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序章 宇宙人襲来
09 スタート
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「トールさん、俺……やります」
「……龍也くん、そう言ってくれるのは嬉しいけどそんなに焦らなくていいんだよ。短いとはいえ時間はある。重要な決断になるだろうしね」
「いえ、大丈夫です。覚悟はできてます。
そもそも俺は最初から宇宙人と戦うつもりでここに来ました。その回数が少し増えただけです」
俺の考えは最初から決まっている。夢を叶えるために必要なことなら絶対にやり遂げる。それに、大好きなサッカーをこんな理由で使われているのは嫌だ。そして、今の俺にはまた新たな目標が生まれていた。
「もし優勝して侵略を免れたとしても、そのゼラって星が他の星を侵略したのならろくな未来にならないことは俺にでも想像がつきます。
だから、俺はトーナメントで優勝して、ゼラが突然こんな大会を開催した訳を聞き……侵略を止めさせたい……!」
馬鹿なことを言ってるのはわかってる、それがどれだけ無謀なことなのかも。
だけど諦めたくない、チャンスがあるのなら掴みたい。
それに、あの時……最初に宇宙人との戦いを決意した時と同じようにまたも湧いてくる使命感。
この使命感は俺の正義感から来るものなのか、それとも……?
「しょうがねえな、俺も協力するぜ。
それに今回の勝負は互いに1点の引き分けでお前との決着もまだつけられていないしな」
「ガハハ! エースストライカー対決で1点だったのは俺様も同じだ!
何よりお前とのサッカーは楽しかったからな!
お前も来るだろ? クレ?」
「仕方ない、乗りかかった船だ。
俺も協力してやる」
将人とブラド、それにクレは一緒に戦ってくれるみたいだ。
「4人とも、本当にありがとう」
トール会長が俺たちに対して深く頭を下げる。
「わ、私も! 私も何かできることがあるなら協力したいです!」
「未来……」
「止めないで龍也くん! 龍也くんが頑張るなら私だっ――」
「止めないよ」
「……え?」
「こうなった未来が頑固なのは知ってるし、俺も今回未来に助けられちゃったからな。正直心細かったし、未来が協力してくれるなら心強い。
もちろんトール会長次第だけどな」
俺は笑ってそう返す。
本当は未来には地球に戻ってもらいたい。その気持ちは変わらない。しかし、それが無理なら最初から受け入れる方が良い。未来にマネージャーとしていてほしい気持ちもまた事実なのだから。
「未来さんはサッカーに詳しい優秀なマネージャーだ。私としてはその申し出はかなりありがたいと思っている。
しかし本当に大丈夫かい? 危険なことだってあるかもしれない。地球にだってもう当分戻れなくなるんだよ?」
「ご心配ありがとうございます。だけど大丈夫です。私だって覚悟決まってますから……!」
「そうか。なら私からはこれだけだ。
ありがとう……!」
トール会長からの許可も出て、未来が正式に参加することが決定する。
「ちょ、ちょ、ちょっと待てやーーーーーーい!」
突然レオの声が会場に響く。その直後レオが俺の肩に手を回してグラウンドの隅まで連れていき、真剣な顔をして話しかけてくる。
「なぁ……お前と未来ちゃんって……付き合ってんの……?」
「……はぁ? ち、違うけど……」
「ホントか?? 今の会話や雰囲気は恋愛検定初段の俺目線でもカップルにしか見えなかったぜ??」
「だーから違うって、あいつとは幼なじみなだけ。妹みたいなもんだよ」
「お、幼なじみ……そうか……。
ま、とはいえかっこよかったぜ今のセリフ。俺が保証する!」
「そ、そっか、かっこよかったか……!」
正直ちょっとだけかっこつけてたからレオとはいえ褒められるのは嬉しい。
「ああ! 俺が女なら確実に惚れてたな!」
「えっ!? 気持ち悪!」
結局くだらない話に落ち着いたレオとの会話を適当に弾ませつつみんなの所へ戻ると、ザシャがトール会長に質問をしているところだった。
「勝つまで地球に戻れないってのは知ってるんスけど、今決断したらもう今から一度も帰れないってことっスか?」
「いや、一応明後日に一度だけ地球に戻って家族や友だちに挨拶する時間は取ろうと思っているよ」
「それってどれくらいの時間になるっスか?」
「4、5時間かな。ただ大勢の人を呼ぶのは色々と厳しいっていうのは先に伝えておくよ」
「……わかりましたっス」
トール会長の返しに一定の満足を得たのか、ザシャはこれで引き下がる。
「他のみんなの答えも今聞こうとは思わない。明日までに考えといてくれ。よろしく頼むよ」
そう言ってトールさんとアウラス監督はこの場を去った。
その後俺たちは言われていたホテルに案内された。
案内してくれたのはオグレス星の女性。ロボットではない、俺たちが初めて会った正真正銘本物の宇宙人だ。
その見た目は地球人に似ていたが少し痩せていた。ホテルまでの間にオグレス星人を何人か目にしたが、全員が痩せていたため運動能力が低い故にこういう見た目になったのかと推測する。
オグレス星は科学が発展しているだけあって道路は全て動く歩道になっていた。上を見上げると空飛ぶ車が目に入る。少し移動するだけなのに驚きばかりだ。非常に未来を感じる。
到着したホテルも凄く豪華で近未来なものだった。部屋の鍵にはボタンがついていて、ホテル内でボタンを押すと部屋にワープする仕組みだ。他にも色々と機能はあるようだが短い滞在なのでこれだけ把握していれば大丈夫だろう。
俺は鍵を受け取ると待ちきれずすぐにワープする。目に映るのは今までに体験したことのないレベルのVIP部屋。外観からそんな気はしていたが、ここオグレス星でも最上級のホテルなのだろう。俺たちに対する期待が伝わってくるな。
俺の語彙力じゃ表現できないくらいとにかく美味しい料理。最高かよ。様々な効能のある風呂……というよりもはや温泉。浸かるだけで体の汚れは全て無くなるらしい。最高かよ。歯磨きの代わりに口にスプレー。これで口内の汚れは全て無くなるらしい。最高かよ。ベッド、天国。最高かよ。
こうしてオグレスの科学を堪能した俺は、今日起こった様々な事など忘れるくらいの幸せな気分に浸りつつ、ゆったりと眠りについた。
***
翌日、俺は待ち合わせをしていた未来・将人・クレ・ブラドと合流しスタジアムへ向かう。向かうと言っても動く歩道に乗っているだけなのだが。
「あれ? ブラドのことだからネイトも連れてくると思ってたけど、今日は一緒じゃないのか?」
ネイトがいないことに疑問を抱いた俺は直接ブラドに問いかける。
「ああ、実はよ、朝声はかけたんだ。けど先行っててくれって。真剣な声だったから無理に連れてくることはできなかったぜ」
「そうか、もしかしたらネイトは来ないのかもしれないな……」
俺の言葉を聞くと、ブラドは豪快に笑い出す。
「ガハハ! 龍也、お前はネイトを全くわかっちゃいねぇ。あいつは絶対に来るぜ。そういうやつだ」
そう言ったブラドの顔は自信に溢れていた。
そして俺たちはスタジアムに到着する。
一番乗りかと思ったがそこには……。
「おーいお前ら! 遅かったな!」
ヘンドリックにザシャ、アラン、レオ、ペペ、ヒルの6人が先に到着していた。
「みんな! 一緒に戦ってくれるのか?」
「もちろんだ! 俺も最初からそのつもりだったしな!」
ヘンドリックの発言に合わせて隣のザシャも頷く。
「地球を救うためなら僕も全力で戦います」
2人に続いてアランも答える。
「まー俺は? 正直地球を救うとかにはあんまり興味ないけど、宇宙人となら経験したことのないサッカーができそうだし協力してもいいかなーって」
ペペも一応は協力してくれるみたいだ。
レオは何故かそわそわしていて、ヒルは相変わらず怖い顔をしているがここに居るということは2人も共に戦ってくれるのだろう。
このタイミングで朝9時になり、トール会長が姿を現す。
「おはようみんな。昨日はよく眠れたかい?
10人も集まってくれて本当に嬉しいよ。……ネイトくんは――」
「ネイトは来るぜ!」
トールさんの言葉を遮るようにブラドが叫ぶ。
「あいつは絶対に来る、もう少し待ってくれねえか?」
ブラドの言葉にトールさんはわかったと頷き、しばらく全員でネイトを待つことにした。
しかし一向にネイトは現れない。30分ほどして、痺れを切らしたヒルが声を発する。
「なあ、ネイトってあのビビりだろ? 待っててもどうせ来ないだろうし、もし来ても足手まといになるのが目に見えてる。さっさと見切りつけた方がいいと思うけどな」
その言葉にブラドが怒りを露わにして反応する。
「ああ? お前がネイトの何を知ってるっていうんだ? あいつはこんなところで逃げるやつじゃねえよ!」
今にも喧嘩が始まりそうなバチバチとした雰囲気の中、1つの声がスタジアムに響く。
「みんな!」
全員が声の方向を向く。そこに居たのは……ネイトだ。
「み、みんな、遅れてごめんなさい。
僕……ダメなやつなんだ。前の試合でも全く役に立たなかった……ヒルさんの言う通り足手まといになるのかもしれない……。
それでも! 僕はこんなダメな自分から抜け出したい! 胸を張ってみんなと戦って……地球を救いたい……!」
ネイトの声は震えているが、それでも勇気を振り絞って話していることが伝わってくる。
「こんな僕だけど……みんなの仲間になっていいですか……?」
「もちろんだ! 待ってたぜ! ネイト!」
真っ先に駆け寄り、ブラドが満面の笑みで手を差し伸べる。
俺も続けてネイトに話しかける。
「ネイト、お前は自分のことをダメなやつだと思ってるみたいだけど俺はそうは思わない。
確かに前の試合ではダメだったかもしれない。でも今、自分の意思でここにきたお前は決してダメなやつなんかじゃない! 俺が保証する!
改めてよろしくな、ネイト!」
「……まあ、そこまで覚悟できてんなら別に追い返したりはしないけどさ」
ヒルも無事認めてくれたようだ。
「ようし! 俺たち11人! 絶対に地球を救うぞー!」
「「「おーーー!!!」」」
ヘンドリックの掛け声に合わせて全員で叫ぶ。
ここから、俺たちの宇宙を舞台とした壮絶な戦いが幕を開けたのだ。
「……龍也くん、そう言ってくれるのは嬉しいけどそんなに焦らなくていいんだよ。短いとはいえ時間はある。重要な決断になるだろうしね」
「いえ、大丈夫です。覚悟はできてます。
そもそも俺は最初から宇宙人と戦うつもりでここに来ました。その回数が少し増えただけです」
俺の考えは最初から決まっている。夢を叶えるために必要なことなら絶対にやり遂げる。それに、大好きなサッカーをこんな理由で使われているのは嫌だ。そして、今の俺にはまた新たな目標が生まれていた。
「もし優勝して侵略を免れたとしても、そのゼラって星が他の星を侵略したのならろくな未来にならないことは俺にでも想像がつきます。
だから、俺はトーナメントで優勝して、ゼラが突然こんな大会を開催した訳を聞き……侵略を止めさせたい……!」
馬鹿なことを言ってるのはわかってる、それがどれだけ無謀なことなのかも。
だけど諦めたくない、チャンスがあるのなら掴みたい。
それに、あの時……最初に宇宙人との戦いを決意した時と同じようにまたも湧いてくる使命感。
この使命感は俺の正義感から来るものなのか、それとも……?
「しょうがねえな、俺も協力するぜ。
それに今回の勝負は互いに1点の引き分けでお前との決着もまだつけられていないしな」
「ガハハ! エースストライカー対決で1点だったのは俺様も同じだ!
何よりお前とのサッカーは楽しかったからな!
お前も来るだろ? クレ?」
「仕方ない、乗りかかった船だ。
俺も協力してやる」
将人とブラド、それにクレは一緒に戦ってくれるみたいだ。
「4人とも、本当にありがとう」
トール会長が俺たちに対して深く頭を下げる。
「わ、私も! 私も何かできることがあるなら協力したいです!」
「未来……」
「止めないで龍也くん! 龍也くんが頑張るなら私だっ――」
「止めないよ」
「……え?」
「こうなった未来が頑固なのは知ってるし、俺も今回未来に助けられちゃったからな。正直心細かったし、未来が協力してくれるなら心強い。
もちろんトール会長次第だけどな」
俺は笑ってそう返す。
本当は未来には地球に戻ってもらいたい。その気持ちは変わらない。しかし、それが無理なら最初から受け入れる方が良い。未来にマネージャーとしていてほしい気持ちもまた事実なのだから。
「未来さんはサッカーに詳しい優秀なマネージャーだ。私としてはその申し出はかなりありがたいと思っている。
しかし本当に大丈夫かい? 危険なことだってあるかもしれない。地球にだってもう当分戻れなくなるんだよ?」
「ご心配ありがとうございます。だけど大丈夫です。私だって覚悟決まってますから……!」
「そうか。なら私からはこれだけだ。
ありがとう……!」
トール会長からの許可も出て、未来が正式に参加することが決定する。
「ちょ、ちょ、ちょっと待てやーーーーーーい!」
突然レオの声が会場に響く。その直後レオが俺の肩に手を回してグラウンドの隅まで連れていき、真剣な顔をして話しかけてくる。
「なぁ……お前と未来ちゃんって……付き合ってんの……?」
「……はぁ? ち、違うけど……」
「ホントか?? 今の会話や雰囲気は恋愛検定初段の俺目線でもカップルにしか見えなかったぜ??」
「だーから違うって、あいつとは幼なじみなだけ。妹みたいなもんだよ」
「お、幼なじみ……そうか……。
ま、とはいえかっこよかったぜ今のセリフ。俺が保証する!」
「そ、そっか、かっこよかったか……!」
正直ちょっとだけかっこつけてたからレオとはいえ褒められるのは嬉しい。
「ああ! 俺が女なら確実に惚れてたな!」
「えっ!? 気持ち悪!」
結局くだらない話に落ち着いたレオとの会話を適当に弾ませつつみんなの所へ戻ると、ザシャがトール会長に質問をしているところだった。
「勝つまで地球に戻れないってのは知ってるんスけど、今決断したらもう今から一度も帰れないってことっスか?」
「いや、一応明後日に一度だけ地球に戻って家族や友だちに挨拶する時間は取ろうと思っているよ」
「それってどれくらいの時間になるっスか?」
「4、5時間かな。ただ大勢の人を呼ぶのは色々と厳しいっていうのは先に伝えておくよ」
「……わかりましたっス」
トール会長の返しに一定の満足を得たのか、ザシャはこれで引き下がる。
「他のみんなの答えも今聞こうとは思わない。明日までに考えといてくれ。よろしく頼むよ」
そう言ってトールさんとアウラス監督はこの場を去った。
その後俺たちは言われていたホテルに案内された。
案内してくれたのはオグレス星の女性。ロボットではない、俺たちが初めて会った正真正銘本物の宇宙人だ。
その見た目は地球人に似ていたが少し痩せていた。ホテルまでの間にオグレス星人を何人か目にしたが、全員が痩せていたため運動能力が低い故にこういう見た目になったのかと推測する。
オグレス星は科学が発展しているだけあって道路は全て動く歩道になっていた。上を見上げると空飛ぶ車が目に入る。少し移動するだけなのに驚きばかりだ。非常に未来を感じる。
到着したホテルも凄く豪華で近未来なものだった。部屋の鍵にはボタンがついていて、ホテル内でボタンを押すと部屋にワープする仕組みだ。他にも色々と機能はあるようだが短い滞在なのでこれだけ把握していれば大丈夫だろう。
俺は鍵を受け取ると待ちきれずすぐにワープする。目に映るのは今までに体験したことのないレベルのVIP部屋。外観からそんな気はしていたが、ここオグレス星でも最上級のホテルなのだろう。俺たちに対する期待が伝わってくるな。
俺の語彙力じゃ表現できないくらいとにかく美味しい料理。最高かよ。様々な効能のある風呂……というよりもはや温泉。浸かるだけで体の汚れは全て無くなるらしい。最高かよ。歯磨きの代わりに口にスプレー。これで口内の汚れは全て無くなるらしい。最高かよ。ベッド、天国。最高かよ。
こうしてオグレスの科学を堪能した俺は、今日起こった様々な事など忘れるくらいの幸せな気分に浸りつつ、ゆったりと眠りについた。
***
翌日、俺は待ち合わせをしていた未来・将人・クレ・ブラドと合流しスタジアムへ向かう。向かうと言っても動く歩道に乗っているだけなのだが。
「あれ? ブラドのことだからネイトも連れてくると思ってたけど、今日は一緒じゃないのか?」
ネイトがいないことに疑問を抱いた俺は直接ブラドに問いかける。
「ああ、実はよ、朝声はかけたんだ。けど先行っててくれって。真剣な声だったから無理に連れてくることはできなかったぜ」
「そうか、もしかしたらネイトは来ないのかもしれないな……」
俺の言葉を聞くと、ブラドは豪快に笑い出す。
「ガハハ! 龍也、お前はネイトを全くわかっちゃいねぇ。あいつは絶対に来るぜ。そういうやつだ」
そう言ったブラドの顔は自信に溢れていた。
そして俺たちはスタジアムに到着する。
一番乗りかと思ったがそこには……。
「おーいお前ら! 遅かったな!」
ヘンドリックにザシャ、アラン、レオ、ペペ、ヒルの6人が先に到着していた。
「みんな! 一緒に戦ってくれるのか?」
「もちろんだ! 俺も最初からそのつもりだったしな!」
ヘンドリックの発言に合わせて隣のザシャも頷く。
「地球を救うためなら僕も全力で戦います」
2人に続いてアランも答える。
「まー俺は? 正直地球を救うとかにはあんまり興味ないけど、宇宙人となら経験したことのないサッカーができそうだし協力してもいいかなーって」
ペペも一応は協力してくれるみたいだ。
レオは何故かそわそわしていて、ヒルは相変わらず怖い顔をしているがここに居るということは2人も共に戦ってくれるのだろう。
このタイミングで朝9時になり、トール会長が姿を現す。
「おはようみんな。昨日はよく眠れたかい?
10人も集まってくれて本当に嬉しいよ。……ネイトくんは――」
「ネイトは来るぜ!」
トールさんの言葉を遮るようにブラドが叫ぶ。
「あいつは絶対に来る、もう少し待ってくれねえか?」
ブラドの言葉にトールさんはわかったと頷き、しばらく全員でネイトを待つことにした。
しかし一向にネイトは現れない。30分ほどして、痺れを切らしたヒルが声を発する。
「なあ、ネイトってあのビビりだろ? 待っててもどうせ来ないだろうし、もし来ても足手まといになるのが目に見えてる。さっさと見切りつけた方がいいと思うけどな」
その言葉にブラドが怒りを露わにして反応する。
「ああ? お前がネイトの何を知ってるっていうんだ? あいつはこんなところで逃げるやつじゃねえよ!」
今にも喧嘩が始まりそうなバチバチとした雰囲気の中、1つの声がスタジアムに響く。
「みんな!」
全員が声の方向を向く。そこに居たのは……ネイトだ。
「み、みんな、遅れてごめんなさい。
僕……ダメなやつなんだ。前の試合でも全く役に立たなかった……ヒルさんの言う通り足手まといになるのかもしれない……。
それでも! 僕はこんなダメな自分から抜け出したい! 胸を張ってみんなと戦って……地球を救いたい……!」
ネイトの声は震えているが、それでも勇気を振り絞って話していることが伝わってくる。
「こんな僕だけど……みんなの仲間になっていいですか……?」
「もちろんだ! 待ってたぜ! ネイト!」
真っ先に駆け寄り、ブラドが満面の笑みで手を差し伸べる。
俺も続けてネイトに話しかける。
「ネイト、お前は自分のことをダメなやつだと思ってるみたいだけど俺はそうは思わない。
確かに前の試合ではダメだったかもしれない。でも今、自分の意思でここにきたお前は決してダメなやつなんかじゃない! 俺が保証する!
改めてよろしくな、ネイト!」
「……まあ、そこまで覚悟できてんなら別に追い返したりはしないけどさ」
ヒルも無事認めてくれたようだ。
「ようし! 俺たち11人! 絶対に地球を救うぞー!」
「「「おーーー!!!」」」
ヘンドリックの掛け声に合わせて全員で叫ぶ。
ここから、俺たちの宇宙を舞台とした壮絶な戦いが幕を開けたのだ。
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