとくすぐられるのが一番弱いらしく、指先がそこをしつこくねっとりと撫でまわすと、彼の腰が跳ね、尻を少しだけ浮かすような格好になる。

「んひゃぁ……!?ひっ……ぅん…………っ♡」

 敏感な部分を触られ屈辱的な声を上げ、それでも、正体を見たくない、己の背後から聞こえる荒い鼻息に怯えて枕から顔を上げない。
 寝巻きの布越しにお尻の割目をなぞられ、タオルケットの下、寝巻きのズボンに彼の尻の割れ目が浮き出る。何度も、何度も、一本指でなぞられ、だんだんと狸寝入りと誤魔化すには難しい声が漏れ出てきた。

「ん゛ッ……♡ぅ…………ふぅ゛ッ……♡……ん、ンんっ……♡♡ァッ…♡」

 尻の割れ目に下着と寝巻きを食い込ませようとする指の動き、逃れようと動くと、どう見ても気持ち良くて腰をくねらせる動きになってしまい、見られているのかと羞恥に彼の耳が赤く染まる。
 何度も尻の割れ目に指を通され、たまに尾骶骨から背中をなぞり上げられる度に彼の腰が動き、ベッドシーツに擦れる股間がむくむくと大きくなっていく。

「ハッ……ぁ…♡…………んぁっ…♡ぁ……♡♡ゃっ…………♡んん゛ぅ…………♡♡」

 もじもじと太腿を擦り、無意識に腰を上げ、まる悪戯を続ける手を誘うような尻の振り方をする彼。
 それに応えるよう、尻の割れ目で遊んでいた手が、片手で右の尻の下側をくすぐり、もう片手が脚の間にそろりと入り、敏感かつ無防備な膨らみをねっとりとひと撫でした。

「んァッ……!?」

 彼の腰が急に落ち、シーツの上に激しく落ちる。身体に触れていた手が離れ、彼の心臓がバクバクと激しく動き始める。
 眠っていないのがバレたのか、怖くて身動きがとれず、目も開けられない。目の前に居たら、恐ろしい物を見せられたら、人間、恐怖を感じ過ぎるとフリーズしてしまう。

「…………………………………………………ぅっ」

 硬直する彼の身体をゆっくりと撫でさするようにして、手が戻ってきた。ふくらはぎ、膝裏、裏腿、尻の付け根と撫で上げ、するりと脚の間に滑り込む。
 少し脚を開いているため、無防備な陰嚢。三本の指でこしょこしょ、五本の指でさわさわ、焦らすような擽感から逃れられず、払い除けることも出来ず、彼はただ眠ったフリをして耐えるしか出来ない。

「は、ぅ……んふっ…………んっ、ンッ♡……ッ!!?」

 寝巻きの下が、手によって少し脱がされた。下着も下ろされ、彼の尻にタオルケットの布地が触れる。熱と湿度が増した股間に冷たい空気が触れ、無防備に晒された睾丸に熱くぬるついた人間の舌のような物が直接当てられた。
 脚を、閉じることができない。脚の間に、何か、人間の頭程度の大きさの物がある。晒された尻は両手で撫で回され、敏感かつ無防備な睾丸を、徹底的に舐める舌。彼は恐怖と快感で涙を流し、逃げるように腰を浮かせる。

「ッんっっ♡……ぁっ♡ぁ♡…………ッは♡ぅ……♡♡……ゃぁっ…………♡♡」

 下着の上からぬるぬると玉を舐めまわされ、硬くなり始めた陰茎をベッドに擦り付けるよう、尻を優しく揉まれながら軽く何度も押しつけられた。
 その度に彼は艶のある吐息を漏らし、熱が籠る身体を震わせて、一晩中幽霊の責苦に耐え続けた。

 朝になると、一晩中弄ばれて火照った彼の身体、ずり下がった寝巻きと下着。そして、何度も何度も体液を擦り付け、そのうえ小水まで漏らしてしまい大惨事のベッドがあった。



 探して探して、やっと見つけた解決法。もう満足しましたと、三回、ハッキリと言う、とても簡単な条件だった。
 夜、ベッドに入った彼は目を瞑ってくるのを待つ。手が、触れた。弾かれたように彼の身体が起き上がる。

「ッ、もう満足しまっ、アッ♡ひっ♡なんれっ♡♡」

 背後から両胸を揉まれ、乳首を別な指で突かれ、腰をくすぐられ、太腿を捕まれ、摩られながら強い力で脚を大きく広げられてしまった。
 寝巻きの前のボタンを外され、下は無理やり剥かれ、下着は脱がされてなるまいと彼の手が必死に掴むが、身体中を撫で回す手から送り込まれる性感にやられ、だんだんと力負けしてくる。

「やめてッ、くださぃっ、もっ、やめっ♡」

 終わらせる言葉よりも先に拒否の言葉が彼の口をついて出る、見えない相手に押し倒され、腕をひとまとめにシーツに縫い付けられた。
 はだけられた胸を撫で回され乳首を摘まれ、くにくにふにふにと弄られ続け、ジムで割った腹をいやらしく幾つもの手で撫で回される。

「ぃっ♡もう満足ッしまッァッ♡あっ♡♡」

 尻を割るように捕まれ、耳を愛でられるよう撫でられ、太腿を触られながら広げられ、陰嚢まで嬲りモノにされ、股間に集う手が何度も何度も、彼の昂ったモノを扱き続ける。

「ァッ♡あ゛ぁっ♡満足ッ♡したっ、からぁっっ♡♡」

 見えない相手に身体を愛でられ、泣きながら喘ぎ続ける彼は、見えない手に遊ばれ続け精を放ち、当然の如く、放出された白濁はタオルケットを汚す。

「ァ゛ッ♡♡♡もぅ゛ッ、満足したってえ゛ッッ♡♡やめてえ゛ッ♡♡」

 彼の脳裏を過ったのは、覚えていなかったはずの、見慣れないグループの会話の最後。顔も覚えていない、服装もそう言えば思い出せない。なのに、一人の口が最後に。

『次はあいつにしよう』

 そう動いたのを、今、思い出した。
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