Black Mail[脅迫状]~Barter.23~

志賀雅基

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第15話

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 まさかの中高生という単語に反応し、霧島は灰色の目を煌かせる。そのシャープな横顔を見つめながら京哉は昨日の朝のひったくりや昼間の喧嘩を思い出していた。
 冷めた紅茶を啜った麻取部長が再び話し始める。

「高輪組はカランドのマフィア、マクミランファミリーと繋がっているとみられ戦闘薬もマクミランから流れたと思われる。潜入した四人は証拠を掴む寸前だった」

 悔しげに麻取部長は言葉を押し出し、スーツの内ポケットからUSBフラッシュメモリを取り出すとロウテーブルにカチリと置いた。

「そしてこれは昨夜わたしに届いたものだ。殉職した彼らの遺産と考えられる」

 本部長秘書官によってノートパソコンが用意されUSBメモリがセットされた。
 中には音声ファイルがひとつだけ入っていた。再生して皆が耳を澄ませる。

《――ガリアの利権の……UAVの投入が……資金調達になって……》
《戦闘薬程度ではたかが知れて……リライ事務からの……ナルコム社に――》
《……あんたがいいなら潜入しよう……これはデカいネタ……警察にも支援を――》

 空電音のようなノイズが酷い上に内容は切れ切れで霧島と京哉は首を捻った。

「何だ、これは……と言いたいが、名詞が六つも出てきたな」
「ガリア、UAV、戦闘薬、リライ事務、ナルコム社、警察ですね」
「ああ。分からんのはガリアだけだ」
「僕はナルコム社も知りませんけど?」

「ナルコム・コーポレーションはカランドにあるハンターキラーの開発・発売元だ」
「ふうん、そうなんですか。でもどうしてここでゲーム会社なんでしょうね?」

 まだ首を捻る二人に一ノ瀬本部長が口を挟む。

「ガリアとはカランドの一地方を指す地名でレアメタルが豊富に採れるらしい。一説には原油及びガリアのレアメタルを奪い合ってカランドの内戦は勃発したそうだ」
「ふむ、なるほど。それで私たちに何をしろとおっしゃるのでしょうか?」

 過去のパターンだと暴力団の高輪組に潜入という流れになりそうだったが、パスポートを持ってこいと言われた今回それはない。

 おまけに霧島は暗殺されかけた京哉を助けた件で当時の本部長が暗殺肯定派だったのもあり、勝手に機捜を動かしたと咎められて厳しい懲戒処分を食らい、その停職中に京哉との密会を週刊誌にスクープされたことがあるのだ。他にも記者会見や霧島カンパニー会長御曹司としてメディアを騒がせているため、面が割れているのである。

 ここで再び一ノ瀬本部長が丸い頬を引き締めて告げた。

「高輪組のマクミランファミリーからの戦闘薬密輸に際しオンラインゲーム提供会社ナルコム・コーポレーションが重大関与している疑いがある。そこで霧島警視と鳴海巡査部長に特別任務を下す。カランドに向かいナルコム社の疑惑解明に従事せよ」

 暫しの沈黙ののち、霧島は静かな声ながら困惑気味に訊いた。

「何故、日本の警察官の私たちがカランドまで出向き、ゲーム会社を探らねばならないのでしょうか。現地の捜査機関に協力を得れば良い話ではないのですか?」
「殉職した麻取諸氏の遺産に『ナルコム社』の名が出てきただろう? それを直接探るのが何かおかしいかね? それに他国とはいえ同輩を疑いたくはないが、マフィアと司法機関が『ズブズブ』の場合もある」
「それならリライ事務も同じでしょう。そちらなら国内で探れるのでは?」

 すると黙って聞いていた陸自の堂本一佐がふいに発言する。

「リライには既にわたしの部下を五名潜入させている。だがそのうち二名は昨日、都内のホテルでアルコールと睡眠薬を過剰摂取して死亡した。事故か自殺で片はつきそうだが、状況的に殺害されたとみるのが妥当だろう。その二名の後釜にすわりたいのかね?」

 揶揄するでもなく淡々と訊かれて、霧島は京哉と共に首を横に振った。仕方ない。顔を見合わせて溜息ひとつ、霧島が鋭い号令を掛けて京哉も立ち上がる。

「気を付け、敬礼! 霧島警視以下二名は特別任務を拝命します。敬礼!」

 その場の皆が一様に頷いた。一ノ瀬本部長は満足そうに微笑む。

「隊長不在の機捜はいつも通り小田切くんに預かって貰うので心配は要らん。航空機のチケットは本日十八時に成田発で押さえてある。間違いなく動いてくれたまえ」

 他に日本及びカランドとトランジットで通過する国の政府が発行した武器所持許可証だの薄い資料だの、捜査経費として税金の詰まったクレジットカードを渡された。

「現地の公用語はアラビア語だが、英語も殆どの場所で通用する。ドルも同様だ。英語の堪能な霧島くんがいればコミュニケーションには困るまい。質問は?」

「ありません」
「では任務完遂を期待している。気を付けて、必ず帰って来てくれたまえ。以上だ」
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