9 / 15
エルフの昔話
しおりを挟む
ひとしきり泣いたあと、ババ様はそっと頭を撫でてくれた。
「とんでもない大役を任されたと思うけれど、戦だけが全てじゃないと分かっている坊やは必ず強くなれるわ。力だけでなく心もね。」
どんなにチートレベルの力を持っていても、いずれ美琴に負けてしまうだろう。真実を知ったあとそれでも戦わなければ行けなくなれば、僕は黙って彼女に切られるつもりだ。そうでないと、彼女が元の世界に戻れないからだ。
「ところでどうしてその勇者さんと旅をしているんだい?」
ババ様の問に僕はふと思う。
「そういえばなんで一緒に旅をしたいなんて言ったんだろう。勇者ならその辺の魔物を倒すのは簡単だし、何よりこんな胡散臭い僕らに声をかけたのはほんとに僕を探してたから?それよりなぜあの森を抜けた先にいたんだろう。タイミングが少しよすぎる気がする。」
「ちょっと変だね…でもまぁ今は一緒のときを楽しみなさい。」
「はい。ところでババ様さま、先程言っていたエルフやハーフエルフが国を出ては行けない理由を教えてくれませんか?戦の真実もですけど、それも気になってて。」
「シエラは知りたがりなのだな。わかった。教えてあげようかね。よそ者に話すのはこれで2回目だったかしらねぇ……」
ババ様は昔を思い出すかのように語り始めた。
それはそれは昔のことさね。私がまだ幼い幼い子供の頃のこと。その頃から既にその掟はあった。昔一度だけ母に尋ねたことがあった。
「ねぇかか様、どうしてここからでちゃダメなの?」
「あなたは気にしなくていいの。大丈夫よ。」
母は笑ってくれたけど決してこたえはくれなかった。
ある日、16になった私は突然やってきたよそ者に攫われたの。
「離して!私はこの国から出ては行けないの!やめて!」
「落ち着いてくれ!僕は君のお母さんに頼まれて君を迎えに来たんだ。」
「どうゆうこと?」
「僕は君のお父さんだよ。信じられないだろうね。君は僕と彼女の間に出来た子どもなんだ。お母さんは君をこの掟とゆうなの檻から出してあげて欲しいとずっと言ってた。そして君が、サーシャが16を迎えたら連れ出すとゆうのが約束だった。」
「うそよ!エルフにはトト様は…」
「そんなわけないだろう!あの国はな、元から本物のエルフの国じゃぁない。国を裏切り、人との子を持ったエルフ達が追いやられ、住むことになった場所なんだ。」
「そんな…でも、なんで。」
父さんだと名乗るその人は母との出会いと、私が生まれた時の喜びと、その後の悲劇を話してくれた。掟とは罰そのもので、それを形にしたものだと父は語った。そして父は子に会えないという罰。母は夫を忘れさせられるという罰。その後、結局逃げることは出来ず、父は殺された。母は私が戻ってきて喜んだ。自分の夫を犯罪者と罵り亡骸を恨んだ。そして30年ぐらい前に寿命で亡くなった。
私はあの時全てを悟った。この国は在り方を間違っていると。いつかエルフの国をひとつに戻し、訳の分からないこの掟を消し去ると心に誓った。まぁ結局自分には何も出来なかったのだけれど。
「とまぁそうゆう訳さね。私はなんの力も持たないハーフエルフさね。ただちょくちょくやってくるこのハーフエルフの子達を我が子のように守るだけさね。」
「そんなことが…。あの、ババ様。僕になにか出来ないでしょうか?どうせこの仮面をし、魔力を隠しているので、魔王だとはバレないはず。魔王が誰かを救うのはダメでしょうか?」
「やはり変わった魔王さね…。母から聞いた初代魔王様を思い出すよ。初代魔王様は全ての生き物に優しさと力を平等に使ってくださったと聞いてるよ。異常な程の力の持ち主なのに、威張らないお方で、異種族だろうと気にせず助けた。母に聞いたその初代魔王にシエラは似ている気がするさね。」
ババ様は優しく笑う。
「初代……魔王。」
「もし坊やがこのエルフ族を変えるきっかけを作ってくれたなら、私が坊やと使い魔の嬢ちゃんに加護をやろう。私の寿命が続く限りその加護も続く。エルフ族に伝わる特別な加護。〔運命の加護〕と言うのだけれど、必ず役に立つものさね。坊やの優しさに甘えさせてもらってもいいかい…?」
悲しそうな顔をするババ様に、僕は元気よく返事をした。
「はいっ!」
「とんでもない大役を任されたと思うけれど、戦だけが全てじゃないと分かっている坊やは必ず強くなれるわ。力だけでなく心もね。」
どんなにチートレベルの力を持っていても、いずれ美琴に負けてしまうだろう。真実を知ったあとそれでも戦わなければ行けなくなれば、僕は黙って彼女に切られるつもりだ。そうでないと、彼女が元の世界に戻れないからだ。
「ところでどうしてその勇者さんと旅をしているんだい?」
ババ様の問に僕はふと思う。
「そういえばなんで一緒に旅をしたいなんて言ったんだろう。勇者ならその辺の魔物を倒すのは簡単だし、何よりこんな胡散臭い僕らに声をかけたのはほんとに僕を探してたから?それよりなぜあの森を抜けた先にいたんだろう。タイミングが少しよすぎる気がする。」
「ちょっと変だね…でもまぁ今は一緒のときを楽しみなさい。」
「はい。ところでババ様さま、先程言っていたエルフやハーフエルフが国を出ては行けない理由を教えてくれませんか?戦の真実もですけど、それも気になってて。」
「シエラは知りたがりなのだな。わかった。教えてあげようかね。よそ者に話すのはこれで2回目だったかしらねぇ……」
ババ様は昔を思い出すかのように語り始めた。
それはそれは昔のことさね。私がまだ幼い幼い子供の頃のこと。その頃から既にその掟はあった。昔一度だけ母に尋ねたことがあった。
「ねぇかか様、どうしてここからでちゃダメなの?」
「あなたは気にしなくていいの。大丈夫よ。」
母は笑ってくれたけど決してこたえはくれなかった。
ある日、16になった私は突然やってきたよそ者に攫われたの。
「離して!私はこの国から出ては行けないの!やめて!」
「落ち着いてくれ!僕は君のお母さんに頼まれて君を迎えに来たんだ。」
「どうゆうこと?」
「僕は君のお父さんだよ。信じられないだろうね。君は僕と彼女の間に出来た子どもなんだ。お母さんは君をこの掟とゆうなの檻から出してあげて欲しいとずっと言ってた。そして君が、サーシャが16を迎えたら連れ出すとゆうのが約束だった。」
「うそよ!エルフにはトト様は…」
「そんなわけないだろう!あの国はな、元から本物のエルフの国じゃぁない。国を裏切り、人との子を持ったエルフ達が追いやられ、住むことになった場所なんだ。」
「そんな…でも、なんで。」
父さんだと名乗るその人は母との出会いと、私が生まれた時の喜びと、その後の悲劇を話してくれた。掟とは罰そのもので、それを形にしたものだと父は語った。そして父は子に会えないという罰。母は夫を忘れさせられるという罰。その後、結局逃げることは出来ず、父は殺された。母は私が戻ってきて喜んだ。自分の夫を犯罪者と罵り亡骸を恨んだ。そして30年ぐらい前に寿命で亡くなった。
私はあの時全てを悟った。この国は在り方を間違っていると。いつかエルフの国をひとつに戻し、訳の分からないこの掟を消し去ると心に誓った。まぁ結局自分には何も出来なかったのだけれど。
「とまぁそうゆう訳さね。私はなんの力も持たないハーフエルフさね。ただちょくちょくやってくるこのハーフエルフの子達を我が子のように守るだけさね。」
「そんなことが…。あの、ババ様。僕になにか出来ないでしょうか?どうせこの仮面をし、魔力を隠しているので、魔王だとはバレないはず。魔王が誰かを救うのはダメでしょうか?」
「やはり変わった魔王さね…。母から聞いた初代魔王様を思い出すよ。初代魔王様は全ての生き物に優しさと力を平等に使ってくださったと聞いてるよ。異常な程の力の持ち主なのに、威張らないお方で、異種族だろうと気にせず助けた。母に聞いたその初代魔王にシエラは似ている気がするさね。」
ババ様は優しく笑う。
「初代……魔王。」
「もし坊やがこのエルフ族を変えるきっかけを作ってくれたなら、私が坊やと使い魔の嬢ちゃんに加護をやろう。私の寿命が続く限りその加護も続く。エルフ族に伝わる特別な加護。〔運命の加護〕と言うのだけれど、必ず役に立つものさね。坊やの優しさに甘えさせてもらってもいいかい…?」
悲しそうな顔をするババ様に、僕は元気よく返事をした。
「はいっ!」
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
俺の伯爵家大掃除
satomi
ファンタジー
伯爵夫人が亡くなり、後妻が連れ子を連れて伯爵家に来た。俺、コーは連れ子も可愛い弟として受け入れていた。しかし、伯爵が亡くなると後妻が大きい顔をするようになった。さらに俺も虐げられるようになったし、可愛がっていた連れ子すら大きな顔をするようになった。
弟は本当に俺と血がつながっているのだろうか?など、学園で同学年にいらっしゃる殿下に相談してみると…
というお話です。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる