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4章
第3話 逃避行の先に求めるもの
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「そんなに色々な味を混ぜちゃ、素材の味が台無しになるさ!」
「あのねぇリース? 料理ってわかる? ただ焼くだけが料理じゃないのよ?」
「バカにすんなさ! そ、それくらい知ってるさ。あ、あれだろ? 焼いたり、煮込んだり、焼いたり……」
「二度焼いたわね? そういう根本的な料理法じゃなくて、お肉の臭みを消す方法とか、素材の味を引き立てるソースとか、そういう<<美味しくするための工夫>>のことよ」
また、アーシェとリースが言い争っている……。
僕たちがウラノスの麓を発って、今日で30日になっていた。
例えば、僕の幼馴染のピノなんかは、相手の懐に問答無用で入っていくタイプだったから、アーシェとピノは直ぐに仲良くなったけれど、アーシェとリースは、しばらくギクシャクしていたんだよね。
リースは、そんなに口数が多い方じゃなかったし、あまり相手を気遣うようなタイプでもなかったから、ドが付くほどの人見知りのアーシェとは、会話らしい会話が無かったんだ。
そんな二人が仲良く……というか普通に会話できるようになった理由は『喧嘩』だった。
連合軍が放棄した拠点から、ディヴァ方国までの道のりは馬で4日ほどということだったから、荷物が多いことを加味して、おおよそ50日くらいで着くかなぁなんて考えていたんだけど、最初のころの進み具合といったら、それは酷いものだった。
原因はアーシェの体力の無さだ。
まぁそれでも、街の普通の女の子に比べたら体力がある方なのかも知れなかったけれど、僕は寒村の農民の息子で健脚だったし、武人で訓練を怠らなかったガルミアさんやリースは言わずもがなだ。
どうしたって、4人の中でアーシェの歩みだけが遅れてしまうのだ。
それで腕力のあるリースが、アーシェの持っている荷物の多くを引き受けてくれようとしたんだよね
「まったく……アーシェは弱っちぃさ」
と余計な一言を添えて。
アーシェもあれで気が強いところがあるみたいで
「そ、そ、そ、それは……た、たしかに体力は……な、な、ないかもしれない……けど。よ、よ、よ、弱くはないわ!」
とか言い返しちゃって。
そこから、ちょっとした戦闘開始ですよ。
周りに誰もいない荒れ地だったから良かったようなものの、魔法はぶっ放すわ、拳で地面は割るわで、もう大変。
僕とガルミアさんが何とか間に入って戦闘は止めたけれど、その後も口喧嘩は終わらなくてね。毎日のように喧嘩しているうちに、アーシェはリースと普通に会話が出来るようになったってわけでして……。
「ああ、うるっせいさ! 本で読んだだぁ? アーシェは本に書いてあることが全部正しいって思っているんさ?」
「そんなことないけど……」
あ、これはリースが正論だね
「でも、素材が美味しくなる調理法が沢山載っていたわ!」
「へぇへぇ、それは素晴らしいこってさ。まぁ確かに、アーシェが作る料理は美味しいさ」
「でしょ? エヘヘへ……」
お、引くのかリース。大人じゃんか!?
「で、も、だ!」
「なによ?」
やっぱりダメか……
「このカドーが獲ってくれた野兎の肉の臭いを嗅いでみたさ?」
「そんなこと……していないわ」
「ドワーフ族は坑道に棲んでいるさ、だから基本的に家畜しか食えねぇさ」
「それがどうしたっていうのよ」
「動物ってのはさ、食っているモノによって、肉の香りが変わるんさ。家畜ばっかり食っているアタイらドワーフの知識さ」
「そ、そうなの?」
「そうさ。この野兎の肉に臭みはねぇさ。ほんのり木の実の香りがするんさ。この肉は素材のまま楽しんだほうが絶対に美味しいさ!」
「う……たしかにそうかも……」
ん、決着かな。今回はリースの勝ち。
こんな感じで、二人とも無意味な強情を張らないのが救いかなぁ。
たまに答えが出ようがない、どうしよもない喧嘩もしているけれど、賑やかで悪くないと思っていたりする。
連合軍の拠点を発って40日目。
僕はドワーフの族長さんに指摘された<<逃避行の先に求めるもの>>に、まだ答えを見いだせずにいた。
そもそも、もうすぐ着くであろうディヴァ方国に行く意味だって、今のところあやふやだったりするのだ。行き先を決めた理由は、ガルミアさん曰く『消去法』だったわけだしね。
どうにも、僕だけでその<<逃避行の先に求めるもの>>ってのを見つけられる気がしなくて、隣でてくてく歩いているアーシェに聞いてみることにした
「アーシェ、ちょっといいかな?」
「いいわよ。なに?」
「アーシェはこの旅で、成し遂げたいことってあるかな?」
「ええと、私もね、ドワーフの族長さんに言われてから、ずっと考えていたの」
「うん。僕もだ」
「それでね『罪過の子』って一体何なんだろうって思ったの」
「聖女と魔女の先祖返りってことじゃなくて?」
「えっとね、それは私も分かっているわ。私は確かに凄い魔力を持っているみたいだし、カドーは剣を持ったら強いもんね。あ、そういえば<<先見の明>>っていう力もあるんでしょう? それでこれから先の私達のことはわからないの?」
「うーん。具体的なことが分かる能力じゃないからなぁ……。少なくともディヴァに行くことで、全滅するようなことは無いみたいだよ」
「そっか。えっと、それでね。罪過の子を殺さなければならない理由は、魔女グリマラが<<世界を混乱させる異物>>だと言ったことと、英雄ゼルフが<<強すぎる力が世を乱す>>と言ったからなんだよね?」
「そういうことになっているね」
「本当に、それだけなのかな……って思うの」
「どうして?」
「だってね、私はリースとよく喧嘩するじゃない? ほら、最初の頃にあの……割と本気の戦闘とかも……」
「あぁ、してたねぇー」
「で、でね? 結構本気で戦ったんだけどね? リースは強くて……負けもしなかったけど、私、勝てなかったわ」
「そうだったね。僕もリースに負けたことはないけれど、勝ったことはないかな」
「そうでしょ! <<そんなもの>>じゃない? 私たちの力って。そりゃ、リースがもの凄く強いってこともあるかも知れないけれど、そうなったらリースも、世界を乱す強すぎる力の持ち主ってことにならない?」
「確かに……」
そういえばそうだ。
僕の剣の力で、世界を乱すことなどできるとは、到底思えない。
正直、ガルミアさんにだって勝てないし、多分アデルさんにも勝てない気がする。あ、バーニーさんとだったら、なんとか引き分けくらいには……。
つまり、この程度の力で殺されたらたまったものじゃないって話には、僕も同意だ
「きっとね、英雄ゼルフには、罪過の子を殺さなければならない理由が、他にもあったんじゃないかな? って思うの」
「なるほど……ね。そして、その理由ってのは隠さなければならないような理由だってことか」
「うん。私もそう思っているの。だから本当の理由を知りたいなって」
「うーん。でもゼルフは千年前に死んじゃっているし……」
「グリマラがいるわ。 魔女グリマラに聞いてみれば、教えてくれたりしないかな?」
突拍子もないことこを考えるな、アーシェって。
ても確かに、その理由とやらを知っているとすれば、グリマらを置いて他にはいない。
ヴァンパイアのラミールと、その上役みたいな男バドムスの会話からすると、本当に魔女グリマラは実在していて、今も生きているらしいし
「グリマラに会うってなると、ウラノス山脈の向こう側……か」
「お山は登れないのよね?」
「無理だって話だね。となると……あ! ドワーフの坑道があるじゃないか!」
ドワーフの坑道を使って、魔族は人間の世界、つまりコチラ側にやってきたのだから、それを使えば魔族の世界、つまりアチラ側に行けるってことじゃないか。
ってことは、ディヴァ方国に行くのは無駄足になっちゃうなぁ……
「ああ、それは出来ないさ」
僕とアーシェの話を聞いていたらしいリースが、首を振って言った
「アタイらは人間と協定を結ぶことになるさ。ってか多分もう結ばれているんじゃないさね? となると、アタイらドワーフ族と魔族は敵対関係になるってことさ」
「だからアタイらは、あの坑道から撤退して、魔族が知らない坑道に棲家を移すことに決めていたのさ」
「つまり、あの坑道は放棄するってこと?」
「そうさ。すでに魔族が使っている坑道だし、やつらをそこから追い出すのは不可能に近いからさ」
「あの坑道以外に、魔族の世界に繋がっている坑道はないの?」
「ないさ」
「これから掘ることは?」
「できるかも知れないさ。でもどれほどの時間が掛るかわからないし、魔族もきっと警戒していると思うさ」
「うう……たしかに」
ドワーフの坑道を使うのは諦めたほうが良さそうだね。
といっても、東に進み続けたって、大地が続く限り、ウラノス山脈は横たわっているわけだし……ん?
「地が続く限り?」
「どうしたのカドー?」
ブツブツ独り言を言っている僕の顔をアーシェが覗き込んでくる
「あ、うん。ウラノス山脈ってさ、東西にずーーーっと横たわっているじゃない? 大地が続く限り」
「そういう話ね」
「てっことはさ、大地の終着点が、ウラノス山脈の終着点ってことだよね?」
「あ……そうか!」
「そう。西のライネイヤ共和国の西端は海だ。つまり大地の終着点」
「じゃぁ、海に出て回り込めば……魔族の国に行けるってこと?」
「行ける<<かも知れない>>だけどね。あくまで可能性の話だよ」
「じゃあ、ライネイヤ共和国に向かった方がいいんじゃない?」
「いや、ダメだな」
いつのまに近くに来ていたのか、ガルミアさんが口を挟んだ
「前も言ったと思うが、いきなりライネイヤに行くことはできない。アチラがどのような国かわからないという理由もあるのだが、そもそも関所を抜けられないからだ」
「でも、ライネイヤの商人が、コチラ側に来ることがありますよね?」
「あるな。逆にコチラの商人がアチラに行くこともできる。ただし、これには特別な許可が必要なのだ。いわゆる通行手形だな」
「強行突破することはできませんか?」
「随分と発想が物騒になったな、カドー。まぁかくいう私も最初はそう考えていたのだが、これは言うまでまでもなくリスクが高い。それにどうせここまで来たのだ。ディヴァ方国で、ライネイヤの情報収集と、手形の入手を画策するのがよいと思う」
「そうですね! 僕もそれがいいと思います」
よしっ!
なんとなくだけれど、目的ができた。
ディヴァ方国でライネイヤ共和国に関する情報収集と、通行手形の入手。
そして、ライネイヤ共和国を抜けて、海から魔族の世界へ。
ひとまずの最終目標は、魔女グリマラから罪過の子の秘密を聞くこと!
目標を決めただけで、ただ逃げるだけだったはずの逃避行が、なんというか冒険のようなものに変わったような気がするから不思議だ。
僕たちは軽くなった足取りで、ディヴァ方国の首都シルートを目指して旅を続けた。
「あのねぇリース? 料理ってわかる? ただ焼くだけが料理じゃないのよ?」
「バカにすんなさ! そ、それくらい知ってるさ。あ、あれだろ? 焼いたり、煮込んだり、焼いたり……」
「二度焼いたわね? そういう根本的な料理法じゃなくて、お肉の臭みを消す方法とか、素材の味を引き立てるソースとか、そういう<<美味しくするための工夫>>のことよ」
また、アーシェとリースが言い争っている……。
僕たちがウラノスの麓を発って、今日で30日になっていた。
例えば、僕の幼馴染のピノなんかは、相手の懐に問答無用で入っていくタイプだったから、アーシェとピノは直ぐに仲良くなったけれど、アーシェとリースは、しばらくギクシャクしていたんだよね。
リースは、そんなに口数が多い方じゃなかったし、あまり相手を気遣うようなタイプでもなかったから、ドが付くほどの人見知りのアーシェとは、会話らしい会話が無かったんだ。
そんな二人が仲良く……というか普通に会話できるようになった理由は『喧嘩』だった。
連合軍が放棄した拠点から、ディヴァ方国までの道のりは馬で4日ほどということだったから、荷物が多いことを加味して、おおよそ50日くらいで着くかなぁなんて考えていたんだけど、最初のころの進み具合といったら、それは酷いものだった。
原因はアーシェの体力の無さだ。
まぁそれでも、街の普通の女の子に比べたら体力がある方なのかも知れなかったけれど、僕は寒村の農民の息子で健脚だったし、武人で訓練を怠らなかったガルミアさんやリースは言わずもがなだ。
どうしたって、4人の中でアーシェの歩みだけが遅れてしまうのだ。
それで腕力のあるリースが、アーシェの持っている荷物の多くを引き受けてくれようとしたんだよね
「まったく……アーシェは弱っちぃさ」
と余計な一言を添えて。
アーシェもあれで気が強いところがあるみたいで
「そ、そ、そ、それは……た、たしかに体力は……な、な、ないかもしれない……けど。よ、よ、よ、弱くはないわ!」
とか言い返しちゃって。
そこから、ちょっとした戦闘開始ですよ。
周りに誰もいない荒れ地だったから良かったようなものの、魔法はぶっ放すわ、拳で地面は割るわで、もう大変。
僕とガルミアさんが何とか間に入って戦闘は止めたけれど、その後も口喧嘩は終わらなくてね。毎日のように喧嘩しているうちに、アーシェはリースと普通に会話が出来るようになったってわけでして……。
「ああ、うるっせいさ! 本で読んだだぁ? アーシェは本に書いてあることが全部正しいって思っているんさ?」
「そんなことないけど……」
あ、これはリースが正論だね
「でも、素材が美味しくなる調理法が沢山載っていたわ!」
「へぇへぇ、それは素晴らしいこってさ。まぁ確かに、アーシェが作る料理は美味しいさ」
「でしょ? エヘヘへ……」
お、引くのかリース。大人じゃんか!?
「で、も、だ!」
「なによ?」
やっぱりダメか……
「このカドーが獲ってくれた野兎の肉の臭いを嗅いでみたさ?」
「そんなこと……していないわ」
「ドワーフ族は坑道に棲んでいるさ、だから基本的に家畜しか食えねぇさ」
「それがどうしたっていうのよ」
「動物ってのはさ、食っているモノによって、肉の香りが変わるんさ。家畜ばっかり食っているアタイらドワーフの知識さ」
「そ、そうなの?」
「そうさ。この野兎の肉に臭みはねぇさ。ほんのり木の実の香りがするんさ。この肉は素材のまま楽しんだほうが絶対に美味しいさ!」
「う……たしかにそうかも……」
ん、決着かな。今回はリースの勝ち。
こんな感じで、二人とも無意味な強情を張らないのが救いかなぁ。
たまに答えが出ようがない、どうしよもない喧嘩もしているけれど、賑やかで悪くないと思っていたりする。
連合軍の拠点を発って40日目。
僕はドワーフの族長さんに指摘された<<逃避行の先に求めるもの>>に、まだ答えを見いだせずにいた。
そもそも、もうすぐ着くであろうディヴァ方国に行く意味だって、今のところあやふやだったりするのだ。行き先を決めた理由は、ガルミアさん曰く『消去法』だったわけだしね。
どうにも、僕だけでその<<逃避行の先に求めるもの>>ってのを見つけられる気がしなくて、隣でてくてく歩いているアーシェに聞いてみることにした
「アーシェ、ちょっといいかな?」
「いいわよ。なに?」
「アーシェはこの旅で、成し遂げたいことってあるかな?」
「ええと、私もね、ドワーフの族長さんに言われてから、ずっと考えていたの」
「うん。僕もだ」
「それでね『罪過の子』って一体何なんだろうって思ったの」
「聖女と魔女の先祖返りってことじゃなくて?」
「えっとね、それは私も分かっているわ。私は確かに凄い魔力を持っているみたいだし、カドーは剣を持ったら強いもんね。あ、そういえば<<先見の明>>っていう力もあるんでしょう? それでこれから先の私達のことはわからないの?」
「うーん。具体的なことが分かる能力じゃないからなぁ……。少なくともディヴァに行くことで、全滅するようなことは無いみたいだよ」
「そっか。えっと、それでね。罪過の子を殺さなければならない理由は、魔女グリマラが<<世界を混乱させる異物>>だと言ったことと、英雄ゼルフが<<強すぎる力が世を乱す>>と言ったからなんだよね?」
「そういうことになっているね」
「本当に、それだけなのかな……って思うの」
「どうして?」
「だってね、私はリースとよく喧嘩するじゃない? ほら、最初の頃にあの……割と本気の戦闘とかも……」
「あぁ、してたねぇー」
「で、でね? 結構本気で戦ったんだけどね? リースは強くて……負けもしなかったけど、私、勝てなかったわ」
「そうだったね。僕もリースに負けたことはないけれど、勝ったことはないかな」
「そうでしょ! <<そんなもの>>じゃない? 私たちの力って。そりゃ、リースがもの凄く強いってこともあるかも知れないけれど、そうなったらリースも、世界を乱す強すぎる力の持ち主ってことにならない?」
「確かに……」
そういえばそうだ。
僕の剣の力で、世界を乱すことなどできるとは、到底思えない。
正直、ガルミアさんにだって勝てないし、多分アデルさんにも勝てない気がする。あ、バーニーさんとだったら、なんとか引き分けくらいには……。
つまり、この程度の力で殺されたらたまったものじゃないって話には、僕も同意だ
「きっとね、英雄ゼルフには、罪過の子を殺さなければならない理由が、他にもあったんじゃないかな? って思うの」
「なるほど……ね。そして、その理由ってのは隠さなければならないような理由だってことか」
「うん。私もそう思っているの。だから本当の理由を知りたいなって」
「うーん。でもゼルフは千年前に死んじゃっているし……」
「グリマラがいるわ。 魔女グリマラに聞いてみれば、教えてくれたりしないかな?」
突拍子もないことこを考えるな、アーシェって。
ても確かに、その理由とやらを知っているとすれば、グリマらを置いて他にはいない。
ヴァンパイアのラミールと、その上役みたいな男バドムスの会話からすると、本当に魔女グリマラは実在していて、今も生きているらしいし
「グリマラに会うってなると、ウラノス山脈の向こう側……か」
「お山は登れないのよね?」
「無理だって話だね。となると……あ! ドワーフの坑道があるじゃないか!」
ドワーフの坑道を使って、魔族は人間の世界、つまりコチラ側にやってきたのだから、それを使えば魔族の世界、つまりアチラ側に行けるってことじゃないか。
ってことは、ディヴァ方国に行くのは無駄足になっちゃうなぁ……
「ああ、それは出来ないさ」
僕とアーシェの話を聞いていたらしいリースが、首を振って言った
「アタイらは人間と協定を結ぶことになるさ。ってか多分もう結ばれているんじゃないさね? となると、アタイらドワーフ族と魔族は敵対関係になるってことさ」
「だからアタイらは、あの坑道から撤退して、魔族が知らない坑道に棲家を移すことに決めていたのさ」
「つまり、あの坑道は放棄するってこと?」
「そうさ。すでに魔族が使っている坑道だし、やつらをそこから追い出すのは不可能に近いからさ」
「あの坑道以外に、魔族の世界に繋がっている坑道はないの?」
「ないさ」
「これから掘ることは?」
「できるかも知れないさ。でもどれほどの時間が掛るかわからないし、魔族もきっと警戒していると思うさ」
「うう……たしかに」
ドワーフの坑道を使うのは諦めたほうが良さそうだね。
といっても、東に進み続けたって、大地が続く限り、ウラノス山脈は横たわっているわけだし……ん?
「地が続く限り?」
「どうしたのカドー?」
ブツブツ独り言を言っている僕の顔をアーシェが覗き込んでくる
「あ、うん。ウラノス山脈ってさ、東西にずーーーっと横たわっているじゃない? 大地が続く限り」
「そういう話ね」
「てっことはさ、大地の終着点が、ウラノス山脈の終着点ってことだよね?」
「あ……そうか!」
「そう。西のライネイヤ共和国の西端は海だ。つまり大地の終着点」
「じゃぁ、海に出て回り込めば……魔族の国に行けるってこと?」
「行ける<<かも知れない>>だけどね。あくまで可能性の話だよ」
「じゃあ、ライネイヤ共和国に向かった方がいいんじゃない?」
「いや、ダメだな」
いつのまに近くに来ていたのか、ガルミアさんが口を挟んだ
「前も言ったと思うが、いきなりライネイヤに行くことはできない。アチラがどのような国かわからないという理由もあるのだが、そもそも関所を抜けられないからだ」
「でも、ライネイヤの商人が、コチラ側に来ることがありますよね?」
「あるな。逆にコチラの商人がアチラに行くこともできる。ただし、これには特別な許可が必要なのだ。いわゆる通行手形だな」
「強行突破することはできませんか?」
「随分と発想が物騒になったな、カドー。まぁかくいう私も最初はそう考えていたのだが、これは言うまでまでもなくリスクが高い。それにどうせここまで来たのだ。ディヴァ方国で、ライネイヤの情報収集と、手形の入手を画策するのがよいと思う」
「そうですね! 僕もそれがいいと思います」
よしっ!
なんとなくだけれど、目的ができた。
ディヴァ方国でライネイヤ共和国に関する情報収集と、通行手形の入手。
そして、ライネイヤ共和国を抜けて、海から魔族の世界へ。
ひとまずの最終目標は、魔女グリマラから罪過の子の秘密を聞くこと!
目標を決めただけで、ただ逃げるだけだったはずの逃避行が、なんというか冒険のようなものに変わったような気がするから不思議だ。
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