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第38話
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県警本部で定時を過ぎても待っていてくれた一ノ瀬本部長に霧島の経過報告をした京哉は、白いセダンを月極駐車場に押し込んでマンションの前まで半ば駆け足で帰ってきた。
ポケットのキィを手で探りながら歩を緩めた所でスナイパーの勘が囁き、懐の銃のグリップを握る。オートロックのエントランスまでたった十五メートル、だが身をこわばらせたまま気配を探った。一人ではない、複数の気配がそれもマンションの左右にあった。
雪が降り積む中で息まで殺して、じっと相手の出方を待つ。
相手の動く気配で左に身を投げ出した。屋外射撃独特の乾いた短音が響くと同時に右側でマズルフラッシュが閃く。京哉が寸前まで立っていた場所を衝撃波がピシッという音と共に通り抜けた。片膝をついた姿勢から弾けるように京哉は駆け出す。
背後に二射を放っておいて更に走った。気配は四。非常に拙い状況だった。
左側の敵が押し殺したような連射音を発する。サウンドサプレッサーをつけたサブマシンガンだ。そちらにもダブルタップを撃ち込みながら大きく迂回し、隣のマンションの脇をすり抜けてマンション裏にある駐車場に出る。
そこは駐車場と名のついた直径三十メートルほどの空き地で、土地の所有者が利用者を募集していないために普段なら殆ど車は駐まっていない。
だが今日に限ってはシルバーのワンボックスが一台駐められていた。
しかしそれが掩蔽物になるかと思えば甘かった。雪明かりでワンボックス内にドライバーが乗ったままなのが見えたからだ。襲撃者の仲間に違いなかった。
その間も京哉は空き地のふちをジグザグに走り続ける。二十メートルも離れると余程の腕でなければ、ハンドガンで動く標的に当てるのは困難だからだ。
けれどサブマシンガンで斉射されればアウトである。おまけに背後からだけでなく右前方からも撃発音がして冷や汗が背を伝った。
暗さを味方にして逃げるにせよ、雪明かりで意外と周囲は見通しがいい。外灯もあった。駐車場と公道を越えて向こうの住宅地に駆け込もうと思ったが、却って自分を追い込んでしまったようだ。
敵はワンボックス内も含めて五名、サブマシンガンという装備からして単なるヤクザのお礼参りの域を超えている。そこで成田国際空港近くの病院で意識がないまま眠り続けているアラキバ抵抗運動旅団のカール=フェリンガーを思い出す。
もしカール=フェリンガーの仇討ちとすれば、敵は自爆攻撃も辞さないテロリストだ。捨て身で狙ってくるに違いなく、時間の問題かも知れないと妙に冷静に考える。
超速でそんなことを考えつつ走りながら前後に向けて撃った。余裕もなく急所を狙うような撃ち方はできない。ただ敵に精確な狙いをつけさせないため弾をバラ撒く。
それでも敵はじわじわと包囲網を狭めつつあった。
たった五秒弱で残弾六。また二発減らす。
撃ち尽くしてエマが掛かると致命的だ。
つまりチャンバまで空にするとマガジンチェンジをした上で、更にホールドオープンしたスライドを戻す一動作が必要なエマージェンシーリロードをせねばならない。それ故チャンバに一発以上残してのタクティカルリロードが基本だが、マグチェンジをする余裕すらなかった。
そのときワンボックスのサイドウィンドウが下げられた。突き出した黒い銃口が火を噴く。約十五メートルの距離で放たれた弾丸を避け得たのは奇跡的、だが耳元ギリギリを弾丸に通過され、次弾を予測して身動きが取れなくなった。
思わず立ち止まってしまった京哉は確実に標的でしかなく当然ながら死を予感したが、自分のことなど何ひとつ考えず、ただひたすら酷く哀しい思いを抱いていた。
すぐに戻ってくると霧島に約束したのだ。それも、もう守れないじゃないか。
あんなに切ない目をしていたのに、あと少しだけ一緒にいてあげたら良かった。
これから新しく作る、とびっきりの世界に僕も最初から参加するなんて大嘘だ。
左腕を叩くように弾が掠める。右大腿部にも熱いものが擦過して膝を折った。積もりかけた雪に京哉は頽れる。それでも残弾が尽きるまで撃ちながら声を発した。
「忍さん、ごめん……」
「……京哉、何処だ! 京哉!」
ほんの小さな呟きに呼応するように霧島の声が響いていた。まさかと思って京哉は目を見開く。未だ続く敵の銃撃がこちらから逸れていた。
混じって聞き慣れたシグの撃発音が聞こえる。それを夢の中での出来事にように耳にしながら京哉は瞬時にマグチェンジ。ワンボックスの敵に撃ち込みながら声を張り上げた。
「忍さん、ここ、こっち! 忍さん!」
「京哉、大丈夫か!」
駐車場の外側を迂回して長身のシルエットが駆け込んでくる。手を差し出されたが霧島の姿に勇気づけられ京哉は自力で立った。
霧島と背中合わせでマンション両サイドの敵に九ミリパラを食らわせる。狙いは京哉一人だとタカを括っていたツケ、身を乗り出していた敵を叩き伏せるのは容易だった。
前方の敵を京哉が後方の二人を霧島が速射で斃す。
ようやく静かになって遠くから緊急音が聞こえてくる中、霧島に早口で告げた。
「機捜本部を通して所轄と捜一には連絡した。他に敵は?」
「ううん、もうこれだけだと思います」
「そうか。サブマシンガンの奴が吐いた。こいつらは青峰大学でランディのバックアップをしていた。息子のカール=フェリンガーを私が撃った、そのお礼参りらしい」
「やっぱりそちらでしたか。装備が充実して戦い慣れも……父親でアラキバ抵抗運動旅団のトップのバート=フェリンガーが命じた?」
「ああ。ランディを辿れば何れはこいつらも挙げられる運命だ。それなのに高飛びすらさせて貰えないまま、まだ律儀に『上』の命令を遂行した馬鹿な捨て駒だ」
「そっか。でも貴方が来てくれて本当に良かった」
ホッとした京哉は安堵で力の抜けかけた身体中を霧島にまさぐられる。それで弾が掠めたのを思い出したが未だ痛みは感じない。だが霧島は手に付いた血を見て顔色を変えた。
「京哉お前、撃たれたのか!?」
「それより忍さん、貴方がどうしてここにいるんですか? 病院は?」
「そんなことはどうでもいい。くそう、救急が遅いぞ!」
「どうでも良くありません……って、だめだ、危ない、忍さんっ!」
京哉が叫んだのと霧島が京哉を抱き込んで雪の上に身を投げ出したのと、それにワンボックスのウィンドウから迸るマズルフラッシュを京哉が目に映したのは殆ど同時だった。京哉の上から覆い被さった霧島の躰が跳ねる。
気を失っていたのか死んだふりをしていたのか、ともかく死んだと思い込んでいたワンボックスの敵に京哉は腹這いのまま反射的にダブルタップを放った。
今度こそ敵はヘッドショットを浴びて突っ伏したが京哉はそんな末路など見ていない。自分を庇って覆い被さった霧島まで動かなくなり、酷く重たくなったからだ。やっとの思いで這い出し、うつ伏せになった霧島を何とか仰向けに引っ繰り返す。
すると雪明かりで霧島は目を瞑り、ランディに撃たれた左こめかみから大量出血して、端正な顔の半分を朱に染めていた。動かさない方がいいと知りながらも思わず縋りつく。
「そんな、嘘……忍さん、忍さんっ!」
四階から落ちた時は少なくとも目を開けてくれた。刺されて階段を落ちた時も。それなのに今は幾ら呼んでも反応がなく雪に血が染み込んでゆくばかりである。
そこにパトカーが二台乗り入れてきた。
「どうした、京哉!」
パトカーから飛び降りてきたのは信輔だった。他にも見知った面々が目に映る。安堵と恐怖が綯い交ぜになり京哉は雪の中に座り込んで霧島に膝枕をしたまま、貧血で意識を手放しそうになった。途端に目前にしゃがんだ信輔に頬を叩かれて覚醒する。
「お前がしっかりしないでどうする!」
「あ……ごめん」
「分かればいい。おーい、救急、こっちだ!」
救急隊員らの手によって霧島はストレッチャに乗せられ救急車に収容された。怪我をした京哉も乗り込み、パトカー一台を引きつれる形で白藤大学付属病院に向かう。
ポケットのキィを手で探りながら歩を緩めた所でスナイパーの勘が囁き、懐の銃のグリップを握る。オートロックのエントランスまでたった十五メートル、だが身をこわばらせたまま気配を探った。一人ではない、複数の気配がそれもマンションの左右にあった。
雪が降り積む中で息まで殺して、じっと相手の出方を待つ。
相手の動く気配で左に身を投げ出した。屋外射撃独特の乾いた短音が響くと同時に右側でマズルフラッシュが閃く。京哉が寸前まで立っていた場所を衝撃波がピシッという音と共に通り抜けた。片膝をついた姿勢から弾けるように京哉は駆け出す。
背後に二射を放っておいて更に走った。気配は四。非常に拙い状況だった。
左側の敵が押し殺したような連射音を発する。サウンドサプレッサーをつけたサブマシンガンだ。そちらにもダブルタップを撃ち込みながら大きく迂回し、隣のマンションの脇をすり抜けてマンション裏にある駐車場に出る。
そこは駐車場と名のついた直径三十メートルほどの空き地で、土地の所有者が利用者を募集していないために普段なら殆ど車は駐まっていない。
だが今日に限ってはシルバーのワンボックスが一台駐められていた。
しかしそれが掩蔽物になるかと思えば甘かった。雪明かりでワンボックス内にドライバーが乗ったままなのが見えたからだ。襲撃者の仲間に違いなかった。
その間も京哉は空き地のふちをジグザグに走り続ける。二十メートルも離れると余程の腕でなければ、ハンドガンで動く標的に当てるのは困難だからだ。
けれどサブマシンガンで斉射されればアウトである。おまけに背後からだけでなく右前方からも撃発音がして冷や汗が背を伝った。
暗さを味方にして逃げるにせよ、雪明かりで意外と周囲は見通しがいい。外灯もあった。駐車場と公道を越えて向こうの住宅地に駆け込もうと思ったが、却って自分を追い込んでしまったようだ。
敵はワンボックス内も含めて五名、サブマシンガンという装備からして単なるヤクザのお礼参りの域を超えている。そこで成田国際空港近くの病院で意識がないまま眠り続けているアラキバ抵抗運動旅団のカール=フェリンガーを思い出す。
もしカール=フェリンガーの仇討ちとすれば、敵は自爆攻撃も辞さないテロリストだ。捨て身で狙ってくるに違いなく、時間の問題かも知れないと妙に冷静に考える。
超速でそんなことを考えつつ走りながら前後に向けて撃った。余裕もなく急所を狙うような撃ち方はできない。ただ敵に精確な狙いをつけさせないため弾をバラ撒く。
それでも敵はじわじわと包囲網を狭めつつあった。
たった五秒弱で残弾六。また二発減らす。
撃ち尽くしてエマが掛かると致命的だ。
つまりチャンバまで空にするとマガジンチェンジをした上で、更にホールドオープンしたスライドを戻す一動作が必要なエマージェンシーリロードをせねばならない。それ故チャンバに一発以上残してのタクティカルリロードが基本だが、マグチェンジをする余裕すらなかった。
そのときワンボックスのサイドウィンドウが下げられた。突き出した黒い銃口が火を噴く。約十五メートルの距離で放たれた弾丸を避け得たのは奇跡的、だが耳元ギリギリを弾丸に通過され、次弾を予測して身動きが取れなくなった。
思わず立ち止まってしまった京哉は確実に標的でしかなく当然ながら死を予感したが、自分のことなど何ひとつ考えず、ただひたすら酷く哀しい思いを抱いていた。
すぐに戻ってくると霧島に約束したのだ。それも、もう守れないじゃないか。
あんなに切ない目をしていたのに、あと少しだけ一緒にいてあげたら良かった。
これから新しく作る、とびっきりの世界に僕も最初から参加するなんて大嘘だ。
左腕を叩くように弾が掠める。右大腿部にも熱いものが擦過して膝を折った。積もりかけた雪に京哉は頽れる。それでも残弾が尽きるまで撃ちながら声を発した。
「忍さん、ごめん……」
「……京哉、何処だ! 京哉!」
ほんの小さな呟きに呼応するように霧島の声が響いていた。まさかと思って京哉は目を見開く。未だ続く敵の銃撃がこちらから逸れていた。
混じって聞き慣れたシグの撃発音が聞こえる。それを夢の中での出来事にように耳にしながら京哉は瞬時にマグチェンジ。ワンボックスの敵に撃ち込みながら声を張り上げた。
「忍さん、ここ、こっち! 忍さん!」
「京哉、大丈夫か!」
駐車場の外側を迂回して長身のシルエットが駆け込んでくる。手を差し出されたが霧島の姿に勇気づけられ京哉は自力で立った。
霧島と背中合わせでマンション両サイドの敵に九ミリパラを食らわせる。狙いは京哉一人だとタカを括っていたツケ、身を乗り出していた敵を叩き伏せるのは容易だった。
前方の敵を京哉が後方の二人を霧島が速射で斃す。
ようやく静かになって遠くから緊急音が聞こえてくる中、霧島に早口で告げた。
「機捜本部を通して所轄と捜一には連絡した。他に敵は?」
「ううん、もうこれだけだと思います」
「そうか。サブマシンガンの奴が吐いた。こいつらは青峰大学でランディのバックアップをしていた。息子のカール=フェリンガーを私が撃った、そのお礼参りらしい」
「やっぱりそちらでしたか。装備が充実して戦い慣れも……父親でアラキバ抵抗運動旅団のトップのバート=フェリンガーが命じた?」
「ああ。ランディを辿れば何れはこいつらも挙げられる運命だ。それなのに高飛びすらさせて貰えないまま、まだ律儀に『上』の命令を遂行した馬鹿な捨て駒だ」
「そっか。でも貴方が来てくれて本当に良かった」
ホッとした京哉は安堵で力の抜けかけた身体中を霧島にまさぐられる。それで弾が掠めたのを思い出したが未だ痛みは感じない。だが霧島は手に付いた血を見て顔色を変えた。
「京哉お前、撃たれたのか!?」
「それより忍さん、貴方がどうしてここにいるんですか? 病院は?」
「そんなことはどうでもいい。くそう、救急が遅いぞ!」
「どうでも良くありません……って、だめだ、危ない、忍さんっ!」
京哉が叫んだのと霧島が京哉を抱き込んで雪の上に身を投げ出したのと、それにワンボックスのウィンドウから迸るマズルフラッシュを京哉が目に映したのは殆ど同時だった。京哉の上から覆い被さった霧島の躰が跳ねる。
気を失っていたのか死んだふりをしていたのか、ともかく死んだと思い込んでいたワンボックスの敵に京哉は腹這いのまま反射的にダブルタップを放った。
今度こそ敵はヘッドショットを浴びて突っ伏したが京哉はそんな末路など見ていない。自分を庇って覆い被さった霧島まで動かなくなり、酷く重たくなったからだ。やっとの思いで這い出し、うつ伏せになった霧島を何とか仰向けに引っ繰り返す。
すると雪明かりで霧島は目を瞑り、ランディに撃たれた左こめかみから大量出血して、端正な顔の半分を朱に染めていた。動かさない方がいいと知りながらも思わず縋りつく。
「そんな、嘘……忍さん、忍さんっ!」
四階から落ちた時は少なくとも目を開けてくれた。刺されて階段を落ちた時も。それなのに今は幾ら呼んでも反応がなく雪に血が染み込んでゆくばかりである。
そこにパトカーが二台乗り入れてきた。
「どうした、京哉!」
パトカーから飛び降りてきたのは信輔だった。他にも見知った面々が目に映る。安堵と恐怖が綯い交ぜになり京哉は雪の中に座り込んで霧島に膝枕をしたまま、貧血で意識を手放しそうになった。途端に目前にしゃがんだ信輔に頬を叩かれて覚醒する。
「お前がしっかりしないでどうする!」
「あ……ごめん」
「分かればいい。おーい、救急、こっちだ!」
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