グローリー・リーグ -宇宙サッカー奮闘記-

山中カエル

文字の大きさ
35 / 109
第二章 初陣

35 対ギガデス作戦立案

しおりを挟む
 「ペペ~、試合出てくれよ~」

 「えー、だって潰されるの嫌だしさー」

 ハーフタイム、レオがペペを試合に出そうと説得しているがその願いは叶わなさそうだ。
 実際ペペが試合に出たらギガデスは確実に狙ってくるだろうし、いくらペペの身体能力が高かろうと危険は付きまとう。ペペの本心がどうであれ無理強いはできないな。

 「どうします龍也くん」

 「アラン」

 近づいてくるアラン。その表情からはかなり焦っていることが伺える。

 「やはり何も思いついていませんか……」

 「ほんと……?」

 「……未来!」

 「その顔……何か思いついてる……よね?」

 俺の考えを見抜かれてしまう。
 ……未来に隠し事はできないな。

 「……!?
 そうなんですか……?」

 「まあ……一応は。
 けどこれはかなりの体力と技術を要する。それに危険でもあるからな。他の方法があるならと考えてたけど……」

 「何を言っているんですか。
 僕たちは仮にも星でトップクラスの実力者。なめてもらったら困りますよ」

 「!
 そうだよな……!」

 できることなら他の作戦を思いつきたかったが時間もないし仕方がない。とりあえずはこの作戦でいこう。

 「みんな! 集まってくれ! 作戦がある!」

 ***

 「なるほど……シンプルだがいい作戦だ」

 「龍也先輩さすがっス!」

 「でもこの作戦をやるには全員の協力が不可欠。
 ヒル、協力してほしい」

 俺はヒルに対して頭を下げる。

 「あ? んだよ。やめろって気持ち悪ぃ。
 別に俺だって負けたいわけじゃねえんだ。協力くらいはしてやるよ、その代わりこれで負けたら承知しねえからな」

 「ありがとう……!」

 ヒルの協力も得られた。絶対とは言いきれないが、俺の作戦と仲間たちを信じる……!

 ***

 「なあレオー?」

 「な、なんだ、ペペ」

 「お前急に顔色悪くなってないかー? どうしたー」

 「え、べ、別にそんなことないって。
 あ、ちょ、ちょっとトイレ行ってくる! じゃな!」

 「……?」

 ***

 「ブラド、大丈夫そうか?」

 「ん、おお、悪ぃな、大して活躍できてなくて。
 作戦だろ? 大丈夫だ! しっかり任せとけ!」

 「本当に大丈夫か? 少し元気ないように見えるけど」

 「大丈夫だって! ほらよ、一応今負けてるわけだしよ、ちょっとは凹むこともあるけどよ、お前の作戦聞いたら大丈夫だって思えたからよ! 心配すんなって!」

 「そうか、それならよかった。よろしく頼む」

 とりあえず俺はハーフタイム中に全員と会話しておくことにした。ブラドは心配していたが、この調子なら大丈夫か。試合中変なプレーをすることも無かったしな。

 残るはヘンディ・ザシャ・レオ・凛の4人だが、レオの姿が見えない。まあレオなら心配しなくても問題ないか。
 そう思い次に話しかけるのは……

 「よおヘンディ、ザシャ。大丈夫そうか?」

 「あ、りゅ、龍也先輩! 大丈夫っス! 作戦もばっちり頭に入ってるっス!」

 「そうか、それはよかった。頼りにしてるぜ
 あれ? どうしたヘンディ? 珍しく元気ないような」

 普段なら声をかけたらすぐにどデカい声で返してくるヘンディだが、今日は珍しく返事がない。

 「あーいやいやなんでもないっス! ヘンディさんはハーフタイムに瞑想するタイプの人なんスよ! だから今はそっとしてもらえ――」

 「あ、龍也か。気づかなくて悪かったな。作戦は聞いてたから大丈夫だ。
 前半はシュート1本も止められなくてごめんな」

 「そ、そーんな気にすることじゃないっスよヘンディさん! あの戦法とキーパーとの相性めちゃくちゃ悪いっスもん。そうっスよね? 龍也先輩!」

 「あ、ああ、そうだな。それにさっきの作戦、キーパーには未対応だ。後半も苦労かけると思うけどよろしく頼む」

 「了解っス! じ、じゃあヘンディさんはまた瞑想に戻るので……お疲れ様っス! 後半も頑張りましょうっス!」

 「お、おう。頑張ろうな」

 ヘンディ、口は開いてくれたがやはり普段の覇気がないように感じられた。
 ドイツ代表時代は常に明るく前向きな理想のキャプテンといったイメージだったが、流石のヘンディでも宇宙人との試合ともなると緊張するのだろうか。
 付き合いの長いザシャが大丈夫だと言うのなら大丈夫なんだろうが少し気になるな。

 ハーフタイムも残りわずか、相変わらず姿の見えないレオは置いといて、俺は最後の1人に声をかける。

 「凛、大丈夫そうか?」

 「…………」

 「……凛?」

 「わっ、びっくりした、何?」

 「え、あ、いや、大丈夫かなーって全員に聞いて回っててさ。考え事か?」

 「えっと、まあそんなとこ。
 大丈夫、あんたの作戦なら把握してるから」

 「そうか、考え事……あ、もしかしてあれか? ブラドとまだ仲直りできてないことか? 橋渡しくらいならできるけど……」

 「……よくわかったわね。ま、でも自分で解決するから大丈夫。ほらもう試合始まるしいくよ」

 「お、おう」

 うーん、なんか濁された気がするな……。
 まあ重い悩みではなさそうだし一旦は大丈夫か。

 ついに後半。
 とりあえず全員作戦通りのポジションにはついている。ギガデスもかなり驚いた表情をしているな。
 俺の作戦が通じるかどうか。
 審判が笛を咥え……後半開始だ!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

人質から始まった凡庸で優しい王子の英雄譚

咲良喜玖
ファンタジー
アーリア戦記から抜粋。 帝国歴515年。サナリア歴3年。 サナリア王国は、隣国のガルナズン帝国の使者からの通達により、国家滅亡の危機に陥る。 従属せよ。 これを拒否すれば、戦争である。 追い込まれたサナリアには、超大国との戦いには応じられない。 そこで、サナリアの王アハトは、帝国に従属することを決めるのだが。 当然それだけで交渉が終わるわけがなく、従属した証を示せとの命令が下された。 命令の中身。 それは、二人の王子の内のどちらかを選べとの事だった。 出来たばかりの国を守るため。 サナリア王が下した決断は。 第一王子【フュン・メイダルフィア】を人質として送り出す事だった。 フュンは弟に比べて能力が低く、武芸や勉学が出来ない。 彼の良さをあげるとしたら、ただ人に優しいだけ。 そんな人物では、国を背負うことなんて出来ないだろうと。 王が、帝国の人質として選んだのである。 しかし、この人質がきっかけで、長らく続いているアーリア大陸の戦乱の歴史が変わっていく。 西のイーナミア王国。東のガルナズン帝国。 アーリア大陸の歴史を支える二つの巨大国家を揺るがす。 伝説の英雄が誕生することになるのだ。 偉大なる人質。フュンの物語が今始まる。 他サイトにも書いています。 こちらでは、出来るだけシンプルにしていますので、章分けも簡易にして、解説をしているあとがきもありません。 小説だけを読める形にしています。

異世界からの召喚者《完結》

アーエル
恋愛
中央神殿の敷地にある聖なる森に一筋の光が差し込んだ。 それは【異世界の扉】と呼ばれるもので、この世界の神に選ばれた使者が降臨されるという。 今回、招かれたのは若い女性だった。 ☆他社でも公開

悪役令嬢の騎士

コムラサキ
ファンタジー
帝都の貧しい家庭に育った少年は、ある日を境に前世の記憶を取り戻す。 異世界に転生したが、戦争に巻き込まれて悲惨な最期を迎えてしまうようだ。 少年は前世の知識と、あたえられた特殊能力を使って生き延びようとする。 そのためには、まず〈悪役令嬢〉を救う必要がある。 少年は彼女の騎士になるため、この世界で生きていくことを決意する。

【完結】シュゼットのはなし

ここ
恋愛
子猫(獣人)のシュゼットは王子を守るため、かわりに竜の呪いを受けた。 顔に大きな傷ができてしまう。 当然責任をとって妃のひとりになるはずだったのだが‥。

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

10秒で読めるちょっと怖い話。

絢郷水沙
ホラー
 ほんのりと不条理な『ギャグ』が香るホラーテイスト・ショートショートです。意味怖的要素も含んでおりますので、意味怖好きならぜひ読んでみてください。(毎日昼頃1話更新中!)

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

異世界転生特典『絶対安全領域(マイホーム)』~家の中にいれば神すら無効化、一歩も出ずに世界最強になりました~

夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺が転生時に願ったのは、たった一つ。「誰にも邪魔されず、絶対に安全な家で引きこもりたい!」 その切実な願いを聞き入れた神は、ユニークスキル『絶対安全領域(マイホーム)』を授けてくれた。この家の中にいれば、神の干渉すら無効化する究極の無敵空間だ! 「これで理想の怠惰な生活が送れる!」と喜んだのも束の間、追われる王女様が俺の庭に逃げ込んできて……? 面倒だが仕方なく、庭いじりのついでに追手を撃退したら、なぜかここが「聖域」だと勘違いされ、獣人の娘やエルフの学者まで押しかけてきた! 俺は家から出ずに快適なスローライフを送りたいだけなのに! 知らぬ間に世界を救う、無自覚最強の引きこもりファンタジー、開幕!

処理中です...