ヒモ聖女の半百合冒険譚 ~美女に転生した前世ヒモ男は、令嬢たちを囲って百合ハーレムを作りたい、ついでに世界を救う~

@midorimame

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第二章 聖女改革

第48話 捉われた少女

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 豪華な調度品に装飾が施された窓枠や手摺、これでもか! というくらいふっさふさの絨毯に、漂う良い香りの室内。そして俺の前のテーブルには最高級のお茶が用意されていた。そして俺は窓の外に見える、名も知らぬ広葉樹を呆然と眺めていた。

「ミリィ…、あの木なんだろうね」

「はい? あの外の木ですか?」

「そうあの木」

「あれは樫の木でございます」

「ああ、あれが樫の木なんだ」

 全く興味がないのに聞いてしまった。だってきっとこれから俺は、ルクスエリムから聞きたくない通告を受けるだろうから。なんとか気を紛らわそうとしているが、さっきからそればっかり考えている。こんな時スマホがあったらなんと便利な事だろう。

「聖女様。お茶が…お茶が美味しいですよ!」

 さっきからミリィが気を使ってくれているのが申し訳ない。いい子だ。

「じゃ飲もう」

 俺がお茶を飲むが既に冷めていて、ここに来てから時間が経っている事を物語る。まあ王宮に来るといつも待たされてこんな感じなので、別段変わりは無いのだが、今日は殊更長く感じるのだ。そして一口飲んで俺はミリィにぼやく。

「どうせ中止なんだからさ。書簡で良いと思う」

 するとミリィが言い辛そうに答えた。

「聖女様が力を入れていたのは陛下もご存知ですし、書面で、はい終わり! という訳には行かないのではないでしょうか?」

「だぁよねぇー!」

 分かっちゃいるけど、そう言われても気が重い。

 コンコン! 

「失礼します!」

「はい」

 俺を迎えに来た王宮の近衛兵だった。

「それでは陛下の準備が整いましたので参りましょう」

 いや、呼びつけるぐらいなら準備しとけっての! ジジイ!

「ありがとうございます。それではミリィはここで」

 すると近衛兵が言う。

「いえ。場所を移しますので、お付き様もご一緒に」

「あ、そうですか。それじゃあミリィも行きましょう」

「はい」

 そして俺達が連れていかれたのは、王の間では無く玄関だった。どうやら王宮を出て一緒にどこかに行くらしい。そこにはルクスエリムともう一人おっさんがいた。多分に漏れずバレンティアと近衛二人がそこにいる。

「今回はケルフェン中将も同席するがいいかな?」

 ルクスエリムが俺に言う。

「よろしくお願いします。中将」

「英雄とご一緒できるとは光栄ですな」

「いえ。私こそ中将とご一緒出来て光栄でございます」

「今回は、我が国の英雄を狙った不届き者の尋問であるからな。この目で見極めねばならんのです」

「その通りだと思います」

 面倒臭い。おっさん達だけでやってくれれば良いと思わない? 

 そしてルクスエリムとケルフェンが馬車に乗り込み、俺とミリィが続いて乗った。

 よかったぁぁぁぁ! 爺さん二人と一緒の馬車なんて乗ったら地獄だった。ミリィ! 一緒に居てくれてありがとう!

 そして俺達が座るのを見て、バレンティアが馬車の扉を閉める。そしてバレンティアが御者に馬車を進めるように言った。

「既に容疑者は屯所にいるらしいのでな。まさか罪人を王宮に迎え入れるわけにはいくまい?」

「そのとおりでございます」

 するとケルフェンが言う。

「まったく。我が国の聖女に粗相をした不届き者はどんな顔をしているのやら」

「はい」

 そして馬車の中は、普通に政治の話になった。俺は特に興味が無いので、微笑んで相槌をうつ事に専念した。しばらくその状態だったが外からバレンティアが声をかけて来る。

「到着しました」

「うむ」

 そしてルクスエリムとケルフェンが下りて、俺とミリィの順に馬車を降りる。そこは騎士団の屯所の目の前で、大勢の騎士が俺達を出迎えるのだった。ルクスエリムが前に進むと、ざっと両脇に騎士がどいて道を作りそこを俺達が歩いて行くのだった。そして待合のような所があったので俺はミリィに言う。

「ここで待つ? でも…」

 そう言って俺は周りを見渡す。厳つい騎士がビッチリいるので前言を撤回する。

「行こ」

「はい」

「陛下、従者を連れて入っても?」

「聖女なら許可しよう」

「ありがとうございます」

 屯所の奥に進むと地下に下りる階段があり、下りていくとそこは牢屋だった。騎士が俺達の周りを取り囲んで奥へと進んでいく。

 牢屋とか来た事無かったけど、もう来なくていいな。ヒモ時代にも牢屋なんて入った事無いし、そもそも犯罪や喧嘩とか縁が無かったからね。

 バレンティアが中の騎士に伝える。

「陛下がお見えだ」

「は!」
 
 廊下の一つ目のドアが開かれ、更に奥に入っていくと暗い牢獄が続いていた。どうやら犯罪の種類で投獄される場所が違うらしい。歩いて三つ目あたりの牢獄の前で止まりバレンティアが再び声をかけた。だがもう中は見えている。中に騎士が三人いて、椅子に人が一人鎖で繋がれていた。

 俺が思ってたんとちゃう! 

 随分小さくて華奢だし、頭はぼさぼさだけど皮の鎧の胸当てが盛り上がっているようだ。厳つい男を想像していたが、どうやら華奢な女の子だった。

「むっ! 女か?」

 思わずケルフェンも声をあげると、騎士が返事をしてくる。

「そうであります!」

 するとルクスエリムとケルフェンが顔を合わせた。

「なんと…」

「まあ罪人には変わりありますまい」

 すると中に縛られている女が叫ぶ。

「何も話さない!」

 何も聞いていないのに、いきなりそう言って来た。

「この!」

 中の騎士が拳でその女をごつんと殴ったので俺が叫ぶ。

「やめなさい!」
 
 あっ、ヤベ…。ごつい男が女の子を殴ってるのを見て、つい言っちゃった!

「しかし!」

 するとルクスエリムも穏やかに言う。

「聖女の言うとおりに」

「は!」

 そして騎士達はその椅子から一歩離れる。

「そなたは…見たところ、この国の者では無いな? 一体なぜにあんなことをしたのか?」

「何も話さない!」

 女は俺達をキッと睨んで威嚇してくる。ルクスエリムに対する態度に怒った騎士達が女に迫るので、俺はもう一度言った。

「何度も言わせないで下さい!」

「は! 失礼いたしました!」

 そして牢屋の外に立っている騎士がルクスエリムに話した。

「恐れながら申し上げます! ずっとこの調子なのです! ですが捉えた場所の近くのギルドでは、この者がワイバーンを使役しているのを目撃した者が何人もいます!」

「ふむ」

 なるほど、どうやら状況証拠だけで連れてきたわけだ。まあ怪しいっちゃ怪しいが…どうしたものか。俺はジッと捕らえられている女の子を見る。すると俺に対してもキッと睨み返してくる。

 大丈夫大丈夫。怖くない怖くない。ほらね。

 と言いたいところだが、そういう訳にもいかずじっと見るだけとなった。よく見てみると顔を晴らしており、腕があらぬ方向へと向いているように見える。俺が騎士に聞いた。

「あの、怪我をしているようですが」

「ここに来た時には既にそうでした。どうやら捕縛現場で痛めつけたようです」

 いやいや…、女の子相手に何やらかしてくれてんの?

 するとケルフェンが言った。

「我が軍で証拠も無しに、その様な暴力をふるえと誰が教えた?」

 独房にビリビリッ! ッと緊張が走る。実際電気が飛んだんじゃないかと思うくらいピリッとした空気になる。ケルフェンとかいうジジイ…怖い。

「ケルフェンよ。そう言うな、現場の状況も良く分かっておらぬのだ」

「失礼いたしました王よ。我が軍の兵士にそんな無能が居たかと少々苛立ちました」

「よい」

 まあ爺さんらのグダグダは良いよ。とにかくこの娘の怪我を治してやらにゃ痛いだろう。

「私を中に入れてください」

「は?」

「早く入れてください!」

 するとルクスエリムが言う。

「入れてやれ」

「は!」

 鍵が開けられ俺はそこを潜って、牢屋の中へと入る。近くでよく見ればかなりの怪我をしているようで、左目は張れており恐らく頬の骨が砕けている。腕があらぬ方向へ向いており、あちこち痣だらけになっていた。俺に何かあってはと思ったのか、騎士が俺の前に立ってそれ以上近づかないように通せんぼした。

「どいてください」

「しかし」

「どいてください」

「は!」

 騎士が俺の前からどいて、女の子と俺の間に何も無くなる。俺が無詠唱で魔法を発動させると俺の周りに光が集まって来て、それが俺の手元に集中する。

「メギスヒール」

 パアッ! と女の子を眩しい光が包み込んで、少しずつその光が納まっていく。折れた頬も腫れた目も、あらぬ方向を向いていた腕も正常な状態になり、体中の痣が消えて顔がはっきりとわかるようになった。

「な、治った…」

 女の子がポツリと言う。

「痛かったでしょう」

「な、いっ、何も話さない!」

 俺はしゃがみ込んで女の子の視線に降りて言う。

「別にいいけど、何も話さないとずっとこのままか、悪くて処刑されると思うよ」

 すると女の子がキッと睨み返して言った。

「殺せばいい! どうせもうどうしようもないんだ!」

 なるほど。確実に何かの事情があってやってる。今の一言でそれが分かる。女の子が発した言葉で人に言えない事情がある事だけは分かった。俺は立ち上がってルクスエリムにお願いをする。

「このままここに捕らえたままでも良いので、どうかこの子に食事を与えてくださいませんか? 願わくば暖かい食事を」

 まあ…、カツ丼でも食え! 作戦だけど。

 ルクスエリムは騎士に向かって指示を飛ばした。

「食事の用意を」

 すると近くにいた騎士が返事をして牢屋を出て言った。まずは心を開かないと、この子が犯人だとしても主犯じゃない事は確かだ。まあ心を開くまでは至らないかもしれないけど、少しでも話す気になってくれればと思うのだった。
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