グローリー・リーグ -宇宙サッカー奮闘記-

山中カエル

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第三章 謎と試練

53 お出かけオグレス

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 「龍也くん、今日暇? デート行こうよっ!」

 ……!?
 い、今凄い言葉が聞こえたような……?
 俺の耳が確かなら……おいレオ、言ってないけど言っただろ? 俺は本気出せばモテるって。
 まあまあそう焦るな、聞き間違いの可能性も無くはない。一応聞き直してみよう。

 「……ん? 今なんて……?」

 「…………」

 「えっと……」

 「龍也くん、今日暇? 出かけようよっ!」

 「……ん? あれ? さっきとなんか違くね!?」

 「え? 何言ってるの? 同じことを繰り返しただけだよ?
 で、どう? 暇? 出かけたいところがあるんだぁ」

 「いやまあ、ばりばり暇を持て余してたけど」

 「じゃあ決まりっ! 早く出てきて~」

 うーん、なんか釈然としないがまあいいか。
 そういえば宇宙に来てから一度も休日にゆっくり出かけていなかったな。オグレスには素晴らしい科学力がある。地球では体験できないこともたくさん体験できるだろう。
 いい息抜きだと思って出かけるとしよう。

 「で、どこに行きたいんだ?」

 「ふふん、それはねぇ~?」

 ***

 「ここ?」

 「ここ!」

 科学の発展した中心エリアから外れた森の中、オグレス星では珍しく科学要素の薄い場所だ。
 そこにあったのは、大きな大きな神社だった。

 「ほえー、オグレスにもこんな場所があったんだな」

 「うん、前に監督たちとオグレス……というかここラグナリア王国についての説明を受けたときに見かけてずっと気になってたんだ」

 「へぇ、ていうかここってラグナリア王国って名前だったんだな」

 「ええ!? 今更!?」

 「うん、それによく考えたら俺オグレスのことほとんど知らないや。科学が発展してて、体が弱い……くらいか?」

 「もうっ! 龍也くんはサッカー以外に興味無さすぎ!」

 「ご、ごめんごめん」

 「じゃあ軽く説明してあげるね!
 まずわたしたちが今いるここはラグナリア王国っていってオグレス星で1番力を持った国なんだ。力っていっても武力じゃなくて影響力かな。オグレスの中心として全国家をまとめているんだって。
 そんなここラグナリア王国の努力もあって、オグレス星は争いの無い平和な星として存続できているの!」

 「ほうほう。平和そうだとは思っていたけど争いすら無いのか。この圧倒的な科学力も合わせると……もしかしてものすごく素晴らしい星なのでは? オグレス」

 「うん、わたしもこの話聞いて素直にいいなーって思ったもん。理想的な星だよねぇ。
 それで、なんでラグナリア王国が星全域に及ぶほどの影響力を持っているのかって理由が、このミロク・エリラにあるらしいの。その細かい内容までは知らないんだけどね」

 「ん? ミロ……なんだって?」

 「ミロク・エリラ! ここの正式名称! 地球でいう神社みたいなものだってフィロさんは言ってたよ」

 「なるほど」

 俺たちが付けている翻訳機、これはもの凄く優秀で便利なものだ。聞こえてきた単語を望む言語、俺の場合は日本語に即座に訳して伝えてくれる。
 だが、当然全てのものを訳せるわけではない。

 半月ほど使ってわかったことはこうだ。
 まず、日本語に似た役割を持つものが存在するものは全て訳せる。例えば俺たちが利用したホテルや宿舎。オグレスの言語では当然ホテルや宿舎とは呼ばれていないが、日本語として存在するホテルや宿舎とほぼ同じ役割を持つことによって訳すことができている。

 逆に、日本語に似た役割を持つものが存在しないものは訳せない。例えば……テルだろうか。あれは一件スマホと同じ役割なのでスマホと訳されてもいいように思える。しかし、実際俺たちが理解していないところでスマホとは明らかに違う役割があるのだろう。これによってスマホとは別物と判断され、訳すことができなくなっているのだと考えられる。

 この法則に当てはめると、このエリラは神社とは別の役割を持つこととなる。
 ミロク神社と訳されなかったことが何よりの証拠。
 翻訳機一つでここまで考察できるのは面白いな。

 ちなみに、これによってフィロさんの凄さが改めて浮き彫りになる。
 フィロさんはテルやエリラを説明する際、地球でいう……と一言付け加えている。これは、テルやエリラがこの翻訳機でスマホや神社と訳されないことを知っているということ。
 地球の文化に対する圧倒的な理解。俺たちのサポート役に選ばれた理由を改めて実感する。

 「未来はこのエリラが重要視されている理由を知りたくて今日ここに来たってわけか」

 「あ、うううん、違うよ。これは説明されたことを言っただけで別にわたしは興味無いかな。
 わたしの目的はこのエリラ。ほら、わたしの家って神社だったでしょ? だから雰囲気が似てるここに来たくなっちゃって」

 「ホームシックみたいなものか」

 「えへへ、そうなのかも」

 「じゃ、行こうか」

 「うんっ!」

 俺たちはエリラへと入っていく。
 近隣から科学要素が薄かったが、中に入るとそれは更に顕著。動く地面も無く本当に日本の神社と同じような雰囲気だ。
 地球の文化の中には宇宙から伝わったものも多いと言っていた。もしかしたら神社という文化も宇宙から伝わったものなのかもしれないな。もちろん、その中身は違うところがあるのだろうが。

 神社でいう本殿付近に到着した。ここは参拝者も多く、賑わいの様相を見せていた。

 「お守り買おうよっ! あ、御朱印は貰えるのかなっ!」

 「あー、未来御朱印集めてたもんな」

 「うん! こんなこともあろうかともちろん御朱印帳は地球から持ってきてあります」

 「用意よすぎだろ……」

 「でもそれより先にお守りお守り~」

 「お守りなら春樹から貰ったのがあるだろ??」

 「うん、あれも持ってるよ。でもここのも欲しくない? オグレスの中心らしいし凄くご利益ありそう!
 それより龍也くんこそお守りちゃんと持ってる?持ち歩いてこそ効果が出るものだよー?」

 そう言ってふふんとお守りを見せびらかす未来。大事なお守りだ。当然俺も持ち歩いている。そう言おうとした瞬間、少し強い風が吹き未来のお守りが飛ばされる。

 「「あっ」」

 お守りは宙をひらひらと舞い、経路から外れた場所に落ちてしまう。

 「あーあーあーあー」

 急いで取りに行こうとする未来だが

 「あ、未来。そこ立ち入り禁止って書いてあるぞ?」

 経路の外には立ち入り禁止の表示がされてある。
 一応未来に伝えはしたが……

 「え、そうなの? まあちょっと取るだけだしー」

 そうしてお守りを取ろうと立ち入り禁止地帯に手を差し入れた瞬間

 「びいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい」

 「「!?」」

 大きな大きな防犯音が鳴り響いた。

 「わっ、やば、何これ」

 今更焦っても後の祭り、防犯音は鳴り続ける。
 すると、ワープしてきたのか何も無かった空間から隊服を着た人物が大勢現れた。彼らはセグウェイのようなものに乗って空を飛んでいる。かっこい~と思ったのだが、そんな風に余裕ぶれていたのもつかの間

 「貴様らが侵入者か! 取り抑えろ!」

 驚く暇もないほど迅速に取り押さえられてしまう俺たち。強く抑えられいるわけではないのに動けない。これもオグレスの科学の武器か。

 「連行しろ!」

 捕らえられ連れて行かれそうになったその時、またも別の人物が現れる。

 「止まれお前たち! ここは私が預かる!」

 「! カグラ隊長! いえ、こいつらはただの侵入者です。隊長のお手を煩わせるほどのヤマではないかと!」

 「問題ない。それでも私が預かる。いいか、これは命令だ」

 「はっ、了解しました。撤退だ! 帰還するぞ!」

 「「「了解!」」」

 こうして、カグラ隊長という人の指示通り隊員全員が帰還していく。
 色々なことが一気に起こったせいで俺たちは呆気に取られることしかできなかった。

 「さて、初めましてだな、グロリアンズのおふたりさん。私はカグラ、銃士隊特別部隊の隊長を務めている。よろしく頼む」
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