君と僕とで異世界転生!?

翼姫

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まさかの出会いと昔話

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旅に出てから1週間をかけて不穏なそらを抜けた。つまり、魔王国デリエラを抜けたということになる。
「シエラ様、そろそろ休みませんか?いくら魔王と言えども食事を取らなければ体力が持ちませぬ。1週間持ったことが奇跡ぐらいですよ?」
「何を言っている。僕は言わば箱入り息子みたいなものだったんだ。お金という概念もなく、出された飯を食べて育ってきただけ。勉強と稽古に明け暮れていたんだ。これくらい無理をせねば真実にはたどり着けない。」
「そ…そうなのでしょうか。それなら狩りを致しませんか?もうしばらく歩いたところに迷いの森があります。そこには動物が住んでおりますゆえ、命を頂戴するのです。ただし、あなたの支配から逃れた裏切り者の魔物もいますゆえご用心下さい。」
「裏切り者?そんな者がいるなんてエルとセーラは一言も…」
「シエラ様?」
「すまない、今行く。」
見た目は五、六歳ぐらいの少女だが、とても頼りになる。
それよりも気になるのは、魔物の中に支配下でないもの、つまり裏切り者もいるということなのだろうか?

悩んでみたが答えが見つかる訳もなく、途中で考えるのをやめた。










しばらくして森に着くと、ロードの言う通り魔物の気配が多からず感じられた。
「このような下級の者ならば処罰は私におまかせ下さいませ。」
「わかった。助かるよ」
背後への意識はロードに任せて前方に意識を向ける。するとロードが「この先に鹿がおります」と言うので、最低限まで下げた風魔法を使って見ると、小さななき声が聞こえた。どうやら仕留めたらしい。解体はロードに任せて火をおこした。
1週間ぶりのご飯はとても美味しく、ありがたかった。これが生きているということなんだなと、心の中で強く感じた。
食べ終えた後、ロードが疲れた顔をしていたため(無理をさせすぎたな…)と反省し、そのままここで寝ると告げた。最初は自分が見張ると言い張ったが、「命令だ」と言うとようやく眠った。
「全く頑固な子だなぁ…あぁ…そろそろこの口調やめたいな…」
すやすやと眠る顔を月夜の明かりがうっすらと照らす。キラキラと光る黒髪がとても美しかった。
「ほんと可愛い子…」
サラリと髪を撫でると、シルクのようで気持ちがよかった。
その時だった。
「誰だ!!そこにいるのは!」
明らかに魔物の魔力だった。最初に感じた魔力よりも大幅に濃く、強いのは明らかだった。
「やぁ。あんたただの子どもじゃねぇな。わかってると思うが俺は魔物さ。ここでざっと百五十年ほど生きてるガイオスってもんだ。あんたこそ何もんだ?」
「僕はこの世界の新魔王である。あんたは僕の敵か?」
「ん~難しいこと聞くなぁ魔王さんよ。俺はもうあんたの支配下でもねぇし、殺す気もねぇ。そもそもなんで魔王さんがこんな所に?城はどうした?」
「僕にはシエラとゆう名前がある。僕は人と魔物がなぜ戦わなければならないのかの真実を知るために旅をしている。それと、支配下でも敵でもないのなら僕は威張らなくて言い訳だね。」
「シエラか、いい名だな。そんな理由でこんなとこにきたのか?てか威張るって…お前変なやつだな。」
ガイオスはゲラゲラと笑った。
「そんなに笑わないでくれよ。信じて貰えないと思うけど僕は異世界から転生してきた身でね。魔王の口調とかよく分からないんだけど、エルとセーラに変に尊敬されてるから頑張ってたんだ。中身は15歳の元人間だからね。そこにいる僕が作ったこの子も魔王様魔王様って…なんかむずがゆいんだよね」
「あんたも苦労してんだな。まぁその話信じてやるよ」
「まぁね。ガイオスさんはなんでここに?支配下から外れたのってなんで?」
「ガイオスでいい。真実を知りたいんだろ?話してやるよ。千数百年前、俺が生まれた時はとても平和だった。人間とも共存してたんだぜ?ありえねぇ話だよな。」
ガイオスは昔の話を語り始めた。とても興味のわく、そして信じ難い話だった。












今から数千年前、様々な種族が生まれた。それぞれ支え合い、他よりもかけていた人間達に魔物は人へ魔法を、他の種族達も何かしらを授け、ともに支え合った。人間はその代わりとして知恵を授けた。それは長い間続いた。
そんなある日、ちょうどガイオスが生まれた頃だ。人類の王が魔物を裏切った。魔物たちを悪者にしたてあげ、人類の罪を魔物に押し付け、それらの罪を押し付けられた魔物は勝手に捕らえられ処刑された。
その頃の魔王は優しすぎた。
そんな人間すらも許し、まだ仲良くしようと努力した。そして、とうとう魔物たちにも限界がきた。やがて内乱が発生し、弱りきった魔物たちを見るやいなや人類は戦争を始めた。そして魔物たちは滅びかけた。信じていた人間に裏切られ仲間を失った魔王はこの世を恨み、人類を恨んだ。誰が仕組んだのだと、嘆き悲しみ、亡きものとなった仲間たちを城から眺めひとしきり泣いた。そして誓った。人類を滅亡させるまで、魔物達を根絶やしにはしない。この世は我等が支配するのだ、と。



「そしてその時の戦争やら内乱で生き残った奴らがこの森で行き続けているのさ。」
「それは本当なの?」
「あぁ。自分の目でみて体験したからな。ただ、仕組んだのは人間でも、魔物でもないと思っている。」
「どうゆうこと?」
「実はその翌年、人間の王がとんでもない姿で発見されたのさ。遺体としてね。それはもう無惨に殺されていたよ。その遺体からは魔物でも、人類でもない魔力を感じたという。」

もしこれが本当なら僕はその犯人を見つけ出し、なぜそうしたのかを知る必要がある。そうじゃないと、僕は勇者と…………
三神美琴恋人と殺し合わなければならないのだから。
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