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第24話
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金曜朝の公共交通機関での通勤は官品四人にとって想像を絶する体験だった。
利用者の少ない始発バスはともかく、そのあとの乗り継ぎバスと貝崎市駅から白藤市駅までの通勤ラッシュの電車の混みようはとんでもなかった。
白藤市駅西口から濁流の如き人波に紛れて押し流され、自分の足で立っていることにふと気づいた京哉は心底ホッとする。
だがその時点で八時半をとっくに過ぎており、野坂の嫌味を予想して溜息が洩れた。
「香坂さん、腕は大丈夫ですか?」
「心配しなくていい。かなり調子がいいから」
「何なら俺が担いで行ってやるからな。遠慮するなよ、怜」
「調子がいいって言っただろう。聞いてなかったのか?」
「小田切のそれは耳ではなく餃子だからな」
「もう餃子でもキクラゲでも構いませんが、無駄口を叩いてないで行きますよ!」
ラッシュ時からずれ込んだせいか、今日のエレベーターは空いていた。
三十八階の秘書室で挨拶すると野坂はノートパソコンに向かったままで言った。
「随分と暢気なご出勤ですね。未来の偉い方は今から重役出勤の練習ですか?」
これには四人も反発したくなったが、ぎゅう詰めの電車から降りられず三駅も先まで乗るハメになったなどとマヌケな言い訳はしたくなかった。そんな四人はタイムカードに打刻してデスクに就く。押し黙った四人に背を向けた野坂が指示を出した。
「支社長の出勤する九時過ぎまで待機です。スケジュールを確認しておいて下さい」
それぞれ本日の支社長のスケジュールを確認した。来客が四件に外出が一件。殆ど京哉たちには関係なく、また昨日と同じような日になるかと思われた。
まもなく支社長が着いたと野坂に連絡が来て、昨夕と同じく幸恵も含む全員で支社長室前の廊下に並ぶ。出勤してきた支社長は昨夜いつまで飲んだか知れないが、昨日と変わらず顔色も良く動きも機敏だった。企業戦士のタフさを官品たちは半ば薄気味悪く思いながら観察する。
「おはようございます、支社長」
「ああ、おはよう。今日も頼むよ」
そんなやり取りが支社長と野坂の間でなされ、代表して霧島が昨日の礼を述べた。
「昨夜は有難うございました」
「こちらこそお付き合いを感謝するよ。突然で悪かったね」
手を振って魚住支社長は自分の居場所に入って行った。すぐに幸恵がお茶を出し、ついでに京哉たちも上等な緑茶にありつく。煙草を一本吸うと既に野坂がバインダーに挟まれた書類の山を準備し待ち構えていた。やはりこれは秘書でなく使い走りだ。
だが重要な仕事を任せられて余計な気を遣うよりマシかと思う。それに昨日走り回って何処にどの部署があるか大体把握した上、宴会で部長の顔と名前も覚えていた。
おまけに今日は小田切と分担して回ったので昼前には書類も片付く。余裕で秘書室に戻り煙草を吸っていると昼休みのチャイムが鳴った。
今日は四人で社食に行くと決めて二十五階に下りた。京哉が部長たちから仕入れた情報では三十階より二十五階の食堂の方が美味しいという話だったからだ。もう集めるべき情報が何だったのか見失いかけている。
広大な食堂で食券を買ってカウンター越しに注文品を渡されトレイに載せる。霧島と京哉は長テーブルのふたつ並んで空いた席を確保した。向かいに香坂と小田切が座ってから行儀良く手を合わせる。霧島と京哉は海鮮丼と味噌汁を食し始めた。
ちなみに香坂は利き手ではない左手なのでスプーン一本で食べられるカレーを選んだ。小田切は好物のカツ丼である。
「ふむ。悪くないな。刺身の鮮度もいい」
「結構美味しいですよね」
「それで昨日の宴会京哉情報からこちら、更なる有力情報はあったのか?」
「それが変なんですよ。会計部長が今日になって言うには業績はプラス、それもウナギ登りだって。まるで昨日お酒が入って洩らした『使途不明のマイナス二億』を糊塗するみたいでした」
やたらと早口で気の小さそうな会計部長は、支社とはいえ部長職にありながら京哉相手に今日は一気に言いたいことだけ述べるとサインと捺印し、あとは目も合わせなかった。
どう見ても怪しすぎである。
「やはり酒が入って口を滑らせたのか……小田切は何かないのか?」
「ぜーんぜん、何にもないな」
「役立たず」
「怜、そんな言い方はないだろ。それならお前らだって同じじゃないか」
「僕らは動くに動けないの、知ってるだろ」
「だからってそれだと何で潜入したのか分からないだろ!」
「なら基生が野坂に交渉したらいい」
「あの腐れ蛇野郎に話が通じるか。まだタワシの方が言うことを聞くぜ」
「可哀相な奴だな、基生はタワシに話し掛ける生活なのか」
両者がヒートアップして声がデカくなってゆく間も、京哉と霧島は海鮮丼に載った好きな具をシェアして仲良く食べ進める。喩え喧嘩であろうとコミュニケーションが成立しているのだ、いい傾向だった。どんどん内容は低レヴェル化していたが恋人未満の会話としてはそれも良しだ。
そこで京哉の携帯が鳴った。メールではなくコールで桜木からだ。小声で出る。
「どうしたんですか、桜木さん?」
《じつは香坂堂白藤支社の役員の数名に黒い人脈があると判明した。具体的には人事部長と原材料研究部長に会計部長、それらに引っ張り出される形で魚住支社長もだ》
「黒い人脈って、暴力団とかですよね?」
《ああ。指定暴力団の笹山組や西尾組に柏仁会と大御所が揃い踏みだ。週に一度は組幹部と高級クラブで飲み明かしている。だがまだどちらのブツも流しているという証拠は割れん》
「そうですか。有難うございます」
《何か分かったらまた連絡するからな》
忙しいらしい霧島カンパニー情報セキュリティ部門の副主任殿はそれだけで電話を切った。耳を澄ませて聞いていた香坂が考えに耽りながら呟くように口にする。
「幾ら相手が香坂堂の役付きでも、ヤクザは得にならない接待などしない」
極右に張り付くこともあるハムだが一般的なヤクザ絡みの捜査にまで詳しいとは思えない。
だが考え得るセオリーとしてド真ん中を突いた香坂の発言に、霧島はキャリア研修後に配属された捜一辺りの経験が活きているのかと思う。その期のキャリアでトップ入庁はダテではないなと感心しつつ、こちらもセオリーで応えてやった。
「旨い汁を吸わせているからこその高級クラブに間違いないだろう」
「でもそいつをどうやって探り当てるんだい?」
「訊いてばかりじゃなくて小田切さんも考えて下さい。……それぞれが部長秘書として立候補するなんて荒技すぎますかね?」
答えが出ないままトレイと食器を片付けて秘書室に戻った。すると幸恵がコーヒーを淹れてくれる。民間企業が客をもてなすためのコーヒーは非常に旨かった。小田切と京哉は早速食後の一本を吸い始める。
香坂は用もないのに椅子を霧島に寄せていた。京哉は少しどころか大いに面白くない。霧島がなびくとは思わないが誰を想おうと香坂の自由でもある。
そんな四人に仕出し弁当を食い終えた野坂が告げた。
「午後十四時から市内のサンコー薬品の社長との面談です。こちらから出向きますので、皆さんのうち二名に同行して貰います。その二名に関してですが――」
「うーん、僕、お腹が痛いかも」
「私も何だか腹具合が妙な気がしてきた」
「同じ海鮮丼を食べたからじゃないでしょうか?」
「仕方ありませんね。では香坂さんと小田切さんに同行して貰いましょう。十三時三十分には社を出る予定ですので、そのつもりでいて下さい」
利用者の少ない始発バスはともかく、そのあとの乗り継ぎバスと貝崎市駅から白藤市駅までの通勤ラッシュの電車の混みようはとんでもなかった。
白藤市駅西口から濁流の如き人波に紛れて押し流され、自分の足で立っていることにふと気づいた京哉は心底ホッとする。
だがその時点で八時半をとっくに過ぎており、野坂の嫌味を予想して溜息が洩れた。
「香坂さん、腕は大丈夫ですか?」
「心配しなくていい。かなり調子がいいから」
「何なら俺が担いで行ってやるからな。遠慮するなよ、怜」
「調子がいいって言っただろう。聞いてなかったのか?」
「小田切のそれは耳ではなく餃子だからな」
「もう餃子でもキクラゲでも構いませんが、無駄口を叩いてないで行きますよ!」
ラッシュ時からずれ込んだせいか、今日のエレベーターは空いていた。
三十八階の秘書室で挨拶すると野坂はノートパソコンに向かったままで言った。
「随分と暢気なご出勤ですね。未来の偉い方は今から重役出勤の練習ですか?」
これには四人も反発したくなったが、ぎゅう詰めの電車から降りられず三駅も先まで乗るハメになったなどとマヌケな言い訳はしたくなかった。そんな四人はタイムカードに打刻してデスクに就く。押し黙った四人に背を向けた野坂が指示を出した。
「支社長の出勤する九時過ぎまで待機です。スケジュールを確認しておいて下さい」
それぞれ本日の支社長のスケジュールを確認した。来客が四件に外出が一件。殆ど京哉たちには関係なく、また昨日と同じような日になるかと思われた。
まもなく支社長が着いたと野坂に連絡が来て、昨夕と同じく幸恵も含む全員で支社長室前の廊下に並ぶ。出勤してきた支社長は昨夜いつまで飲んだか知れないが、昨日と変わらず顔色も良く動きも機敏だった。企業戦士のタフさを官品たちは半ば薄気味悪く思いながら観察する。
「おはようございます、支社長」
「ああ、おはよう。今日も頼むよ」
そんなやり取りが支社長と野坂の間でなされ、代表して霧島が昨日の礼を述べた。
「昨夜は有難うございました」
「こちらこそお付き合いを感謝するよ。突然で悪かったね」
手を振って魚住支社長は自分の居場所に入って行った。すぐに幸恵がお茶を出し、ついでに京哉たちも上等な緑茶にありつく。煙草を一本吸うと既に野坂がバインダーに挟まれた書類の山を準備し待ち構えていた。やはりこれは秘書でなく使い走りだ。
だが重要な仕事を任せられて余計な気を遣うよりマシかと思う。それに昨日走り回って何処にどの部署があるか大体把握した上、宴会で部長の顔と名前も覚えていた。
おまけに今日は小田切と分担して回ったので昼前には書類も片付く。余裕で秘書室に戻り煙草を吸っていると昼休みのチャイムが鳴った。
今日は四人で社食に行くと決めて二十五階に下りた。京哉が部長たちから仕入れた情報では三十階より二十五階の食堂の方が美味しいという話だったからだ。もう集めるべき情報が何だったのか見失いかけている。
広大な食堂で食券を買ってカウンター越しに注文品を渡されトレイに載せる。霧島と京哉は長テーブルのふたつ並んで空いた席を確保した。向かいに香坂と小田切が座ってから行儀良く手を合わせる。霧島と京哉は海鮮丼と味噌汁を食し始めた。
ちなみに香坂は利き手ではない左手なのでスプーン一本で食べられるカレーを選んだ。小田切は好物のカツ丼である。
「ふむ。悪くないな。刺身の鮮度もいい」
「結構美味しいですよね」
「それで昨日の宴会京哉情報からこちら、更なる有力情報はあったのか?」
「それが変なんですよ。会計部長が今日になって言うには業績はプラス、それもウナギ登りだって。まるで昨日お酒が入って洩らした『使途不明のマイナス二億』を糊塗するみたいでした」
やたらと早口で気の小さそうな会計部長は、支社とはいえ部長職にありながら京哉相手に今日は一気に言いたいことだけ述べるとサインと捺印し、あとは目も合わせなかった。
どう見ても怪しすぎである。
「やはり酒が入って口を滑らせたのか……小田切は何かないのか?」
「ぜーんぜん、何にもないな」
「役立たず」
「怜、そんな言い方はないだろ。それならお前らだって同じじゃないか」
「僕らは動くに動けないの、知ってるだろ」
「だからってそれだと何で潜入したのか分からないだろ!」
「なら基生が野坂に交渉したらいい」
「あの腐れ蛇野郎に話が通じるか。まだタワシの方が言うことを聞くぜ」
「可哀相な奴だな、基生はタワシに話し掛ける生活なのか」
両者がヒートアップして声がデカくなってゆく間も、京哉と霧島は海鮮丼に載った好きな具をシェアして仲良く食べ進める。喩え喧嘩であろうとコミュニケーションが成立しているのだ、いい傾向だった。どんどん内容は低レヴェル化していたが恋人未満の会話としてはそれも良しだ。
そこで京哉の携帯が鳴った。メールではなくコールで桜木からだ。小声で出る。
「どうしたんですか、桜木さん?」
《じつは香坂堂白藤支社の役員の数名に黒い人脈があると判明した。具体的には人事部長と原材料研究部長に会計部長、それらに引っ張り出される形で魚住支社長もだ》
「黒い人脈って、暴力団とかですよね?」
《ああ。指定暴力団の笹山組や西尾組に柏仁会と大御所が揃い踏みだ。週に一度は組幹部と高級クラブで飲み明かしている。だがまだどちらのブツも流しているという証拠は割れん》
「そうですか。有難うございます」
《何か分かったらまた連絡するからな》
忙しいらしい霧島カンパニー情報セキュリティ部門の副主任殿はそれだけで電話を切った。耳を澄ませて聞いていた香坂が考えに耽りながら呟くように口にする。
「幾ら相手が香坂堂の役付きでも、ヤクザは得にならない接待などしない」
極右に張り付くこともあるハムだが一般的なヤクザ絡みの捜査にまで詳しいとは思えない。
だが考え得るセオリーとしてド真ん中を突いた香坂の発言に、霧島はキャリア研修後に配属された捜一辺りの経験が活きているのかと思う。その期のキャリアでトップ入庁はダテではないなと感心しつつ、こちらもセオリーで応えてやった。
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そんな四人に仕出し弁当を食い終えた野坂が告げた。
「午後十四時から市内のサンコー薬品の社長との面談です。こちらから出向きますので、皆さんのうち二名に同行して貰います。その二名に関してですが――」
「うーん、僕、お腹が痛いかも」
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