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第二章
10、和歌と真子
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まだ前世の記憶が戻っていない、一学期最後の日。
図書室に居た私に、彼が声を掛けて来た。
ほんの些細な一言。
「また二学期に」
それは、いつも無愛想で不機嫌そうな彼からは想像出来ない、静かな笑みと、優しい声色。
驚き、そして、ざわめきが胸をくすぐった。
今となって思えば、その、ちょっとしたくすぐりが、記憶の源を揺らしてくれた波紋だった様な気がする。
ほんと、龍崎君は、余計な波紋も起こしてくれた。
*****
「和歌さ、透夜の事、前世から好きなのに、どうして誤魔化してるの?単なる恥じらいじゃなさそうだし」
白兎高校からバイト先へ向かう道すがら、真子が和歌に問う。
和歌は「え?」って顔を真子に向ける。
「もしかして、バレてないと思ってた?今の和歌は隠し上手みたいだけど、前世版和歌なんて、露骨に顔に出てたわよ。透夜に向ける笑顔なんて、とろけてて可愛かったんだから」
「・・・忍びらしく、頑張って、隠してたつもりだったんですけど」
「忍んでなかったね、残念ながら、頑張りは認めるけど。で、私の質問の答えは?誤魔化す理由」
「誤魔化してません。前世の私が、透夜さんを好きだったのは確かです。でも、今の私は龍崎君を好んでない、ただそれだけです。前世と今は違うんです」
「ややこしい・・・いじっぱりめ」
ふいっと顔を背け、頑なな態度の和歌。
これは幾ら問い詰めても意地を緩めるつもりはなさそうだ、と真子は諦める。
とりあえず、今日の所は。
「それと聞きたかったんだけど、透夜と和歌ってさ、前世では所謂セフレではあったじゃない?あ、フレンドはないか、先輩後輩?」
「なっ、な、なんで知っ、え??」
「前世では和歌よりお姉さんでしたからね私、そういった事情は、読み取れるわよ。まぁ、さっきも言った通り、和歌がわかり易い娘って言うのもあったけど。それで、今の陽葵和歌ちゃんは、そういう記憶をどういう心持ちで保存してるのかな?」
「し、知りません、覚えてません、記憶に無いです!!バイト遅れるので、先に行きますっ」
底意地悪く尋ねてくる真子に、和歌は真っ赤な顔で全速力で走り去る。
前世の身のこなしを、透夜同様受け継いでいるのか、和歌も足が速い。
あっという間に見えない。
「・・・拗れに拗れて絡んじゃってるな。でも、今世こそは、可愛い忍達には絶対幸せになって貰わないと困るのよね。だから、ごめんね和歌、和歌の気持ちが滞納しない様に、こうやって時々は意地悪言わせて煽らせてね」
その日のバイト中、和歌の脳裏に、やたら前世の色っぽく自分に迫る透夜の姿が行ったり来たりするものだから、無駄に透夜を避けまくるはめになり、透夜は透夜で、自分を拒絶しまくる和歌に、滅茶苦茶ダメージを受けていた。
「・・・和歌が、頭、撫でさせてくれない」
和歌と透夜のギクシャクを、カウンターで珈琲を飲みながら、優雅に眺めている真子。
そんな真子の額を、春が優しく小突く。
「何かしたろ?」
「べっつに」
.
図書室に居た私に、彼が声を掛けて来た。
ほんの些細な一言。
「また二学期に」
それは、いつも無愛想で不機嫌そうな彼からは想像出来ない、静かな笑みと、優しい声色。
驚き、そして、ざわめきが胸をくすぐった。
今となって思えば、その、ちょっとしたくすぐりが、記憶の源を揺らしてくれた波紋だった様な気がする。
ほんと、龍崎君は、余計な波紋も起こしてくれた。
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「和歌さ、透夜の事、前世から好きなのに、どうして誤魔化してるの?単なる恥じらいじゃなさそうだし」
白兎高校からバイト先へ向かう道すがら、真子が和歌に問う。
和歌は「え?」って顔を真子に向ける。
「もしかして、バレてないと思ってた?今の和歌は隠し上手みたいだけど、前世版和歌なんて、露骨に顔に出てたわよ。透夜に向ける笑顔なんて、とろけてて可愛かったんだから」
「・・・忍びらしく、頑張って、隠してたつもりだったんですけど」
「忍んでなかったね、残念ながら、頑張りは認めるけど。で、私の質問の答えは?誤魔化す理由」
「誤魔化してません。前世の私が、透夜さんを好きだったのは確かです。でも、今の私は龍崎君を好んでない、ただそれだけです。前世と今は違うんです」
「ややこしい・・・いじっぱりめ」
ふいっと顔を背け、頑なな態度の和歌。
これは幾ら問い詰めても意地を緩めるつもりはなさそうだ、と真子は諦める。
とりあえず、今日の所は。
「それと聞きたかったんだけど、透夜と和歌ってさ、前世では所謂セフレではあったじゃない?あ、フレンドはないか、先輩後輩?」
「なっ、な、なんで知っ、え??」
「前世では和歌よりお姉さんでしたからね私、そういった事情は、読み取れるわよ。まぁ、さっきも言った通り、和歌がわかり易い娘って言うのもあったけど。それで、今の陽葵和歌ちゃんは、そういう記憶をどういう心持ちで保存してるのかな?」
「し、知りません、覚えてません、記憶に無いです!!バイト遅れるので、先に行きますっ」
底意地悪く尋ねてくる真子に、和歌は真っ赤な顔で全速力で走り去る。
前世の身のこなしを、透夜同様受け継いでいるのか、和歌も足が速い。
あっという間に見えない。
「・・・拗れに拗れて絡んじゃってるな。でも、今世こそは、可愛い忍達には絶対幸せになって貰わないと困るのよね。だから、ごめんね和歌、和歌の気持ちが滞納しない様に、こうやって時々は意地悪言わせて煽らせてね」
その日のバイト中、和歌の脳裏に、やたら前世の色っぽく自分に迫る透夜の姿が行ったり来たりするものだから、無駄に透夜を避けまくるはめになり、透夜は透夜で、自分を拒絶しまくる和歌に、滅茶苦茶ダメージを受けていた。
「・・・和歌が、頭、撫でさせてくれない」
和歌と透夜のギクシャクを、カウンターで珈琲を飲みながら、優雅に眺めている真子。
そんな真子の額を、春が優しく小突く。
「何かしたろ?」
「べっつに」
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