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第二章 新たなる出会い
12 ちょっとだけダンジョン
しおりを挟む見れば見るほど、大きい。
動物園で見た象よりも大きい。
しかも真っ白な体は流氷みたいだ。
死んでいるなら、なぜ消滅しないのだろう。
子ライオンの姿が見あたらない。
俺は武器をしまい、そっと近づいたら、俺から見えない反対の位置に、母ライオンの腕に寄り添っていた。
子ライオンの他に、もうひとつ白い塊がある。
子ライオンは別の真っ白い塊をなめている。
「二匹いるのか。」
あれ、もう一匹の子ライオンも微動だしない。
【鑑定】
種族:ホワイトエンペラーライオン 雌 生後3日
レベル1
ダンジョンネコ科系モンスターの最強種。リーダーの雄に雌が数匹、群れを作り集団生活をしている。
栄養失調、危篤重体。
「うおおおっ」
俺はなめ続けている子ライオンをどかし、もう一匹の子ライオンを覗き込む。
かすかに息はしている。
リュックから粉ミルク缶と哺乳瓶をとりだし、あわててミルクを作る。
動揺しすぎて魔法の加減が難しい。
少し熱いか。
とにかくできたミルクを口に近づけるが、子ライオンはまったく動かない。
吸う力も残っていないのか。
俺は座り直して子ライオンを抱き上げる。哺乳瓶よりミルクを手に少しとり、鼻と口の周りにたらす。少し、口が開いた。
リュックからポーションの瓶を取り出す。
少しずつ飲ませていく。
回復薬は口からだらだらと垂れおちるが、半分くらい減ったところで子ライオンの喉が小さく動いた。
どうやら少しは飲めたようだ。瓶が空になると子ライオンの体が淡く光る。
最初より呼吸がしっかりしてきた。
口に哺乳瓶を咥えさせた。
小さくだが喉が動きだし、飲み始めた。よかった。
半分くらいだろうか、ミルクを飲んでいた子ライオンが薄く目をあけた。
もう一匹の子ライオンは青い瞳だったが、こちらは真っ赤な瞳をしていた。
あっ目を閉じてしまった。どうやら眠ってしまったようだ。
【鑑定】
種族:ホワイトエンペラーライオン 雌 生後3日
レベル1
ダンジョンネコ科系モンスターの最強種。リーダーの雄に雌が数匹、群れを作り集団生活をしている。
栄養失調状態。重体。
危篤がなくなった。もう一匹の子ライオンがすぐそばで心配そうに見ていた。俺は頭をなでながら言う。
「危ないところだった。頑張ったな。えらいぞ。」
抱きあげたいが、さすがにこの大きさの2匹は無理だ。
それがわかっているのか、子ライオンは俺にぴったりと寄り添ってきた。
『ねー、動かない』
「もしかして姉さんか。お前の姉さんだから、『ねー』なのか。
体力がないから、ミルクを少しずつ飲めば元気になるはずだ。
回復薬も飲ませた方がいいのかな?」
ん、でかい光の玉が俺の頭のまわりを飛びまわっている。
掃っても掃っても飛びまわる。握りつぶそうとしたがつかめない。
今度は、子ライオンの周りを飛び回っている。子ライオンはうれしそうだ。
『・・・・き・・・ぬ・・・』
また、どこからともなく雑音に近い声が聞こえる。
『われは・・・吾子に・・・望み・・』
声が徐々にはっきりしてきた。
『聞け。人間よ。我はそこで死した魔物の魂魄なり。』
!!!
今日は驚くことばかりがおきる。
しゃべるライオンにしゃべる魂とやらが出た。
光の玉は俺の目の前で停止した。
『かつて我はダンジョンの49階層で群れの中で暮らしていた。だが、スタンピードとダンジョン改変が起こり、70階層にいるドラゴンたちが襲ってきて、群れは壊滅状態となった。希少種の我でも大怪我を負いドラゴンに食われそうになったとき、たまたまダンジョン改変がおき、気づけばこの場所にいた。』
「すみません。いろいろ質問があるんですがよろしいですか?」
俺は片手をあげて言った。
『よかろう。』
「ダンジョン何階まであるんですか?ドラゴン強いんですか?スタンピード、ダンジョン改変って何ですか?」
『なんだ、何も知らないのだな、人間は』
魂のくせに、ため息をつかれあきれかえられた気がする。
『我は49階層にいた。ダンジョンが何階まであるかは知らん。襲ってきたドラゴンが70階から来たとほざいていたので70階まではあるだろう。だが、ここにたどり着いたのは幸運だった。この階層主は希少種らしく、レベルが低いので倒せた。』
「たびたび、すみません。希少種とは?」
『希少種とは、特別なスキルを保有する魔物の事だ。』
特別なスキルってなんだろう?
70階、、、まだまだ先は長いな。
あれ、そうか勇者じゃあるまいし、俺が別に階層全部、攻略・制覇する必要はないか。
考えながら、母ライオンの魂魄が話し続けるのを黙って聞いた。
『ダンジョン改変というのはいつ起こるかわからない、ダンジョンが作りを変え階層に変化があることだ。
たいていは違う階層に移転される。
スタンピードとはモンスターの大移動のことだ。数が飽和状態なると一斉に移動し下の階層に向かう。
たまたま同時におこったようだ。
我のいた階層にドラゴンたちが突然現れ襲われた。ドラゴンたちのレベルは300を超すに強い。仲間が次々に殺され捕食されていった。
最後は我ひとりとなり、我のレベルは255だが、我には特殊なスキルがあるのでなんとか生き延びることができた。だが深手を負った。もうだめかという時に、またダンジョン改変があり気づいたら我だけこの階層にいた。』
『ここの階層主は深手の傷を負った我でも倒せたが、もはや生命力は無にひとしい。このままでは我も赤子も死ぬしかないので、赤子を産みおとすことにした。赤子を産み落とし力を使い果たし、我は死んだ。死ぬ直前に倒した、ここの希少種の主の魔石を喰らったおかげで、奇跡的に肉体は死したが、魂魄となり意識だけは残せた。
体と魂が分離したからか、体は消滅せず残った。だが魂のみの存在、なにもできぬ。このままでは幼い赤子たちも死なせることになる。
魂魄と体が滅するのも、時間の問題だった。』
情報量が多すぎて俺の許容量を越えている。
ものすごく重要なキーワードをいくつも語っているが、頭に入ってこない。
俺なりに整理してみよう。
簡単に言うと、お母さんライオンはドラゴンに襲われ、大けがをしたが違うダンジョンに逃げて赤ちゃん2匹生んだが、死んで、魂だけになった。
そこに、のこのこと俺が現れたという事か。
俺どうなるんだろう。最悪、食べられちゃうのかな。
何にもできないと言っていたから平気かな。
とりあえずおとなしく話を聞いておこう。
『生んだ直後は乳を飲ますことができたが、肉体はすでに死んで乳もでない。吾子のひとりが、偶然にもそこらへんにおちている回復薬をなめることができた。部屋から出て、お主と出会えたのは僥倖。お主に我の力を与えることにする。そのかわりに吾子たちのことを頼む』
おっ、殺されないようだ。
力をくれるって、どうするんだろう?
『我の肉体を、お主が滅ぼせ。』
えー衝撃の事実発覚!!
赤ちゃんライオンの目の前で殺しちゃっていいの?
俺が子ライオン育てるの?
どうやって?
「あの、まだいろいろと質問疑問がありまして、・・」
『もう時間がない。はようせよ』
俺の周りをぐるぐる回転しながら命令された。
母ライオン魂、短気だった。
俺は子ライオンたちに、ごめんなごめんなと何回も謝りながら、母ライオンの心臓にナイフをつきたてた。
大きな白い体が光の粒子となり消えていく。
それを子ライオンはじっと見ていた。
母ライオンの魂魄は子ライオンに語りかけた。
『弱きものは滅するのが自然の摂理。吾子たちは生きよ。生きぬけ。』
魂魄は子ライオンの周りを一周すると、俺の目の前にきて言った。
『我の魔石をおぬしが喰え。吾子たちのすこやかなることを望む』
見ると大きな白い魔石があった。その魔石に光の魂魄は吸い込まれるように消えた。
えー。魔石を喰えといったよな。魔石って食べられるの?
母ライオン説明不足!
しかたがない、食べてみるか。歯が折れたらどうしよう。
魔石の端をかじってみる。
すると簡単に食べられた。
見た目と違って固くなく、味はしない。
なんだろう、歯ごたえのある、さと芋を食べている食感に近いかな。
しかし、大きい魔石だな。
ガリガリと魔石をかじっている達也を、寝ている姉ライオンのそばに寄り添い、弟ライオンはじっと見つめていた。
食べ終わり、習慣で「ごちそうさまでした。」と言ったとたん、俺の体に異変が起こった。
例えようのない激しい頭痛と激痛で、またも意識を失った。
それは母ライオンの持つ膨大な量のスキルを取り込んだせいだった。
なんだか、くすぐったいな。
誰だ、俺の顔をなめるのは。
『ママ、起きて。乳のみたい。』
体が重い。なんだっけ。
『ママ、乳』
俺は覚醒するとがばっと身をおこした。
そうだ。魔石を食べて気を失ったんだ。くそっ、また気絶してしまった。
子ライオンが俺の体に乗り上げて言った。
『ママ、おなかすいた。ねーにも乳あげて』
はっ、そうだ。姉ライオンはどうなった。
【鑑定】
種族:ホワイトエンペラーライオン 雌 生後4日
レベル1
ダンジョンネコ科系モンスターの最強種。リーダーの雄に雌が数匹、群れを作り集団生活をしている。
栄養失調。重体
あれ、丸一日、気絶していたのか俺は。
俺のリュックの中身は散乱し、姉ライオンのそばにはポーション瓶が落ちていた。
「おまえが回復薬を飲ませたのか。賢いなおまえは。」
弟ライオンの頭をなでる。
『飲まない。体にかけた。』
「そ、そうか。えらいぞ。」
どうやら、飲ませられなかったので体に振り掛けたらしい。
飲まなくても効果あるのか?あとで、試してみよう。
俺は散らばっている、粉ミルク缶と哺乳瓶をとり、子ライオンたちのミルク作りをした。
リュックを台にして高さをつくり、1本は弟ライオンに与えた。
俺は姉ライオンを抱き上げ、ミルクを与えた。姉ライオンの吸う力はあいかわらず弱いが、少しづつ飲み始めた。
弟ライオンが飲み終えたので、もう一本を与えた。
さて、この後どうするか。母ライオンに頼まれたし、子ライオンたちをほっとけない。
ましてや姉ライオンは、まず体力回復させないと。
こら、待ちなさい。服をひっぱるな。
丸一日たっていたから、弟ライオンの食欲が凄まじい。
「おとなしくしてろよ。」
俺は両脇に子ライオンを抱きかかえた。
母ライオンが3階層ボススライムを倒していたので、出現した魔法陣を使い家に戻った。
俺の部屋に隠したが、母さんに見つかった。
子ライオンの大きさに絶句してか、捨ててこいとは言われなかった。
母ライオンが死んで子ライオンを託された説明をすると、納得はしてくれたが、大きさのせいか部屋には入ってこない。
しかも、母さんには子ライオンたちが、「みゃあみゃあ」と子猫の鳴き声にしか聞こえないみたいだ。
俺は自分を鑑定してみた。
【鑑定】
種族:神人類 神崎達也 27歳 男
レベル268
スキル 【鑑定・錬金・麻痺耐性・毒耐性・熱耐性・威圧・暗視・隠蔽・危険察知・気配遮断・追跡・地形把握・広範囲索敵・認識阻害・吸収・分解・合体】
魔法 【水魔法、氷雪魔法、炎魔法、風魔法、土魔法・電撃魔法、光魔法・闇魔法・亜空間魔法、重力魔法・防御魔法・回復魔法・生活魔法・収納魔法】
やばい!!人間でなくなっている!!!神人類って何??
レベルが上がり、生活に良い点と悪い点がでた。
力や体力などの身体能力が大幅にパワーアップしたので、100kgのワインの樽や車も軽々持てるし、走ると軽く時速60kmは出るし、疲れ知らずだ。
悪い点は、力加減を間違えて、よく扉や蛇口を壊す。農機具が俺の力に耐えきれず壊れる。
【錬金】スキルで治す。スキル持ってて良かった。
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