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鍛冶武者修行に出ますが何か!(海竜街編)
第弐百拾参話 ヤクザ屋さん(?)が乗り込んで来ましたが何か!
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「おい! 手前《てめぇ》が波奴真安ってこの商館を取り仕切ってる奴か?!」
荒々しい足音を響かせ襖を蹴破り姿を現した男達は、下半身にはズボンをはいてはいるものの上半身は裸かもしくはベストの様なものを羽織っているだけといった服装で、しかも土足厳禁の畳の上に泥のついた靴や草履を履いたままズカズカと上がり込み、真安以下その場で寛いでいた俺達を威圧するように怒鳴るような口調で誰何してきた。
蹴り破られた襖が倒れたその場は、寸前までアプロが座っていた場所。アプロは陽当たりの良い庭に面した縁側に移動していたから良かったものの、もし移動していなければ倒された襖の下敷きになっていた。それに、襖が倒れ起こった風でアプロの隣に座っていたアルディリアの髪の毛を巻き上げて乱し、目の前に置かれていた茶碗がひっくり返り中に残っていた翠茶が毀れてアルディリアの足を濡らし、乱れた髪と額に浮かんだ青筋につり上がった眼によって般若の形相と化していた。
そんなアルディリアにヒヤヒヤしながらもまずは成り行きを見る事にする俺とは対照的に、剣呑な視線で男達を上から下まで眺め(足元を見て僅かだが瞳に剣呑な光が灯った気がした)た真安は、
「なんなのですか、この野蛮人共は?」
と男達を無視するように男たちの後ろで困ったような表情を浮かべている商館の従業員らしき者達を問い詰める。途端に従業員たちは背筋をビシリと伸ばして直立不動の姿勢を取り、
「は、はい! この者たちは先日より我が商館が取り扱う羅漢獣王国からの品々の荷卸しなどの人足を斡旋したいと申し入れをしてきていたティブロン商会の者達です。私達の商館では以前よりカサートカ商会さんとのお付き合いがあるからお取引は御遠慮しますと断りの返答を返したのですが、どうしても商館の責任者《真安様)と話しがしたいと乗り込んで来られまして・・・」
青褪めた顔色に大量の汗を垂らしながら告げると、乗り込んできた男たちの中でも一際大きな体躯の魚顔に全身には鱗、手には水掻きといった様相の半魚人男が真安に詰め寄り立ったまま上から見下ろし、
「という事だ! 手前が羅漢獣王国の商館を取り仕切ってる波奴真安だな。聞いた通り今後、羅漢獣王国から届いた荷の積み下ろしは俺達ティブロン商会が斡旋する人足を使って貰いてぇんだ。異存はねぇよなぁ!!」
と、まるで脅すような口ぶりで詰め寄って来たが、真安は平然と構えて、
「異存が無い訳がないでしょう、何を馬鹿な事を言っているのですかこの野蛮人は?」
ピシャリと言い捨てた。途端に半魚人男は額に青筋を浮かべて真安に詰め寄りその襟元を掴み、
「手前ぇ! 誰にものを言ってるのか分かってるんだろうなぁ?俺達ティブロン商会、いやティブロン一家に盾突こうなんて料簡じゃあるめぇなぁ。事と次第によっちゃ・・・へっへっへ。」
恫喝した上で嫌らしい笑みを浮かべた。だが、真安は平然と、
「ティブロン一家?・・・あぁ最近息巻いている新手の野蛮人たちの集まりですか。」
「なんだと! 手前、ウガァ!?」
真安の一言に半魚人の短い導火線に火がついたのか、襟元を掴んだまま反対の手で殴りかかろうとしたその瞬間、真安に襟元を掴んでいた手を捻られ関節を極められて呻き声と共にその場に組み伏せられた。
その様子にそれまで人を舐めているような醜い笑みを浮かべていた男達は直ぐに仲間を助けようと一歩踏み出そうとしたが、そんな男たちの目の前に銀閃が煌めき慌てて足を止めた男達の首元に、いつの間に姿を現したのかフクスの蕨手刀と環が持つ小太刀が突き付けられていた。そして、
「どうやら貴方達は何も分かっていないのですね。
この商館はこれでもれっきとした『羅漢獣王国商人組合』の商館なのですよ。
謂わば国の一機関。しかも、レヴィアタン街だけでなくカンヘル国において公式に認めらた商館はここだけという事は取りも直さずこの商館がカンヘル国における羅漢獣王国の唯一の公館。その公館に断りも得ずに土足で上がり込み施設《襖》を破壊し、公館の主である私に手をあげるとは。
ティブロン一家とやらは羅漢獣王国に喧嘩を売るつもりのようですね。」
とこれまで俺達に見せた事のない国からの重責を背負う者特有の威厳を漂わせる真安の姿があった。そんな真安の姿と言葉にそれまで虚勢を張っていた半魚人は目を白黒させて助けを求める様に辺りをキョロキョロするも、仲間たちは首元に光る鋭刃と真安から溢れる雰囲気に圧倒されて身動き一つとれないでいた。
そんな中、
「・・真安殿。貴殿が手を汚す事もあるまい。ここはレヴィアタン街ギルド人を遣り後の事は任せればよいのではないか?」
と乱れた髪を手櫛で直しながら、冷然と告げるアルディリア。そのアルディリアの言葉に一瞬考える様な素振りを見せた真安だったが、
「そうですな。アルディリア殿の仰る通りここで下らぬ者達の相手をしていても時間がもったいないだけですな。おい! 誰か急ぎギルドに走りなさい!!」
と、即決した。が、その瞬間半魚人の顔が緩んだ事に俺は嫌なものを感じた・・・。
荒々しい足音を響かせ襖を蹴破り姿を現した男達は、下半身にはズボンをはいてはいるものの上半身は裸かもしくはベストの様なものを羽織っているだけといった服装で、しかも土足厳禁の畳の上に泥のついた靴や草履を履いたままズカズカと上がり込み、真安以下その場で寛いでいた俺達を威圧するように怒鳴るような口調で誰何してきた。
蹴り破られた襖が倒れたその場は、寸前までアプロが座っていた場所。アプロは陽当たりの良い庭に面した縁側に移動していたから良かったものの、もし移動していなければ倒された襖の下敷きになっていた。それに、襖が倒れ起こった風でアプロの隣に座っていたアルディリアの髪の毛を巻き上げて乱し、目の前に置かれていた茶碗がひっくり返り中に残っていた翠茶が毀れてアルディリアの足を濡らし、乱れた髪と額に浮かんだ青筋につり上がった眼によって般若の形相と化していた。
そんなアルディリアにヒヤヒヤしながらもまずは成り行きを見る事にする俺とは対照的に、剣呑な視線で男達を上から下まで眺め(足元を見て僅かだが瞳に剣呑な光が灯った気がした)た真安は、
「なんなのですか、この野蛮人共は?」
と男達を無視するように男たちの後ろで困ったような表情を浮かべている商館の従業員らしき者達を問い詰める。途端に従業員たちは背筋をビシリと伸ばして直立不動の姿勢を取り、
「は、はい! この者たちは先日より我が商館が取り扱う羅漢獣王国からの品々の荷卸しなどの人足を斡旋したいと申し入れをしてきていたティブロン商会の者達です。私達の商館では以前よりカサートカ商会さんとのお付き合いがあるからお取引は御遠慮しますと断りの返答を返したのですが、どうしても商館の責任者《真安様)と話しがしたいと乗り込んで来られまして・・・」
青褪めた顔色に大量の汗を垂らしながら告げると、乗り込んできた男たちの中でも一際大きな体躯の魚顔に全身には鱗、手には水掻きといった様相の半魚人男が真安に詰め寄り立ったまま上から見下ろし、
「という事だ! 手前が羅漢獣王国の商館を取り仕切ってる波奴真安だな。聞いた通り今後、羅漢獣王国から届いた荷の積み下ろしは俺達ティブロン商会が斡旋する人足を使って貰いてぇんだ。異存はねぇよなぁ!!」
と、まるで脅すような口ぶりで詰め寄って来たが、真安は平然と構えて、
「異存が無い訳がないでしょう、何を馬鹿な事を言っているのですかこの野蛮人は?」
ピシャリと言い捨てた。途端に半魚人男は額に青筋を浮かべて真安に詰め寄りその襟元を掴み、
「手前ぇ! 誰にものを言ってるのか分かってるんだろうなぁ?俺達ティブロン商会、いやティブロン一家に盾突こうなんて料簡じゃあるめぇなぁ。事と次第によっちゃ・・・へっへっへ。」
恫喝した上で嫌らしい笑みを浮かべた。だが、真安は平然と、
「ティブロン一家?・・・あぁ最近息巻いている新手の野蛮人たちの集まりですか。」
「なんだと! 手前、ウガァ!?」
真安の一言に半魚人の短い導火線に火がついたのか、襟元を掴んだまま反対の手で殴りかかろうとしたその瞬間、真安に襟元を掴んでいた手を捻られ関節を極められて呻き声と共にその場に組み伏せられた。
その様子にそれまで人を舐めているような醜い笑みを浮かべていた男達は直ぐに仲間を助けようと一歩踏み出そうとしたが、そんな男たちの目の前に銀閃が煌めき慌てて足を止めた男達の首元に、いつの間に姿を現したのかフクスの蕨手刀と環が持つ小太刀が突き付けられていた。そして、
「どうやら貴方達は何も分かっていないのですね。
この商館はこれでもれっきとした『羅漢獣王国商人組合』の商館なのですよ。
謂わば国の一機関。しかも、レヴィアタン街だけでなくカンヘル国において公式に認めらた商館はここだけという事は取りも直さずこの商館がカンヘル国における羅漢獣王国の唯一の公館。その公館に断りも得ずに土足で上がり込み施設《襖》を破壊し、公館の主である私に手をあげるとは。
ティブロン一家とやらは羅漢獣王国に喧嘩を売るつもりのようですね。」
とこれまで俺達に見せた事のない国からの重責を背負う者特有の威厳を漂わせる真安の姿があった。そんな真安の姿と言葉にそれまで虚勢を張っていた半魚人は目を白黒させて助けを求める様に辺りをキョロキョロするも、仲間たちは首元に光る鋭刃と真安から溢れる雰囲気に圧倒されて身動き一つとれないでいた。
そんな中、
「・・真安殿。貴殿が手を汚す事もあるまい。ここはレヴィアタン街ギルド人を遣り後の事は任せればよいのではないか?」
と乱れた髪を手櫛で直しながら、冷然と告げるアルディリア。そのアルディリアの言葉に一瞬考える様な素振りを見せた真安だったが、
「そうですな。アルディリア殿の仰る通りここで下らぬ者達の相手をしていても時間がもったいないだけですな。おい! 誰か急ぎギルドに走りなさい!!」
と、即決した。が、その瞬間半魚人の顔が緩んだ事に俺は嫌なものを感じた・・・。
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