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第25話
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県警捜一と組対が合同で行った霧島への事情聴取はかなり厳しいものだった。
弾丸のライフルマークは照合中だが、現時点でも霧島の銃から発射された三十二ACP弾で重傷を負った者が五名、軽傷が二名である。死者こそ出なかったが当然の処遇だ。
それでも別室で参考人聴取された西原沙織の証言と密かに一ノ瀬本部長の援護があったからか、その晩のうちに釈放となったのは奇跡的と云えた。
日付も変わってから機捜の詰め所に戻り、武器庫で銃を整備するとまた九発フルロードにした。捜一から返却された京哉の銃も同じく整備して二丁を身に帯びる。
詰め所を出て一階に降りると沙織が受付のベンチに座り膝のハンドバッグの取っ手を弄んでいた。霧島を見ると何を勘違いしたのか表情を明るくする。
無視する気すら湧かないくらい何ら心が動かず、そのまま霧島は本部庁舎の裏口から出た。足早に沙織は霧島に追いつき僅かな距離を置いて歩き始める。
振り切ってしまいたかったが沙織は意地のように長身の男の歩調についてきた。
「鳴海さんの右腕は骨折ですって? 腕がちぎれなくて幸いだったって刑事さんが言ってたわ。生きててくれて良かった。祖父の仇でも死なれたら寝覚めが悪いもの」
「……」
黙ったまま霧島は脳内でゆっくりテンカウントして喚き出しそうな自分を宥めた。
無神経な言葉を吐いて平静を装っているつもりの沙織はああいう状況を体験し興奮状態に陥っているのだ。それに自分の無謀な行動の結果、京哉が大怪我したのである。罪悪感を薄めようと躍起になっている、それだけだと霧島は見抜いていた。
頭は良くても賢くはない女子高生に対して同レヴェルの口喧嘩など大人げない。
だが沙織が勝手に黒塗りに同乗すると、さすがに辛辣にならざるを得なかった。
「まだガードが欲しいのならば白藤署にでも申し出て貰えないだろうか?」
「松永工業本社は家宅捜索も入って壊滅状態って聞いたわ」
「だから何だと言うんだ?」
「ガードはもう要らないってことよ」
「本気でそう思っているなら天下のアガサ商事社長で篠坂高生も随分と能天気だな」
「何よ、それ。どういう意味?」
「松永工業は本社を壊滅されて余計に百二十億が欲しくなったんじゃないのか? それに松永工業のバックが海棠組と言ったのは誰だ? 次は本物のヤクザ相手だぞ」
脅すでもなく事実を淡々と告げる霧島に、沙織は言葉も失くして黙り込む。
「更にきみが狙われる原因は会社関係だけでないのを忘れたか? 口には出さずとも京哉の秘密をこれ見よがしに振り撒いて歩いた。京哉は何度も警告した筈だぞ」
「確かに鳴海さんは警告したけれど、その警告は自分のためだって言ってたわ。大体あの人はその警告を利用して逆にわたしを『消したい』って脅したのよ!」
「本心だろうな、京哉は親しくない者相手に冗談も嘘も言うタイプではないし、きみは京哉にとって騙してやるほど優しく接する対象ではない筈だ。故に京哉が告げたのは全て事実。それをきみがどう解釈しようが我々には関係ない」
まだガードがいなければ命取りの状況が続いていると気付かされた沙織は吐息を早くし、視線はせわしなく車内のあちこちと霧島の灰色の目を行き来した。何事か言おうとするが言葉にならないようだ。
そんな沙織に霧島は最後通牒する。
「きみがそういう態度である以上、最初からチームとして不成立だった。京哉が欠けた今、まとわりついて不安を訴えられても私はきみをガードする気などない」
「そんな……でも――」
完全に論破された沙織は霧島の言い分を噛み締めてみたが、全て正しいと認めるしかない。けれど百パーセント自分が悪いとも認められなかった。
そもそも鳴海京哉が祖父を殺したことから始まったのである。そう思って食い下がるように灰色の目を睨み返しているうちに猛烈な反発心が湧き上がり腹が立ってきた。
この男は冷静な仮面の下で、ここまで人を見下していたのだ。そして何より許せないのは鳴海京哉の秘密を全て知った上で黙っている共犯者という事実である。
「霧島さん、貴方なんかに護って貰わなくても結構よ。でも病院には行くわ。鳴海さんの怪我には責任があるから。放棄して貴方に馬鹿にされるのは我慢できないもの」
押し殺した声で言い放つと沙織は黒塗りの助手席でシートベルトして付け加えた。
「祖父を殺した冷血漢の鳴海京哉でさえ、わたしを最後まで護ろうとして怪我をしたわ。それなのに貴方は途中でわたしを放り出して平気なのね」
よくもそこまで言えるものだと霧島は半ば感心する。しかしあのとき京哉は霧島に沙織を託した。確かにここで沙織を放り出すと京哉は怒るかも知れない。
こんな女子高生どうだっていい。だが京哉の言葉は護りたかった。
だからといってこの無神経な女を怪我した京哉に会わせる気などなく、黒塗りを発車させると真っ直ぐ沙織の屋敷に向かう。
するとまた沙織は喋り始めた。
「明日から出社はやめるわ。ただ九日後の麻生重工の専務との会合だけは付き合ってくれないかしら? ウィンザーホテルで十五時からなんだけど……だめ?」
ここにきて女子高生ぶる沙織が酷く気味の悪い生き物に思えてならなかった。
郊外の屋敷に沙織を押し込んでしまうと一旦真城市の自宅マンションに帰って二人分の簡単な着替えをショルダーバッグに詰め、今度こそ白藤大学付属病院に向かう。
辿り着くと駐車場に黒塗りを駐め、外科の入院棟まで走った。
三時近いのに京哉の手術を執刀した医師はナースステーションにいた。レントゲン画像を見せられたが医師が説明をしなくても武道をたしなみ、つい先月まで自分も左腕を撃たれてギプスを巻いていた霧島には思っていたより重傷だと判断できた。
「見事な右尺骨の粉砕骨折と橈骨にヒビでした。おまけに弾が抜けていなかった」
「全治どのくらいですか?」
「長くて約二ヶ月ですかね。現在はバラバラの骨にワイアを通して繋ぎ、プレートをネジ止めして保護した状態です。繋ぎはしてもグラグラなので安静を維持し、傷の抜糸が済み次第ギプスで固めます。固めたら一旦退院しても構いません。約二ヶ月で様子を見てギプスを外し、三日の入院と再手術でプレート類を抜去します」
要は自分が撃たれた時と同じだった。だがあの時の自分は京哉が気を利かせてくれて、すぐ保養所に移送して貰えた。同じく今回も保養所を利用すべきかと考える。特に京哉の怪我は利き手側だ。慣れるまで相当苦労するだろうと予想がつく。
考えつつ看護師に案内されたのは個室でそれも何故か特別室で京哉は眠っていた。訝しい思いが表情に出ていたか、霧島に見られて頬を染めた若い看護師が説明する。
「アガサ商事の社長名でこの病室に入って頂きました」
なるほど、カネがないと言いながら何処から捻り出したのか知らないが、借りを作りたくないばかりに沙織が手配したらしい。わざわざ引っ越しするのも面倒なので、やたら広くシャワーや洗濯乾燥機まで設置された病室に自分も居座ると決めた。
付き添い用のベッドを搬入して貰い、有料だが食事も出して貰えるのを確認する。
そこまで動いてしまうと真夜中に出来ることもなくなった。
「すまない、京哉。待たせたな」
麻酔と点滴に含まれた鎮痛剤の作用で京哉が眠っているのを知りながら、静けさに低い声を響かせる。座面がゴブラン織りの高そうなチェアを枕元に寄せて腰掛け京哉の顔を覗き込んだ。
元々白い肌が一層白く透けるようだった。触れたくて堪らない想いを危うく堪える。麻酔から無理に目を覚まさせると高確率で悪夢を見るらしい。
霧島も眠たかった。やっと京哉と二人きりになれた気がして神経が緩んでいた。
座ったまま意識が時折途絶え始め、いつしか京哉のベッドに突っ伏してしまう。拙いぞと思いながらも躰は動かず、霧島は温かく息づく優しい闇に包まれて沈んでいった。
重傷を負った京哉には悪いが、今の京哉は私だけのものだと強く想いながら。
弾丸のライフルマークは照合中だが、現時点でも霧島の銃から発射された三十二ACP弾で重傷を負った者が五名、軽傷が二名である。死者こそ出なかったが当然の処遇だ。
それでも別室で参考人聴取された西原沙織の証言と密かに一ノ瀬本部長の援護があったからか、その晩のうちに釈放となったのは奇跡的と云えた。
日付も変わってから機捜の詰め所に戻り、武器庫で銃を整備するとまた九発フルロードにした。捜一から返却された京哉の銃も同じく整備して二丁を身に帯びる。
詰め所を出て一階に降りると沙織が受付のベンチに座り膝のハンドバッグの取っ手を弄んでいた。霧島を見ると何を勘違いしたのか表情を明るくする。
無視する気すら湧かないくらい何ら心が動かず、そのまま霧島は本部庁舎の裏口から出た。足早に沙織は霧島に追いつき僅かな距離を置いて歩き始める。
振り切ってしまいたかったが沙織は意地のように長身の男の歩調についてきた。
「鳴海さんの右腕は骨折ですって? 腕がちぎれなくて幸いだったって刑事さんが言ってたわ。生きててくれて良かった。祖父の仇でも死なれたら寝覚めが悪いもの」
「……」
黙ったまま霧島は脳内でゆっくりテンカウントして喚き出しそうな自分を宥めた。
無神経な言葉を吐いて平静を装っているつもりの沙織はああいう状況を体験し興奮状態に陥っているのだ。それに自分の無謀な行動の結果、京哉が大怪我したのである。罪悪感を薄めようと躍起になっている、それだけだと霧島は見抜いていた。
頭は良くても賢くはない女子高生に対して同レヴェルの口喧嘩など大人げない。
だが沙織が勝手に黒塗りに同乗すると、さすがに辛辣にならざるを得なかった。
「まだガードが欲しいのならば白藤署にでも申し出て貰えないだろうか?」
「松永工業本社は家宅捜索も入って壊滅状態って聞いたわ」
「だから何だと言うんだ?」
「ガードはもう要らないってことよ」
「本気でそう思っているなら天下のアガサ商事社長で篠坂高生も随分と能天気だな」
「何よ、それ。どういう意味?」
「松永工業は本社を壊滅されて余計に百二十億が欲しくなったんじゃないのか? それに松永工業のバックが海棠組と言ったのは誰だ? 次は本物のヤクザ相手だぞ」
脅すでもなく事実を淡々と告げる霧島に、沙織は言葉も失くして黙り込む。
「更にきみが狙われる原因は会社関係だけでないのを忘れたか? 口には出さずとも京哉の秘密をこれ見よがしに振り撒いて歩いた。京哉は何度も警告した筈だぞ」
「確かに鳴海さんは警告したけれど、その警告は自分のためだって言ってたわ。大体あの人はその警告を利用して逆にわたしを『消したい』って脅したのよ!」
「本心だろうな、京哉は親しくない者相手に冗談も嘘も言うタイプではないし、きみは京哉にとって騙してやるほど優しく接する対象ではない筈だ。故に京哉が告げたのは全て事実。それをきみがどう解釈しようが我々には関係ない」
まだガードがいなければ命取りの状況が続いていると気付かされた沙織は吐息を早くし、視線はせわしなく車内のあちこちと霧島の灰色の目を行き来した。何事か言おうとするが言葉にならないようだ。
そんな沙織に霧島は最後通牒する。
「きみがそういう態度である以上、最初からチームとして不成立だった。京哉が欠けた今、まとわりついて不安を訴えられても私はきみをガードする気などない」
「そんな……でも――」
完全に論破された沙織は霧島の言い分を噛み締めてみたが、全て正しいと認めるしかない。けれど百パーセント自分が悪いとも認められなかった。
そもそも鳴海京哉が祖父を殺したことから始まったのである。そう思って食い下がるように灰色の目を睨み返しているうちに猛烈な反発心が湧き上がり腹が立ってきた。
この男は冷静な仮面の下で、ここまで人を見下していたのだ。そして何より許せないのは鳴海京哉の秘密を全て知った上で黙っている共犯者という事実である。
「霧島さん、貴方なんかに護って貰わなくても結構よ。でも病院には行くわ。鳴海さんの怪我には責任があるから。放棄して貴方に馬鹿にされるのは我慢できないもの」
押し殺した声で言い放つと沙織は黒塗りの助手席でシートベルトして付け加えた。
「祖父を殺した冷血漢の鳴海京哉でさえ、わたしを最後まで護ろうとして怪我をしたわ。それなのに貴方は途中でわたしを放り出して平気なのね」
よくもそこまで言えるものだと霧島は半ば感心する。しかしあのとき京哉は霧島に沙織を託した。確かにここで沙織を放り出すと京哉は怒るかも知れない。
こんな女子高生どうだっていい。だが京哉の言葉は護りたかった。
だからといってこの無神経な女を怪我した京哉に会わせる気などなく、黒塗りを発車させると真っ直ぐ沙織の屋敷に向かう。
するとまた沙織は喋り始めた。
「明日から出社はやめるわ。ただ九日後の麻生重工の専務との会合だけは付き合ってくれないかしら? ウィンザーホテルで十五時からなんだけど……だめ?」
ここにきて女子高生ぶる沙織が酷く気味の悪い生き物に思えてならなかった。
郊外の屋敷に沙織を押し込んでしまうと一旦真城市の自宅マンションに帰って二人分の簡単な着替えをショルダーバッグに詰め、今度こそ白藤大学付属病院に向かう。
辿り着くと駐車場に黒塗りを駐め、外科の入院棟まで走った。
三時近いのに京哉の手術を執刀した医師はナースステーションにいた。レントゲン画像を見せられたが医師が説明をしなくても武道をたしなみ、つい先月まで自分も左腕を撃たれてギプスを巻いていた霧島には思っていたより重傷だと判断できた。
「見事な右尺骨の粉砕骨折と橈骨にヒビでした。おまけに弾が抜けていなかった」
「全治どのくらいですか?」
「長くて約二ヶ月ですかね。現在はバラバラの骨にワイアを通して繋ぎ、プレートをネジ止めして保護した状態です。繋ぎはしてもグラグラなので安静を維持し、傷の抜糸が済み次第ギプスで固めます。固めたら一旦退院しても構いません。約二ヶ月で様子を見てギプスを外し、三日の入院と再手術でプレート類を抜去します」
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考えつつ看護師に案内されたのは個室でそれも何故か特別室で京哉は眠っていた。訝しい思いが表情に出ていたか、霧島に見られて頬を染めた若い看護師が説明する。
「アガサ商事の社長名でこの病室に入って頂きました」
なるほど、カネがないと言いながら何処から捻り出したのか知らないが、借りを作りたくないばかりに沙織が手配したらしい。わざわざ引っ越しするのも面倒なので、やたら広くシャワーや洗濯乾燥機まで設置された病室に自分も居座ると決めた。
付き添い用のベッドを搬入して貰い、有料だが食事も出して貰えるのを確認する。
そこまで動いてしまうと真夜中に出来ることもなくなった。
「すまない、京哉。待たせたな」
麻酔と点滴に含まれた鎮痛剤の作用で京哉が眠っているのを知りながら、静けさに低い声を響かせる。座面がゴブラン織りの高そうなチェアを枕元に寄せて腰掛け京哉の顔を覗き込んだ。
元々白い肌が一層白く透けるようだった。触れたくて堪らない想いを危うく堪える。麻酔から無理に目を覚まさせると高確率で悪夢を見るらしい。
霧島も眠たかった。やっと京哉と二人きりになれた気がして神経が緩んでいた。
座ったまま意識が時折途絶え始め、いつしか京哉のベッドに突っ伏してしまう。拙いぞと思いながらも躰は動かず、霧島は温かく息づく優しい闇に包まれて沈んでいった。
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