Ｃ-ＰＴＳＤ～Barter.3～

第17話（BL特有シーン・回避可）

「忍さんはそのままでいいですから、僕にさせて下さい」
「だめだ。麻酔が効いていても傷が開くから却下だ」

　却下されても京哉は聞く耳を持たぬふりで霧島の薄いガウンの前を撫で上げた。既に形が分かるまでに己を硬くした霧島はそれだけで低く呻く。

「うっく……こら、だめだと言っている。言うことを聞け」

　そう言いつつ霧島は京哉に口づけた。二人は甘く濃くキスを交わす。

　心の底から求め続けた京哉の舌を痺れるくらい吸い、霧島は喉を鳴らして唾液を飲み干した。京哉の甘い唇が離れ滾ったものを指でなぞられる。
　ぬめりが糸を引いた。

「こんなに僕が欲しかったんですね。躰は正直ですよ」
「これは生理的反応だ。本当にお前に無理させたくない」
「無理じゃありません。いえ、無理だとしても止められません」

　灰色の目で笑った霧島はもう互いに退けないと分かって諸手を挙げた。

「じつは私の方がずっと欲しがっていたことなどお見通しという訳か」

　言うが早いか霧島は京哉をすくい上げてシーツに寝かせ、性急にガウンの前を開けて下着も剥ぎ取る。自分も全て脱ぎ散らかす。京哉は細い腰を自ら浮かせた。
　秘部も露わにした京哉を見て霧島は何も言わず色づいた窄まりに一本目の指を挿入する。いきなり挿れられた京哉は思わず身を跳ねさせ悲鳴を上げた。

「ああん、んっ……はぁん！」
「もう我慢ができそうにない。すまん京哉、私にさせてくれ」
「謝らないで、っん、ああんっ！」

　京哉はぞくぞくするような快感を与えられ積極的に受け入れていた。狭い窄まりに挿し込まれた長い指が捩られ入り口をほぐしながら増やされてゆく。

「ああん、そこ……いい、忍さん、はぅん！」
「ここと、ここもだろう……京哉、もっと声を聴かせてくれ」

　大事な京哉を傷つけないよう普段からそれ以上無理なくらい深爪して整えた指先が中を擦り上げ掻き回し、そのたびに京哉の白い躰は蠱惑的にうねった。まもなくぬるんだ粘膜が淫らな水音を立て出す。

　そこまでで霧島の我慢は限界、全ての指を引き抜いた。途切れた快感を追って細い腰が揺れ動く。あの中に、温かくも狭い京哉に早く包まれたくて堪らない――。

「あっ、ふ……下さい、忍さん……ここに、下さい」
「ああ、幾らでもやる。私をお前に入れてくれ」

　自分で躰を開いた京哉に霧島は己をあてがうとゆっくり腰を進め始めた。狂おしいほど欲しかった愛しい身に熱い己を穿ってゆく。
　だが指で馴らしたのに京哉は霧島を受け入れられない。それもその筈で霧島は自分でもどうかと思うほど太く硬く滾らせてしまっていた。
　
　これでは危ないと思うも霧島は切ないくらい京哉が欲しい。

「はあっ、忍さん……すっごく太い、硬い……あうっ！」
「すまん、お前が欲しくて、こんなに……我慢してくれ！」
「いい、引き裂いても……きて、お願いです！」

　欲望を抑えきれず霧島は腰を僅かに突き上げた。しかし切っ先だけでも京哉を引き裂く寸前で霧島自身にも痛みが走る。
　その痛みで霧島は少し頭が冷めたが京哉は自ら腰を持ち上げ霧島を食い込ませた。

　熱く滾った霧島を体内に咥え込み、ゆっくりとひとつになってゆく。霧島は己のものが細く華奢な躰を貫いてゆく様を堪能した。

「あっ、あ……僕の中、忍さんでいっぱい――」

　吐息と共に京哉は呟いたが、いっぱいすぎるのは霧島も分かっていて動けない。まだ痛みも感じるが京哉はそれ以上だろう。不用意に動けば粘膜を裂いてしまう。

　一方の京哉も浅く速い呼吸を繰り返すのが精一杯だ。体内で灼熱の霧島が息づいて酷く苦しい。けれど霧島がくれるなら全てが疼きに変換される。
　自分を満たした年上の男が愛しくて堪らず、胸が詰まるような幸せに浸った。

　今この時は何にも邪魔されない。自分の犯した罪、過去の亡霊にも――。

「京哉、っく……動いても、いいか？」

　頷くと霧島はゆるゆる腰をスライドさせ始めた。だが京哉はまだ声も出せない。しかし霧島はもう動きを止められず、擦過して生まれる快感に深い安堵を覚える。

　余裕ができた気分で眺めると薄明かりの中で白い躰に太い楔が幾度となく呑み込まれる光景は淫ら極まりなかった。
　そこで京哉の中がきつく締まり、急激に獰猛な思いが湧いて弾けて白く細い躰を激しく揺らし粘膜を思い切り掻き回し始めていた。

「くうっ、京哉、気持ちいい……最高だ、私の京哉！」
「あんっ……僕も、いい、すごい……忍さん、はぅんっ！」

　最奥まで突き上げられた京哉は一際高く喘ぎ、自ら細い腰を前後させて霧島と躰をぶつけ合う。甘い痛みより鋭い快感が上回り、淫らに腰を振っては根元まで受け入れた。
　躰が密着するほど咥え込まれ締めつけられて霧島を目の眩むような快感が襲う。

「うっ、く……だめだ、京哉、もう保たない……くっ！」
「僕も、いきたい……一緒に、忍さん……あうっ！」

　二人は同時に達して京哉は自分の喉元にまで飛び散らせた。
　霧島は京哉の芯を熱く濃く濡らす。それでもまだ霧島は京哉の中を破らんばかりに押し広げ、己の白濁が溢れ出ているそこを貫き抉って掻き混ぜ続けた。

「すご、い……忍さん、いい……ああっ！」
「ああ、すごくいい、京哉……欲しかった――」

　やがて思考を白熱させた霧島はとうとう完全に理性をとばす。縦に横にと目茶苦茶に掻き回して京哉に悲鳴を上げさせた。
　その声は聞こえても霧島は己の行為を止められない。嫉妬し我慢していた間の想いをぶつけるかの如く、だが巧みに攻め続けた。

　自分だけの聖域に所有の証しを刻み込むかのように蹂躙する。

「すまん、あまりに良くて止められない！　お前を壊してしまう！」
「いい、壊されたい……あっあっ！」

　あまりの快感に気が遠くなりながら予兆もなく京哉は唐突に迸らせる。粘膜がきつく締まり霧島も欲望を迸らせた。まだ京哉から離れられない霧島はいつまで自分が中にいたらこの吸い付くようなきつい締まりは緩むのだろう、などとぼんやり考える。

　そのくらい京哉の中は狭く霧島をのめり込ませた。力強く攻め立てられる京哉もこれ以上ないほど奥まで突かれ、腰を浮かし霧島と躰をぶつけ合う。
　蕩けるような快感に溺れきり互いに融け合ったように感じるくらいだった。

　そうしてまた二人の疼きは混じり合って溢れ出す。

「ああん、忍さん、愛してるから一緒に……もう、お願い、早く！」
「京哉、京哉……愛している、あっ、く――」

　落ち着いてみてやっと霧島は京哉の点滴のチューブがもつれているのに気付いた。僅かだが血液が逆流している。身を起こしチューブを直すと京哉の様子を窺った。

「大丈夫とは言いませんが、すごく幸せだから大丈夫です」
「何だそれは。痛ければ言うんだぞ、せっかく病院にいるんだからな」
「はいはい。じゃあ僕、先に洗面所で流して……うっ！」

　あれだけやらかして起き上がれる筈もない。
　霧島が普通じゃないのだ。

　色々とあり余っているタイプの大男はベッドから滑り降りると洗面所に立ち、戻ってきた時には湯で絞った熱いタオルを手にしている。丁寧に京哉を拭き始めた。
　全身を拭いてしまうと下着とガウンを着せつけ、点滴台ごと元の窓側のベッドに抱き運び寝かせる。

　自分はタオルで雑に拭いて下着とガウンを身に着けた。そしてシーツの濡れたベッドではなく京哉側のベッドに上がって腕枕する。

「腕はどうだ、異常は感じないか？」
「それは平気ですけど、こっちで一緒に寝るんですか？」
「狭いが我慢してくれ」
「そういう意味じゃなくてですね……」
「ああ。そっちのシーツは朝まで干しておく」
「はあ～っ。なら明日は看護師さんが来る前に起きないと」
「別に構いはしないだろう。誰に迷惑を掛ける訳でもないんだ」
「構うと思いますけどね。もういいです。あっふ、おやすみなさい」
「ゆっくり寝ろ。私も久々に良く眠れそうだ」

　怪我に障らない程度に京哉を抱き締めると霧島もすぐに眠りに落ちていった。