Black Mail[脅迫状]~Barter.23~

志賀雅基

文字の大きさ
上 下
24 / 58

第24話(BL特有シーン・回避可)

しおりを挟む
「だって……昨日もあんなにしたじゃないですか」
「昨日は昨日、それに航空機移動も含めたら充分時間は経っている。なあ、私に飽きたのでなければ愛させてくれ、京哉。それとも前の時に傷つけでもしたのか?」

 本気で心配されて京哉はふるふると首を横に振った。だが霧島は引き下がらない。

「素直に言うんだぞ。普段から無理をさせているのは分かっているのだからな」
「本当に大丈夫ですって。そんな顔しないで下さい、ね?」
「ならば証拠を見せてくれ。お前の中を私で満たすぞ、ずぶ濡れにしてやる」

 ストレートに囁いた霧島は京哉を三人掛けソファに押し倒した。身に着けたお揃いの薄いガウン越しに既に勃ち上がりかけたものを京哉に擦りつける。そうしながら伊達眼鏡を外させてロウテーブルに置いた。レンズを通さない黒い瞳は潤んでいる。

 抗う華奢な身を自らの重みで押さえつけながら唇を奪った。捩るように開かせ歯列を割って舌を侵入させると京哉の舌を絡め取る。唾液をねだっては吸い上げた。

「んんっ……ん、んんぅ……はあっ、忍さん、ここで?」
「ここだと嫌か? ベッドでない愉しみ方も教えてやる」

 目元を染めて京哉は顔を逸らした。拒否されないと知って霧島は片手で細い躰の至る処をまさぐり片手でガウンの紐を解く。前を遠慮なくはだけ、白くきめ細かな肌を剥き出しにして薄い肩に噛みつくように顔を埋めた。それだけで京哉はしなやかな身を僅かに反らせる。頭を抱かれ、黒髪をかき乱されながら低く囁いた。

「京哉、お前を愛している、京哉……私の京哉」
「んっ……忍さん、僕も貴方を……はぁん」
「色っぽいな。そんなに甘く鳴くと、目茶苦茶にしたくなる」

 幾度も薄い肩から鎖骨、首筋までのラインを舐めねぶる。甘く感じるほど滑らかな京哉の肌を吸い上げては赤く自分の証しを穿った。もう互いに熱く硬く成長させているのが分かり、下半身を揺らしては刺激して京哉を更に甘く鳴かせる。

「あ、ああっ……忍さん、そんなにしないで……ああん」
「誰に構うこともない、気持ち良くなればいい」

 言うなり身を起こし、霧島は京哉の下着を引き下ろし剥ぎ取った。さすがに京哉は羞恥に身を捩らせて抵抗したが、霧島は構わず京哉の細い脚を押し広げる。

 そのまま片脚をソファの背凭れに載せるという、何もかもが露わな姿態を取らされて、京哉は全身を桜色に染めた。露わにされたのは自分だけで霧島は着衣のままなのだ。京哉だけが熱く勃ち上がったものも後ろの色づいた窄まりも晒している。

「ん、ああっ、忍さん……やあ、ん……貴方、ずるい」
「何がずるい……お前京哉、ものすごく綺麗だぞ」
「そんな……貴方こそ綺麗……あん、そんなに見ないで」

 閉じようとする膝を押さえ付け、霧島は京哉の後ろの淡い色づきを視線で嬲った。そして素早く自分の右手指を口に含むとたっぷりの唾液で濡らし、ひくつく蕾をその指でなぞる。周囲からほぐし始め、徐々に窄まりへと指先が触れだした。

 同時に霧島は左手で京哉のものを握ると、そっと扱き始める。

「んっ、あっ……僕だけ、だめ……忍さん、許して……あふっ!」
「気持ち良くないのか?」
「だって、あぅん……いや……はぅんっ!」

 一際高く鳴いた京哉の蕾に霧島は一本目の指を挿入した。快感を期待した細い躰は勝手に体内で熱い液体を分泌し始めている。お蔭で霧島の長い指は抵抗なく根元まで挿入された。擦れて生まれた快感に京哉は身を波打たせる。

「あ、ああんっ……それ、本当は欲しかった、あっあっ!」
「分かっている。溢れるくらい濡らしてやるからな」

 傷つけないよう、だが確実に芯まで届かせ、狭いそこをゆったりと掻き回して馴らし、指の根元で狭い窄まりを緩めてゆく。京哉は目を瞑ることも忘れたように、涙をいっぱいに溜めた黒い瞳で霧島を見上げていた。その羞恥混じりの快感を訴える目が霧島にサディスティックな真似をさせる。指を増やした。

 己が平均値より随分と太いのは霧島自身も分かっている。挿入時に傷つけたくはない。丁寧に京哉の体内に指先を這わせ、擦り押して体液の分泌を促した。

 わざと扱く手を緩め、今はもう入れられる指全てで刺激しつつ、抜き挿ししては色づきを嬲った。翻弄されて京哉は溜まる疼きに華奢な身を反らせ腰を浮かせる。霧島の手を、長い指を欲して身を捩らせた。蕩けた京哉のそこは欲しがってひくつき溢れたものは背にまで流れ込んでいる。

「いや、あ……んっ、忍さん……意地悪、しないで」
「欲しいなら欲しいと素直に言え。言えば何処までもしてやるぞ?」

 吐息を乱した京哉はあられもない格好をさせられたまま顔を背ける。零れた涙をソファに擦りつけた。躰は勝手に霧島の指を咥え込もうと蠢いてしまっている。

 そこで霧島は片手だけで京哉を攻めながら片手で己のガウンの前を開けて見せた。

 初めて見た時には僅かに恐怖さえ覚えたほど太すぎる、そして今は欲しくて、ひとつになりたくて堪らないものを見せつけられて京哉は快感を期待し目眩すら覚える。

 こんなに霧島は自分を欲しがっている。年上の愛し人も灰色の目に浮かべた情動が溢れそうだ。治めてやるしかない。この自分の中で宥めてやらなければ――。

「忍さんこそ、僕が欲しいなら……っん、欲しいと言って下さい」
「私に乞えと言うか? ならば、これならどうだ?」
「あ、ああっ! やだ、忍さん、それは……はぅん!」

 何度か粘膜を指で広げられ、とうとう京哉は陥落し、淫らにも甘く乞うた。

「欲しい……忍さん、欲しいよ……もっと、お願い!」
「分かった、思い切りしてやる」
「あっ、ああ……あうんっ!」

 もう京哉は大胆にも自ら躰を開いて快感を貪っていた。数指を一度に受け入れ、擦り掻かれて啜り泣くような喘ぎを室内に響かせている。浮いた細い腰はいつしか、いやらしく前後し始めていた。そんな姿態が、声が年上の愛し人を煽ってゆく。

 霧島は痛いくらいの疼きを溜めていた。胸が焦げつくほどに愛しくてならず、何処までも快感を与えてやりたい思いと、すぐにでもねじ込んでしまいたい思いの狭間で揺れる。そんな狂おしい思いを切れ長の目に読み取ったか、京哉が霧島に頷いた。

「お願い、もうして。僕に入れて」
「ああ、私も我慢できそうにないな」

 指を抜き華奢な躰を両腕でしっかり抱くと、手前のベッドに運んで横たわらせた。京哉は自らガウンの袖を抜く。霧島も素早く全てを脱ぎ捨てて象牙色の肌を晒した。

 濡れそぼった熱く太く硬くものを目にして京哉が息を呑む。先程ガウンの間から見せた時よりも霧島自身どうかと思うほどに滾ったそれは華奢な身に受け入れさせるのは可哀相なくらい太かった。だがもう互いに退けない。チラリと京哉を窺う。

「忍さんってば、すごい……欲しいよ」

 ベッドに上がった霧島は躰を重ねた。焦らさず眩いばかりに白い躰が開かれ、霧島を誘う。霧島は身を起こして馴らしたばかりのそこに己をあてがった。

「入るぞ、京哉」
「きて、忍さん。入れて……あっ、ちょっ、くうっ!」
「くっ……すまん、大丈夫……な訳はないか。だがもう入りたい、入れるからな!」

 切っ先を収めようとして太すぎ、京哉は思わず声を上げてしまったが、霧島は可哀想と思いながらも京哉が欲しい想いに勝てず、やや強引に挿入してしまっていた。きっと痛かっただろうと思うが、京哉は霧島を最後まで呑み込んでくれていた。引き裂いてしまったかと心配になったが血のべたつきは感じられない。

 それでもこんなもので貫かれて苦しい筈だが、京哉は霧島に微笑んで見せる。

「大丈夫……突いて、思い切りして」
「煽ると拙いぞ。他国で動けんのも困る」

「分かってますが、忍さんだけが欲求を解消する訳じゃないんですからね」
「そうか、そうだな。では腰が蕩けるような思いをさせてやる」

 もう霧島も我慢は限界だった。最初から激しく細い躰を揺らし始める。堕ちてきた月読の神のような京哉を犯し尽くし、白く細い指先から毛先の一本まで、全てを汚してやりたい思いでいっぱいだった。腰を片手で掴み、熱い楔で幾度も貫く。

 淫らな音がして内襞が霧島に絡みついた。それを掻き回していると京哉のぬめりが霧島の切っ先で掻き出される。激しさに京哉が高い声を洩らした。

「んんっ、あっ……すごい、いい……ああんっ!」
「私も、すごくいい……くっ、まだ、きついぞ」

 霧島は夢中で二人分の快感を生み続けた。容赦ない攻めに京哉が訴える。

「忍さん、もう、僕……だめ、かも」
「私も、京哉……お前の中で、いかせてくれ!」

 揺らし揺らされながら互いの目を見つめた。強すぎる快感に瞑ることもできないらしい涙で潤んだ瞳に霧島は頷いてやる。安堵したように京哉は焦点をぼやけさせた。

 快感だけに集中する京哉の甘い喘ぎが更に高くなる。二人の熱く不規則な吐息や淫らな音と共に室内の空気を震わせ続けた。激しすぎる行為でベッドが軋む。

「ああん、だめ……忍さん、いく、出ちゃう……はうんっ!」
「京哉、私もいく、出すぞ……くっ――」

 幾度も身を震わせて霧島は京哉の中にたっぷりと注ぎ込む。同時に京哉も弾けさせ自らの喉元にまで迸らせていた。ぐったりと京哉は躰の力を抜く。ベッドに躰が染み込んでしまうような錯覚さえ抱いた。そうして見るといつものことながら霧島の躰の中心は一度放つ前よりも太く滾って反り返っている。

 確かにこれが自分に入ってしまうとは京哉も信じがたい思いだった。

「すごい、忍さん……でも出会った頃って、ここまですごかったですか?」
「別に測っていないから分からんが、確かにお前をパートナーと定めて以来、微妙にデカくなった気がしている。遠慮せずとも良い相手だからか、お前の体液が養分か」

「何ですそれ、全部僕のせいってことじゃないですか」
「事実だからな。だが、もういいぞ。こんなよその国でお前を壊したら困るからな」
「僕はそう簡単に壊れない、約束しますから……ねえ、きて」
「こら、お前……それは反則だろう」

 京哉は自分のそこを霧島に見せつけていた。大量に放たれ閉じ込めきれなかったものが溢れ出し白い内腿を伝っている。酷くエロティックな眺めだった。

「忍さん、もっとここに貴方を頂戴……思い切り濡らしてよ」
「くっ……京哉、どうなっても知らんからな!」

 ただごとでない色気と誘惑に霧島は抗えず、再び京哉にのしかかると熱い楔を突き立てた。張り裂けんばかりのものを勢いよく打ち込まれ、京哉は充血した粘膜を破られそうなほど押し広げられる。そんな太すぎる霧島に体内を掻き回されて京哉は叫ぶように喘ぐことで意識を保ち続けた。

「んっ、ああんっ、忍さん……あぅんっ、はうんっ!」
「京哉、すまん……京哉!」
「いいから、好きなだけ……もっと、はぁんっ!」

 上下感覚も失くすほど全身を揺らされ、京哉は長めの髪を乱しシーツを掴み締めて攻めに堪える。霧島をもっと気持ち良くしてやりたくて、スライドに合わせて腰を前後させてみたが、とてもではないが激しい律動について行けず、途中から揺らされるに任せた。口からは勝手に甘く高い声が洩れだし、霧島に果てしなく乞うている。

「もっと、忍さん、はぅんっ! いっぱいして……僕を貴方の形にして!」
「だめだ、京哉……煽るな、壊してしまう! お前をこんなに、こんなに――」

 霧島の律動が更に激しさを増した。途端に京哉は予兆もなく急激に昇り詰め、再び達して腹から胸にまで飛び散らせる。窄まりが締まって霧島も京哉の中をずぶ濡れにした。今度こそ京哉は全身の力を抜いたが、霧島はまだ許そうとしない。
 どれだけ抱いても抱き尽くした気がしない。霧島にとって京哉との行為は何処まで攻めて攻め抜いても果てがなかった。何もかも忘れて溺れ切ってしまうのだ。

「ああん……はぁん、あっふ、忍さん……あぅん!」
「京哉、私の京哉! もっと、もっとお前を私にくれ!」
「好きな、だけ……貴方の、僕だから、はぅんっ、ああんっ!」

 とっくに霧島が理性をとばしてしまっていることに京哉は気付いていた。何度いかされたかは覚えていない。だが京哉は何処までも霧島の欲望を受け止め続ける。思い切り満足するまで身を差し出していたかった。プライドが高くいつも格好つけたがる年上の男を溺れさせ、何もかも忘れるときをできるだけ長く与えてやりたいのだ。

 それでも国外で動けないのは拙いというのは覚えていたらしく、ようやく霧島は己を抜いた。けれどそのとき既に京哉はすぐさま自力歩行は無理な状態に陥っている。

「すまん、京哉。大丈夫……ではないな」

 声も出せずに頷くと、ヘッドボードの棚からティッシュを取って霧島が躰を拭ってくれる。そのまま霧島はベッドを滑り降りてミネラルウォーターの瓶を持ってきた。口移しで飲ませて貰う。味はついていないのに甘く感じる液体を半分ほども飲んで溜息が出た。

 そのあとは例の如く甲斐甲斐しく世話をされ、湯で絞ったバスタオルで躰を拭かれ下着とガウンを着せられる。そして乾いた方のベッドに移動させられ横たえられた。

「欲しいものがあれば言うんだぞ、可能な限り調達するからな」

 だが欲しいものはただひとつだった。京哉はそれを要求する。

 左腕の腕枕をされて目を瞑ると、すぐにとろりとした眠気が訪れた。明かりを常夜灯にしたホテルの部屋の中、霧島の指に長めの髪を梳かれながら、京哉は眠りに落ちる。ひとつベッドで霧島の寝息も並ぶまで幾らも掛からなかった。
しおりを挟む

処理中です...