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case8 女神の断罪
16 幕引きの後に
しおりを挟む赤の陣営側控え室――その中に、ナイツ夕桜支社のメンバーが集まっていた。
「――やはり、私の読みは正しかったようですね。あの神楽に本当に勝ってしまうとは……流石です、禊屋」
薔薇乃が満面の笑みで言う。禊屋は照れたように笑いつつ、
「いや~それほどでも……あるけど! んふふ、まぁ、今回のMVPはあたしじゃなくてノラだよ。あたしがいない間に、場を繋ぐどころか一気に真犯人を追い詰めちゃったんだからさ!」
冬吾はかぶりを振って答える。
「いや俺はただ……禊屋が残してくれたヒントを元に考えたってだけだよ。俺一人じゃ何にも出来なかった。勝てたのはほんとに……禊屋や薔薇乃さん、織江さんたちのお陰だ。――改めて、ありがとうございました」
薔薇乃と織江に向かって頭を下げる。するとその頭をわしゃわしゃと撫でられた。
「おーおー、今日は随分と素直じゃないの。あんた以外とかわいいところあるんだねぇ」
「ちょっ……やめてくださいよ、織江さん!」
まるで後輩に絡む先輩だ。まるでというか、ある意味その通りなのだが。
織江の手からなんとか逃れて、冬吾は部屋の隅に座っている乃神の前に移動する。
「乃神も……ありがとう。あの時、お前の言葉がなかったら――」
「気色悪い」
冬吾の言葉を遮って、乃神が一刀両断する。
「俺に礼など言うな。怖気が立つ……」
「お前……相変わらずだな」
「ふん…………」
まぁ、仕方ないか。冬吾が禊屋たちのところへ戻ろうとすると、乃神はぽつりと言う。
「…………お前にしては、よくやったんじゃないのか」
乃神の口からそんな言葉が出たのに冬吾は驚いて一瞬足を止めるが、少し考えてから、軽く笑って返した。
「今のは聞こえなかったことにするよ」
「ふん……」
乃神は肩をすくめて、小さく笑った。
「――それより、薔薇乃ちゃんのほうは大丈夫なの……?」
禊屋が心配するように薔薇乃へ言う。燐道によって支部長権限を剥奪されたことを言っているのだろう。薔薇乃はそこでやや照れたように答えた。
「実は……先ほど会長の使いから連絡を受けました。わたくし、支部長の権限を戻されたようです」
「えっ!? それじゃあ……」
「はい。今後も夕桜支社のリーダーとしてやらせていただくことになりました。そういうわけですので……これからもよろしくお願い致しますね、皆さん」
「うわぁ、やったぁーよかったぁー!」
禊屋が喜んで薔薇乃に抱きつく。薔薇乃は禊屋を抱き止めながら、
「始めから会長はこの審問会が終われば権限を戻すつもりだったと言っていたようです。しかしそれも本心かどうかはわかりませんね。あの方には色々と言ってやりたいこともありますが……今はひとまず、忘れましょう。今この時くらいは、勝利の余韻に浸っても許されるでしょうから」
一時はどうなることかと思ったが、こちらの問題も解決したようだ。
冬吾は遠慮がちに薔薇乃に言う。
「あの……俺、ちょっとだけ席を外してもいいですか?」
「あら? せっかくあなたの勝利を祝おうというところですのに。どちらへ?」
「すみません。今のうちに話しておきたい相手がいるんです」
そこで、禊屋が気がついたように言う。
「それって、もしかして……」
冬吾は頷く。きっと禊屋の考えている相手と同じ人物だ。
「大丈夫、すぐ戻ってくるから」
「……うん、わかった。いってらっしゃい!」
禊屋は笑顔で送り出してくれる。冬吾は千裕の手帳だけを手にとって、控え室を出た。
冬吾がその部屋に入ると、目的の人物は立ったまま携帯電話で通話の最中だった。相手はこちらに気がついて振り向くが、そのまま話し続ける。その相手以外に、部屋には誰もいないようだった。
「――ああ、そうか。わかった……ご苦労」
そう言って、通話を切り上げる。電話を仕舞ってから、その相手――神楽は言った。
「今、連絡があった……。月光の会は評議員会及び理事会の決議によって会長である渡久地友禅……もとい真季蘭童を解任したようだ。まぁ、それも当然だな。あのような醜態を晒しておいて無事でいられるはずがない。渡久地友禅としてのコネクションも財団の支えも失った真季は、もはや何者でもないただの負け犬だ。アルゴス院への賠償金を支払う能力さえ、今の奴には存在しないだろう」
神楽は満足げな表情を浮かべていた。冬吾は尋ねる。
「伏王会にとっても、痛手じゃないのか。審問会で負けたことによるナイツへの賠償金……四十億だったか?」
「心配ご無用。既に充分な報酬は得ている」
「報酬?」
「真季に協力する代わりに、前もって奴の保有していたとある密輸ルートを移譲してもらった。四十億程度の損失など、すぐに取り戻せる」
なるほど、負けても損をすることはないというわけか。用意周到なことだ。
冬吾は更に疑問を投げかける。
「それにしても……もう真季を解任するだなんて。随分と早い対応をするんだな、財団は。……いや、早すぎるんじゃないか?」
「何が言いたい?」
「これは、お前が仕組んだことなんじゃないのか? 例えば、予め財団の方へ仲間を送り込んでおいて、法廷の様子を別の仲間に撮影・中継させていたとか。そうだったとすれば、あの法廷でのやり取りを見てすぐに財団が真季を解任したのもわかる。それはお前の手筈によるものだったんじゃないのか? そう……真季蘭童を完全な破滅に追い込むためにだ」
「ふっ……」
神楽は肩をすくめて笑う。
「意味がわからないな。君は自分が何を言っているのか理解しているか?」
「わかっているさ。神楽……お前がこの審問会、真季が敗北するように誘導していたってこともな」
「……なんだと?」
神楽は眉を吊り上げて言う。
「禊屋が倒れて、俺が一人で法廷に立っている間……何か妙な感じだった。禊屋をあんなに手こずらせていたお前が、なぜか俺の後押しをしてくれたように感じる瞬間があったんだ。きっとあの感覚は気のせいなんかじゃなかった。神楽……お前は俺に勝たせようとしたんだ」
「ふざけたことを言うな」
神楽は冬吾を睨みつけた。
「私は貴様らに挑んで、負けた……それだけのこと。敗北は認めよう。しかし、これ以上私を愚弄するつもりなら許さんぞ」
「いいや違う。お前は最初からこの結末を想定していたはずだ。審問会でお前は、真季の味方をするふりをしながら決定的な証拠を出すタイミングを窺っていた。それがあの血液鑑定の結果だ。あれは正しく解釈すれば、渡久地友禅が偽者であるという答えを導くことが出来る証拠だった。あの証拠を出すしかない状況に持ち込んで、俺たちに渡久地の正体を暴かせることがお前の目的だったんだ。この審問会は最初から最後まで、お前に誘導されていた……違うか?」
冬吾は更に続ける。
「……今思うと、あの講壇の釘に残されていた血痕もお前の仕業だったんじゃないかという気がする。真季があの場所に血痕という決定的な証拠を残したのは奴のミスで、偶然……本当にそうだったんだろうか? お前はあの釘付きの板を取り外し、真季を講壇の中に押し込めるフリをしながら、どさくさに紛れて奴の手を手袋の上から釘で引っ掻いて傷を付けた……のかもしれない。モルヒネで奴の痛覚が鈍っていたということは、お前が見抜いていないはずはないしな」
つまり、神楽は意図的に真季の敗因を作り上げたということだ。勿論これはただの想像で、何の証拠もありはしない。
神楽は呆れたように言う。
「……逆に問おう。私がなぜ、そのような真似をする必要がある? 真季を破滅に追いやって、それで私が何か得をするとでも?」
冬吾は逡巡する。その問いに対する答えは、既に用意してある。だが……本当にこれで合っているのか?
――いや、もう迷うわけにはいかない。今、神楽の口から真実を聞き出さなければ、きっとこの先ずっと後悔することになる……!
冬吾は一度深呼吸をすると、意を決して言った。
「お前には動機があったんだ。そしてそれはきっと、損とか得の問題じゃない。……復讐だったんじゃないのか?」
神楽は馬鹿馬鹿しいとでも言うように鼻で笑う。
「復讐だと……? 私が真季に、何の復讐をしたというのだ?」
「……正直言って、証拠は何もない。そう考えた根拠だって弱いし、殆どが俺の想像だ。だけど俺には……この想像が当たっているような気がしてならない」
冬吾はズボンのポケットから千裕の手帳を取り出す。
「この手帳……お前が名護さんに指示をして俺に渡させたんじゃないのか?」
「なぜ私がそんなものを?」
「名護さんの隠れ家はイエローアローズによって盗みに入られたと言っていたな。あれは嘘だ。イエローアローズの仕業に見せかけたというだけで、本当はお前が盗みに入った。仲間はいたかもしれないけどな。証拠はない、だけどそう考えれば筋は通る。そこでお前は計画のためにあの指輪とUSBメモリを盗んだ。そして、同じ場所に置かれていたこの手帳の中身を見たんだ。お前は、この手帳の中身が事件の謎を紐解くヒントになると考えた。だから名護さんを脅して俺にこの手帳を届けさせた。俺を介して禊屋にヒントを与えるためにだ」
「ふっ……大した想像力だ。それで? 君のその与太話はいったいいつ終わるんだ?」
「もう少しで終わるさ。……お前はこの手帳の中身を確認したが、後で名護さんから俺に届けさせる必要があったから、これはその場に残して帰ったはずだ。だから、もしかしたら細かい部分……こいつを見落としていた可能性があると思ったんだ」
冬吾は手帳のカバー裏から一枚の紙を取りだした。
「それは?」
「ここに挟まっていた……手紙だ。きっと、俺の親父に向けてのものだろう。親父はそれを、ここに挟んで大事に保管していた」
「手紙……?」
冬吾はその手紙を折り畳まれた状態で神楽へ手渡す。
「――……ッ!?」
手紙を広げた瞬間、神楽の表情に明らかな動揺が見えた。彼女がここまで素の感情を表情に出すのは今までで初めてのことだ。つまり……それだけの衝撃があったということ。
「……今の反応で、やっと確信できたよ。その手紙を書いたのは、お前なんだな……」
「…………」
神楽は黙ったまま、その手紙を見つめていた。
『ありがとうございました。おじさんのことは絶対忘れません』
そのとき神楽がどんな気持ちでその手紙を書いたのかはわからない。だが、彼女と戌井千裕との交流があったことは確かだ。
冬吾は話を続ける。
「叢雲のターゲットを記録したファイル……あれには、十六年前の十二月から十五年前の十二月にかけての一年間、記録が途絶えている時期があったんだ。その時期は親父が仕事で忙しくて、よく家を空けていたのを覚えている。親父は毎年俺の誕生日には写真を撮っていたのに、その年だけ撮らなかったから印象に残ってるんだ。早坂晋太郎という人が調べたところによると、叢雲は以前、殺し屋を休業していた時期があったらしい。それがその一年間だったってわけだ。ではその一年間、叢雲は何をしていたのか? ……ある大組織の要人を護衛する任務に就いていたらしい。予想だがその組織とは、伏王会のこと。そしてその要人というのは……伏王会会長の孫であるお前のことだったんじゃないのか……神楽」
「…………ふっ……ふふふっ……」
神楽は突然笑い出すと、長椅子ソファの背もたれに浅く腰掛ける。そして、疲れ果てたように深いため息をついた。
「…………探偵に真相を見抜かれた犯人は、敗北を認め全てを語らなければならない。それが、ルールというものだな……」
小声で呟いたかと思うと、神楽は立ち上がった。
「いいだろう。その推理に敬意を表して……教えてやる。――君の言うとおりだよ、戌井冬吾。私は君の父上を殺した三人……岸上豪斗、名護修一、そして真季蘭童の三人へ復讐をしたのだ」
「やっぱり……そうだったのか……」
だとすれば、神楽の計画は岸上豪斗が殺されたあの二ヶ月前よりも更に以前から始動していたということになる。全ては……戌井千裕の、叢雲の仇を討つための復讐だったのだ。
「……今から十六年前のことだ。私は当時伏王会と対立していたある組織の手によって、誘拐された」
神楽は記憶を思い起こすようにゆっくりと語り出す。
「私を人質にして、伏王会の動きを封じるための誘拐だ。私が危害を加えられることはなかったが、当時の私はまだ子どもだった。敵の手中に落ちて、殺されてしまうのではないかと子どもらしく怯えもしたよ。そんな私を救ってくれたのが……叢雲だ。叢雲は当時まだ生きていた私の父が雇った殺し屋で、その頃で既にAランクのヒットマンだった。叢雲はアジトにいた敵組織の人間を皆殺しにし、私を無傷で助け出してくれた……。その功績を買って、父は叢雲を護衛として一年間、私に付けることを決めたのだ。当時の伏王会にはまだまだ敵が多かったからな。また同じようなことがないように、優秀な護衛を付けることにしたのだろう。伏王会から贈られたあの指輪は、その時のものだ」
それが叢雲と神楽の出会いだったのだ。
「護衛というだけあって、それから私は一日の大半を叢雲と共に過ごした。窮屈さを感じなかったと言えば、嘘になるが……その時間は私にとってかけがえのないものだった。父も祖父も、私のことを将来有望な後継者という目線でしか私を見てはくれなかった。他の伏王会の人間も、多かれ少なかれ似たようなものだ。その中で叢雲は……私という人間を見てくれた、初めての人だった……ように思う。私は優しい叢雲が好きだった。飾り立てた言葉で偽ろうとしない叢雲が好きだった。私も、叢雲も……互いに色んな話をしたよ。勿論、叢雲には息子がいるという話も聞いていた。君のことだ。名前も知らない君のことを、私は勝手に弟のように思っていたことだってあるんだぞ? ふふっ……」
神楽は懐かしむように笑う。叢雲との記憶を語る神楽は、普段の彼女とはまるで違った雰囲気だ。
「そしてあっという間に一年が過ぎ……私は叢雲と別れる際に、この手紙を書いて渡したのだ。ふっ……こんなもの、とっくに捨てられただろうと思っていたのにな……」
神楽は目を細めつつ言った。
「いずれは私も組織の幹部となる。何時になるかはわからないが、叢雲と再会する機会はあるはずだ……当時の私はそう思っていた。だが、四年前のあの日……私は叢雲との再会を果たす前に、彼の死を知った。一年も一緒に過ごしていれば、叢雲の本名が戌井千裕だということはわかっていた。彼が殺された事件についての報道を見て、私は愕然としたよ。殺し屋という職業のことを考えれば、いつ死んでもおかしくなかったというのは当然なのに。私はそんなことにさえ気づかないほど、叢雲の強さと……そしてまた会えるだろうということを信じて疑わなかったのだ……。――そして、私は決意した」
神楽は左手を掲げて、ゆっくりと握りしめる。
「叢雲を殺した者を必ず探し出して、相応しい罰を与えてやるとな……」
それではこれは、四年がかりの復讐だったというわけか……。
神楽は先ほどまでとは一変して、法廷で対峙した時にも似た雰囲気を纏って話し出す。
「私は伏王会での足場固めを進めるかたわら、その事件についての調査を進めた。手がかりは乏しく、砂漠の中で米粒を探すにも等しい作業だった。それはもう、長い時間がかかったよ。だが……今から数ヶ月前、ようやく容疑者を二人まで絞り込むことが出来た。それが名護修一と岸上豪斗だ。私は部下を使って二人にそれぞれ継続的な尾行調査と盗聴を行い、更に情報を集めた。そして、電話の内容などから二人に共通するボスが渡久地友禅であることを知ったのだ。断片的にではあるが、戌井千裕暗殺に関する情報も集まってきていた。おそらく渡久地の命令で、名護と岸上の二人が協力して叢雲を殺したのだろう……そういう推測は立つ。しかしそこで、別の問題に行き当たる。名護と岸上はともかくとして、諸悪の根源である渡久地友禅をどうやって追い込むかという問題だ。渡久地の権力は絶大で、いかに私であろうとも簡単に手の出せる相手ではない。そこで私が目をつけたのが、左門寺なる男が残したというSファイルだ。Sファイルの存在と内容は、名護が渡久地との電話で喋っていたので知っていた。叢雲が殺された理由であり、渡久地友禅の最大の弱点……それを手に入れることが私の復讐には必要不可欠であると考えたのだ」
「でも、Sファイルはもう……」
「そう……Sファイル1の在処を示したSファイル2の入ったUSBメモリは、叢雲が死んだ今、指紋認証ロックを解除出来ない。それは私もわかっていたが、もしかしたらハッキングによって解除が可能かもしれない。そこで、名護の隠れ家に盗みに入ったのだ。君が言ったとおり、イエローアローズの仕業に見せかけてな。他にもあの指輪を含めて、こそ泥が盗みそうなものを一通り奪っていった。USBメモリについてはやはりロックを解除するには至らなかったが、私はそれとは別に面白いものを見つけていた。それは、小型の金庫だった。それもまた名護の隠れ家から盗み出していたものだ」
小型の金庫……? 法廷ではまったく出てこなかった話だ。
「今でこそ名護の隠れ家ということになっているが、あの場所はおそらく、かつて叢雲が隠れ家として使っていた場所だ。その金庫は特殊な鍵が使われている上に、無理やり開けようとすると中の爆弾が中身を吹き飛ばす仕掛けが施されていた。蓋の周りや鍵穴を調べてみると埃が詰まっており、金庫は数年は使われた形跡がない。私はその金庫が叢雲のものである可能性に気がついた。名護は鍵を見つけられなかったのだろう。そしておそらくその金庫の存在を、渡久地にも教えていなかった。渡久地から鍵を探せと言われれば、戌井千裕の自宅を調べる必要が出てくる。つまり、君やその妹を巻き込むことになるからだ。その事態を避けたかった名護は、金庫の存在自体なかったことにしたのだ。しかし私は、その中にこそ重大な手がかりがあるかもしれないと考えた。鍵の正体については、見当がついていたよ。昔、叢雲が話して聞かせてくれたことがあった……いつも持ち歩いている鞘入りナイフを見せて、『これは鍵なんだ』とね」
「鍵……だって? まさか――」
「そう……このナイフだよ」
神楽はスーツのポケットから、千裕の形見である鞘入りナイフを取りだした。あの礼拝堂で奪われてからずっと、神楽が持っていたのだ。
「このナイフの柄の中に、金庫を開ける電子チップが埋め込まれている。これを鍵穴に近づけると、金庫のロックが解除されるという仕組みだ。当時はそういった鍵はまだ珍しかったがな。そして二ヶ月前……私は一度、このナイフを手にしている。覚えているか?」
「そうか……あの時に!」
二ヶ月前、岸上豪斗が殺された事件の時! 神楽にあのナイフを奪われてしまったのだった。あの時は、岸上豪斗が同じナイフを持っていたことを利用するトリックのために盗んだのだと思っていたが、本当の狙いはそっちにあったのか……!
「左様。私はあの時、君から奪い取ったこのナイフで金庫の鍵を開けたのだ。その為に、あの日……私は岸上豪斗を利用して君をおびき寄せた」
「なんだって……?」
「別に凝った真似はしていない。ただ、脅迫したのだ。『戌井冬吾を呼び出して四年前の真実を話せ。さもなくばナイツに貴様の素性をバラすぞ』とな。渡久地のスパイであることがバレたら、岸上豪斗は殺されるだろう。私の言うことに従わざるを得なかったわけだ。四年前の事件のことを餌にすれば君が必ず食いついてくると思った。そして全ては私の思い通り……ちょうど私の差し向けていたスパイが岸上豪斗に感づかれそうになっていたので、それを利用して奴を殺させたというわけさ」
あの事件の裏で、そんな思惑が働いていたなんて……。
「ナイフを使って開けた金庫の中には、USBメモリが入っていた。指紋認証ロックなどの機能はついていないタイプのものだ。そう……最初に左門寺が叢雲へ渡したUSBメモリはそっちだったのだ。あの指紋認証ロックのついたUSBメモリは、後から叢雲がコピーしてロックをかけておいたもの。オリジナルは金庫の中に保管してあったというわけだな。私はそうしてSファイル2を手に入れ、そこに記載されていた情報をもとにSファイル1をも入手した。そして知ったのだ……渡久地友禅の最大の弱点……真季蘭童との入れ替わりの真相をな。だが、Sファイルはそのままでは使い物にはならなかった。左門寺がある種の確信を得て書いているのは理解できたが、それを裏付ける証拠がないのだ。そのままではただの言いがかりに近い。左門寺がそれを公表できずに殺されたのも、そのあたりに理由があったのだろう。真季蘭童を破滅に追いやるには、まだ数手ほど足りなかった。そこで私は、一つの計画を思いつく」
神楽は微笑を浮かべて言う。
「真季蘭童をアルゴス院の審問会にかけ、大衆の面前で、逃げ場のない場所に追い詰めた上で入れ替わりの真相を暴く……それが最も確実に奴の息の根を止める方法だと私は考えた。言い逃れや誤魔化しなど一切通用しないような状況に追い詰めなければ、真季を倒すことは出来ないだろう。この裏社会でそれが可能だとすれば、それはアルゴス院の審問会という舞台しかあり得なかった。この計画において最も重要であり困難なポイントは、そもそもどうやって真季を審問会にかけるかということだ。真季に警戒されてしまえばその時点で審問会を回避され、計画は失敗となる。私はこの計画を成功させるために、ありとあらゆる布石を打った。その一つが、禊屋だ」
「禊屋が……?」
「奴のことは以前から注目していた。ナイツ夕桜支社にたいそう頭のキレる女がいるとな。真季を審問会で裁くには、私が奴の味方のフリをして審問会を誘導するのが一番良い。だがそれには、優秀な追及役が必要不可欠だ。真季の信頼を勝ち取り奴を油断させるためには、私もそれなりに優秀な審問官を演じなければならないからな。私と互角以上にやり合い、そして真季を追い詰めることが出来そうな審問官……心当たりは禊屋くらいのものだった。禊屋を計画に組み込むことは始めから決まっていたのだ。そして布石と言えば……君もそうだ、戌井冬吾」
「俺も……?」
神楽は愉快そうに喉を鳴らして笑う。
「くくっ……だから言っただろう? 君は今回の計画において、最も大事なピースだった。最初はナイフだけ拝借出来れば君のことはどうでもいいと思っていたのだがな。あの最初の事件の後で君に会ったとき……思い直したのだ。君を上手く使えば、真季を誘い出せるかもしれないとな」
「ど……どういう意味だ?」
「私は君をナイツに入らせた。そしてそのことがそれとなく真季に伝わるように仕組んだのだ。しかも、岸上豪斗が殺される直前に会おうとしていたという事実も添えてな。そうすることで真季に君のことを意識させた。君が父親の事件の真相を探し、いずれ自分の元に辿りつくのではないか……と真季に警戒させたのだ」
「どうして……そんなことを?」
「当然、真季が君を殺そうとするように誘導するためだ。実際、真季は手始めにキバを使って君を殺そうとした。そうだな?」
「ああ……でも名護さんがそれを事前に教えてくれて……ッ! まさか……!」
そこで神楽の思惑に気がつく。
「ようやく気がついたか? 真季が君を殺そうとすれば、名護は君を助けるだろうと私は踏んでいた。戌井千裕への罪悪感からか、君のことは本心から大切に思っているようだったからな。そのために私は、予め名護に警告状を出していたのだ。無論私の正体は隠したまま……『真季が戌井冬吾を狙っているから警戒しろ』、とな。私の想定通り、名護は真季を裏切って君を助けた。そう、名護に真季を裏切らせるということが重要だったのだ。そうして、真季に『名護は裏切っている』という認識をさせることが私の計画においては欠かせなかった」
「そうか……予めそういう認識を作っておけば、真季は必ず名護さんを殺そうとする。そして名護さんが裏切ってお前に秘密を打ち明けようとしたという嘘も、説得力を増す……」
「その通り。名護が私に真季の秘密を打ち明けようとしているならば、真季自身が動いて名護を始末する必要が出てくる。法廷で真季が言っていたことだが、自分以外の人間に名護を殺させると、名護が何らかの証拠を用意していた場合はそれを回収されてしまう恐れがある。それは真季にとって非常に都合が悪いからな。無論、電話で真季がそう考えるように誘導することも欠かせなかったが……私にとっては容易いことだ」
真季も結局は、神楽の思うとおりに動かされていたということか……。
「私は真季の味方をするフリをして計画を持ちかけ、実行させた。君に濡れ衣を着せればそれは真季にとっても都合が良いことだし、それによって禊屋も審問会に誘い出せるだろうから一石二鳥だった。後は君が最初に推測したとおりだ。私は審問官として法廷に立ち、君を追い詰める。禊屋はそれに対抗して真季の殺人を暴こうとする……一つのアクシデントを除いては、審問会の流れは私の想定通りだった」
「アクシデント……禊屋が倒れたことか」
「そう。あの時ばかりは私も流石に肝が冷えたな。しかし……君のお陰で何もかも上手くいったよ。ふふっ……感謝しているぞ、心から」
神楽はそこで、思い出すように言う。
「ああ、そうそう。もう一つ重要なことがあった。私は今回の計画について、予めアルゴス院の長であるマスターバベルに話を通しておいた。アルゴス院をスパイさせている渡久地友禅の正体を暴いてやるから、私の邪魔になるようなことはするなと言いつけておいたのだ。正体は不明だが、マスターバベルはあれでなかなか話がわかる。真季が余計な工作を行えないように審問会の開始を通常より大きく早めることが出来たのも、マスターバベルのおかげだ」
そうか……マスターバベルにも手回しを行っていたのか。だからマスターバベルは閉廷の直前、神楽がニムロッドに疑われていたのを助けるような真似をしたのだ。
神楽はそこで大きく息を吐き出すと、満足気に言った。
「さぁ……これで私の告白は終わりだ。岸上豪斗、名護修一、真季蘭童の三人は私に操られてそれぞれ破滅を迎えた。私の長い復讐は……ここにようやく終わったのだ……」
……全ては、神楽によってコントロールされていた。《神理誘導(ゴッドハンド)》の異名に相応しい圧倒的な知略と機転だ。その遠慮深謀は、もはや芸術的とさえ感じてしまう。女神の断罪は、かくして遂げられた――。
「……神楽」
冬吾は静かに言った。
「お前の方法が正しいなんてこれっぽっちも思わない。お前のその計画のせいでひどい目に遭わされたっていう恨みも、勿論ある。……でも、お前がこの四年間、どんな思いで復讐を遂げようとしていたかっていうのは……少しだけ、わかる気がするんだ」
「…………言っただろう? 私を理解しようとするなど、無駄なことだ」
神楽のその言葉はどこか、優しげにも悲しげにも聞こえたのだった。
「……戌井冬吾。私はこの審問会が始まる前、禊屋とある約束をしていた。審問会で禊屋が勝てば、君を解放し、二度と関わり合いにならないというものだ」
「えっ……?」
「私は目的を果たしたが……審問会で私が敗北したのは事実だ。約束は守ろう。君はもう自由だ。ナイツを抜けて一般人に戻ろうが、私はもう関与しないと誓おう。元より、この審問会が終われば君を縛り付けておく必要もなかったしな」
自由……ナイツから抜けることが出来る……! 元の生活に……戻れる……!
冬吾の胸中にじわりと暖かいものがこみ上げてくる。これでもう、危険な目に遭うこともないのだ……。
「……一つ、提案なのだが」
神楽は少し声を抑えるようにして言った。
「もしも、君にその気があるのならば……だが。ナイツを抜けて、私の元に来ないか?」
「な……なんだって? いったい何の冗談だ?」
「冗談ではない。こう言ってはなんだが、私は君のことを結構気に入っているんだ。真季の刺客から二度も生き延びた幸運と、そして先ほどの法廷で見せた土壇場での底力……このままただの一般人に戻すには惜しい。それだけが理由というわけではないが……とにかく私は、君が欲しいんだ。どうだ……? 私の元に、来てはくれないか……?」
神楽は哀願するように言う。また、自分を惑わそうとする演技……そうなのだろうと思ってはいても、どこか真実味を感じてしまう。
だが冬吾は、かぶりを振って答えた。
「……あり得ないな」
神楽は一瞬の間を置いてから、肩をすくめて笑った。
「ふっ……だろうな。言ってみただけだ……」
そう言うと、神楽は持っていた鞘入りナイフを冬吾に向けて放る。冬吾はなんとかそれをキャッチした。
「返そう。君の大事なものなんだろう? 長く借りていて悪かったな」
「ああ……」
冬吾はあることを考えていて、しばらくその場に立ち尽くしてしまった。
「どうした? まだ私に用事でもあるのか?」
神楽が尋ねてくるのには答えず、冬吾は彼女に近づいて千裕の手帳を差しだした。神楽は訝しげに更に尋ねる。
「……これは何だ? 何のつもりだ?」
「この手帳は……書かれている内容からして戌井千裕のものというよりは、叢雲のものだ。だったらこれは……誰よりも叢雲のことを思っていた者が持つべきなんじゃないかって。……そう、思ったんだ」
「…………」
神楽は黙ったまま、その手帳をゆっくりと受け取った。
「――俺はもう戻る。じゃあな」
冬吾は踵を返して、部屋を出ようとする。しかし、それを神楽が呼び止めた。
「……戌井冬吾」
「……なんだ?」
冬吾は足を止めて、顔だけ振り返る。神楽はいつもの不敵な笑みを浮かべて、言うのだった。
「……二度と私の前に姿を現すなよ」
冬吾は軽く肩をすくめて、答える。
「こっちの台詞だ」
――時刻は夜の九時半を回っていた。外はすっかり暗くなっている。
冬吾は自宅近くにある公園のベンチに、禊屋と寄り添うように座っていた。最後の見送りにということで少し離れた場所で車を降り、禊屋と二人で歩いてそのままこの公園に入ったのだ。
――そう、これが最後だ。薔薇乃たちにはもう話してある。冬吾はもう、ナイツを抜けたのだ。つまり……禊屋とこうして話すのもこれが最後になるだろう。
「やっぱ寒いねー……。クリスマスイブの夜だから当然だけど」
禊屋は白い息を吐きながら言う。
「大丈夫なのか? まだ風邪治ってないんだろ?」
「だいじょぶだいじょぶ。今はだいぶ具合良いし」
「いつもそんな調子だからあんな風に倒れたりするんだぞ。……本当に、気をつけてくれよ」
「えへへ……はーい」
ぺろりと舌を出して言う。本当に反省しているのだろうか……。
それからしばらく、無言の時間が続く。お互い、どう切り出すかを迷っているようだった。
「やっぱり……ちょっと寂しいな」
冬吾が先に言う。
「ナイツを抜けて、元の生活に戻る……ずっと望んでいたことだったはずなのに。今は心の底から喜べない自分がいるんだ。ちょっとだけ……ほんのちょっとだけ、あの場所に居心地の良さを感じてしまったからなのかもしれない」
「……でも、やっぱりキミは戻らなきゃダメなんだよ。灯里ちゃんのこともあるしね」
「ああ、わかってる。それは疑っちゃいないよ。禊屋がせっかく用意してくれたチャンスを無駄にするわけにもいかないしな」
「あはは……まぁ、あたしがあんな約束しなくても、神楽はキミを解放するつもりだったんだとは思うけどね」
禊屋もやはり、神楽の思惑の大体のところは察していたらしかった。冬吾が神楽と話した内容についてはとくに訊いてはこなかったが。
「……あのさ、禊屋」
「ん、なぁに?」
禊屋がこちらに顔を向ける。それだけで胸が高鳴って、言葉が引っ込んでしまう。そこをなんとか引っ張り出して、冬吾は言った。
「その……これからも会うことって出来ないのか? 俺たち」
「えっ……?」
「ほら……また前みたいに仕事が休みの日にさ。灯里も入れてどこか出かけたりとか……夕莉先輩も呼んで……そういう風に会うことだって、出来るんじゃないのか……?」
「…………それは、ダメだよ」
禊屋はとても悲しそうな表情で言う。
「キミが本当に裏の社会から足を洗うなら、そんな中途半端はダメ。そうやって付き合いを続けてたら、またどんな形でキミを巻き込んでしまうかわからないもん。同じ街に住んでいる以上は、もしかしたらどこかで顔を合わせることくらいはあるかもしれないけど……その時もお互い知らんぷりしよう。……あたしは周りの人を不幸にしちゃう体質だからさ。キミをまた不幸にさせたくないの。……ね? それは、わかってくれるよね?」
「……わかった。未練がましいこと言って、ごめん。でも、一つだけ言わせてくれ」
冬吾は禊屋の目を見てはっきりと言う。
「俺はお前のせいで不幸になんて、なってないよ。むしろ……お前に出会えたことは嬉しかった。とても、幸せなことだったと……思う」
「っ…………!」
禊屋の目から一筋の涙が零れる。一度流れ出すと、決壊したダムのように涙がぼろぼろと零れだした。禊屋はそれを袖で拭いながら、
「あはは……やだなぁ、ほんと……。最後くらい泣かずに笑顔でお別れしようって思ってたのに…………思ってたのに……ひっぐ、そんなこと言うの……ずるいよぉ……」
禊屋は嗚咽を漏らしながら、泣き笑いの表情を浮かべる。
「……ごめん」
冬吾もそれにつられて涙が零れそうになるが、寸前で袖で拭った。
「はぁー……ダメダメだね、あたしたち。最後だからって話せば話すほど、お別れしたくなくなっちゃう……。――でも、そろそろ終わりにしないとね」
禊屋はベンチから立って、冬吾の正面に回り込む。そして少し屈むようにして言った。
「ね……? 最後に三十秒だけ、目、閉じててくれない?」
「目を?」
「そ! 心の中で三十秒数えるまで、ぜ~ったいに目を開けちゃダメ! それに、何か喋るのもダメ! その間に何が起こっても、黙って三十秒目を閉じ続けるの。できる?」
禊屋は口元の前で右手の人差し指を立て、ウインクする。
「……ああ、わかったよ」
「んふふっ! それじゃあ、始めるよ? ――よ~い、どん!」
禊屋の笑顔を見たまま、そのまま目を閉じた。そのまましばらく、無音の時間が過ぎる。そして心の中で十秒ほどが経過したとき――
「ありがとう」
小さく禊屋の声が聞こえ、冬吾の唇に暖かく柔らかなものがゆっくりと触れた。三秒ほどしてからその感触は消え、禊屋の気配も段々と遠ざかっていくのがわかった。
そして……心の中で長い長い三十秒を数え終わる。
「――禊屋ッ!!」
冬吾は叫んで立ち上がる。公園の周囲を見渡すが、しかし、もうそこには――やはり、禊屋の姿はなかった。
今すぐ追いかければ、追いつくことは出来るかもしれない。だが、冬吾はそうしなかった。そうすればまた、彼女を困らせてしまうから。一生懸命、笑顔で別れようとしてくれた彼女の思いを無駄にしてしまうから。
冬吾はまたゆっくりと同じ場所に座り込んで――泣いた。
三十分ほど一人で過ごしてから、冬吾はようやく公園を出ることにした。
そうだ、俺には帰る場所がある。もうこんな遅い時間になってしまった。早く帰らなきゃ……。
公園の出入り口に差し掛かったところで、冬吾は足を止めた。道路の向こうから、見知った姿が歩いてくるのを見かけたからだ。
「あっ……」
向こうも冬吾に気がついて、足を止める。コートを着込んだ江里澤夕莉だった。
「あー……こんばんわ。先輩」
冬吾はなんと言っていいかわからず、間の抜けた挨拶をしてしまう。夕莉はほっとしたように微笑んで言った。
「ちょうど……君を探しに出てきたところだったんだ。何だか……近くにいる気がしたから」
「……そうでしたか。すみません。ご心配をおかけしました」
「灯里ちゃんが君のことを首を長くして待ってるよ。料理も用意してある。少し遅いけど、クリスマスのお祝いでもしようじゃないか」
「そっか……今日クリスマスか。なんか、ほっとしますね」
こんな時間までどこで何をしていたのか、夕莉は訊こうとしなかった。
「冬吾」
「はい?」
ただ、夕莉は優しげな表情で冬吾へ向かって言う。
「……おかえり」
冬吾はその言葉を胸の内でじっくりと噛みしめると、「はい」と答えてから、続けた。
「……ただいま」
-終-
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