ヒモ聖女の半百合冒険譚 ~美女に転生した前世ヒモ男は、令嬢たちを囲って百合ハーレムを作りたい、ついでに世界を救う~

@midorimame

文字の大きさ
7 / 59
第一章 聖女転生

第6話 ちょっとした充実感

しおりを挟む
 しかし、俺の記憶と聖女の記憶が混ざってるのは不思議な感覚だ。そのせいもあってか、俺の性格も少し変わった気がする。前世ではそれほど子供好きだったわけでは無いが、なんかやたらと孤児院のチビ達が可愛く見えた。俺は昨日までのクズのヒモでは無くなった感じがする。

「フラル! フラル! 魔法を見せて!」

 小さな女の子が俺に言う。

 はて…、魔法? 確かに聖女の記憶では魔法が使えていた。だが今の俺にはどうやったら良いのか見当がつかない。たぶん使えそうな気はしてるけど。昨日、聖女になったばかりで、どうやったらいいのか皆目見当がつかないんだが。

「えっと」

  俺が悩んでいると、孤児院の寮母達が口を挟んできた。

「あのね、聖女様の魔法は軽々しく使っちゃいけないものなのよ」

「そうか…フラルは、聖女様なんだもんね」

  女の子がめっちゃ寂しそうな顔をした。なんか凄く可哀想になってきた。

「あ、そうだ!」

 俺は前世でホスト時代に覚えたマジックを思い出した。

「スティーリア、銅貨を一枚だして」

「はい」

 俺は後ろにいるスティーリアがバックから取り出した銅貨を受け取り、それを手の指の動きだけでコロコロころがした。すると興味津々に子供達が一斉に集まって来る。そして俺に魔法をせがんだ女の子の前に銅貨をかざした。

「じゃあこの銅貨を持ってみて」

「うん」

 俺は女の子に銅貨を渡した。女の子はじっと銅貨を見つめている。

「それは本物の銅貨? 間違いない?」

「普通の銅貨だよ」

「じゃあちょっと返してね。私、貯金しなくちゃ」

 子供達が、くすくすと笑った。そして女の子は俺の手に銅貨を返してくれた。俺はその銅貨を右手に握りしめて、左手も握って前に差し出す。

「どっちに握ってる?」

 当然子供達は、俺の右手を指差した。でもニッコリ笑って女の子に聞く。

「本当にこっちで良いの?」

「「「うん! そっちだよ!」」」

 他の子供達も口を揃えて言った。俺は思わせぶりに右手を開いて見せた。

「あれ?」
「ない?」
「どうして?」

 子供達がキョトンとした顔をしている。すると、一人の男の子が言った。

「わかった! 左手に持ってるんだよ!」

「本当にそう思う?」

 俺が聞き返すと、他の子供達が男の子に同調するように、左手に持ってるのだと騒ぎ出す。今度は左手を思わせぶりに開いた。だがそこに銅貨は無かった。

「あれぇ?」
「あれあれぇ?」
「どこだあ?」

 子供達は狐につままれたようになり俺の手をジロジロ見る。そして俺は、最初に銅貨を確かめさせた女の子に言った。

「あのね。ポケットに手を入れてごらん」

 女の子がポケットに手を入れると、目をキラキラさせて大きな声で言う。

「あったあ!」

 すると子供達はおろか、寮母達も驚いているようだった。

「あーよかった! 貯金しなくちゃいけないのに、そんなところにあったなんて」
 
 俺の軽い冗談に、子供達がまたクスクス笑う。そして俺は女の子から銅貨を受け取った。そしてまた同じように握った手を差し出した。

「今度はどっちかな?」

 すると子供達はこう答えた。

「どっちでもなーい!」

 俺は子供達に言う。

「せいかーい! じゃあどこかなあ?」

 子供達は一斉に自分のポケットを弄り出した。またポケットに入れられたと思ったのだろう。だが中には何も入っていないのだ。それを見て俺が言う。

「どこかに行っちゃったみたいだねえ?」

「凄ーい!」
「魔法だ!」
「魔法だ!」

「んー、でもまてよー」

 俺が続ける。目の前の女の子の耳のあたりに手を伸ばした。

「銅貨の代わりにこんな物が出て来たぞ!」

 そう言って、ぽんっとキャンディを出した。

「わっ!」

 子供達がまた驚く。

「じゃあ、お一つどうぞ」

 キャンディを女の子に渡す。

「ありがとう!」

「いいなあ」

 隣の男の子が言った。なので俺は今度、男の子のお腹のあたりに耳をあてる。

「んー、コロコロ音がするなあ。ここかな?」

 お腹のあたりでキャンディを出した。

「わっ! 凄い!」

「お一つどうぞ」

「ありがとう!」

 そして俺は次の子にも、次の子にもそうやってキャンディを出してあげる。だけど最後の一番小さい男の子のところで、ちょっと立ち止まった。

「あれ? あれれえ? もう魔法が切れてキャンディが出せないぞぉ」

  すると、小さな男の子の顔が曇り少し泣きそうな顔でうつむいた。

「君は、お兄さんやお姉さんの言うことを良く聞いているかなあ?」

 男の子はコクリと頷く。

「君は寮母さんのお話を良く聞くかなあ?」

 また男の子がコクリと頷いた。他の子や、寮母達が固唾を呑んでその様子を見ている。今にも泣きそうな男の子を見つめて、成り行きを不安そうに見ていたのだ。

「それを聞いたら、みるみる魔法が回復してきたぞ! んー!!」

  男の子が不安そうに見ている。

 俺は、ポンポン! と二つのキャンディを出した。

「君は偉い子だから、二つ出て来たぞ!」

 小さな男の子は、ぱあぁぁぁ!っと顔を輝かせた。小さな手のひらに二つのキャンディを乗せてあげた。

「やったぁ!」

 めっちゃ喜んでくれた。

 元々キャンディは配る予定で持ってきたものだ。だがちょっとしたいたずら心で、演出を思いついたのだった。

 これをホストクラブでやると、地方から出てきたお姉ちゃん達が鉄板で喜んでくれたんだよね。

「素晴らしいですわ!」
「流石は聖女様です!」

 寮母達が絶賛してくれた。客を増やすために必死で練習したマジックで、こんなに喜んでもらえるとは思わなかった。目の肥えた港区女子はこんなんじゃ逆に寒い目で見られたもんだ。

 なんかこういう仕事も良いな…。俺は保育士とかが向いていたのかもしれないな。真面目に働くって、いい事なのかも!

 俺が浸っているとスティーリアが、パンパンと手を叩いて静かに皆へ声をかける。

「じゃあ皆さん! 並んでください! お身体を診せてくださいね!」

 そうだ!  記憶にある聖女は治癒の仕事をしていた。治療の為に巡回をしているんだ! やばい…。マジックで誤魔化せたかと思ったのに、やっぱ魔法使わなきゃなんねえのかよ! どうすんだっけ?

 並び出す子供達を見て、俺は焦り出すのだった。

 だがまてよ…、なんとなくいけそうな気はしてる。なんか身体が覚えているような感覚だ。ここでやっとかねえと俺に明日はない。聖女をクビになってしまうかもしれない。そしてスティーリアも待ってくれずテキパキと準備をしている。

 俺は心の中で必死だった。だが大丈夫! 何とか覚えて良そうだ!

「じゃあ君から」

 六歳くらいの女の子を呼んだ。

「お願いします」

  女の子はペコリと礼をして椅子に座った。俺も対面の椅子に腰掛ける。女の子は俺をじっと見ているので、俺も彼女をじっと見つめる。意識を集中させて、彼女の事を知ろうと必死に見つめるのだった。

 むぐぐぐぐぐ!

 すると…ポワッと右肘の辺りが白く光って見えた。

 わお! これだ! 見えるぞ俺にも敵が見える!

「ちょっと右腕あげてみて」

 女の子が腕を上げると、どうやら肘を擦りむいていたようだ。

「怪我してるね」

「このくらい、平気!」

 女の子が元気に言う。確かに、まっいっか程度の傷ではある。だがじっとスティーリアが横で見ているので、治療しなかったと上に報告されてしまうかもしれない。

「見せなさい」

 よく見ても大した事ない傷だった。だが遊んで泥で汚れているので、破傷風とかになったら不味いと思いはじめる。既にスティーリアが桶と水を用意してくれていたので、軽く絞った布で肘を拭いてあげる。

 まずは綺麗にしよう。と、女の子の腕を綺麗に、泥を落とすつもりで拭いたのだが傷がどこにも見当たらない。

 あれ? ちょっと血が出てたんだけど、見間違いかな?

 俺はスティーリアを見て聞こうと思った。するとキョトンとした顔で、スティーリアが俺を見つめ返している。

「聖女様…」

 あれ? なんかまずった? 俺を疑念の眼差しで見ているような気がするぞ…

「詠唱は?」

 あ、なんか記憶では、なんか呟いてたな…。えっ、なんかまずい事しちゃった?

「治ったよ! ありがとう聖女様!」

  俺がパニックに陥ってる状況で、治してあげた女の子がお構いなしに言う。確かに白く光っていた肘は光っていない。すると、ぽつりとスティーリアが俺に言った。

「聖女様…、素晴らしいです。無詠唱で治されました」

「無詠唱?」

「はい」

 えっと、オッケーって事? とにかく切り抜けた?

「…あ、ああ。ならよかった」

「本当に聖女様になられたのですね」

 スティーリアがうるうるとした瞳で見つめてくる。可愛い! 清楚さが更に際立っている。今日の夜まで一緒に居たい! とりあえず魔法も使えたようだし、俺はスティーリアの尊敬を集めている!

 どうやら俺は聖女になって、グレードアップした事が判明するのだった。

 なんでかさっぱり分かんないけど。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

SSS級の絶世の超絶美少女達がやたらと俺にだけ見え見えな好意を寄せてくる件について。〜絶対に俺を攻略したいSSS級の美少女たちの攻防戦〜

沢田美
恋愛
「ごめんね、八杉くん」 中学三年の夏祭り。一途な初恋は、花火と共に儚く散った。 それ以来、八杉裕一(やすぎ・ゆういち)は誓った。「高校では恋愛なんて面倒なものとは無縁の、平穏なオタク生活を送る」と。  だが、入学した紫水高校には《楽園の世代》と呼ばれる四人のSSS級美少女――通称《四皇》が君臨していた。  • 距離感バグり気味の金髪幼馴染・神行胱。  • 圧倒的カリスマで「恋の沼」に突き落とす銀髪美少女・銀咲明日香。  • 無自覚に男たちの初恋を奪う、おっとりした「女神」・足立模。  • オタクにも優しい一万年に一人の最高ギャル・川瀬優里。  恋愛から距離を置きたい裕一の願いも虚しく、彼女たちはなぜか彼にだけ、見え見えな好意を寄せ始める。 教室での「あーん」に、放課後のアニメイトでの遭遇、さらには女神からの「一緒にホラー漫画を買いに行かない?」というお誘いまで。  「俺の身にもなれ! 荷が重すぎるんだよ!」  鋼の意志でスルーしようとする裕一だが、彼女たちの純粋で猛烈なアプローチは止まらない。 恋愛拒否気味な少年と、彼を絶対に攻略したい最強美少女たちの、ちょっと面倒で、でも最高に心地よい「激推し」ラブコメ、開幕!

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

転生先は男女比50:1の世界!?

4036(シクミロ)
恋愛
男女比50:1の世界に転生した少女。 「まさか、男女比がおかしな世界とは・・・」 デブで自己中心的な女性が多い世界で、ひとり異質な少女は・・ どうなる!?学園生活!!

この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜

具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです 転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!? 肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!? その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。 そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。 前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、 「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。 「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」 己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、 結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──! 「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」 でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……! アホの子が無自覚に世界を救う、 価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!

ストーカーから逃げ切ったつもりが、今度はヤンデレ騎士団に追われています。

由汰のらん
恋愛
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。 しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。 さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。 そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。 「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」 やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった! しかしハルの血が特殊だと知った騎士はハルを連れ帰って? いっそ美味しい血と癒しを与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!

残念女子高生、実は伝説の白猫族でした。

具なっしー
恋愛
高校2年生!葉山空が一妻多夫制の男女比が20:1の世界に召喚される話。そしてなんやかんやあって自分が伝説の存在だったことが判明して…て!そんなことしるかぁ!残念女子高生がイケメンに甘やかされながらマイペースにだらだら生きてついでに世界を救っちゃう話。シリアス嫌いです。 ※表紙はAI画像です

処理中です...