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第二章 聖女改革
第49話 被疑者尋問
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牢屋に食事が運び込まれてきて、捕らえられた少女の前にテーブルが置かれそこに並べられた。すると少女はそれを見てゴクリと喉を鳴らす。やはり相当、腹が減っているらしく腹の虫がなったようだ。だが兵士が食べさせようとしても、頑として口を開かずに睨むだけだった。
それを見た俺がルクスエリムに言う。
「では陛下。私が食べさせましょう」
「む、フラルよ。それはいささか危険ではないかな?」
「繋がれているのです。誰かが食べさせねば食べられませんよ」
「それはそうだが」
すると俺の後ろにいたミリィが声をかけてくる。
「聖女様がやらずとも、そう言う事なら私がやります」
「いいえ、私がします」
ミリィを押さえて、ルクスエリムをチラリと見る。
「うむ。まあ良いだろう。騎士達よ、くれぐれも聖女に危害が加えられないようにな」
「「「は!」」」
するとバレンティアもルクスエリムに向かって言う。
「恐れ入りますが、今だけお側を離れさせていただき聖女様をお守りしても?」
「許す」
はぁ? 別にお前まで俺の側に来なくていいんだよぉ! 何かと俺に絡んでくるよな?
「バレンティア卿。私は別に平気ですが」
「まあそう言わずに」
そういうバレンティアを無視し、俺が再び牢屋に入ると後ろからバレンティアが着いて来る。まあ放っておこう。俺は囚われた少女の前に立ち匙を取って言う。
「お腹が減っているでしょう? 少し食べた方が良いと思う」
すると少女が俺を睨みつけて言った。
「毒で殺そうっていうんだろ! あたしは食わないよ!」
俺は後ろを振り向いて、食事を運んで来た騎士に聞く。
「これに毒は入っていますか?」
「いえ! いたって普通の料理です!」
そして俺は少女を振り向いて言う。
「だってさ」
「騙されない! お前だってグルなんだ」
仕方ない。
俺は匙をスープにさして掬い上げ、自分の口に運んで一口飲んだ。まあまあ美味いスープだった。囚人に食わせるものだからと、マズいものを用意した訳ではなさそうだ。
「さて、私は死ぬかな? 一緒に数を数えよう。いち、に、さん、し‥‥にじゅう。どうやら毒は入っていないようだ」
「‥‥‥」
「まずは食べなさい。話はそれからにしよう」
俺が再び匙をスープにさして救い、それを少女の口元へと持って行く。すると少女はじっとその匙を睨みつけている。
「食べないなら私が」
そして俺がスープを引くと、少女が言った。
「食う」
「そう」
そして俺がスープを少女に差し出すと、口を前に出してぱくりと入れた。そしてくちゃくちゃとそれを噛んだと思った次の瞬間だった。
プッ!
と俺の顔に咀嚼した物を吹きかけて来る。三人の騎士とバレンティアが、自分の腰の剣に手をやって引き抜こうとした。
「止めなさい!」
俺はそれを制する。この少女が本当に俺を狙ったのなら、その対象にたいして憎しみを持つだろうし、そうでなかったとしてもこの扱いに不服を持っているのかもしれない。いずれにせよ女の子の心というものは、そんなに単純には出来ていないものなのだ。
俺が少女に言う。
「不味かった?」
「はぁ? あんた馬鹿か? マズいからやったんじゃないんだけど」
「そう…もったいない。私はまあまあ美味しいと思ったけど、もったいないから私が食べようかな」
そして少女の前で、普通にパンをちぎって口に放り込む。それをもぐもぐやりながら、カップに注いでるミルクをコクリと飲み干した。そしてパンと一緒に置いてあった干し肉を噛みちぎり、じっくりと咀嚼し始める。ゴクリと飲み干して少女に向かって言った。
「本当にいいの? 結構おいしいよ、どっちにしろ食べるなら今がチャンスだと思うけど」
俺が美味そうに食い始めたのを見て、少女はゴクリと喉を鳴らした。俺はめげずにもう一度スープに匙を入れてすくい、それを少女の口の近くまで持って行った。すると少女が睨みつけて言う。
「そんなことをして何になる? どうせ殺すんならすぐに殺したらいい!」
「あれ? 殺すって言ったっけ? そんな事一言も言ってないけどな。私はまずこの取り調べが何日続くか分からないから、食べられるときに食べておいた方が良いと思っただけだけど」
「‥‥‥」
女の子がじっと考え込んでいる。煮え切らないので俺はもう一度言う。
「もったいないから、私が食べましょう」
そう言って自分の口へと匙を運ぶと、少女が呻くように言った。
「食ってやるよ…」
「そう…」
そして俺が再び少女の口に匙を運ぶと、ぱくりとそれを口に入れて咀嚼し今度は普通に飲み込んだ。
「まあまあでしょ?」
「うるさい」
「次は何が食べたい?」
「‥‥‥」
「黙ってたら私が…」
「パンだ! パンをくれ!」
「はいはい」
そして俺はパンをちぎって少女の口に運ぶ。するとバレンティアが口を出して来た。
「危ないですよ! 噛まれます!」
いや、お前は余計な口を出すな!
「大丈夫」
そして俺はそのまま少女の口元にパンを持って行った。少女はジッとそのパンを見つめている。バレンティアも騎士も緊張しており、ルクスエリムとケルフェン中将も訝しい顔をしていた。緊張の面持ちで少女がパンを見ていたが、俺に噛みつくことなくぱくりとパンを口に入れた。バレンティアと騎士が、少しだけ抜いた剣を鞘に戻す音が聞こえる。
「どう?」
俺が聞くと少女が答える。
「不味くはない」
素直じゃないなあ。でもそんな簡単に心を開くわけが無いし、きっと事情があるんだろうからゆっくりと時間をかけるしかない。
「でしょ?」
俺が微笑みかけると、女の子はフン! とそっぽを向いた。俺はかまわずに干し肉を手に取り、少女の顔に近づける。すると少女は噛みつくことなく、ひき肉を口にして全部奪い取ってもぐもぐやっている。
「よく噛んだ方が味が出ると思う」
「ふん!」
そう言いながらもよく噛んでいる。そうしながら時間をかけて、全ての食事を終えた。そして俺は少女に聞いた。
「足りなかったら、おかわりを貰おうか?」
すると少女がフルフルと首を振った。
「そう、じゃよかった」
そして俺は立ち上がり、牢屋の入り口の方へと向かった。そして食事を持ってきた騎士に伝える。
「食器を下げてください」
「は!」
そして騎士は食器を持って、牢屋の石廊下を向こうに歩いて行った。
まあ、今日のところはこんなところだろ。どう考えても話をする様な雰囲気になっていない。
「では陛下。今日はこれで退散するといたしましょう。事を急いても良い事はありません」
「わかった。それじゃあ騎士達よ、その者に手荒な真似をする出ないぞ。わしの言う事が分かったかな?」
「「「は! 仰せのままに!」」」
そしてバレンティアが振り向いて言う。
「だが、気を抜くな。仲間がいる可能性もある」
「「「は!」」」
そして最後に俺が少女の方を振り向いて行った。
「また来ます。鎖は解かれないと思いますが、その状態でも眠れるなら寝た方が良い」
「ふん! お前にそんなことを言われなくてもそうするつもりだ!」
「ならよかった。ではすみません騎士様達にお願いがあります」
「「「は!」」」
「一日三度とは申しません。二度で良いのでまともな食事を、そして手荒な真似はくれぐれもしないように」
「「「は!」」」
そう言って俺とミリィ、ルクスエリム、ケルフェン、バレンティアが牢をでて一階へと戻る。そのまま屯所の騎士達の食堂に入った。いきなり王と中将が来た事で、兵士達が立ち上がり脇に下がって礼をする。するとルクスエリムが声をかけた。
「よい。わしらが勝手に来たのだ。そのまま食事を続けよ」
そう言われても騎士達が固まって動かない。するとケルフェン中将が言う。
「陛下がそうおっしゃっておられるのだ。甘んじなさい」
「「「「は!」」」」
そこにいた四人の兵は座って大急ぎで食事をしだした。そしてあっという間にたいらげて、食堂を出ていってしまう。ルクスエリムとケルフェンが話しを始めた。
「すまぬことをしたようだ」
「いえ。陛下、兵士などあれが普通です」
「そうか。まあここでは手短に話をしよう」
「そうですな」
そして俺達はそこにある椅子に腰かけて、今後の事に着いて話すのだった。最初に口を開いたのはケルフェン中将だった。
「しかし! 流石は英雄殿ですな! あの者に対しての豪胆なふるまい! 全く臆さぬその態度! 感服いたしましたぞ!」
いやいや、相手は女の子だしさ、なんとなく雰囲気でどうすればいいか分かるだろうよ。そんなに大したことはしてねえっつーの。
「それほど大変な事ではございません」
「はーっはっはっはっ! 陛下のおっしゃる通り、聖女様はまるで歴戦の勇者の様ですな」
「そうだろう?」
「ええ」
そんなことないない! あれが厳つい男だったら、ずぇーーったいにあんなことしてない。それこそあそこにいた騎士に打ちのめしてしまいなさい! なんて言ってたかもしれない。
するとバレンティアが言う。
「ですが聖女様。御身は大切にしていただきませんと、貴女はこの国の至宝なのですよ」
至宝? 俺が? 宝? 何かの間違いだろ。
「それこそ、私はそのような者ではありません」
「いえ聖女様。皆が思っている事です」
えっ? そうなの?
そう言う思いで、俺はルクスエリムとケルフェンを見るが、二人とも深くうなずくばかりだった。
やだな。俺は男にそういう風に思われたくないんだけど、めんどいなあ。
そう思ってミリィを見ると、ミリィが目をキラキラさせて言う。
「バレンティア様のおっしゃる通りでございます!」
えっ? ミリィが言ってくれるとすごく嬉しい! ならそうなのかも! 好き!
「そ、そんな事はないと思う。それより、今後ですね」
「うむ。あの者の容姿を見た限りでは、この国の者では無いように思う」
ルクスエリムが言うと、ケルフェンとバレンティアが頷いた。俺は隣国の人間を良く知らないので、そうなのかどうかは分からない。ただ言える事は一つある。
「時間をかけるしかないでしょう。もちろん沙汰を下すのは陛下ですので、私からはなんとも申し上げられませんが」
するとルクスエリムが少し考えて俺に言った。
「狙われたのはフラル、お主だ。煮るなり焼くなり好きにするがいい」
「本当ですか? 私に一任していただけると?」
「だがそれほど悠長には待てんぞ。そうだな、時間にして一週間と言ったところだろうかの」
「わかりました。それまでに何かの結果をお出しします」
「いいだろう。だが気を付けるのだぞ、お前が噛まれでもしたらかなわん」
「もちろんです」
するとバレンティアがルクスエリムに言う。
「第一騎士団の手練れを、面会時の護衛につける事を提言いたします!」
いらねえよ! そんなことしたらあの子が怖がっちゃうじゃん! 余計な事を。
「私からも通達を出しましょう」
ケルフェンが言う。
ジジイも邪魔だな! オイ!
するとルクスエリムが答えた。
「そうしよう。フラルも異存ないな」
「はい。私の安全を第一に考えて下さり感謝いたします。謹んでお受けさせていただきます」
って言うしかねえだろこの際。
「では、一週間後に結果を聞くとしよう」
「わかりました」
そして今日の囚人との面会は以上となった。俺とミリィはそのまま王城に一緒に帰る。王城では食べ物を吹きかけられた俺の服を、全て交換するとルクスエリムが言いだし、上等なドレスを下賜されて、金貨を一袋とお茶と焼き菓子の包みを持たされて聖女邸へと帰るのだった。
それを見た俺がルクスエリムに言う。
「では陛下。私が食べさせましょう」
「む、フラルよ。それはいささか危険ではないかな?」
「繋がれているのです。誰かが食べさせねば食べられませんよ」
「それはそうだが」
すると俺の後ろにいたミリィが声をかけてくる。
「聖女様がやらずとも、そう言う事なら私がやります」
「いいえ、私がします」
ミリィを押さえて、ルクスエリムをチラリと見る。
「うむ。まあ良いだろう。騎士達よ、くれぐれも聖女に危害が加えられないようにな」
「「「は!」」」
するとバレンティアもルクスエリムに向かって言う。
「恐れ入りますが、今だけお側を離れさせていただき聖女様をお守りしても?」
「許す」
はぁ? 別にお前まで俺の側に来なくていいんだよぉ! 何かと俺に絡んでくるよな?
「バレンティア卿。私は別に平気ですが」
「まあそう言わずに」
そういうバレンティアを無視し、俺が再び牢屋に入ると後ろからバレンティアが着いて来る。まあ放っておこう。俺は囚われた少女の前に立ち匙を取って言う。
「お腹が減っているでしょう? 少し食べた方が良いと思う」
すると少女が俺を睨みつけて言った。
「毒で殺そうっていうんだろ! あたしは食わないよ!」
俺は後ろを振り向いて、食事を運んで来た騎士に聞く。
「これに毒は入っていますか?」
「いえ! いたって普通の料理です!」
そして俺は少女を振り向いて言う。
「だってさ」
「騙されない! お前だってグルなんだ」
仕方ない。
俺は匙をスープにさして掬い上げ、自分の口に運んで一口飲んだ。まあまあ美味いスープだった。囚人に食わせるものだからと、マズいものを用意した訳ではなさそうだ。
「さて、私は死ぬかな? 一緒に数を数えよう。いち、に、さん、し‥‥にじゅう。どうやら毒は入っていないようだ」
「‥‥‥」
「まずは食べなさい。話はそれからにしよう」
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「食べないなら私が」
そして俺がスープを引くと、少女が言った。
「食う」
「そう」
そして俺がスープを少女に差し出すと、口を前に出してぱくりと入れた。そしてくちゃくちゃとそれを噛んだと思った次の瞬間だった。
プッ!
と俺の顔に咀嚼した物を吹きかけて来る。三人の騎士とバレンティアが、自分の腰の剣に手をやって引き抜こうとした。
「止めなさい!」
俺はそれを制する。この少女が本当に俺を狙ったのなら、その対象にたいして憎しみを持つだろうし、そうでなかったとしてもこの扱いに不服を持っているのかもしれない。いずれにせよ女の子の心というものは、そんなに単純には出来ていないものなのだ。
俺が少女に言う。
「不味かった?」
「はぁ? あんた馬鹿か? マズいからやったんじゃないんだけど」
「そう…もったいない。私はまあまあ美味しいと思ったけど、もったいないから私が食べようかな」
そして少女の前で、普通にパンをちぎって口に放り込む。それをもぐもぐやりながら、カップに注いでるミルクをコクリと飲み干した。そしてパンと一緒に置いてあった干し肉を噛みちぎり、じっくりと咀嚼し始める。ゴクリと飲み干して少女に向かって言った。
「本当にいいの? 結構おいしいよ、どっちにしろ食べるなら今がチャンスだと思うけど」
俺が美味そうに食い始めたのを見て、少女はゴクリと喉を鳴らした。俺はめげずにもう一度スープに匙を入れてすくい、それを少女の口の近くまで持って行った。すると少女が睨みつけて言う。
「そんなことをして何になる? どうせ殺すんならすぐに殺したらいい!」
「あれ? 殺すって言ったっけ? そんな事一言も言ってないけどな。私はまずこの取り調べが何日続くか分からないから、食べられるときに食べておいた方が良いと思っただけだけど」
「‥‥‥」
女の子がじっと考え込んでいる。煮え切らないので俺はもう一度言う。
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そう言って自分の口へと匙を運ぶと、少女が呻くように言った。
「食ってやるよ…」
「そう…」
そして俺が再び少女の口に匙を運ぶと、ぱくりとそれを口に入れて咀嚼し今度は普通に飲み込んだ。
「まあまあでしょ?」
「うるさい」
「次は何が食べたい?」
「‥‥‥」
「黙ってたら私が…」
「パンだ! パンをくれ!」
「はいはい」
そして俺はパンをちぎって少女の口に運ぶ。するとバレンティアが口を出して来た。
「危ないですよ! 噛まれます!」
いや、お前は余計な口を出すな!
「大丈夫」
そして俺はそのまま少女の口元にパンを持って行った。少女はジッとそのパンを見つめている。バレンティアも騎士も緊張しており、ルクスエリムとケルフェン中将も訝しい顔をしていた。緊張の面持ちで少女がパンを見ていたが、俺に噛みつくことなくぱくりとパンを口に入れた。バレンティアと騎士が、少しだけ抜いた剣を鞘に戻す音が聞こえる。
「どう?」
俺が聞くと少女が答える。
「不味くはない」
素直じゃないなあ。でもそんな簡単に心を開くわけが無いし、きっと事情があるんだろうからゆっくりと時間をかけるしかない。
「でしょ?」
俺が微笑みかけると、女の子はフン! とそっぽを向いた。俺はかまわずに干し肉を手に取り、少女の顔に近づける。すると少女は噛みつくことなく、ひき肉を口にして全部奪い取ってもぐもぐやっている。
「よく噛んだ方が味が出ると思う」
「ふん!」
そう言いながらもよく噛んでいる。そうしながら時間をかけて、全ての食事を終えた。そして俺は少女に聞いた。
「足りなかったら、おかわりを貰おうか?」
すると少女がフルフルと首を振った。
「そう、じゃよかった」
そして俺は立ち上がり、牢屋の入り口の方へと向かった。そして食事を持ってきた騎士に伝える。
「食器を下げてください」
「は!」
そして騎士は食器を持って、牢屋の石廊下を向こうに歩いて行った。
まあ、今日のところはこんなところだろ。どう考えても話をする様な雰囲気になっていない。
「では陛下。今日はこれで退散するといたしましょう。事を急いても良い事はありません」
「わかった。それじゃあ騎士達よ、その者に手荒な真似をする出ないぞ。わしの言う事が分かったかな?」
「「「は! 仰せのままに!」」」
そしてバレンティアが振り向いて言う。
「だが、気を抜くな。仲間がいる可能性もある」
「「「は!」」」
そして最後に俺が少女の方を振り向いて行った。
「また来ます。鎖は解かれないと思いますが、その状態でも眠れるなら寝た方が良い」
「ふん! お前にそんなことを言われなくてもそうするつもりだ!」
「ならよかった。ではすみません騎士様達にお願いがあります」
「「「は!」」」
「一日三度とは申しません。二度で良いのでまともな食事を、そして手荒な真似はくれぐれもしないように」
「「「は!」」」
そう言って俺とミリィ、ルクスエリム、ケルフェン、バレンティアが牢をでて一階へと戻る。そのまま屯所の騎士達の食堂に入った。いきなり王と中将が来た事で、兵士達が立ち上がり脇に下がって礼をする。するとルクスエリムが声をかけた。
「よい。わしらが勝手に来たのだ。そのまま食事を続けよ」
そう言われても騎士達が固まって動かない。するとケルフェン中将が言う。
「陛下がそうおっしゃっておられるのだ。甘んじなさい」
「「「「は!」」」」
そこにいた四人の兵は座って大急ぎで食事をしだした。そしてあっという間にたいらげて、食堂を出ていってしまう。ルクスエリムとケルフェンが話しを始めた。
「すまぬことをしたようだ」
「いえ。陛下、兵士などあれが普通です」
「そうか。まあここでは手短に話をしよう」
「そうですな」
そして俺達はそこにある椅子に腰かけて、今後の事に着いて話すのだった。最初に口を開いたのはケルフェン中将だった。
「しかし! 流石は英雄殿ですな! あの者に対しての豪胆なふるまい! 全く臆さぬその態度! 感服いたしましたぞ!」
いやいや、相手は女の子だしさ、なんとなく雰囲気でどうすればいいか分かるだろうよ。そんなに大したことはしてねえっつーの。
「それほど大変な事ではございません」
「はーっはっはっはっ! 陛下のおっしゃる通り、聖女様はまるで歴戦の勇者の様ですな」
「そうだろう?」
「ええ」
そんなことないない! あれが厳つい男だったら、ずぇーーったいにあんなことしてない。それこそあそこにいた騎士に打ちのめしてしまいなさい! なんて言ってたかもしれない。
するとバレンティアが言う。
「ですが聖女様。御身は大切にしていただきませんと、貴女はこの国の至宝なのですよ」
至宝? 俺が? 宝? 何かの間違いだろ。
「それこそ、私はそのような者ではありません」
「いえ聖女様。皆が思っている事です」
えっ? そうなの?
そう言う思いで、俺はルクスエリムとケルフェンを見るが、二人とも深くうなずくばかりだった。
やだな。俺は男にそういう風に思われたくないんだけど、めんどいなあ。
そう思ってミリィを見ると、ミリィが目をキラキラさせて言う。
「バレンティア様のおっしゃる通りでございます!」
えっ? ミリィが言ってくれるとすごく嬉しい! ならそうなのかも! 好き!
「そ、そんな事はないと思う。それより、今後ですね」
「うむ。あの者の容姿を見た限りでは、この国の者では無いように思う」
ルクスエリムが言うと、ケルフェンとバレンティアが頷いた。俺は隣国の人間を良く知らないので、そうなのかどうかは分からない。ただ言える事は一つある。
「時間をかけるしかないでしょう。もちろん沙汰を下すのは陛下ですので、私からはなんとも申し上げられませんが」
するとルクスエリムが少し考えて俺に言った。
「狙われたのはフラル、お主だ。煮るなり焼くなり好きにするがいい」
「本当ですか? 私に一任していただけると?」
「だがそれほど悠長には待てんぞ。そうだな、時間にして一週間と言ったところだろうかの」
「わかりました。それまでに何かの結果をお出しします」
「いいだろう。だが気を付けるのだぞ、お前が噛まれでもしたらかなわん」
「もちろんです」
するとバレンティアがルクスエリムに言う。
「第一騎士団の手練れを、面会時の護衛につける事を提言いたします!」
いらねえよ! そんなことしたらあの子が怖がっちゃうじゃん! 余計な事を。
「私からも通達を出しましょう」
ケルフェンが言う。
ジジイも邪魔だな! オイ!
するとルクスエリムが答えた。
「そうしよう。フラルも異存ないな」
「はい。私の安全を第一に考えて下さり感謝いたします。謹んでお受けさせていただきます」
って言うしかねえだろこの際。
「では、一週間後に結果を聞くとしよう」
「わかりました」
そして今日の囚人との面会は以上となった。俺とミリィはそのまま王城に一緒に帰る。王城では食べ物を吹きかけられた俺の服を、全て交換するとルクスエリムが言いだし、上等なドレスを下賜されて、金貨を一袋とお茶と焼き菓子の包みを持たされて聖女邸へと帰るのだった。
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