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第二章 初陣
38 まだまだこれから
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「ブラド! 大丈夫か!?」
ガロに吹き飛ばされ倒れるブラドに駆け寄る。
「ああ、なんとかな。
けどあいつはやべぇ。他の奴らとは格が違う。
龍也、全員でかかれば止められるとか思ってないか?」
「え? まあ、次に試すとしたらそれだけど……」
「ダメだ。俺ならわかる。
全員の力を合わせてもあいつには敵わねぇ。それくらい圧倒的な力だぜ……」
ブラドが確信を持って話しているのが伝わってくる。パワーのあるブラドは俺たちよりも正確に力の差を感じ取れるのだろう。だとすると、現状ガロを止める手段はない……。
パスも繋がらない。ドリブルも止められない。点数も負けていて試合時間も残り少ない。
だがまだ終わったわけじゃない。
「みんな! 気を落とさずに切り替えていこう!」
「でも龍也先輩……あいつのパワーはやばいっス。
何か策があるんスか……?」
「策は……無い!」
「……ッ。
じゃあ……」
「でも大丈夫! 今は無いだけだ! まだ試合は終わったわけじゃない!
俺たちはサッカー選手! 答えはサッカーをしながら見つける!
最後までサッカーを楽しんでいれば、必ず勝機は見出せる!」
「そんなの……」
「ピンチなのは確かだが、だからと言ってうずくまっていても何も変わらない。
気持ちの問題だ。俺は全く諦めるつもりはない」
「そうですね。僕も同じです。こんな所で諦める気はさらさらありません」
俺の言葉にクレやアランも続く。それによってみんなの目にも力が戻ってくる。まだまだここからだ……!
そして後半34分。俺たちオグレスボールでのキックオフ。
とりあえずガロを避けることがマスト。俺たちはガロから遠ざかるようにパスを回す。
するとあることに気づく。相手ディフェンスはパスカットに集中する余り、単純な目の前のディフェンスが疎かになっている。ちょうど凛の前はかなりすかすかな状態で、前の1人を抜けばシュートまで持っていくことができる。
タイミングを見計らい、凛を信じてパスを出す。パスは上手く通り、凛とディフェンスの一対一が出来上がる。
凛はパスを出すか迷っているように見えたが、最終的にはドリブルでディフェンスを抜くことにしたらしい。目の前のディフェンスが穴だということに気づいたのだろうか。
揺れる地面に翻弄されながらもドリブルを仕掛ける凛。俺は成功を祈るも祈りは届かず。あと一歩のところでボールを奪われてしまう。
そして奪われたボールはガロに向かって飛んでいく。このパスは絶対にカットしたいところだが、ガロの足が速すぎて追いつけない。パスが通る。そう覚悟した時……
「うおおおおおおおおおおおおおおおお」
俺と同じくパスカットを狙っていたヒルがギリギリのところで間に合いボールに突っ込む。
「あぶない!」
ベンチからそんな声が聞こえる。無理はない、ガロも同じタイミングでボールに飛び込んでいる。ガロのパワーを1人でモロに受けたら怪我をする可能性は高い。
「ふっ、たった1人で私に挑むか。だが、心意気だけでは何も変わらない」
「うるせえ! 黙ってボールを寄越しやがれクソ野郎があああああああ」
ヒルとガロが接触する。だが、力の差は覆ることなく、ヒルが吹き飛ばされてしまう。
しかし、何も変わっていないわけではない。今回の接触の結果、少しだけボールがガロから離れる。その少しのチャンスを見逃さず、俺は飛び込みパスを繋ぐ。
「凛ーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
「なんだと!?」
ガロの一瞬の隙を突いたそのボールは宙を舞い、凛へと届く。
そして、ボールを受け取った凛は今度は迷うことなくディフェンスと対峙する。
「今度は負けない!」
凛の叫び声と同時に地面が揺らされる。しかし、凛はその揺れに身体を添わせるようにして預け、揺れを利用したフェイントを行う。
不意をつかれた相手が身体を崩したところで、凛はトドメとばかりに俺の教えた"柔"のドリブルを使い、ディフェンスを完璧に抜き去る。
「流石……」
俺は思わず呟く。テクニックはチームでもトップクラスだと思っていたが、まさかあの揺れまで利用する力があるとは。
しかしそう上手くはいかない。そんな凛に対して2人のディフェンスが襲いかかる。穴のように見えたディフェンスは罠だったのか。またしてもガロに一歩先を行かれてしまった。
「凛!」
俺は思わず叫ぶも、凛はそんなのお見通しとでも言うかのように冷静にパスを出す。
そしてそのパスを受け取ったのはブラド。
空中にて力の籠ったオーバーヘッドシュートを放ち、1点をもぎ取る。そのシュートは、ブラドが何か吹っ切れた証のように思えた。
これで5-5。またも追いつく俺たち。
しかしここからが本番。次はギガデスボールでのキックオフ。確実にガロがくる。
策はまだ思いついていないが、とりあえず全員でディフェンスにつき、10人全員でガロに立ち向かおうと思う。凛の頑張りを見て燃えている仲間も多い。ブラドはああ言っていたが、今の俺たちなら止められると信じて。
後半41分。ギガデスボールでのキックオフ。
予想通りガロが1人で攻めてくるが、その雰囲気はかなり違ったものだ。
「ガキどもがあ!!!」
ガロの咆哮がグラウンドに響く。
「残り4分。もしかして勝てるとでも思っているか?
残念、なぜなら俺はまだ"本気"を見せていない。
"本気"とは後が無いことの証明。俺に"本気"を出させたことを誇りながら、散れ」
叫び終わるや否や、ガロがゴールに向かって走ってくる。
ガロの言う通り、今までのガロとは圧倒的に違う。走る時の踏み込みだけで地面が揺れる程だ。これが"本気"。真正面からぶつかれば怪我は避けられないだろう……。だが、それでも俺たちは諦めない。
「みんな! 全員でディフェンスだ! なんとしてでもガロを止めるぞ!」
俺がそう指示を出すも……
「下がってろ」
「え? ブラド……?」
「言ったろ、あいつ相手じゃ全員がかりでも敵いっこないって。
だから……俺が止める」
「なんで! それでも俺たち全員でやった方が!」
「信じてくれよ、キャプテン。
今の俺様は……全く、負ける気がしねえんだよおおおおおおおおおおおおおおおお」
叫びながら飛び出すブラド。明らかに俺たちのディフェンスラインから外れている。本当に1人でガロとぶつかる気なのか!?
「うおおおおおおおおおおおおおおおおお」
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
ガロとブラドが真正面からぶつかり、グラウンドに凄まじい衝撃波が発生する。
そして、1つの人影が吹き飛ばされるのを俺たちは目撃する。
それは……
ガロに吹き飛ばされ倒れるブラドに駆け寄る。
「ああ、なんとかな。
けどあいつはやべぇ。他の奴らとは格が違う。
龍也、全員でかかれば止められるとか思ってないか?」
「え? まあ、次に試すとしたらそれだけど……」
「ダメだ。俺ならわかる。
全員の力を合わせてもあいつには敵わねぇ。それくらい圧倒的な力だぜ……」
ブラドが確信を持って話しているのが伝わってくる。パワーのあるブラドは俺たちよりも正確に力の差を感じ取れるのだろう。だとすると、現状ガロを止める手段はない……。
パスも繋がらない。ドリブルも止められない。点数も負けていて試合時間も残り少ない。
だがまだ終わったわけじゃない。
「みんな! 気を落とさずに切り替えていこう!」
「でも龍也先輩……あいつのパワーはやばいっス。
何か策があるんスか……?」
「策は……無い!」
「……ッ。
じゃあ……」
「でも大丈夫! 今は無いだけだ! まだ試合は終わったわけじゃない!
俺たちはサッカー選手! 答えはサッカーをしながら見つける!
最後までサッカーを楽しんでいれば、必ず勝機は見出せる!」
「そんなの……」
「ピンチなのは確かだが、だからと言ってうずくまっていても何も変わらない。
気持ちの問題だ。俺は全く諦めるつもりはない」
「そうですね。僕も同じです。こんな所で諦める気はさらさらありません」
俺の言葉にクレやアランも続く。それによってみんなの目にも力が戻ってくる。まだまだここからだ……!
そして後半34分。俺たちオグレスボールでのキックオフ。
とりあえずガロを避けることがマスト。俺たちはガロから遠ざかるようにパスを回す。
するとあることに気づく。相手ディフェンスはパスカットに集中する余り、単純な目の前のディフェンスが疎かになっている。ちょうど凛の前はかなりすかすかな状態で、前の1人を抜けばシュートまで持っていくことができる。
タイミングを見計らい、凛を信じてパスを出す。パスは上手く通り、凛とディフェンスの一対一が出来上がる。
凛はパスを出すか迷っているように見えたが、最終的にはドリブルでディフェンスを抜くことにしたらしい。目の前のディフェンスが穴だということに気づいたのだろうか。
揺れる地面に翻弄されながらもドリブルを仕掛ける凛。俺は成功を祈るも祈りは届かず。あと一歩のところでボールを奪われてしまう。
そして奪われたボールはガロに向かって飛んでいく。このパスは絶対にカットしたいところだが、ガロの足が速すぎて追いつけない。パスが通る。そう覚悟した時……
「うおおおおおおおおおおおおおおおお」
俺と同じくパスカットを狙っていたヒルがギリギリのところで間に合いボールに突っ込む。
「あぶない!」
ベンチからそんな声が聞こえる。無理はない、ガロも同じタイミングでボールに飛び込んでいる。ガロのパワーを1人でモロに受けたら怪我をする可能性は高い。
「ふっ、たった1人で私に挑むか。だが、心意気だけでは何も変わらない」
「うるせえ! 黙ってボールを寄越しやがれクソ野郎があああああああ」
ヒルとガロが接触する。だが、力の差は覆ることなく、ヒルが吹き飛ばされてしまう。
しかし、何も変わっていないわけではない。今回の接触の結果、少しだけボールがガロから離れる。その少しのチャンスを見逃さず、俺は飛び込みパスを繋ぐ。
「凛ーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
「なんだと!?」
ガロの一瞬の隙を突いたそのボールは宙を舞い、凛へと届く。
そして、ボールを受け取った凛は今度は迷うことなくディフェンスと対峙する。
「今度は負けない!」
凛の叫び声と同時に地面が揺らされる。しかし、凛はその揺れに身体を添わせるようにして預け、揺れを利用したフェイントを行う。
不意をつかれた相手が身体を崩したところで、凛はトドメとばかりに俺の教えた"柔"のドリブルを使い、ディフェンスを完璧に抜き去る。
「流石……」
俺は思わず呟く。テクニックはチームでもトップクラスだと思っていたが、まさかあの揺れまで利用する力があるとは。
しかしそう上手くはいかない。そんな凛に対して2人のディフェンスが襲いかかる。穴のように見えたディフェンスは罠だったのか。またしてもガロに一歩先を行かれてしまった。
「凛!」
俺は思わず叫ぶも、凛はそんなのお見通しとでも言うかのように冷静にパスを出す。
そしてそのパスを受け取ったのはブラド。
空中にて力の籠ったオーバーヘッドシュートを放ち、1点をもぎ取る。そのシュートは、ブラドが何か吹っ切れた証のように思えた。
これで5-5。またも追いつく俺たち。
しかしここからが本番。次はギガデスボールでのキックオフ。確実にガロがくる。
策はまだ思いついていないが、とりあえず全員でディフェンスにつき、10人全員でガロに立ち向かおうと思う。凛の頑張りを見て燃えている仲間も多い。ブラドはああ言っていたが、今の俺たちなら止められると信じて。
後半41分。ギガデスボールでのキックオフ。
予想通りガロが1人で攻めてくるが、その雰囲気はかなり違ったものだ。
「ガキどもがあ!!!」
ガロの咆哮がグラウンドに響く。
「残り4分。もしかして勝てるとでも思っているか?
残念、なぜなら俺はまだ"本気"を見せていない。
"本気"とは後が無いことの証明。俺に"本気"を出させたことを誇りながら、散れ」
叫び終わるや否や、ガロがゴールに向かって走ってくる。
ガロの言う通り、今までのガロとは圧倒的に違う。走る時の踏み込みだけで地面が揺れる程だ。これが"本気"。真正面からぶつかれば怪我は避けられないだろう……。だが、それでも俺たちは諦めない。
「みんな! 全員でディフェンスだ! なんとしてでもガロを止めるぞ!」
俺がそう指示を出すも……
「下がってろ」
「え? ブラド……?」
「言ったろ、あいつ相手じゃ全員がかりでも敵いっこないって。
だから……俺が止める」
「なんで! それでも俺たち全員でやった方が!」
「信じてくれよ、キャプテン。
今の俺様は……全く、負ける気がしねえんだよおおおおおおおおおおおおおおおお」
叫びながら飛び出すブラド。明らかに俺たちのディフェンスラインから外れている。本当に1人でガロとぶつかる気なのか!?
「うおおおおおおおおおおおおおおおおお」
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
ガロとブラドが真正面からぶつかり、グラウンドに凄まじい衝撃波が発生する。
そして、1つの人影が吹き飛ばされるのを俺たちは目撃する。
それは……
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