44 / 52
第44話
しおりを挟む
白昼の駅前繁華街、それも格式高いウィンザーホテル前での狙撃事件はセンセーショナルに報じられた。
対して県警本部長も『我が県警の総力を挙げて犯人検挙に邁進する』などとコメントした。
だが捜査の内情は全て警備部公安課扱いとなり銃弾のライフルマークもSAT使用銃として登録されている事実は、それこそ総力を挙げて伏せられた。勿論公安の背後にはサッチョウ上層部が大いに絡んでいる。
渋ったものの結局は京哉の説得に応じた一ノ瀬本部長の差し金だった。
しかしこの件で霧島は左腕を十二針縫う怪我を負い、京哉に至っては骨のパズルがバラけて再手術という痛い結末を得てしまった。
人並み外れてタフな霧島は麻酔が切れるなり運転もしていたが、やはり京哉が心配なのでこちらも傷病休暇である。
けれど京哉は隊長をサボらせまいと出勤させたがり、霧島が出勤したらしたで京哉は隊長の仕事ぶりが気になって脱走を試みるのだ。仕方なく霧島は暫し二人して貝崎市にある霧島カンパニーの保養所に住処を移し、京哉を監視して貰うと決める。
再手術から三日目にして保養所送りにされた京哉は自分専用となって久しい四階の部屋で、十五時のお茶とラズベリーチーズケーキをサーヴィスしてくれた今枝執事に頭を下げた。
「今枝さん。またお世話になっちゃって、すみません」
「いいえ。お怪我された鳴海さまには申し訳ありませんが賑やかになって皆が喜んでおりますよ。夕刻には御前も到着のご予定ですのでシェフも張り切っております」
「わあ、晩御飯が愉しみですね」
今枝執事だけでなく若いメイドたちも入れ代わり立ち代わり京哉の相手を務めてくれるので霧島も心置きなく出勤できる。とはいえ出勤しても気もそぞろなのは相変わらずで、定時になると捕まらないギリギリの超速で車を飛ばして帰ってくるのだが。
予告通り夕方には御前も顔を見せ、霧島も戻っての夕食は小食堂で摂ることになった。御前の次席に京哉が着き、その隣に霧島が収まるとディナーの始まりである。
グラスのシャンパンで乾杯をするなり御前が遅くにできた息子を叱咤した。
「忍よ、おぬしがついていながら鳴海に怪我をさせるとはどういうことじゃ!」
霧島が自分の生母を愛人とした父親を敬うことはない。むしろ罵倒しては悪事の証拠を掴んでいつか逮捕してやると息巻いている。
だがここでは珍しく素直に謝った。
「すまない。それも私を助けての怪我だ。面目次第もない」
「今や鳴海の腕は鳴海とおぬしだけのものではない。SB競技のスポンサーたる我が社の看板であり全従業員の期待を背負っているのじゃ。それを忘れて貰っては困る。分かっておるのか、忍よ?」
「御前、忍さんは何も悪くありません。僕が勝手に――」
「――京哉、いいんだ。お前に沙織のガードを許したのも私、単独ガードに就いたのも私だ。それに単独ガード時には、お前があの行動に出ると予測し織り込み済みだった。私はお前がその傷ついた腕で狙撃するのを知っていて止めなかったんだ」
「僕だってそのくらいは知ってます。でも僕の怪我は僕の責任です」
二人の会話を暫し聞いていた御前がフォークでグラスを叩いて注目させる。
「もう宜しい。但し今後は肝に銘じて気を付けよ」
「はい。すみませんでした、御前」
「分かっている。京哉に痛い思いをさせたのは何よりも堪えた」
話の切れ目を待ってスープとサラダが出されたが、左手の京哉にも食しやすいようサラダは野菜と海鮮を生春巻で巻いたものだった。
食べながら京哉は思い出す。
「そういえば今回、桜木さんは関係ありませんでしたね」
「サッチョウ上層部も捜索した筈だが、結局は見つからなかったようだしな」
「何を寝惚けておる、桜木ならおるぞ。元の情報セキュリティ部門で副主任じゃ」
霧島カンパニーに見捨てられ恨んでいるとばかり思っていた二人は呆気にとられて御前を見た。御前は平然としてドレッシングのついた口をナプキンで拭いつつ頷く。
「最悪の敵になりかねん男をわしが放置するとでも思ったか。それにあの男の『あちら側の世界』の人脈は侮りがたいからの。主任から降格はしたが高給優遇しておる」
「はあ、灯台もと暗しってヤツですね」
「木は森に隠せというヤツでもあるな」
魚料理も骨のない切り身を炙ったカルパッチョ仕立てで、フォーク一本で頂く。
「でも今回の件のウィンザーホテル前で忍さんに手首を撃たれた奴だけじゃなく、僕が肩を撃った二人とカウンタースナイプした二人の合計五人もの大の男が病院から消えるなんて、今回の隠蔽工作はかなりの荒技ですよね」
「だがお蔭でメディアは狙撃事件より、ミステリアスなマル害消失事件に気を取られている。隠蔽工作にうってつけだった訳だが、何れメディアが飽きたら皆の記憶から消えてゆくだろう。全ては時間の問題だ」
それで納得できるのかと京哉は霧島の表情を窺う。霧島はグラスの液体を呷って言った。
「カネと権力の靴を舐め、女子高生まで殺そうとした奴らだ。そんな仕事で『プロ』だと自ら名乗るような奴らを私は惜しいとは思わん。確かに逮捕せず始末をつけるというのは引っ掛かる。だが私にも優先順位というものがあるからな」
なるほどと京哉も納得すると同時に、またもこの自分のために警察官たる霧島忍ではなく一人の人間として、それもつらい判断をしてくれたのだと唇を噛んだ。
「でも忍さんって、やっぱり御前と親子ですよね。割り切り方が似てるかも」
「ああ? 私の何処がこのクソ親父と似ているんだ!」
禁句だった。椅子を蹴って立ち上がった霧島を京哉と今枝執事の二人がかりで宥めて、再び起こした椅子に座らせる。以降は京哉も話題に気を付けた。
「そういや本部長には悪いことしちゃいました」
「お前が説き伏せて計画変更させたからといって、何処が悪いんだ?」
「だって県警が『犯人検挙に至らず』っていう泥を被ったのは事実じゃないですか」
「あの一ノ瀬警視監だぞ、それこそお前の件を逆手に取って得るものは得ているに決まっている。サッチョウの上と対等以上に渡り合っているから心配は不要だ」
と、霧島は牛フィレミニヨンの炙り焼きペッパーソースを咀嚼し涼しい顔だ。
「あの本部長だけでなく、お前もサッチョウ上層部と渡り合ったのだったな」
「渡り合ったなんて大袈裟ですよ」
「何も身内びいきしているのではない。お前は自分の手に依るスナイプの脅威を見せつけ、サッチョウ上層部に対し『西原沙織に手を出すな』という無言のバーターを提示し、事実として応じさせたんだぞ」
あれから三日経ったが沙織が狙われたという報は入ってこない。それに一ノ瀬本部長も沙織にSPを就けず放置している。
つまり本部長がSPなど不要と判断するだけの情報をサッチョウ上層部の暗殺反対派辺りから得ているという意味だ。
サッチョウ上層部が沙織を狙うのを止めた理由は京哉のスナイプしか考えられない。
デザートのクレープシュゼット・二色のアイスとフルーツ添えまで綺麗に食し、三人はナプキンを軽く乱してシェフに料理への賛辞と礼を述べる。ロビーフロアのソファに移動して御前と京哉はコーヒー&煙草、霧島はディジェスティフのブランデーを味わった。
穏やかな時が流れてゆくのを静かに愉しみながら京哉は霧島に頼み事をする。
「忍さん、お願いがあるんですけど」
「何だ、改まって。言ってみろ」
「アガサ前会長のお墓参りに付き合って貰えませんか?」
「そのくらい構わんが自虐的な気がするぞ」
「そうでしょうか? でも三十二人分のお墓参りも現実的じゃないと思いますし」
「いい、分かった。お前らしいといえば、らしいからな。場所は分かるのか?」
「ええ、沙織の話では貝崎市内の墨蝉寺だそうです。早速明日でもいいですか?」
明日は霧島も休日だ。せめて京哉がギプスを巻いてからと思ったが早く京哉の懸案を取り除いてやりたくて霧島は頷く。決めたところでさっさと部屋に引き上げた。
京哉の部屋のバスルームで一緒にシャワーを浴びる。上がったタイミングで保養所付きの若い医師がやってきて京哉の腕を消毒しガーゼと包帯を取り換えて去った。
お揃いの白いシルクサテンのパジャマを着てひとつベッドに入ると大人しく眠る。
対して県警本部長も『我が県警の総力を挙げて犯人検挙に邁進する』などとコメントした。
だが捜査の内情は全て警備部公安課扱いとなり銃弾のライフルマークもSAT使用銃として登録されている事実は、それこそ総力を挙げて伏せられた。勿論公安の背後にはサッチョウ上層部が大いに絡んでいる。
渋ったものの結局は京哉の説得に応じた一ノ瀬本部長の差し金だった。
しかしこの件で霧島は左腕を十二針縫う怪我を負い、京哉に至っては骨のパズルがバラけて再手術という痛い結末を得てしまった。
人並み外れてタフな霧島は麻酔が切れるなり運転もしていたが、やはり京哉が心配なのでこちらも傷病休暇である。
けれど京哉は隊長をサボらせまいと出勤させたがり、霧島が出勤したらしたで京哉は隊長の仕事ぶりが気になって脱走を試みるのだ。仕方なく霧島は暫し二人して貝崎市にある霧島カンパニーの保養所に住処を移し、京哉を監視して貰うと決める。
再手術から三日目にして保養所送りにされた京哉は自分専用となって久しい四階の部屋で、十五時のお茶とラズベリーチーズケーキをサーヴィスしてくれた今枝執事に頭を下げた。
「今枝さん。またお世話になっちゃって、すみません」
「いいえ。お怪我された鳴海さまには申し訳ありませんが賑やかになって皆が喜んでおりますよ。夕刻には御前も到着のご予定ですのでシェフも張り切っております」
「わあ、晩御飯が愉しみですね」
今枝執事だけでなく若いメイドたちも入れ代わり立ち代わり京哉の相手を務めてくれるので霧島も心置きなく出勤できる。とはいえ出勤しても気もそぞろなのは相変わらずで、定時になると捕まらないギリギリの超速で車を飛ばして帰ってくるのだが。
予告通り夕方には御前も顔を見せ、霧島も戻っての夕食は小食堂で摂ることになった。御前の次席に京哉が着き、その隣に霧島が収まるとディナーの始まりである。
グラスのシャンパンで乾杯をするなり御前が遅くにできた息子を叱咤した。
「忍よ、おぬしがついていながら鳴海に怪我をさせるとはどういうことじゃ!」
霧島が自分の生母を愛人とした父親を敬うことはない。むしろ罵倒しては悪事の証拠を掴んでいつか逮捕してやると息巻いている。
だがここでは珍しく素直に謝った。
「すまない。それも私を助けての怪我だ。面目次第もない」
「今や鳴海の腕は鳴海とおぬしだけのものではない。SB競技のスポンサーたる我が社の看板であり全従業員の期待を背負っているのじゃ。それを忘れて貰っては困る。分かっておるのか、忍よ?」
「御前、忍さんは何も悪くありません。僕が勝手に――」
「――京哉、いいんだ。お前に沙織のガードを許したのも私、単独ガードに就いたのも私だ。それに単独ガード時には、お前があの行動に出ると予測し織り込み済みだった。私はお前がその傷ついた腕で狙撃するのを知っていて止めなかったんだ」
「僕だってそのくらいは知ってます。でも僕の怪我は僕の責任です」
二人の会話を暫し聞いていた御前がフォークでグラスを叩いて注目させる。
「もう宜しい。但し今後は肝に銘じて気を付けよ」
「はい。すみませんでした、御前」
「分かっている。京哉に痛い思いをさせたのは何よりも堪えた」
話の切れ目を待ってスープとサラダが出されたが、左手の京哉にも食しやすいようサラダは野菜と海鮮を生春巻で巻いたものだった。
食べながら京哉は思い出す。
「そういえば今回、桜木さんは関係ありませんでしたね」
「サッチョウ上層部も捜索した筈だが、結局は見つからなかったようだしな」
「何を寝惚けておる、桜木ならおるぞ。元の情報セキュリティ部門で副主任じゃ」
霧島カンパニーに見捨てられ恨んでいるとばかり思っていた二人は呆気にとられて御前を見た。御前は平然としてドレッシングのついた口をナプキンで拭いつつ頷く。
「最悪の敵になりかねん男をわしが放置するとでも思ったか。それにあの男の『あちら側の世界』の人脈は侮りがたいからの。主任から降格はしたが高給優遇しておる」
「はあ、灯台もと暗しってヤツですね」
「木は森に隠せというヤツでもあるな」
魚料理も骨のない切り身を炙ったカルパッチョ仕立てで、フォーク一本で頂く。
「でも今回の件のウィンザーホテル前で忍さんに手首を撃たれた奴だけじゃなく、僕が肩を撃った二人とカウンタースナイプした二人の合計五人もの大の男が病院から消えるなんて、今回の隠蔽工作はかなりの荒技ですよね」
「だがお蔭でメディアは狙撃事件より、ミステリアスなマル害消失事件に気を取られている。隠蔽工作にうってつけだった訳だが、何れメディアが飽きたら皆の記憶から消えてゆくだろう。全ては時間の問題だ」
それで納得できるのかと京哉は霧島の表情を窺う。霧島はグラスの液体を呷って言った。
「カネと権力の靴を舐め、女子高生まで殺そうとした奴らだ。そんな仕事で『プロ』だと自ら名乗るような奴らを私は惜しいとは思わん。確かに逮捕せず始末をつけるというのは引っ掛かる。だが私にも優先順位というものがあるからな」
なるほどと京哉も納得すると同時に、またもこの自分のために警察官たる霧島忍ではなく一人の人間として、それもつらい判断をしてくれたのだと唇を噛んだ。
「でも忍さんって、やっぱり御前と親子ですよね。割り切り方が似てるかも」
「ああ? 私の何処がこのクソ親父と似ているんだ!」
禁句だった。椅子を蹴って立ち上がった霧島を京哉と今枝執事の二人がかりで宥めて、再び起こした椅子に座らせる。以降は京哉も話題に気を付けた。
「そういや本部長には悪いことしちゃいました」
「お前が説き伏せて計画変更させたからといって、何処が悪いんだ?」
「だって県警が『犯人検挙に至らず』っていう泥を被ったのは事実じゃないですか」
「あの一ノ瀬警視監だぞ、それこそお前の件を逆手に取って得るものは得ているに決まっている。サッチョウの上と対等以上に渡り合っているから心配は不要だ」
と、霧島は牛フィレミニヨンの炙り焼きペッパーソースを咀嚼し涼しい顔だ。
「あの本部長だけでなく、お前もサッチョウ上層部と渡り合ったのだったな」
「渡り合ったなんて大袈裟ですよ」
「何も身内びいきしているのではない。お前は自分の手に依るスナイプの脅威を見せつけ、サッチョウ上層部に対し『西原沙織に手を出すな』という無言のバーターを提示し、事実として応じさせたんだぞ」
あれから三日経ったが沙織が狙われたという報は入ってこない。それに一ノ瀬本部長も沙織にSPを就けず放置している。
つまり本部長がSPなど不要と判断するだけの情報をサッチョウ上層部の暗殺反対派辺りから得ているという意味だ。
サッチョウ上層部が沙織を狙うのを止めた理由は京哉のスナイプしか考えられない。
デザートのクレープシュゼット・二色のアイスとフルーツ添えまで綺麗に食し、三人はナプキンを軽く乱してシェフに料理への賛辞と礼を述べる。ロビーフロアのソファに移動して御前と京哉はコーヒー&煙草、霧島はディジェスティフのブランデーを味わった。
穏やかな時が流れてゆくのを静かに愉しみながら京哉は霧島に頼み事をする。
「忍さん、お願いがあるんですけど」
「何だ、改まって。言ってみろ」
「アガサ前会長のお墓参りに付き合って貰えませんか?」
「そのくらい構わんが自虐的な気がするぞ」
「そうでしょうか? でも三十二人分のお墓参りも現実的じゃないと思いますし」
「いい、分かった。お前らしいといえば、らしいからな。場所は分かるのか?」
「ええ、沙織の話では貝崎市内の墨蝉寺だそうです。早速明日でもいいですか?」
明日は霧島も休日だ。せめて京哉がギプスを巻いてからと思ったが早く京哉の懸案を取り除いてやりたくて霧島は頷く。決めたところでさっさと部屋に引き上げた。
京哉の部屋のバスルームで一緒にシャワーを浴びる。上がったタイミングで保養所付きの若い医師がやってきて京哉の腕を消毒しガーゼと包帯を取り換えて去った。
お揃いの白いシルクサテンのパジャマを着てひとつベッドに入ると大人しく眠る。
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる