1 / 61
case1 監視された部屋
1 闇の住人たち
しおりを挟む闇に君臨する者達がいる。金と暴力の支配する世界における強者――表、裏を問わず社会への多大な影響力を持つ彼らは、日本の陰たる支配者とも言えた。
その中に、岸上(きしがみ)という一族がある。没落華族の末裔である先代当主、岸上亜門(きしがみあもん)は海運業を営む傍ら、ロシアンマフィアとの密貿易で再び財を成した。そして、それを元手に闇の住人達の間で仲間を集め、ある一つの組織を作った。商売仲間であるマフィアの形式を取り入れた、犯罪組織である。
その組織形態は犯罪のデパートとでも言うべきもので、取り扱うものは女、武器、麻薬、殺しと様々だった。
それから数十年後――現在、その組織は全国各地に支部を置き、日本の裏社会において最も強力な一派とされる。
闇の世界に身を置く彼らは、無法の中に秩序を保つことでその存在を表立って知られることを避けていた。非日常の存在であり続けること、それが犯罪組織としての鉄則であった。
――そして不幸なことに、今まさにその非日常の奔流に呑まれようとしている男がいたのである。
「――ああ。……ああ。予定通りだ。そちらの指示通りにやっている」
――暗闇。電灯もつけていない真っ暗な部屋の中で、小さく、話す声がしていた。誰かに聞かれぬよう、隠れ、潜むかのように。
その声は、電話をしているようだった。
『機器の回収は?』
「すべて滞りなく。処分した」
『ご苦労。では、次の指示を待て。その間、再度プランの確認をしておくように』
「了解。ところで……その男、本当に大丈夫なのか?」
『貴様が心配することではない。私の言うとおりに動くことだけを考えていろ。まだ死にたくないのであればな』
「…………」
『安心しろ。貴様を失うのはこちらとしても都合が悪い。約束しよう……私の言うとおりに動けば、助けてやる』
電話の声は、一呼吸置いてから続けた。
『――かの男には、生贄になってもらう』
「……計画のことなら、理解している」
『ならばわかるな? 私自ら協力してやっているんだ。そのことを忘れるなよ』
「ああ……頼りにしている」
『よろしい。ではな……期待しているぞ』
電話は切られた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる