グローリー・リーグ -宇宙サッカー奮闘記-

山中カエル

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第四章 新たな一歩

90 未知

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 アランに連れられてミーティングルームへ。
 本当に限界が近いのだが、大切な話と言っている以上キャプテンの俺が疲れたから不参加なんて言えないだろう。

 ミーティングルームには既に大勢の選手が集まっていた。いなかったのは、ネイトとヒル、そして……ぺぺか。
 他二人はともかくぺぺがいないのは何故? まだ特訓中なのかな。

 「よおレオ、ぺぺはまだ特訓ちゅ……え!? ど、どうした……? かなりやつれてるように見えるけど……」

 「美人、パス、スパルタ、怖い。
 美人、パス、スパルタ、怖い」

 「お、おう。お疲れ……」

 こっちもこっちで特訓中に色々あったみたいだ。詳しくは聞かないでおこう。

 「みんな、特訓2日目お疲れ様。
 アランくんの呼びかけなのに悪いけど、少しだけ便乗させてもらうわ」

 そうこうしているうちに、前に出てきたフィロさんが話し始める。

 「ネイトくんに関して。心配してくれた人も多いと思うけど、つい先程、キャプテンによって安否確認が取れたわ。
 まだここには戻ってこれないみたいだけど、一先ずは安心して」

 良かった……という声が漏れ始める。
 とりあえずはこれでみんな心配無く特訓に戻れそうか。

 「そういえばフィロさん、カグラさんはネイトについてフィロさんに連絡していたって言ってたんですけど、何も来てなかったんですか?」

 「あ゙?」

 「えっ!?」

 突然睨まれてたじろいでしまう。俺、何か変なこと言ったか……?

 「そうね。こんな緊急事態にプライベート用のテルにメッセージ送ることを連絡と言うのならそうかもしれないわね!
 緊急事態なら、仕事用のテルに電話くらいせんかい! 馬鹿カグラ!」

 「はは、そうですね……」

 フィロさんが怒っている。確かにカグラさん、そういうことしそうな人だしな。相性がいいんだか悪いんだか。

 そしてバトンが渡され、アランが前へ立つ。その隣には何故かヘンディも。

 「お久しぶりですみなさん。特訓の方もお疲れ様です。
 お疲れの中お呼び立てして申し訳ありません」

 「なんだよー、色々あって疲れてるんだし手短に頼むぜー?」

 「了解です将人くん。それでは早速本題といきましょうか。
 ではヘンドリックくん、質問です。この前の試合、あなたに何か特別なことは起こりませんでしたか?」

 特別なこと? そういえば前にアランに似たようなことを聞かれた記憶があるな。

 「ああ。俺がフロージア戦でシュートを止めたとき、見えたんだ、相手のシュートコースが、はっきりと」

 「んー? 優秀なキーパーだったら相手のシュートコースが予測できるのはそこまで特別なことでもないんじゃねえのか?」

 「いや、あれはそんなものじゃない。
 予測……いや、もはや予知だな。それぐらい確信を持ってボールに飛び込んでいた」

 「だ、そうです。
 そして、みなさんご存知の通り、ブラドくんのあのパワー。
 何かおかしいと思いませんか?」

 「確かに……。
 ブラド先輩の超パワーは火事場の馬鹿力的なやつだと思ってたっスけど、2試合連続で発揮させられるとそうも言ってられない気がしてくるっスね」

 なんと……。ブラドのパワーは当然知っていたが、まさかヘンディまでとは。
 これはもしかしたら……

 「僕たちには元より特別な事態が起こっています。
 周知の事実でしょう。ニュータイプ、そしてニューグレ世代。
 聞いた話によると、これはそれほど軽い話ではないそうです。
 ですよね? 龍也くん」

 アランが目で訴えかけてくる。
 恐らく、あれを言っていいのかということだろう。
 隠す必要も無いと、俺は目で伝え返す。

 「オグレス星には予言者がいます。オグレス星は、古来からその方の予言を活用しここまで発展してきました。
 そして、その方がある予言をしました。それが、『1年後の今日、地球にて未知の力を持った子どもが1人生まれる。
 その力は宇宙の理を壊しかねないものだ』というもの」

 みんな驚きつつも真剣に話を聞いている。アランの深刻なトーンが嘘じゃないと本能に語りかけているようだ。

 「この予言内容こそが始まりです。
 もうお分かりでしょう、この未知の力を持った子ども、この方が産まれたときから地球の理は変化し、ニュータイプやその中でも特に優秀なニューグレ世代と呼ばれる子どもが産まれるようになりました」

 もう一度俺の目を見てくるアラン。そして、彼は静かに口を開く。

 「そして、その未知の力を持った子……長いので予言の子とでも言いましょうか、その予言の子は……僕たちのキャプテン、龍也くんの実の弟なのです」

 チームメイトたちに確かなざわめきが起こる。予言の子に関して、近くとも遠い存在と感じていたのだろう。
 それが身近な人の親族と知れば、否が応にもその存在を近くに感じることとなる。

 「このことを知り、僕は一つの推論を立てました。
 予言の子の兄弟である龍也くん、彼にも何か力があるのではないのかと」

 「えっ」

 声を出したのは俺。アランの予想外の発言に思わず声が漏れてしまった。

 「無い話ではないと思います。聞くところによるとその予言の子と龍也くんは双子。それなのに片方にだけ力が宿るというのも不思議な話です。
 そして、ブラドくんやヘンドリックくんのように未知の力を目覚めた者の存在。
 僕はこの2点に繋がりがあると考えました」

 そんなことが……あるのだろうか。
 確かに俺には何の力も無い。そう思っていた。
 だが予言の子と双子であるというのも事実だ。知らないだけで何か力があってもおかしくはない。

 「あくまで僕の推論です。単純に予言の子のもたらした力が、今回の試合という極限状態において未知の力となって現れた可能性もあります。と、いうよりかはこちらの方が可能性としては大きいかと」

 戸惑う一同。そんな中声を上げる存在が1人居た。

 「ややこしい。それに起源が誰かなんてどうでもいい」

 「どうでもいい、ですか。凛さん」

 「どうでもいい。
 つまりこういうことでしょ。ブラドやキーパーさんが未知の力を発揮したんだから、ボクたちも同じように何らかの力を発揮すればいい」

 「まあ、試合に勝つことだけを考えるのならそうなりますね……」

 「だったら簡単。監督、明日からの特訓にボクたちの力を目覚めさせることも加えといて」

 凛の言うことも一理ある。確かに今大切なのは起源云々じゃない。そのあるかもしれない力を全員が使いこなすこと。
 俺個人としてはアランの考えが気になるが、目的を考えたら乗るのは凛の方だろう。

 「直球でいいのう。了解じゃわい」

 「それで、監督……貴方方はこのことについて何か知っていたのですか?」

 アランからの質問。対するアウラス監督は少し笑いながらこう答える。

 「ほっほ、わしらは選手の考えを尊重しているのじゃよ」

 予想通りの答えだな。
 アランもここで望む答えが返ってくるとは思っていなかったのだろう。素直に引き下がる。

 何はともあれ、やるべきことは見えた。
 未知の力は強力だ。使いこなすことができれば俺たちの大きな大きな武器となる。
 試合に勝ち続けるためにも、この力を必ず身につけてやる……!
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