楯たる我を誇れり~Barter.15~

志賀雅基

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第32話(BL特有シーン・回避可)

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 プチプチとボタンを外され、肩口から鎖骨、首筋まで熱い舌を這わされた。時折きつく吸い上げられて赤く濃く霧島の所有印を刻み込まれる。

 京哉は霧島の怪我が心配で感じる余裕もないかと思えば、年上の愛しい男が披露した天性のテクニックは、半ば強引に京哉を快感の淵へと引きずり込んでゆく。
 それでも京哉は必死で理性を繋ぎ止めて抵抗した。

「はぅんっ……あっ、ん……だめですってば!」
「どれだけ我慢したと思っている?」
「それは僕だって……そうじゃなくて! 傷に障るでしょう!」

「お前が欲しくて堪らん。もう寝てなどいられるか」
「だめ、貴方が治るまではできません」
「躰はできないとは言っていないぞ……ほら、ここがこんなに――」

「んっ……はあっ、あんっ……せめて忍さんは寝ていて下さい」
「よし、分かった。甘んじて攻められるとしよう」

 思わず放った言葉通り京哉のベッドに横たわった霧島を薄明かりの中で京哉は眩暈を覚えながらじっと見る。どうしてこの男は起きるなり全開なのだろうか。

 器用にもドレスシャツのボタンは全部外され、引き剥がされて僅かに袖が肘の辺りに絡まっているのみだ。溜息を洩らしながら袖を抜く。潔く下衣も脱いでベッドに上がった。全てを晒して霧島のガウンの大腿部を膝で跨ぐ。見下ろすと灰色の目に言い聞かせた。

「いいですか、忍さんは動いちゃだめですからね」
「分かっている。だがその分、お前に期待しているぞ」

 本当のところ、頭を抱えたい状況に頭を抱えたい言葉だったが、もう退けない。それに霧島の怪我にさえ障らなければ、欲しいのは京哉だって同じなのだ。涼しい表情をしながらも灰色の目は情欲と期待を溜めている。患者用の薄いガウンは霧島の変化を露わにしていた。

 これで京哉の中に気持ち良くしてやりたい想いが湧かなければ嘘だろう。

 薄いガウンの上から変化した霧島を優しくなぞる。胸を圧さないよう、顔の横に両手をついて口づけた。絡ませた舌先で唾液を吸い合い互いの口中を舐めねぶり合う。
 そっと離れると京哉は霧島のガウンの紐を解いた。はだけると胸に残った内視鏡手術痕に貼られたガーゼと、象牙色の肌に残っている紫色の打撲痕が痛々しい。

 胸を避けて肩に首筋に幾度もキスを降らせる。引き締まった腹に指を這わせた。

「っく……ああ――」

 なまめかしい指の動きに思わず霧島は呻く。京哉の片手は霧島が勃ち上がらせた躰の中心を掴み、ゆっくり扱き始めていた。徐々にキスを下降させ、躰を下にずらした京哉は掴んだ熱い霧島を舐めしゃぶり始める。
 舌先で先端を舐め舌を差し込んで抉り敏感な部分を刺激すると次々と透明の蜜が溢れ出て、霧島は更に呻いた。

「うっ……あ、ふ……くっ!」

 溢れた蜜をねぶる水音が静かな部屋に響く。京哉は年上の愛し人をもっと味わうべく深く咥えた。太すぎて口いっぱいに占めた熱いものを口内と唇で扱く。

 途端に霧島はいつにない甘さを帯びた声で喘ぎを洩らし始める。その声と、揺らしたくて反らせた腰を酷く愛しく感じて、京哉はもっと悶えさせようと激しく唇で扱き上げた。

「あっ、く……京哉、そこ、いい……もっと舐めてくれ!」
「んんぅ……ぅうん……んっ、んんっ!」

 素直にせがむ霧島の色っぽさに煽られ、愛しい男のものを咥える行為自体にも刺激されて京哉もいつしか喉の奥で喘いでいる。勿論太すぎる霧島を咥えるのは苦しかった。
 だがその苦しみすら京哉には悦びで、喉の奥まで犯し尽して欲しいとさえ思う。

 一方で霧島は切なく京哉を求めながら腰を突き上げないようにするだけで必死だった。そうして自分を抑える切実な灰色の目を見て京哉は霧島を一旦解放する。
 既に衣服を脱いでいた京哉は膝立ちのまま移動し、再び霧島のものを掴んだ。

「忍さん……頂戴。僕の中に挿れて、熱くて濃いの、出して」
「くっ! 入りたい、包まれたくて……だがそのままだとお前がつらい」
「つらくていい。忍さん、愛してます。ずっと欲しかった」

「私もだ。寝顔を見て何度襲ってしまおうと思ったことか」
「起きてたんですか?」
「うっすらと、時々……うっ、あ……くっ!」

 後ろにあてがった霧島自身の上に京哉は体重を落としてゆく。だが普段から霧島に馴らして貰っても苦しいくらいなのに、全く馴らされていないそこに太すぎるものを受け入れるのは危なくも苦しすぎた。それでも京哉は熱い霧島を自らに打ち込もうとする。

 受け入れたくて、ひとつになりたくて堪らない想いが伝わった。

「だめだ、京哉。お前を引き裂いてしまうぞ」
「引き裂かれてもいい、欲しいんです……あっ、あ!」
「京哉、無理だ……つうっ!」

 霧島にも痛みが走るのだ、これは無茶な所業だった。

 だが白く華奢な躰が背を反らせ、瞑目して、こじ開けるように己に霧島を埋めようとしている光景は、危うい美しさで霧島は目を奪われる。

 病室には京哉の荒くせわしない呼吸が満ちていて、霧島は息を詰めて見守った。しかしこれでは京哉の身が無事でいられない。霧島はどうしたものかと思う。
 思う間も京哉の危険な行為は進行している。

「京哉、だめだ……っく、本当に危ない、あうっ!」
「やだ、離れたくない! んっ、つうっ! いいからそのまま、あああっ!」

 欲しい気持ちが逸ってしまい、京哉は強引に霧島を体内に咥え込んでしまった。互いに走った鋭い痛みと霧島の京哉に怪我をさせたくない想いで暫し動けない。

「くっ……京哉、すまん。まだ動くなよ……こら、やめろ、おいっ!」
「忍さん、欲しいから……あっ、ん……ぅん、悦ばせたいんです!」

 もう何を言っても京哉は止まらないと悟った霧島は、全身の力を抜いて年下の恋人に何もかもを委ねる。痛みを堪えつつ京哉は細い腰を上下させ始めた。

「ああ、京哉、お前があったかい……やはりきついな。あっく、もう、無理は……」
「やだ、最後まで欲しいんです。貴方を全部、呑み込んで包みたい……はあっ!」

 かなり京哉の体内も馴染んできたようだが、滑りが良くなっても入り口はまだ狭いままである。相当痛いだろうに京哉は己を裂いてでも霧島を奥の奥、最後まで包んで自分のものという実感を味わいたいらしかった。

 あまりにきつい粘膜に絞めつけられて、霧島は堪らない心地良さに浸っている。動きたい想いを抑えつけていた。

 やがて京哉は本当に自らを霧島で最後まで貫いて根元まで迎え入れる。それだけで苦しいくらいに身体中が太すぎる霧島で埋められたみたいだった。
 
 その苦しさが嬉しくて京哉は座り込み、白く透明な頬に微笑みを浮かべる。
 自分で何もできない霧島は僅かに痛みと強烈な快感を同時に感じ続けていた。切ない痛みを共有し、二人は荒い息をつく。

 包み込まれた霧島は京哉の中の狭くきつく、温かで柔らかな内襞の感触に酔った。深く座られて先端が強く当たっている。痛みと快感が綯い交ぜになり溜息をついた。

「京哉……ずっとお前が恋しかった。こうしたかったんだ」
「僕は怖くて気が狂いそうだった。貴方が起きないんじゃないかって……あうっ!」

 僅かなぬめりだけで挿入し、粘膜の締めつけに堪えられなくなった霧島が腰を僅かに突き上げる。京哉は苦しくも奥まで届いた霧島に合わせてゆるゆると細い腰を持ち上げては落とした。霧島も激しくは動けない。

 何度か突き上げられ、背を仰け反らせた京哉は細い腰を大きく持ち上げた。熱く太い楔を幾度も自らに穿ちだす。初めは膝立ちで、そのうち夢中になると脚を広げた淫らな姿で繋がりが解けてしまう寸前まで腰を浮かせては霧島を最後まで呑み込んだ。

「ああ、堪らん……うっ、あ……京哉、良すぎるぞ、京哉!」
「はぅんっ! 忍さん、はぁんっ……あうんっ!」

 擦過の刺激で京哉の中が普段以上にぬるんでくると、内襞が絡みついて目の眩むような心地良さが更に霧島を襲う。腰を持ち上げ半ば以上を引き抜かれるたびに、怪我の痛みを忘れて霧島の腰は京哉を追った。

 淫らで何もかも露わにした京哉が、狭い処に太すぎるものを幾度となく咥え込む様は霧島を堪らなく煽り追い詰める。
 京哉は躰を揺らして長めの髪を乱しシーツを掴み締めて快感に堪えていた。その淫らで妖艶な姿は美しすぎて霧島は白い肌をもっと汚してやりたくなる。

 真下から細い躰を貫いた太く硬いもので思い切り中を掻き回し始めた。

「あっ、ふ……すご、い……いい、忍さん、ああんっ!」
「くっ、京哉……京哉、ものすごくいい……最高だ!」

 強烈な快感に身を浸した霧島は、己のものが白く華奢な躰を貫く淫らな光景を堪能する。それは理性を侵食するのに充分で、やがて京哉を持ち上げる勢いで腰を突き上げていた。激しい攻めに澄んだ黒い瞳から涙が零れる。薄暗がりで光ったそれは霧島の嗜虐心を更に煽った。

 もう自分からは動くこともできなくなった京哉を、霧島はいっぱいに満たして突き上げ続けた。より深くまで達した反り返った先端が二人分の快感を抉り出してゆく。粘膜の立てる淫らな音までもが二人を追い上げ昂ぶらせた。

「もう……忍さん、僕……だめ、で、す!」
「私も、もう……いくぞ!」

 激しく数度突き上げた霧島が体内で膨れ上がるのを京哉は感じた。思い切り抉られ反り返った先で擦り上げられ眩暈を感じながら、愛しい年上の男の名を叫ぶ。

「忍さん、忍さん……お願い、早く……はうっ!」
「っく……京哉、出る、出すぞ……くっ!」

 奥まで届いた霧島にずぶ濡れにされながら、京哉も霧島の腹の上に迸らせた。直後に力の抜けた京哉が身を傾がせ、霧島が素早く上体を起こして逞しい腕で抱き留める。

「ん……大丈夫、ですから」

 そう言って京哉は呼吸も整わないうちに、ドレスシャツ代わりに患者用のガウンを身に着ける。ベッド脇のキャビネット上からティッシュを取って霧島の身を拭った。
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