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第二章 初陣

35 対ギガデス作戦立案

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 「ペペ~、試合出てくれよ~」

 「えー、だって潰されるの嫌だしさー」

 ハーフタイム、レオがペペを試合に出そうと説得しているがその願いは叶わなさそうだ。
 実際ペペが試合に出たらギガデスは確実に狙ってくるだろうし、いくらペペの身体能力が高かろうと危険は付きまとう。ペペの本心がどうであれ無理強いはできないな。

 「どうします龍也くん」

 「アラン」

 近づいてくるアラン。その表情からはかなり焦っていることが伺える。

 「やはり何も思いついていませんか……」

 「ほんと……?」

 「……未来!」

 「その顔……何か思いついてる……よね?」

 俺の考えを見抜かれてしまう。
 ……未来に隠し事はできないな。

 「……!?
 そうなんですか……?」

 「まあ……一応は。
 けどこれはかなりの体力と技術を要する。それに危険でもあるからな。他の方法があるならと考えてたけど……」

 「何を言っているんですか。
 僕たちは仮にも星でトップクラスの実力者。なめてもらったら困りますよ」

 「!
 そうだよな……!」

 できることなら他の作戦を思いつきたかったが時間もないし仕方がない。とりあえずはこの作戦でいこう。

 「みんな! 集まってくれ! 作戦がある!」

 ***

 「なるほど……シンプルだがいい作戦だ」

 「龍也先輩さすがっス!」

 「でもこの作戦をやるには全員の協力が不可欠。
 ヒル、協力してほしい」

 俺はヒルに対して頭を下げる。

 「あ? んだよ。やめろって気持ち悪ぃ。
 別に俺だって負けたいわけじゃねえんだ。協力くらいはしてやるよ、その代わりこれで負けたら承知しねえからな」

 「ありがとう……!」

 ヒルの協力も得られた。絶対とは言いきれないが、俺の作戦と仲間たちを信じる……!

 ***

 「なあレオー?」

 「な、なんだ、ペペ」

 「お前急に顔色悪くなってないかー? どうしたー」

 「え、べ、別にそんなことないって。
 あ、ちょ、ちょっとトイレ行ってくる! じゃな!」

 「……?」

 ***

 「ブラド、大丈夫そうか?」

 「ん、おお、悪ぃな、大して活躍できてなくて。
 作戦だろ? 大丈夫だ! しっかり任せとけ!」

 「本当に大丈夫か? 少し元気ないように見えるけど」

 「大丈夫だって! ほらよ、一応今負けてるわけだしよ、ちょっとは凹むこともあるけどよ、お前の作戦聞いたら大丈夫だって思えたからよ! 心配すんなって!」

 「そうか、それならよかった。よろしく頼む」

 とりあえず俺はハーフタイム中に全員と会話しておくことにした。ブラドは心配していたが、この調子なら大丈夫か。試合中変なプレーをすることも無かったしな。

 残るはヘンディ・ザシャ・レオ・凛の4人だが、レオの姿が見えない。まあレオなら心配しなくても問題ないか。
 そう思い次に話しかけるのは……

 「よおヘンディ、ザシャ。大丈夫そうか?」

 「あ、りゅ、龍也先輩! 大丈夫っス! 作戦もばっちり頭に入ってるっス!」

 「そうか、それはよかった。頼りにしてるぜ
 あれ? どうしたヘンディ? 珍しく元気ないような」

 普段なら声をかけたらすぐにどデカい声で返してくるヘンディだが、今日は珍しく返事がない。

 「あーいやいやなんでもないっス! ヘンディさんはハーフタイムに瞑想するタイプの人なんスよ! だから今はそっとしてもらえ――」

 「あ、龍也か。気づかなくて悪かったな。作戦は聞いてたから大丈夫だ。
 前半はシュート1本も止められなくてごめんな」

 「そ、そーんな気にすることじゃないっスよヘンディさん! あの戦法とキーパーとの相性めちゃくちゃ悪いっスもん。そうっスよね? 龍也先輩!」

 「あ、ああ、そうだな。それにさっきの作戦、キーパーには未対応だ。後半も苦労かけると思うけどよろしく頼む」

 「了解っス! じ、じゃあヘンディさんはまた瞑想に戻るので……お疲れ様っス! 後半も頑張りましょうっス!」

 「お、おう。頑張ろうな」

 ヘンディ、口は開いてくれたがやはり普段の覇気がないように感じられた。
 ドイツ代表時代は常に明るく前向きな理想のキャプテンといったイメージだったが、流石のヘンディでも宇宙人との試合ともなると緊張するのだろうか。
 付き合いの長いザシャが大丈夫だと言うのなら大丈夫なんだろうが少し気になるな。

 ハーフタイムも残りわずか、相変わらず姿の見えないレオは置いといて、俺は最後の1人に声をかける。

 「凛、大丈夫そうか?」

 「…………」

 「……凛?」

 「わっ、びっくりした、何?」

 「え、あ、いや、大丈夫かなーって全員に聞いて回っててさ。考え事か?」

 「えっと、まあそんなとこ。
 大丈夫、あんたの作戦なら把握してるから」

 「そうか、考え事……あ、もしかしてあれか? ブラドとまだ仲直りできてないことか? 橋渡しくらいならできるけど……」

 「……よくわかったわね。ま、でも自分で解決するから大丈夫。ほらもう試合始まるしいくよ」

 「お、おう」

 うーん、なんか濁された気がするな……。
 まあ重い悩みではなさそうだし一旦は大丈夫か。

 ついに後半。
 とりあえず全員作戦通りのポジションにはついている。ギガデスもかなり驚いた表情をしているな。
 俺の作戦が通じるかどうか。
 審判が笛を咥え……後半開始だ!
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