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第17話
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「おい、お前。いつの間にTV局なんかに行ったんだ?」
《ふざけないでくれ、キャスも動揺してる》
「すまん、マックス。お前は嵌められたんだ」
《何で俺が……ヴィクトル星系出身だからか?》
「そうなのか? なるほどな、それもあってのことか」
《とにかく、俺は捕まるのはご免だからな》
「この一件が片付くまでは檻の中が一番安全だと思うぞ」
冷静に考えて、ごく真っ当な意見を述べたシドだったが、マックスは反論する。
《キャスはどうする? それにいつ片付くって言うんだ? 保障がない。俺はキャスと逃げるからな、お前らはホシを追って早く片付けて――》
「待て。早まるな、マックス! そっちに行く。十分以内だ、準備して待ってろ」
《――分かった》
通信をアウトすると既に着替えを始めながら、だが明らかに気乗りをしない目つきでハイファがこちらを見ていた。自分も着替えつつシドはその目に訊く。
「何だよ?」
「この場合、シド、貴方自身が言った通り檻の中が安全だと思うけどね」
「それは分かってるさ」
「なら、何で? だってずっとキャスはマックスと一緒だったんじゃないの? 捕まってもすぐ釈放される。なのに逃亡に手を貸しに行くみたいに聞こえたよ」
「だから分かってるし、俺はそのつもりで言ったんだ。檻の中にいてくれれば最善だが、マックスのあの様子だと説得が効くかどうか怪しい。なら何処とも知れねぇ場所に潜伏されるより、せめて俺だけでもあいつの行方と事情を掴んでおきたい」
「でも昨日はキャスと二人で――」
管轄内を巡っていた筈だと言おうとしてシドに遮られる。
「甘いんだよ、それは。身内の犯罪ともなれば惑星警察も慎重になる。だが誰も昨日のマックスたちの足取りまで追ってた訳じゃねえし、あの二人の関係だと証言として認められねぇんだよ。なら実際マックスはいつまで檻の中にいたらいい?」
「シドは信じてないの?」
「んなこた言ってねぇよ。ただ、一度でもサツカンが檻に入ると無実が証明されても事実として経歴に瑕でもついたような扱いをする奴もいる。それだけじゃねぇ、こっちがもっと大ごとだ。メディアのこれを見てメインのホシであるドラクロワ=メイディーンとそのシンパがどう思うかってのが、な」
その点については元スパイのハイファの方が詳しいくらいだ。
「仲間が増えて喜ぶ……訳ないか、あの業界は。お株を奪われて黙ってないよね」
「それを狙った奴がいる、それもここまでの大舞台を用意した奴が。こいつは罠だ」
「まさか……テロリストじゃないってこと?」
「他に心当たりがあるのか?」
ハイファは首を横に振った。
「でも別室がこんな罠を仕掛けるなんて」
「有り得ねぇか?」
再度ハイファは首を横に振る。
「可能性がありすぎて、僕も何が何だか……」
「自分から出頭してすんなり釈放されても身が危ない、ヴィクトル星系解放旅団に狙われる。つまりマックスはドラクロワ=メイディーンをおびき寄せるための囮だ」
「そういう嵌り方ってことかあ。じゃあさっきの爆破は偽装なのかな?」
「たぶんな。二十人分の死体まで用意しやがって、くそう、気に食わねぇぜ」
唸るように言ったシドから別室員は目を逸らした。
ともあれ急がなければならない。シドは執銃すると対衝撃ジャケットに袖を通し、ドレスシャツにソフトスーツのハイファと共に廊下に出た。エレベーターで一階まで降り、エントランスから小走りでマックスたちの官舎まで移動する。
待ちきれなかったのか官舎の入り口から少し離れた植え込みの傍にマックスとキャスは立っていた。外灯を避けていたが暗くても分かるほどキャスの顔色が酷く悪い。
「ねえ、どうして? いったい何がどうなってるのよ?」
「大丈夫だ、キャス。取り敢えず落ち着ける所を探して、話はそれからだ」
辺りを見渡すと人影が二、三あったが、何気ない風を装って官舎入り口脇のタクシーに四人は乗り込んだ。シドが座標設定し歓楽街方面へと向かう。そのコイルの中は寒くない筈だが、キャスは我が身を抱き締めるかのようにして震えていた。
人波溢れる歓楽街でもタクシーを降りず、なるべく設備のしっかりしていそうなホテルを探し当て、直前まで着けてから降りた。
一応、怪しまれないように部屋をふたつ取る。システムは全てオートモードでリモータチェックのみ、誰とも顔を合わせることはなく、取った部屋のひとつまで辿り着いた。
一部屋に四人集まって今後を検討しようとしたが、「逃げる」の一点張りであるマックスと、どうにもキャスらしくない動揺ぶり、それにシドたちも別室について語れることはないに等しく、誰もが黙りがちだった。
「……ちょっとこれを見てくれるか?」
沈黙を破りリモータを差し出したのはマックス、シドとハイファが覗き込んだ小さな画面の内容は、どうやらマックス個人の銀行口座の収支記録らしい。
「昨日までは、こんなに金持ちじゃなかった筈なんだ」
過去数ヶ月に遡って複数の企業や団体らしきところから、個人宛としてはかなり高額のクレジットが振り込まれ続けている。
「全く身に覚えのないカネが、それもタイムスリップでもしてきたみたいに、過去に遡って増えてるんだ。本当に、いったいどうなってるんだ?」
喩え中央情報局長が迫ってもその内情を明かさないという鉄面皮で名高いテラ連邦直轄銀行の個人口座を弄れる、それこそ別室しか有り得なかった。
別室はヴィクトル星系解放旅団に振り込まれる献金ルートを調べ上げ、その流れを変えてマックスの口座に流れ込むように仕組んだのだ。本当に流れを変え得たかどうかはこの際、問題ではない。それを事実だと見せかけるだけで罠としては事足りる。
そこまで解っていながら何もマックスに言ってやれないシドは押し黙るしかない。
一方でハイファは熱い紅茶を淹れてキャスにソーサーごと手渡してやったのちシドたちのいたテレーザガーデンズをリモータで調べ始めた。そちらにも献金という名のテロリストグループへの支援金が回されている可能性があるからだ。
通常通信はワープする宙艦で運ばれるので光速より速いものの通常航行の分だけ時間が掛かる。ここはコストが掛かるが即時繋がる亜空間レピータ使用のダイレクトワープ通信で探った。
だがテレーザガーデンズに関しての質問事項は全て別室戦術コンに弾かれた。別室員であるハイファにすら閲覧権限が与えられない理由は『軍機につき』……現在進行中の軍オペレーションに関わるが故に機密事項とされていた。
別室の罠だというシドの予想通りだと裏付けられたも同然だった。互いに目で合図するシドとハイファにマックスが困惑した声のまま力なく言った。
「それに今は拒否してあるが俺の個人アドレスにまるで爆破を賞賛するようなメッセージが山ほど届いてるんだ。謎のカネといい、いったいどういうことなんだ?」
ごく短時間のうちに憔悴してしまったマックスは沈黙した左手首を振っている。
慰める言葉もなくシドは意味もなく呟くしかない。
「一躍、汎銀河中のテロリストたちのアイドルってか」
「個人情報がそこまで出回ってるんじゃドラクロワ=メイディーン一派に自分たちへの献金を奪ったのがマクシミリアン=ダベンポートだってことも知られてるよね」
「俺は何も身に覚えがない、献金なんか奪ってないんだ、ハイファス!」
興奮して大声を上げたマックスにハイファは宥める口調となる。
「分かってるよ、マックス。シドが言った通り、嵌められただけなんだから」
「とにかくテメェらが受け取る筈の献金を奪われた形だ、敵は相当頭にきてるぜ」
「素直に出頭しても一分署ごと爆破されそう」
「やっぱり逃げて正解だったかも知れねぇな」
シドとハイファは頷き合った。
「けど逃げるにしたってこんな狭っ苦しいタイタンじゃ限度があるよな。勝手知ったる本星に帰してやりてぇが……宙港は完全に張られてるだろうし、どうするかだ」
「それだけじゃない、プラス惑星警察まで向こうに回したら身動きも取れないよ」
「じゃあ爆破されるのを覚悟で檻の中に入ってろって本気で言うのかよ?」
「そうは言ってないよ。ただ、別室だって勝算ありきと見て罠を張ったんだから、今回の囮作戦は短期決戦だってこと。このタイタンか付近上空に必ずドラクロワ=メイディーンがいて姿を現すのを待ってる筈だよ」
ここにきてシドは我慢できなくなり煙草を咥えるとオイルライターで火を点ける。
「でもマックスの言い分じゃねぇが、一日二日で敵が捕まる保障はあるのか?」
「それは……ないけど。でもイレギュラーな動きは作戦を阻害するかも」
「結局は爆死覚悟で檻の中で正座か? ざけんなよ」
誰もが案を捻り出せずにまた沈黙の帳が降りた。一本吸い終えてシドが口を開く。
「マックス、お前のIDはどうなってるんだ?」
「どうなってるって、どういうことだ?」
「ドラクロワ=メイディーンはヴィクトル星系の重鎮、テラ連邦レヴェルで手配が掛かっていながら政治中枢に食い込んでる。だからヴィクトル星系でのお前のIDだ」
「それはかなり拙いかも知れん。俺のIDはヴィクトル星系発行のまま、テラ本星の星系政府管掌IDとして編入されたんだ。貧乏星系で政情不安も抱えた星だったが、そういう部分だけはしっかりした星だったよ。未来を担う子供が育ちにくい星でもあったしな」
「そうか……くそう、IDがそのままとはな――」
それなら今回の主要人物・マクシミリアン=ダベンポートというヴィクトル星系出身者に、ドラクロワ=メイディーンは惑星警察並みに肉迫してくることだろう。個人アドレスまで大々的に知られているのだ、IDが洩れていない訳はない。
何処で何をするにしろ使わなければならないリモータは、個人IDという痕跡を残す。この歓楽街でカネか暴力の気配をちらつかせれば簡単に担当者は検索するだろう。
そこで特徴が合致した上にIDヒットすれば、ためらわず客の一人くらい差し出すに違いない。
《ふざけないでくれ、キャスも動揺してる》
「すまん、マックス。お前は嵌められたんだ」
《何で俺が……ヴィクトル星系出身だからか?》
「そうなのか? なるほどな、それもあってのことか」
《とにかく、俺は捕まるのはご免だからな》
「この一件が片付くまでは檻の中が一番安全だと思うぞ」
冷静に考えて、ごく真っ当な意見を述べたシドだったが、マックスは反論する。
《キャスはどうする? それにいつ片付くって言うんだ? 保障がない。俺はキャスと逃げるからな、お前らはホシを追って早く片付けて――》
「待て。早まるな、マックス! そっちに行く。十分以内だ、準備して待ってろ」
《――分かった》
通信をアウトすると既に着替えを始めながら、だが明らかに気乗りをしない目つきでハイファがこちらを見ていた。自分も着替えつつシドはその目に訊く。
「何だよ?」
「この場合、シド、貴方自身が言った通り檻の中が安全だと思うけどね」
「それは分かってるさ」
「なら、何で? だってずっとキャスはマックスと一緒だったんじゃないの? 捕まってもすぐ釈放される。なのに逃亡に手を貸しに行くみたいに聞こえたよ」
「だから分かってるし、俺はそのつもりで言ったんだ。檻の中にいてくれれば最善だが、マックスのあの様子だと説得が効くかどうか怪しい。なら何処とも知れねぇ場所に潜伏されるより、せめて俺だけでもあいつの行方と事情を掴んでおきたい」
「でも昨日はキャスと二人で――」
管轄内を巡っていた筈だと言おうとしてシドに遮られる。
「甘いんだよ、それは。身内の犯罪ともなれば惑星警察も慎重になる。だが誰も昨日のマックスたちの足取りまで追ってた訳じゃねえし、あの二人の関係だと証言として認められねぇんだよ。なら実際マックスはいつまで檻の中にいたらいい?」
「シドは信じてないの?」
「んなこた言ってねぇよ。ただ、一度でもサツカンが檻に入ると無実が証明されても事実として経歴に瑕でもついたような扱いをする奴もいる。それだけじゃねぇ、こっちがもっと大ごとだ。メディアのこれを見てメインのホシであるドラクロワ=メイディーンとそのシンパがどう思うかってのが、な」
その点については元スパイのハイファの方が詳しいくらいだ。
「仲間が増えて喜ぶ……訳ないか、あの業界は。お株を奪われて黙ってないよね」
「それを狙った奴がいる、それもここまでの大舞台を用意した奴が。こいつは罠だ」
「まさか……テロリストじゃないってこと?」
「他に心当たりがあるのか?」
ハイファは首を横に振った。
「でも別室がこんな罠を仕掛けるなんて」
「有り得ねぇか?」
再度ハイファは首を横に振る。
「可能性がありすぎて、僕も何が何だか……」
「自分から出頭してすんなり釈放されても身が危ない、ヴィクトル星系解放旅団に狙われる。つまりマックスはドラクロワ=メイディーンをおびき寄せるための囮だ」
「そういう嵌り方ってことかあ。じゃあさっきの爆破は偽装なのかな?」
「たぶんな。二十人分の死体まで用意しやがって、くそう、気に食わねぇぜ」
唸るように言ったシドから別室員は目を逸らした。
ともあれ急がなければならない。シドは執銃すると対衝撃ジャケットに袖を通し、ドレスシャツにソフトスーツのハイファと共に廊下に出た。エレベーターで一階まで降り、エントランスから小走りでマックスたちの官舎まで移動する。
待ちきれなかったのか官舎の入り口から少し離れた植え込みの傍にマックスとキャスは立っていた。外灯を避けていたが暗くても分かるほどキャスの顔色が酷く悪い。
「ねえ、どうして? いったい何がどうなってるのよ?」
「大丈夫だ、キャス。取り敢えず落ち着ける所を探して、話はそれからだ」
辺りを見渡すと人影が二、三あったが、何気ない風を装って官舎入り口脇のタクシーに四人は乗り込んだ。シドが座標設定し歓楽街方面へと向かう。そのコイルの中は寒くない筈だが、キャスは我が身を抱き締めるかのようにして震えていた。
人波溢れる歓楽街でもタクシーを降りず、なるべく設備のしっかりしていそうなホテルを探し当て、直前まで着けてから降りた。
一応、怪しまれないように部屋をふたつ取る。システムは全てオートモードでリモータチェックのみ、誰とも顔を合わせることはなく、取った部屋のひとつまで辿り着いた。
一部屋に四人集まって今後を検討しようとしたが、「逃げる」の一点張りであるマックスと、どうにもキャスらしくない動揺ぶり、それにシドたちも別室について語れることはないに等しく、誰もが黙りがちだった。
「……ちょっとこれを見てくれるか?」
沈黙を破りリモータを差し出したのはマックス、シドとハイファが覗き込んだ小さな画面の内容は、どうやらマックス個人の銀行口座の収支記録らしい。
「昨日までは、こんなに金持ちじゃなかった筈なんだ」
過去数ヶ月に遡って複数の企業や団体らしきところから、個人宛としてはかなり高額のクレジットが振り込まれ続けている。
「全く身に覚えのないカネが、それもタイムスリップでもしてきたみたいに、過去に遡って増えてるんだ。本当に、いったいどうなってるんだ?」
喩え中央情報局長が迫ってもその内情を明かさないという鉄面皮で名高いテラ連邦直轄銀行の個人口座を弄れる、それこそ別室しか有り得なかった。
別室はヴィクトル星系解放旅団に振り込まれる献金ルートを調べ上げ、その流れを変えてマックスの口座に流れ込むように仕組んだのだ。本当に流れを変え得たかどうかはこの際、問題ではない。それを事実だと見せかけるだけで罠としては事足りる。
そこまで解っていながら何もマックスに言ってやれないシドは押し黙るしかない。
一方でハイファは熱い紅茶を淹れてキャスにソーサーごと手渡してやったのちシドたちのいたテレーザガーデンズをリモータで調べ始めた。そちらにも献金という名のテロリストグループへの支援金が回されている可能性があるからだ。
通常通信はワープする宙艦で運ばれるので光速より速いものの通常航行の分だけ時間が掛かる。ここはコストが掛かるが即時繋がる亜空間レピータ使用のダイレクトワープ通信で探った。
だがテレーザガーデンズに関しての質問事項は全て別室戦術コンに弾かれた。別室員であるハイファにすら閲覧権限が与えられない理由は『軍機につき』……現在進行中の軍オペレーションに関わるが故に機密事項とされていた。
別室の罠だというシドの予想通りだと裏付けられたも同然だった。互いに目で合図するシドとハイファにマックスが困惑した声のまま力なく言った。
「それに今は拒否してあるが俺の個人アドレスにまるで爆破を賞賛するようなメッセージが山ほど届いてるんだ。謎のカネといい、いったいどういうことなんだ?」
ごく短時間のうちに憔悴してしまったマックスは沈黙した左手首を振っている。
慰める言葉もなくシドは意味もなく呟くしかない。
「一躍、汎銀河中のテロリストたちのアイドルってか」
「個人情報がそこまで出回ってるんじゃドラクロワ=メイディーン一派に自分たちへの献金を奪ったのがマクシミリアン=ダベンポートだってことも知られてるよね」
「俺は何も身に覚えがない、献金なんか奪ってないんだ、ハイファス!」
興奮して大声を上げたマックスにハイファは宥める口調となる。
「分かってるよ、マックス。シドが言った通り、嵌められただけなんだから」
「とにかくテメェらが受け取る筈の献金を奪われた形だ、敵は相当頭にきてるぜ」
「素直に出頭しても一分署ごと爆破されそう」
「やっぱり逃げて正解だったかも知れねぇな」
シドとハイファは頷き合った。
「けど逃げるにしたってこんな狭っ苦しいタイタンじゃ限度があるよな。勝手知ったる本星に帰してやりてぇが……宙港は完全に張られてるだろうし、どうするかだ」
「それだけじゃない、プラス惑星警察まで向こうに回したら身動きも取れないよ」
「じゃあ爆破されるのを覚悟で檻の中に入ってろって本気で言うのかよ?」
「そうは言ってないよ。ただ、別室だって勝算ありきと見て罠を張ったんだから、今回の囮作戦は短期決戦だってこと。このタイタンか付近上空に必ずドラクロワ=メイディーンがいて姿を現すのを待ってる筈だよ」
ここにきてシドは我慢できなくなり煙草を咥えるとオイルライターで火を点ける。
「でもマックスの言い分じゃねぇが、一日二日で敵が捕まる保障はあるのか?」
「それは……ないけど。でもイレギュラーな動きは作戦を阻害するかも」
「結局は爆死覚悟で檻の中で正座か? ざけんなよ」
誰もが案を捻り出せずにまた沈黙の帳が降りた。一本吸い終えてシドが口を開く。
「マックス、お前のIDはどうなってるんだ?」
「どうなってるって、どういうことだ?」
「ドラクロワ=メイディーンはヴィクトル星系の重鎮、テラ連邦レヴェルで手配が掛かっていながら政治中枢に食い込んでる。だからヴィクトル星系でのお前のIDだ」
「それはかなり拙いかも知れん。俺のIDはヴィクトル星系発行のまま、テラ本星の星系政府管掌IDとして編入されたんだ。貧乏星系で政情不安も抱えた星だったが、そういう部分だけはしっかりした星だったよ。未来を担う子供が育ちにくい星でもあったしな」
「そうか……くそう、IDがそのままとはな――」
それなら今回の主要人物・マクシミリアン=ダベンポートというヴィクトル星系出身者に、ドラクロワ=メイディーンは惑星警察並みに肉迫してくることだろう。個人アドレスまで大々的に知られているのだ、IDが洩れていない訳はない。
何処で何をするにしろ使わなければならないリモータは、個人IDという痕跡を残す。この歓楽街でカネか暴力の気配をちらつかせれば簡単に担当者は検索するだろう。
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