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第43話
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ここまでこればUAVの狙いは明らかである。獲物を探しているのだ。
おそらく生体反応を感知した上でカメラ・アイを駆使し、数少ない人間を慎重すぎるほど照合していく様子と時折見せるランダムな機動はオートでは有り得ず、操縦者の執拗な残酷さを物語っている。京哉は嫌悪感から柳眉をひそめた。
「忍さん、これって基地のリモコン操縦士が操縦しているんですか?」
「そこに疑問を持つお前こそ『可能性』に気が付いたのだろう?」
「じゃあ殺す気がないのに殺す、殺す気もない人に殺されるってことですよね?」
「我々の勘が正しければ、な」
呟いた霧島に京哉は訊いても詮無いことだと知りつつ訊かずにいられない。
「なら『野良犬』扱いされたあの人はどうなるんです?」
「どうもこうもない。『テロリスト』は殺られるだろう」
「そんな、今あそこで生きてる人が、誰かの父親かも知れない人が殺されるんですか? それを僕らはむざむざとここでただ見てるんですか!」
「仕方あるまい。楽に綺麗に死なせてやりたくても、私たちには撃てないのだからな!」
霧島にまで叫ばれて京哉は僅かに頭に上った血が下がり、思いついて口にする。
「じゃあUAVを僕が撃ちます」
「撃墜するのか。それでどれだけの被害が出る? コントロールを失ったUAVが何の被害も出さず無事ランディングするか? 無辜の第三者が死んでもいいのか?」
「だったら! 指を咥えて見てろと言うんですか?」
「手を出すことでメリットよりデメリットが大きければ、そうするしかあるまい。私たちは潜入捜査という、ただでさえ危ない橋を渡っているのだからな。私は他人の命より我々二人の命の方が大切だ。だからここでお前に撃たせる気は欠片もない」
「……そんな。僕と同じ、貴方まで最初から産業スパイを見捨てるつもりで……」
「冷たい男だとショックでも受けたか? それとも人が殺されるのを見に来た下種な人間と軽蔑するか? 言い訳にもならんが私はこの目で確認したかったのだ。ずっと感じていたハンターキラーへの疑問を解くために、何もかもを確かめたかった――」
ニーリングを取りスコープを覗くために銃を構えたまま、京哉はギラつく陽光に溶けた長身をぼんやりと見上げた。これまでの特別任務では京哉の方が冷酷な判断を下すことが多かった。むしろ霧島は京哉が斬り捨てようとする者を助けたがる側だったのだ。そんな霧島が今、自らを『冷たい』だの『下種』だのと評してまで見届けたかった死。
ずっと考え続け、燻り続けていた疑問を解消するため、全てを我が目で見る。
何処にヒントか答えがあるか知れず、全てを見るためにクインランに傭兵として潜入までした。そうして霧島は早々に辿り着いてしまい、そんな霧島の表情で京哉も悟ってしまったのだ。途轍もなく卑怯で卑劣な陰謀が罷り通っている事実を。
巨大な陰謀に気付いてしまった二人だが、それとは別に目前で人間が殺されようとしている状況下で『打つ手のない自分』に憤慨していた。半ばこうなることは分かっていたけれど作戦参加を辞退しなかったのは、我が目で全てを見るためだけでなく、人ひとりの死を自分たちだけでも見届けてやりたいという想いから――。
冷たい下種根性どころか、この岩砂漠に照りつける太陽より熱い人間的想いだ。
「忍さん、悪ぶらないで下さい。僕も貴方と同じものを見ています」
「そうだったな」
「でも、お蔭でずっと忍さんが拘っていた謎が解けたんですよね?」
「おそらくは。まだ仮説段階だがこれで全てが繋がったからな」
「それなら良かった。で、あのテロリストは僕が撃った方がいいんでしょうか?」
どうせ殺される運命なら僅かでも楽に逝かせてやりたい思いで京哉は低く訊いた。照りつける陽光を遮った長身の影は首を横に振る。
「必要ない」
「……チェーンガンでミンチになるより綺麗に残してあげられます」
「分かっている、お前の腕が確実なのは。だが不要なリスクを冒すことはない」
「なら、どうしてですか?」
「スパイを雇った企業は身代金を出さんと言っていただろう? つまりは遺体も引き取らない、関係を全て否定する。だから大まかな死の状況は遺族に伝えられても悲惨なそれを遺族が直接目にすることはない。雅人も詳しく語らなかった」
「それはそうですけれど」
「あとひとつ、これだけは言える。何れにせよここまで来られる『キメラ使い』ならAAAクラスの奴だ。外さない。ペインレスだ」
「……」
ひやりとさせられる言葉を煮えたぎる溶岩の如く吐き捨てた霧島に、京哉はもう黙るしかなかった。京哉も悔しい。だがずっとヒントを握っていた霧島はもっと悔しい筈だった。
我が目で全てを確かめると言った通り目を背けることなくレーザースコープを覗いた霧島の強い意志に倣って、京哉も再び狙撃銃に付属のスコープを覗く。レティクルの中心に映った白ヘルメットを撃つか否か迷った一瞬後には、産業スパイとされたスーツの男は上半身を真っ赤に飛び散らせていた。
奇しくも場所も同じ、ゲーム・ハンターキラーのログの再現だった。
おそらく生体反応を感知した上でカメラ・アイを駆使し、数少ない人間を慎重すぎるほど照合していく様子と時折見せるランダムな機動はオートでは有り得ず、操縦者の執拗な残酷さを物語っている。京哉は嫌悪感から柳眉をひそめた。
「忍さん、これって基地のリモコン操縦士が操縦しているんですか?」
「そこに疑問を持つお前こそ『可能性』に気が付いたのだろう?」
「じゃあ殺す気がないのに殺す、殺す気もない人に殺されるってことですよね?」
「我々の勘が正しければ、な」
呟いた霧島に京哉は訊いても詮無いことだと知りつつ訊かずにいられない。
「なら『野良犬』扱いされたあの人はどうなるんです?」
「どうもこうもない。『テロリスト』は殺られるだろう」
「そんな、今あそこで生きてる人が、誰かの父親かも知れない人が殺されるんですか? それを僕らはむざむざとここでただ見てるんですか!」
「仕方あるまい。楽に綺麗に死なせてやりたくても、私たちには撃てないのだからな!」
霧島にまで叫ばれて京哉は僅かに頭に上った血が下がり、思いついて口にする。
「じゃあUAVを僕が撃ちます」
「撃墜するのか。それでどれだけの被害が出る? コントロールを失ったUAVが何の被害も出さず無事ランディングするか? 無辜の第三者が死んでもいいのか?」
「だったら! 指を咥えて見てろと言うんですか?」
「手を出すことでメリットよりデメリットが大きければ、そうするしかあるまい。私たちは潜入捜査という、ただでさえ危ない橋を渡っているのだからな。私は他人の命より我々二人の命の方が大切だ。だからここでお前に撃たせる気は欠片もない」
「……そんな。僕と同じ、貴方まで最初から産業スパイを見捨てるつもりで……」
「冷たい男だとショックでも受けたか? それとも人が殺されるのを見に来た下種な人間と軽蔑するか? 言い訳にもならんが私はこの目で確認したかったのだ。ずっと感じていたハンターキラーへの疑問を解くために、何もかもを確かめたかった――」
ニーリングを取りスコープを覗くために銃を構えたまま、京哉はギラつく陽光に溶けた長身をぼんやりと見上げた。これまでの特別任務では京哉の方が冷酷な判断を下すことが多かった。むしろ霧島は京哉が斬り捨てようとする者を助けたがる側だったのだ。そんな霧島が今、自らを『冷たい』だの『下種』だのと評してまで見届けたかった死。
ずっと考え続け、燻り続けていた疑問を解消するため、全てを我が目で見る。
何処にヒントか答えがあるか知れず、全てを見るためにクインランに傭兵として潜入までした。そうして霧島は早々に辿り着いてしまい、そんな霧島の表情で京哉も悟ってしまったのだ。途轍もなく卑怯で卑劣な陰謀が罷り通っている事実を。
巨大な陰謀に気付いてしまった二人だが、それとは別に目前で人間が殺されようとしている状況下で『打つ手のない自分』に憤慨していた。半ばこうなることは分かっていたけれど作戦参加を辞退しなかったのは、我が目で全てを見るためだけでなく、人ひとりの死を自分たちだけでも見届けてやりたいという想いから――。
冷たい下種根性どころか、この岩砂漠に照りつける太陽より熱い人間的想いだ。
「忍さん、悪ぶらないで下さい。僕も貴方と同じものを見ています」
「そうだったな」
「でも、お蔭でずっと忍さんが拘っていた謎が解けたんですよね?」
「おそらくは。まだ仮説段階だがこれで全てが繋がったからな」
「それなら良かった。で、あのテロリストは僕が撃った方がいいんでしょうか?」
どうせ殺される運命なら僅かでも楽に逝かせてやりたい思いで京哉は低く訊いた。照りつける陽光を遮った長身の影は首を横に振る。
「必要ない」
「……チェーンガンでミンチになるより綺麗に残してあげられます」
「分かっている、お前の腕が確実なのは。だが不要なリスクを冒すことはない」
「なら、どうしてですか?」
「スパイを雇った企業は身代金を出さんと言っていただろう? つまりは遺体も引き取らない、関係を全て否定する。だから大まかな死の状況は遺族に伝えられても悲惨なそれを遺族が直接目にすることはない。雅人も詳しく語らなかった」
「それはそうですけれど」
「あとひとつ、これだけは言える。何れにせよここまで来られる『キメラ使い』ならAAAクラスの奴だ。外さない。ペインレスだ」
「……」
ひやりとさせられる言葉を煮えたぎる溶岩の如く吐き捨てた霧島に、京哉はもう黙るしかなかった。京哉も悔しい。だがずっとヒントを握っていた霧島はもっと悔しい筈だった。
我が目で全てを確かめると言った通り目を背けることなくレーザースコープを覗いた霧島の強い意志に倣って、京哉も再び狙撃銃に付属のスコープを覗く。レティクルの中心に映った白ヘルメットを撃つか否か迷った一瞬後には、産業スパイとされたスーツの男は上半身を真っ赤に飛び散らせていた。
奇しくも場所も同じ、ゲーム・ハンターキラーのログの再現だった。
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