『カールロット公爵令嬢は魔女である』~冤罪で追放されたので、本当に災厄の魔女になることにした~

あだち

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一、カールロット公爵令嬢は魔女である、ことにされた

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「お、落ち着いて私……確か、朝、王宮から呼び出しが来て、急ぎだって言うから何も食べずに身支度して。王宮についてから馬車を降りる直前に、しっかり結ったはずの髪が一房こぼれ落ちていることに気がついて、どうしようって慌てていたら兵士たちに馬車を取り囲まれて、ヴァンフリート殿下への呪詛の容疑で逮捕するって言われて、それで、えっと」

 ガチャン。

 己の身に起きたことをぶつぶつ呟きながら反芻していたところで、再び錠が回る音が聞こえた。

「お姉様っ」

 石の床を打つ小刻みな足音ともに現れた小さな顔と、息せききった声。見慣れ聞き慣れたそれらに、混乱していたわたしの胸にはほんの少し安堵が広がった。

「ルゼ! 良かった、あなた無事だったのね! それにしてもどうやってここに」
「見張りの兵士さんに頼み込んで、少しだけ話すのを許してもらいました。それよりお姉様、一体どうして呪詛なんて……。殿下とあんなに仲が良さそうでしたのに」

 妹はリボンで一くくりにしたふわふわの金髪を揺らしながら、私のいる独房へと駆け寄ってきた。心配そうなその顔に、わたしは首をふった。

「違うわ、私は何も知らないっ、罠にはめられたのよ。きっとコウゼン侯爵令嬢かダートクール伯爵令嬢か、もしくは」
「でも、お姉様のお部屋から呪詛に使われたという水晶の短剣と、毒水の入った瓶、それに王太子の名前が血で書かれた羊皮紙が出てきたのはどういうことなんです?」

 初耳だ。私はごく、と息を飲んだ。

「そ、それこそ身に覚えがないわ。信じて、私は何もしていないの!」
「そんな……」

 ルゼの青い目が驚きに見開かれている。ルゼと私は何もかも似ていない。上昇を目指して常に気を張っていた黒髪黒目の私と、自然体でおおらかな金髪碧眼のルゼとでは。

「……わかりましたわ、待っていてください。私のたった一人のお姉様を、こんな卑劣な罠なんかで処刑台になんか送らせません。だからお姉様も、どうか私を信じて待っていてください!」

 鉄格子を掴む私の手に妹の手が重ねられたとき、見張りがルゼを呼ぶ声がした。時間切れだった。



 翌朝、私は本当に牢から出ることができた。文字通り、『牢からは』という意味でだが。

 昨日と同じ服のまま、顔を洗うこともできずに引き出されたのは宮廷の玉座の間だった。
 舞踏会に式典、婚約成立の際の両陛下への挨拶と、何度も足を踏み入れた華やかな場所は、しんと静まり返り、見知らぬ場所のように冷たく私を迎え入れた。
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