セイレーン～楽園27～

第27話（BL特有シーン・回避可）

「だからさ……あっ、うっ！」

　下半身に密着した細い腰を揺らされ、シドは思わず声を洩らした。擦れて躰の中心が甘く痛み、身を捩って逃れようとするも、ハイファは更に強く躰を押し付けてくる。薄い肩を掴んで引き離そうとしたが、ハイファは背を押し付けるように密着して離れようとしない。

「ハイファ、こら、やめろって」
「いいじゃない……ねえ、させてよ」
「つーか、そういう気分でもねぇんだがな」
「そう？　もうこんなにしてるのに」

　細い腰が淫らに振られ、滑らかな白い肌で更に刺激を与えられた。逃げ場のないシドをハイファは全身で追い詰める。ここまでハイファから積極的に誘うのは珍しい。

「だめなの？　ねえ、欲しいよ」

　肩越しに振り向いた若草色の瞳がいつにない情欲を浮かべていて、諦めたシドはバスタブのふちに腰掛けた。ハイファは湯に浸かったまま泳ぐように近づくと、嬉しそうにシドの勃ち上がりかけたものを掴む。愛おしそうにシドに頬ずりし、ハイファは先端に口をつけた。

　先端の割れ目に舌を潜らせて刺激されると、あっという間にとろりとした蜜が滲み出す。ピチャピチャと音を立てて舐め啜られ、ゆったりと扱かれて、シドはたちまち張り詰めさせた。

「すごく大きい……硬いよ、シド」
「んっ……くっ」

　敏感なくびれにピンク色の舌が巻きつく。シドは思わず呻きを上げそうになり、喉の奥で押し殺した。ハイファは見透かしたようにシドの弱い処を攻め立てる。やがて口を開けると太いものを咥えた。喉の奥まで咥え込み、唇と窄めた口腔粘膜で扱き始める。

　途端にシドは眩暈のような快感に投げ出された。

「あっ、ふ……ハイファ、ああっ！」

　にわかに自分のものとは思えない甘い喘ぎをシドは洩らしていた。耳を塞がれたように世界の全てが遠ざかったような気さえする。見下ろせば無心にハイファはシドを舐めしゃぶり続けていて、ノーブルな顔立ちだけに太いものとの取り合わせは酷く淫らだった。

「くっ、あ……ハイファ、そんなにすると、もう――」
「んんっ、んっ……んんぅ……ん」

　愛し人のものを咥えるという行為に酔い、いつしかハイファも鼻に掛かった喘ぎを喉から洩らしている。そんなハイファの反応にもシドは追い詰められる。もう暴発させてしまいそうな予兆に石のバスタブを掴んで堪えた。喉元まで深々と咥え込まれているのが分かっているのに、腰を突き上げてしまいそうになる。溜まった疼きは限界、シドは叫ぶように訴えた。

「ハイファ、だめだ、もう……あっ、く……あうっ！」

　堪えきれずにシドはハイファの喉にぶつけるようにして解き放ってしまう。幾度も身を震わせてどくどくと溢れさせた。頭の芯が白熱するほどの快感に本当に眩暈がした。

　口の中に放たれた濃いものをハイファは全て嚥下する。扱いて滲んだものまで舐め取ると、一度放ってなお太く硬く滾ったままのシドに、また愛しげに頬ずりをした。

「今度は中にも頂戴」
「分かった。けど湯あたりする前に上がろうぜ」

　バスルームを出て積んであった布を取り、互いの躰を拭き合った。シドは長い金髪の先まで丁寧に拭ってやる。そして細い躰を抱き上げると部屋のベッドの片側に横たえた。

　白い躰を組み敷いて赤い唇を奪う。ハイファの息が上がるまで深いキスを仕掛けた。そのまま唇を下降させて顎から喉までついばみ、首筋から華奢な鎖骨の辺りまでを何度も強く吸い上げ、自分の証しを刻み込んでゆく。

「あっ、ん……シド、そんなに上は……はぁん」
「声も、肌も甘いな……ハイファ」

　全身で愛撫すると互いの下腹で成長しきったものが擦られ、零れた蜜が濡れ混じって糸を引いた。シドは僅かに身を起こし、二人のそれを交互に扱いて指を濡らす。いつもの恥じらいも忘れたかのように、もう大胆に躰を開いたハイファの後ろを探った。蕾を捉えてなぞる。

「あっ、ん……シド、欲しいよ」

　若草色の瞳を潤ませつつも、ハイファは膝を立てた細い脚を更に開いて何もかもが露わな姿態をとった。いつになく積極的、それでも僅かに顔を背けたのがシドには酷く愛しい。

「分かってる、入れるぞ」
「うん……あっ、あ……ああんっ！」

　挿し入れた指を駆け引きなしで奥まで届かせる。ポイントを浅く掻くとしなやかな背が反った。指を捩るようにして窄まりを馴らし、ほぐしてゆく。性急に二本目を挿入した。

「あぅん……シドの指、すごく、すごく気持ちいい――」

　一度放ってはいたがシドにも余裕がある訳ではない。高く甘い声と狭いそこに数指を咥え込んで乱れる白い躰は淫らすぎ、シドをまたも追い詰めつつあった。存分に快感を与えてやりたいという思いと、今すぐにでもねじ込んで征服してしまいたい気持ちがせめぎ合う。

　腹の底が欲望で焦げつきそうなくらいまでハイファを鳴かせ、全ての指を抜いた。

「ハイファ、お前に入らせてくれるか？」
「いいよ、入れて。僕も、ひとつになりたいよ」

　膝を立てた脚をハイファは自ら限界まで広げる。深く結ばれたいという無言の想いに応えるべく、シドは己のものをあてがって挿入し始めた。太い切っ先で傷つけてしまわぬよう呼吸を計りつつゆっくりと腰を進める。

　あれだけ馴らしたというのにハイファはまるでまっさらな身のよう、引き裂いてしまいそうなくらいに狭かった。それでも時間を掛けて根元まで身を埋める。

「痛く、苦しくねぇか？」
「少しだけ、苦し……でも、すぐによくなる――」
「ああ、よくしてやるから待ってろ」

　こんなものを身に穿たれて苦しくない訳がない。だがシドも堪えられる限界、腰を引いて太い茎の半ば以上を引きずり出すと、勢いよく突き上げ貫いた。高い声を聞きながら、のしかかるようにして細い躰を貫く。鋭い快感が湧いて徐々に腰の律動は早まってゆく。

「んんっ、シド、ああん……すごい、いい、シド！」
「俺も、すんげぇ気持ちいい、ハイファ！」

　背に回された手が爪を立てるのにも構わず、激しく細い躰を揺らした。粘膜を擦り上げ、二人分の快感を生み続ける。ハイファも細い腰を前後させていた。苦しさが快感に融けたハイファは何処までもシドを受け入れて乱れる。まだ狭い窄まりはシドを締めつけ離さない。

　やがてハイファが甘く切ない声でシドに訴えた。

「んっ、もう……僕、だめかも――」
「俺も、いかせてくれ」

　互いの躰をぶつけ合い、腰が蕩けるような快感を分け合った。ハイファが目に見えて変化させる。シドは一層腰のスライドを速くした。室内に高い喘ぎ声が響く。

「シド、シド、もうだめ……ああん、はうっ！」
「あっく……ハイファ……くっ――」

　二度目とは思えぬくらいにハイファの中にシドはたっぷりと注ぎ込んだ。同時にハイファも弾けさせ、自らの喉元まで迸らせる。幾度も身を痙攣させて二人は放った。
　二人は肩で息をしつつ、何も考えられない刻を共有する。ハイファがシドの背を撫でた。

「引っ掻いて傷つけちゃったかも。ごめんね」
「いいさ、男の甲斐性だ」
「それに頬も……ファーストエイドキットなんてあるのかな？」
「舐めときゃ治るからいい」
「あとで舐めてあげるよ。でも貴方、まだ……？」

　まだシドはハイファの中から去ろうとせず粘膜を押し広げたままだった。だがシドは薄く笑って手を伸ばし、ハイファの長い金髪の束をすくい上げると毛先に唇を押し当てる。

「もういい、お前が壊れちまう」
「壊されたい……いいよ、して。好きなだけ僕の中にいて」
「ハイファ、お前……」
「ねえ、届かせたことのない処まで、僕を犯して」
「……くっ、ハイファ！」

　その言葉はシドの中の何かを弾いた。シドはハイファを抱き上げ、跪いた自分の上に跨らせる。真下から硬く太い楔で貫いて、思い切り掻き回し揺さぶった。

　一方のハイファは容赦のないシドの攻めに気が遠くなるような思いを味わいながら自らも腰を上下させた。甲高くも甘い喘ぎが喉から洩れ続ける。そうしていないと意識が保てないほどの快感だった。逞しい躰にしがみついて、己の躰をシドと二人掛かりで犯す。

「ああんっ！　シド、いい、もっと……はうんっ！」
「ハイファ、あっく……ハイファ！」

　普段見せないようなハイファの妖艶な乱れ方にシドはとっくに理性をとばしていた。熱に浮かされたように攻めることしか考えられず、ハイファを突き上げ掻き混ぜ続ける。

「俺はどうしてこんなに……お前が一番大事なのに――」
「いいから、シド……あっふ、もっと僕に貴方を刻んで！」

　叫んだハイファが目茶苦茶に腰を浮かせては落とし始めた。シドに痛みが走るような激しさだった。その痛みが僅かに理性を取り戻させる。細い躰を壊してしまう怖れに、シドはハイファをきつく抱き締め返した。宥めるように見つめるもハイファは自らに熱いシドを穿つのをやめない。奔放というより切実な響きを帯びたその喘ぎは、もう嗄れかけていた。

「ハイファ、もういい、止せ！」
「シド……僕のシド……お願い、一緒に――」

　思い切り締めつけられた粘膜の中で、シドにも急激な絶頂感が襲い掛かる。奥深くにシドは熱く注ぎ込んだ。同時にシドの腹にハイファが白濁をぱたぱたとぶつける。抱き締めていたハイファの躰からふっと全ての力が抜けた。シドは慌ててハイファをそっとシーツに寝かせる。

「ハイファ、大丈夫か、ハイファ？」

　目は瞑られ、若草色の瞳は見えなかった。慌ててバイタルサインを看るも呼吸は落ち着き、脈も少し速いが異常というほどではない。どうやら瞬時に眠りに落ちるか気絶するかしたようだった。シドは息をつく。