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第19話
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僅かな振動を感じてシドは薄目を開けた。
胸の上に置かれたハイファのリモータを見ると七時半だ。窓の外はまだ薄暗く、しかし今日は夜から昼に移る日で、ゆっくりと時間をかけて夜が明けるのだと思い出す。
「ん……何、今の? 地震?」
ハイファも振動で目が覚め、眠い目を擦った。また振動が腹に響く。
「いや、もしかして爆撃か砲撃じゃねぇのか?」
「ああ、そうかも。でも遠いみたいだね」
独りだったらかなり心細かったであろうが、互いに二人でいれば大概のことは何とかなるだろうという気がしている。
「ハダカで逃げるのも何だしな、起きて服くらい着ておくか」
「そうだね。貴方寝ぐせも直さないと、珍しい鳥と間違えられて撃たれるよ」
仕方なく起き上がって交代で顔を洗い、シドは寝ぐせに水をつけ、ハイファは髪を銀の金具で留めた。ダートレスから服を出して着替え、執銃する。
「朝ご飯はどうする? 端末のインフォメーションでこの階にレストラン、一階にカフェテリアがあるって出てるけど。ホテルに準じてるったって王宮だし、どういうシステムになってるんだろうね?」
「さあな。いい、近い方にしとこうぜ」
「じゃあ、レストランだね」
荷物はないので部屋を出てもロックはせず、廊下を歩いてレストランへと移動した。誰もいないかと思いきや、濃緑色の軍服を着た男や、普通にスーツを着たビジネスマンのような人間もいて、益々どういうシステムなのか疑問が湧く。
首を捻りながら二人はテーブル席に着き、電子メニュー表にリモータを翳して、オムレツにハムソテー、トーストにサラダ、コーヒーのモーニングセットを注文した。
ハイファがシドのトーストにバターとジャムを塗っていると、クラウスと副官が現れてテーブルの傍に立つ。二人ともワイシャツに制服のスラックスという軽装だ。
「ここ、いいかね?」
「どうぞ。……今朝のって、爆撃? 砲撃?」
「爆撃だ。第三基地付近が多少やられた。高射砲で二機は墜としたが、互いに挨拶代わりといったところだな」
軍人二人が同じものを注文し終えるのを待ってシドが訊く。
「ンなに沢山、基地はあるのかよ?」
「コルダには中央と第一、第二、第三までだ。他の支配地域にも基地はあるが」
フォークを手にして、シドとハイファは顔を見合わせる。
「って、いったい何人兵隊はいるんだ?」
「正規軍と傭兵団合わせて五万八千前後だ」
「そんなにいるのか?」
「でも支配地域の広さにしたら随分と少ないよね」
「少ないってお前、それだけの兵隊に武器が供給されてるんだぞ。分母がそれだけいて管理が甘ければ、誰でも密輸は可能じゃねぇのか?」
三人の視線を浴びながらシドはトーストに噛みついた。咀嚼して飲み込み続ける。
「それだけの数が動けば、余剰品だって大した数になるだろ?」
「でも誰もが可能とは云えないんじゃないかな。余剰品にしろ、一ヵ所の武器庫から出るだけじゃコンスタントに密輸なんかできないよ」
フォークだけでハムソテーと格闘しつつシドが頷く。
「自分の所属以外、よその基地の武器庫まで首突っ込まなきゃならねぇってか」
「傭兵にしろ正規兵にしろ、一介の兵士が他の基地に武器集めに行けるものなのかな?」
運ばれてきたモーニングセットのオムレツをナイフで切り分けながらクラウスが首を捻る。
「補給係にしても、そういった動きはしないと思うが。オットー、どうだ?」
同様に副官のオットーも首を捻っている。
「余剰品の扱いはどうなってんだ?」
これにはオットーが答えた。
「生産した分は右から左、正規軍も傭兵団もギリギリの武器供給で賄ってはおりますが」
「ふうん。そいつを一度、見てみたいもんだな」
「このあと中央基地に出向く。一緒にきてはどうだね?」
気軽な口調で誘うクラウスにハイファは疑問をぶつけた。
「『遊ぶ約束』はどうなったのかな?」
「キース様は朝に弱いからな。遊びたければ何処にいようと現れるだろう」
「お目付役は大変だね」
「全くだが、神出鬼没のあの方は、放っておくのが一番だ」
「なんて言って、誰より心配なんでしょ?」
「勿論だ。あの方はラーンの希望の星なのだから。……とにかく、ラーン軍の密輸グループに関しては、こちらで調べを進めよう」
「そうか、頼む。それともう人つ。軍への納入以外、一般人が独自に武器を製造することは可能だと思うか?」
「戦時下にそんな危険分子を野放しにしておくほど、我々は間抜けではないつもりだよ。何れにせよ全面的に任せてくれて構わない」
力強く頷くクラウスに、シドとハイファは顔を見合わせた。
「じゃあ、お願いします」
「ところで俺たちはいつまでここにいていいんだ?」
「キース様がいいと言った以上、いつまででも構わないだろうと思うが」
「面白いオモチャが勝手に出て行くと怒るかな?」
「あとを追って出奔されると困るんだ」
「なるほど」
取り敢えずやることのできた二人は食事を片づけ、一足先に部屋に戻った。
ソファに座るなり、シドはいそいそと煙草を咥えて火を点ける。
「武器密輸はこっち側じゃねぇ、ローマン王のリサリア側かも知れないんだよな」
「なんだよね。まあ、任せちゃったんだし、僕らは早めにリサリア軍側に行かないと。密輸兵器はこの惑星ラーン上で作られたブツなのは確かだけど、資料に依ればリサリア軍も幾つかの兵器工場をラーンに構えてるらしいから」
「でも勝手に出て行くとキース王の逆鱗に触れるんじゃねぇか?」
「逆鱗に触れるのが怖い訳?」
「そうじゃねぇが……何だよ、その目は?」
「イイエ。昨日はあっさりキスを奪われた人がいたなあって」
口を尖らせたハイファに、シドは小さく笑って煙草を消す。ロウテーブルを回り込んでハイファの座ったソファの肘掛けに腰を下ろした。片腕で金髪頭を抱きかかえ自分の胸に押し付けて耳許に囁く。
「そんな、キスしたくなるような顔するなよ」
「キスしたくないの?」
「したいに決まってるだろ」
ハイファはシドの胸に頭を擦りつけた。顔を上げると唇を重ねる。シドはハイファの頬から顎へと唇を滑らせた。
ドレスシャツの襟元を掴んで引き寄せ、華奢な首筋のラインに何度もキスを落とす。
「んっ……っあ、シド、だめ」
「だめじゃねぇよ……ハイファ」
「だって……そこは、見えちゃう……あっ、はぁん」
言葉では拒否するものの唇での愛撫に酔い、ハイファの躰はシドから逃れられない。どころか白い喉を仰け反らせてシドに差し出してしまう。
片手で器用にボタンをふたつ外され、首筋を甘い痛みが走るほど吸い上げられた。
「ああんっ……あっ、ふ……だめ」
ハイファのリモータが震えだして、二人は動きを止める。
「くそう、いいところで発振かよ」
「中央基地、見に行くんでしょ。五分後に廊下だってサ」
「五分で治まるか?」
「無心になりましょうね~」
「それとお前、ボタンは全部留めとけよな」
慌ててハイファは洗面所に走った。無表情で出てきたときには第一ボタンまで留めている。
五分で何とか廊下に出ると、濃緑色の制服に着替えたクラウスたちが丁度迎えに上がってきたばかりだった。合流して四人で一階に降りる。車寄せにはコイルが既に差し回されていた。
乗り込むとオットーの手動運転で中央基地に向かう。
外は黎明の明るさで気象制御装置が上がっているのかどうかは分からないが、空は薄藍色に晴れ渡り、爽やかな朝の到来といった風情だ。
まだ明かりの目立つ市街地をコイルは滑るように駆け抜けていく。
後部座席を振り向いたクラウスが二人に左手首を突き出した。
「身分証を流す。基地の出入りと武器庫、弾薬庫に入るには必要だ」
コイルが中央基地に入る際には警衛隊が総司令官であるクラウスのリモータIDまで洩れなくチェックした。停戦中とはいえ戦時には変わりないためでもあろうが、ラーン正規軍はなかなかに規律の守られた軍隊のようにシドの目には映った。
「あれが本部庁舎です」
ツアーガイド・オットーの声で見上げると、三十階建てくらいはありそうな茶色いビルがそびえていた。さすがメタル・クレジットというべきか、他星のテラ連邦軍でもあまり見られないような立派な施設だ。そのエントランスの車寄せにコイルは滑り込み、停止して接地した。
クラウスたちに倣って二人もコイルを降りる。軍服の兵士が十名ばかり並んで捧げ銃の敬礼で四人を出迎えた。
本部庁舎ビルに入っていくクラウスたちに二人は続く。
ビル内は新しさもあってか極めて明るく清潔かつ機能的だった。広い廊下にはスライドロードが併設されていて、まるきりオフィスビルのようである。廊下の途中にある待避所めいたくぼみと行き交う兵士の姿とで、シドにもここが軍施設だと思い出せる程度だ。
エレベーターに乗って十五階まで上がる。エレベーターを降りた真ん前のオートドアでクラウスは足を止め、ドア脇のリモータチェッカにリモータを翳し二人にも促した。交互にリモータチェッカをクリア、センサ感知でオートドアが開く。
「これがわたしの巣、ラーン軍総司令官室だ」
「へえ、ここが五万八千の頂点っつー訳か」
「中身はこんな親父だがね」
臙脂のカーペットが敷かれた室内には、入ってすぐに目隠しのパーテーション、その内側に応接セットがあり、窓を背にして多機能デスクとチェア、他にはロッカーやキャビネット、飲料ディスペンサーまでついていたが、シドが思った以上に普通の部屋だ。
胸の上に置かれたハイファのリモータを見ると七時半だ。窓の外はまだ薄暗く、しかし今日は夜から昼に移る日で、ゆっくりと時間をかけて夜が明けるのだと思い出す。
「ん……何、今の? 地震?」
ハイファも振動で目が覚め、眠い目を擦った。また振動が腹に響く。
「いや、もしかして爆撃か砲撃じゃねぇのか?」
「ああ、そうかも。でも遠いみたいだね」
独りだったらかなり心細かったであろうが、互いに二人でいれば大概のことは何とかなるだろうという気がしている。
「ハダカで逃げるのも何だしな、起きて服くらい着ておくか」
「そうだね。貴方寝ぐせも直さないと、珍しい鳥と間違えられて撃たれるよ」
仕方なく起き上がって交代で顔を洗い、シドは寝ぐせに水をつけ、ハイファは髪を銀の金具で留めた。ダートレスから服を出して着替え、執銃する。
「朝ご飯はどうする? 端末のインフォメーションでこの階にレストラン、一階にカフェテリアがあるって出てるけど。ホテルに準じてるったって王宮だし、どういうシステムになってるんだろうね?」
「さあな。いい、近い方にしとこうぜ」
「じゃあ、レストランだね」
荷物はないので部屋を出てもロックはせず、廊下を歩いてレストランへと移動した。誰もいないかと思いきや、濃緑色の軍服を着た男や、普通にスーツを着たビジネスマンのような人間もいて、益々どういうシステムなのか疑問が湧く。
首を捻りながら二人はテーブル席に着き、電子メニュー表にリモータを翳して、オムレツにハムソテー、トーストにサラダ、コーヒーのモーニングセットを注文した。
ハイファがシドのトーストにバターとジャムを塗っていると、クラウスと副官が現れてテーブルの傍に立つ。二人ともワイシャツに制服のスラックスという軽装だ。
「ここ、いいかね?」
「どうぞ。……今朝のって、爆撃? 砲撃?」
「爆撃だ。第三基地付近が多少やられた。高射砲で二機は墜としたが、互いに挨拶代わりといったところだな」
軍人二人が同じものを注文し終えるのを待ってシドが訊く。
「ンなに沢山、基地はあるのかよ?」
「コルダには中央と第一、第二、第三までだ。他の支配地域にも基地はあるが」
フォークを手にして、シドとハイファは顔を見合わせる。
「って、いったい何人兵隊はいるんだ?」
「正規軍と傭兵団合わせて五万八千前後だ」
「そんなにいるのか?」
「でも支配地域の広さにしたら随分と少ないよね」
「少ないってお前、それだけの兵隊に武器が供給されてるんだぞ。分母がそれだけいて管理が甘ければ、誰でも密輸は可能じゃねぇのか?」
三人の視線を浴びながらシドはトーストに噛みついた。咀嚼して飲み込み続ける。
「それだけの数が動けば、余剰品だって大した数になるだろ?」
「でも誰もが可能とは云えないんじゃないかな。余剰品にしろ、一ヵ所の武器庫から出るだけじゃコンスタントに密輸なんかできないよ」
フォークだけでハムソテーと格闘しつつシドが頷く。
「自分の所属以外、よその基地の武器庫まで首突っ込まなきゃならねぇってか」
「傭兵にしろ正規兵にしろ、一介の兵士が他の基地に武器集めに行けるものなのかな?」
運ばれてきたモーニングセットのオムレツをナイフで切り分けながらクラウスが首を捻る。
「補給係にしても、そういった動きはしないと思うが。オットー、どうだ?」
同様に副官のオットーも首を捻っている。
「余剰品の扱いはどうなってんだ?」
これにはオットーが答えた。
「生産した分は右から左、正規軍も傭兵団もギリギリの武器供給で賄ってはおりますが」
「ふうん。そいつを一度、見てみたいもんだな」
「このあと中央基地に出向く。一緒にきてはどうだね?」
気軽な口調で誘うクラウスにハイファは疑問をぶつけた。
「『遊ぶ約束』はどうなったのかな?」
「キース様は朝に弱いからな。遊びたければ何処にいようと現れるだろう」
「お目付役は大変だね」
「全くだが、神出鬼没のあの方は、放っておくのが一番だ」
「なんて言って、誰より心配なんでしょ?」
「勿論だ。あの方はラーンの希望の星なのだから。……とにかく、ラーン軍の密輸グループに関しては、こちらで調べを進めよう」
「そうか、頼む。それともう人つ。軍への納入以外、一般人が独自に武器を製造することは可能だと思うか?」
「戦時下にそんな危険分子を野放しにしておくほど、我々は間抜けではないつもりだよ。何れにせよ全面的に任せてくれて構わない」
力強く頷くクラウスに、シドとハイファは顔を見合わせた。
「じゃあ、お願いします」
「ところで俺たちはいつまでここにいていいんだ?」
「キース様がいいと言った以上、いつまででも構わないだろうと思うが」
「面白いオモチャが勝手に出て行くと怒るかな?」
「あとを追って出奔されると困るんだ」
「なるほど」
取り敢えずやることのできた二人は食事を片づけ、一足先に部屋に戻った。
ソファに座るなり、シドはいそいそと煙草を咥えて火を点ける。
「武器密輸はこっち側じゃねぇ、ローマン王のリサリア側かも知れないんだよな」
「なんだよね。まあ、任せちゃったんだし、僕らは早めにリサリア軍側に行かないと。密輸兵器はこの惑星ラーン上で作られたブツなのは確かだけど、資料に依ればリサリア軍も幾つかの兵器工場をラーンに構えてるらしいから」
「でも勝手に出て行くとキース王の逆鱗に触れるんじゃねぇか?」
「逆鱗に触れるのが怖い訳?」
「そうじゃねぇが……何だよ、その目は?」
「イイエ。昨日はあっさりキスを奪われた人がいたなあって」
口を尖らせたハイファに、シドは小さく笑って煙草を消す。ロウテーブルを回り込んでハイファの座ったソファの肘掛けに腰を下ろした。片腕で金髪頭を抱きかかえ自分の胸に押し付けて耳許に囁く。
「そんな、キスしたくなるような顔するなよ」
「キスしたくないの?」
「したいに決まってるだろ」
ハイファはシドの胸に頭を擦りつけた。顔を上げると唇を重ねる。シドはハイファの頬から顎へと唇を滑らせた。
ドレスシャツの襟元を掴んで引き寄せ、華奢な首筋のラインに何度もキスを落とす。
「んっ……っあ、シド、だめ」
「だめじゃねぇよ……ハイファ」
「だって……そこは、見えちゃう……あっ、はぁん」
言葉では拒否するものの唇での愛撫に酔い、ハイファの躰はシドから逃れられない。どころか白い喉を仰け反らせてシドに差し出してしまう。
片手で器用にボタンをふたつ外され、首筋を甘い痛みが走るほど吸い上げられた。
「ああんっ……あっ、ふ……だめ」
ハイファのリモータが震えだして、二人は動きを止める。
「くそう、いいところで発振かよ」
「中央基地、見に行くんでしょ。五分後に廊下だってサ」
「五分で治まるか?」
「無心になりましょうね~」
「それとお前、ボタンは全部留めとけよな」
慌ててハイファは洗面所に走った。無表情で出てきたときには第一ボタンまで留めている。
五分で何とか廊下に出ると、濃緑色の制服に着替えたクラウスたちが丁度迎えに上がってきたばかりだった。合流して四人で一階に降りる。車寄せにはコイルが既に差し回されていた。
乗り込むとオットーの手動運転で中央基地に向かう。
外は黎明の明るさで気象制御装置が上がっているのかどうかは分からないが、空は薄藍色に晴れ渡り、爽やかな朝の到来といった風情だ。
まだ明かりの目立つ市街地をコイルは滑るように駆け抜けていく。
後部座席を振り向いたクラウスが二人に左手首を突き出した。
「身分証を流す。基地の出入りと武器庫、弾薬庫に入るには必要だ」
コイルが中央基地に入る際には警衛隊が総司令官であるクラウスのリモータIDまで洩れなくチェックした。停戦中とはいえ戦時には変わりないためでもあろうが、ラーン正規軍はなかなかに規律の守られた軍隊のようにシドの目には映った。
「あれが本部庁舎です」
ツアーガイド・オットーの声で見上げると、三十階建てくらいはありそうな茶色いビルがそびえていた。さすがメタル・クレジットというべきか、他星のテラ連邦軍でもあまり見られないような立派な施設だ。そのエントランスの車寄せにコイルは滑り込み、停止して接地した。
クラウスたちに倣って二人もコイルを降りる。軍服の兵士が十名ばかり並んで捧げ銃の敬礼で四人を出迎えた。
本部庁舎ビルに入っていくクラウスたちに二人は続く。
ビル内は新しさもあってか極めて明るく清潔かつ機能的だった。広い廊下にはスライドロードが併設されていて、まるきりオフィスビルのようである。廊下の途中にある待避所めいたくぼみと行き交う兵士の姿とで、シドにもここが軍施設だと思い出せる程度だ。
エレベーターに乗って十五階まで上がる。エレベーターを降りた真ん前のオートドアでクラウスは足を止め、ドア脇のリモータチェッカにリモータを翳し二人にも促した。交互にリモータチェッカをクリア、センサ感知でオートドアが開く。
「これがわたしの巣、ラーン軍総司令官室だ」
「へえ、ここが五万八千の頂点っつー訳か」
「中身はこんな親父だがね」
臙脂のカーペットが敷かれた室内には、入ってすぐに目隠しのパーテーション、その内側に応接セットがあり、窓を背にして多機能デスクとチェア、他にはロッカーやキャビネット、飲料ディスペンサーまでついていたが、シドが思った以上に普通の部屋だ。
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