とある街の変な噂では全て男が被害に

実田 苗子

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♢♢♢ビル、一階トイレのアイダさん

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 ある廃墟ビルの噂、一回の奥にあるトイレ、男女で別れている入り口の真ん中の扉を、2回、1回、3回の順で叩いたら。

『アイダさん、遊びましょ』

 って言うと、扉が現れるんだって。でもその扉に決して入ってはいけない、すぐに逃げて、閉じ込められるから。

 
 コンコン、コン、コンコンコン。手の甲で壁を叩き、もし、ホントに壁に扉が出たら写真撮ってテレビの心霊現象スペシャルにでも送ってやろうかと考えた三人組。

「アーイダさーん、あーそびーましょ」

 そのうちの一人、ノックした一人。男三人、しばらくクスクスケラケラ笑いながら壁を見ていたが、出現しない扉に早々に空き、踵を返した。
 この後どうする?腹減ってる?適当な会話をしながら足を動かし、玄関に向かおうとすると。

 背後で扉の開く音がした。
「……は?」

 ノックした彼が背後を振り向く前に冷たい手に、腕に、身体を絡め取られ、悲鳴を上げる前に口を塞がれた。友達へと手を伸ばすもこれから食べにいく場所を話していて気付かない。
 ずる、ずる、徐々にひんやりとした空気が流れてくる方へと引き摺り込まれていく。誰か助けて、やだ、ただの噂のはずなのに、なんで俺が、どうして。

パタン。

 二人の友達がお前はどこがいい?なんて振り向いた先には、何もない壁しか見えなかった。





 暗い狭いどこだここ怖い出してくれお願いだから出して、出して。
 口に当てられていた手が離れ、やっと呼吸が落ち着いた彼、涙目のま間あたりを確認すれば、目の前には小さい横長の窓がある扉、一人で入れられる牢屋の扉に似ている。

「じょ、冗談だろ……?」

 何故か柔らかい地面に座り込んだ状態で、光の入る小さな窓だけが唯一の救い。とにかく、扉があるなら外に出る、それで帰る。
 至極当然の考え、彼が立ちあがろうとしたその時、自分の右の耳の裏を冷たい人間の指のようなものがなぞった。

「ひっ……!?」

 薄気味悪さと気持ち悪さに膝から力が抜け、その場にへたり込んでしまった。気持ち悪いと手で払うといなくなる手が、すぐに戻ってきて耳の下から首までなぞってみたり、耳の裏を上から下までスリスリさすってくる。
 気色の悪い触り方と異様な冷たさ、首を激しく振り手を振り払って、扉に向かい尻を引きずって進んだ彼は、ドアノブか取手があるだろう所へ手を伸ばす。

 だが、彼が触ったのはドアノブではなく、誰かの手のひらだった。

「うわっ!?止めろ、触んじゃねぇ!!」

 振り払おうとしても耳の裏を擦る手のようには居なくならず、ひたすら指の間をするりするりと気色悪い触り方をしてくる。

「ふざけてんのか、変態!キモイんだよマジで離せ!!ぃやっ……!?」

 両手を恋人繋ぎのような状態にされてしまい、もう手は使えない、立ちあがり口ででもドアノブを回してやると決心した彼だが、肘と腋の間をいやらしく撫でられ始めて力が抜けてしまった。

「くはっ!ぅ、なんだよっ、さわんじゃねぇよっ!二の腕撫でんなぁっっ!!」

 口調は強がってはいるが、彼は大変二の腕が弱いらしい。さわさわ♡と背後から伸びる手が触るたびに、腕を身体に近づけ、閉じ切れないことに舌打ちをする。

「ッチ!くそがっ!はっ、なっ、せぇぅ……っ!」

 すりすり♡さわさわ♡やけにヤラシイ指の動きに悪寒を覚えた彼は、また無理やり身体を前に出し、扉に近づく。
 その瞬間、背後から伸びてきた新しい二本の手が、彼の首から胸の間───鎖骨を、開かれた襟元から忍び込んでそわそわっ♡と撫でくすぐった。

「は、ァッ♡」

 あまりに優しく甘く、イヤラシイ触り方。性感を煽る指の動きに身体の力を抜いてしまった彼は、間抜けな声を出して首をすくめて手の愛撫に肩を震わせる。

「ひゃ、ちょっ♡さ、わんじゃッ♡ね、ぇっ…♡ぁん……ッ♡やぁ、め、ろぉってぇ…………ッ♡」

 声に元気がなくなり、弱々しく、喘ぎ声と泣き声半々といった様子になる。特に弱いのが鎖骨の骨の上をなぞられること、指先がつつぅ♡と這うと、耐えられないのか彼の口から特に熱い吐息が漏れ出てしまう。

「はぅ…………ッ♡ちょ、ぉしのっ♡って、んじゃぁっ、ァッ♡ぁぁっ♡へんなとこッ♡さわん、なぁ……っ♡♡」

 鎖骨を触られ悶える彼の隙を突き、シャツの上から胸と腋の間、小胸筋の辺りを優しく揉み撫でられ始めてしまう。
 変なところと言えば確かに変なところで、指先でふにふに♡とされれば身悶えするようなむず痒さ、こしゃこしゃ♡とくすぐられれば腰から力が抜けるようなもどかしさ。息を荒げ中途半端な部位だけを優しく愛撫される彼の手は、まるで指の間を撫で犯す手に縋るようにしがみついていた。

「ぁ……♡ァッ♡……んぁ……………ッ♡くそっ、くそぉぉぉ……………ッ♡♡」

 性感帯をここまでじっとりねっとり愛撫されたことがないだろう若い身体は、些細な責めでも感じてしまう。
 スラックスの前にテントが張られ始め、赤くなった頬に、気まずげに伏せられた目。さわさわ♡そわそわ♡得体の知れない手から送り込まれる快感に、屈辱的なことに、彼は大層感じさせられていた。

「ンッ♡ぁ♡もっ、はなせよぉ………っ♡なんっ、で、みょうなとこっ♡ばっかぁぁ…………ッ♡♡」

 腰がむずむず、身体はそわそわ、脚はぴくぴく。微弱な快感、絶頂は確実にしないだろう決定打の無い刺激。背中を反らしくねる彼の身体に、また新しい手が腕を伸ばす。

「は、ぉぅ…………っ♡ァッ♡そ。こ………♡へんに、なるぅ……っ♡ふ、ぅうあ……ッ♡ぁふっ…♡」

 脇腹と背中の間を摩る二本の手、両側を、まるで愛でるようにさわぁっ♡と撫で上げ、撫で下ろし、彼の胴体のくねりをいっそう大きくする。
 性感帯ではあるが、少し違えばくすぐったさが混ざる場所。なのに手は確実に性感だけを彼の身体に送り込んできている。

「ふぁ、ぁ、ぁぁ、ぁぅ………っ♡♡よ、ぇぇんっ♡だっ、て……♡こ、うぃうの、ッ♡なに、したいんだよっ……♡ほんとに……ッ♡♡」

 だんだんと彼の身体に力が入らなくなり、下半身を縮こめて、甘い吐息を漏らしながらちょっとだけエッチな刺激に耐え続ける体制に入った。
 そんな彼の力が抜け閉じた腋の下、折りたたんだ膝の裏、ピッタリ閉じられた内腿に手が入り込み、イヤラシイ動きで性感を煽る。

「はぁっ♡あっ♡は、ぁぁっ…♡や、まじで、く、すぐったいだけ……ッ♡なっ♡のにぃ…………♡♡なんで…♡こっ♡んなあ…………っ♡♡」

 彼が悶えながらも口に出した疑問に答えるように、より一層淫らな動きで肌を撫でさすって見せる身体中の手達。
 ついでとばかりに追加された腿と尻たぶの間を撫でまわす手に、彼の腰が大袈裟に跳ねた。

「はぁっんッ♡そッ♡しゃれになんないってぇっ♡♡やッァッ♡くはぁ…………ッ♡♡あんっ♡だっ、はなれろぉっ♡♡」

 なでなで♡さわさわ♡さすさす♡すりすり♡、四方八方から弱いが性感帯を確実に責める快感に襲われ、彼の目から涙がこぼれ落ち、荒い息を吐く口からは涎が垂れてきてしまった。
 苦しい、気持ちいい、変になる、全部優しい、身体熱い。ぐるぐると快楽に犯された思考の中で、彼の願いはただ一つ、出したい。

「もっ、ぉ♡いいッ♡はなせよおっ♡手え離せってばぁ……ッ♡ヌきたいぃ……っっ♡♡」

 もうガチガチに勃起している彼のチンコ、膝を擦り合わせ、首をすくめ背中をピクピクと痙攣させる。
 手を開いて振り払おうとするが、さわさわもしょもしょ、身体のあちこちで這い動く手達に力を抜かされてしまう。痛いほどに張り詰めたそこ、股の間に、手が増えた。

「ぅぁあっ!?」

 服の上から彼の股間の膨らみを撫で、決して絶頂には足りない刺激を与え続ける手。
 膨らんだ彼の股間を更に昂らせるためか、執拗に何度も優しく撫で上げ擦り降り、もどかしい甘さを彼の腰へと送り込む手。

「んぁっ♡ひゃっん♡や、やめっ…、ひぁぁっ…♡んぁッ♡ぁぁ…………ッ♡」

 股間をいやらしく触る手は、彼のスラックス越しに手のひら全体で撫でさすったり、裏筋の辺りを優しくなぞったり掻いたりする陰湿な責めを繰り返す。
 じっくりねっとり時間をかけて全身を優しく責められ続けて、すっかり身体の熱をあげてしまった彼。腰を揺らめかせ、身体をくねらせ、つい。

「ぁっ………♡」

 スラックスにジワッと染みが一つ作られた、カウパーだろう、二度ほどジワッ、ジュワッと広がると全身の責めが止まる。
 赤面した顔を伏せ、いやらしい滴が滲みでた股間を隠すように脚を固く閉じる彼。イッては無い、吐精はしていない、だからこそ身体の熱は引かない。

「はーーー……っ♡はーーー……っ♡」

 熱い息を吐き出し、ムズムズそわそわと落ち着かない股間の熱をどうにか晴らすため、腰を淫らに振って尻を床に擦り付ける。
 快感を望む彼の行動を察してか、身体中の間に張り付いた手達が、服の中に沈む。穴も開けず、幽霊が壁を通り抜けるように、シャツを、スラックスを、パンツを、靴を、靴下を、全ての服の間に指が触れた。

「ッア♡」

 火照った肌の上を温い指が滑る、服と肌の間、隠さなくて良い場所も隠したい場所も全部愛撫され、弱いのに我慢できない快感に彼の身体が跳ねまわり、背中をビクつかせて大変ヨく啼き出した。

「はぁぁぁぁっ♡やッ、クソォッ!!そんなっ♡ぜんぶっ、とかッ!たえられるわけぇえぇっ♡ぁぁああ゛ッッ♡♡」

 服の下を、下着の中を、性感帯もそうでないところも優しく、さわさわなでなでごそごそもしょもしょ♡指が手のひらが爪が愛でるように撫でていく。

「ぉぉぉおッ♡そっ、こッ!?ひゃぁうっ♡♡んア゛ッ♡だめっ♡やめろぉぉッ♡んぉ゛ッ♡♡」

 男の一番気持ちいい部分まで、服をすり抜けた指は容赦なく撫で擦っていく。尿道口や裏筋、カリ首から竿、金玉まで、指が集い決して痛くはしない、ただただ気持ちいいだけの刺激を送り込んでくる。

「あ゛ッ♡イクッ♡でるッ♡♡はひッ♡たえらんなッア゛ッ♡♡♡はぁア゛~~~~ッ♡♡♡♡」

 首から下、ほぼ全身を優しく撫でられチンコまでまさぐられ、優しく長い絶頂を迎える彼。スラックスの染みが大きくなり、脚がビクビクと大きく痙攣する。
 もちろん吐精中もチンコも身体も愛撫され続け、服の中をいやらしく撫でまわされる快感を彼の身体に刷り込んでいく。

「ぉお゛ッ♡ぉぉぉ゛お゛~~~……ッ♡ア゛ッ♡♡んン゛ッ♡♡イク゛ッ♡またでェ゛ッ♡♡ふおォ゛…………ッ♡♡♡」

 目の前には扉、おそらく、ドアノブさえ握れば出られるだろう。だが、彼の肌を這い回る手達が、彼のチンコを優しく愛撫する手達が、彼の震える両手を恋人繋ぎであやす手が、それをさせない。

「ゆ、る゛ひッ♡あァア゛~~~~ッッ♡♡♡♡」

 一階トイレのアイダさんは、どうやら物の間が好きらしい。気に入った間をもつモノを引き摺り込んでは撫でまわし、自分の住む世界の間にずっと宝物のように取っておくのだという。
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